漫画『RAiSe! The story of my music』全4巻レビュー/RASへとつながるキャラにスポットを当てた『バンドリ』アニメ2~3期の副読本

   
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『RAiSe! The story of my music』
・巻数:全4巻
・掲載:月刊ブシロード
    2019年2月号~2024年5月号、コミックグロウル2024年9月配信分
・原作:ブシロード/漫画:しいはらりゅう/ストーリー原案:中村航
・シリーズの位置づけ:『BanG Dream!』テレビアニメ2期(+ちょっとだけ3期)のコミカライズ



【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
※ 苦手な人もいそうなNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:△(六花視点だから、ギスドリ成分は抑えめ)
・恥をかく&嘲笑シーン:×(文化祭の彩ちゃんのシーンも抑えめになってる)
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×(メインキャラは女性のみ)
・白人酋長もの:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:○(パレオ→ チュチュのシーンはそこそこ)
・BL要素:×
・男女の恋愛:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×



◇ 独自性:「フロントではない者達」の物語

 この漫画は2019年1月より月刊ブシロードで連載されていた漫画で、以前に紹介した「アニメ1期のコミカライズ」が2019年2月までの連載なので、ほぼ入れ替わる形での連載開始だったんですね。
 連載開始前の告知だと「中村航さんが脚本を担当します」と書かれていて、「ストーリー原案」にもクレジットされているので、『The first page』や『イベントダイアリー』よりはガッツリ関わっているみたいです。


 主人公は後にRAISE A SUILENとなるキャラクター達で、特に朝日六花の出番が多くて、朝日六花が主人公の漫画と言ってイイと思います。
 朝日六花がRAISE A SUILENに加入するってのはアニメ3期のネタバレだと思うんですが、1巻の表紙に「どうも!RAISE A SUILENの一員です」みたいに映っているので、この漫画を紹介する際にはもう隠さんでいいでしょ!



 「そもそもRAISE A SUILENって何?」って人もいるかも知れないので、そこから説明します。

 声優さんに実際にバンドを組ませるプロジェクト『BanG Dream!』が始まったのは、2015年です。最初に結成されたのはPoppin'Partyで、2月に愛美さんのワンマンライブで参加が発表された後、10月までに5人全員のキャストが発表されました。

 『BanG Dream!』最初のバンドだったため、2017年1月から始まったテレビアニメ1期でも主人公として彼女達の結成の様子が描かれました。


 2番目~5番目のバンドが発表されたのは、恐らく2016年の東京ゲームショウでスマホゲーム『ガールズバンドパーティ』が発表されたタイミングだったと思います。2017年3月に始まることとなるそのゲームにはPoppin'Party以外にも、Afterglow、Pastel Palettes(この時点では*がつかなかった?)、ハロー、ハッピーワールド、そしてRoseliaという5バンド25人制で始まることが発表されて……

 更に、Roseliaはこのタイミングでキャストが発表されていて、2017年2月のPoppin'Party単独ライブにシークレットゲストとして出演、生演奏によるライブを初披露しました。『BanG Dream!』プロジェクト2つ目のリアルバンドとして、Roseliaが活動を開始した瞬間でした。


 
 しかし、Poppin'PartyとRoselia以外の「Afterglow、Pastel*Palettes、ハロー、ハッピーワールド」は実際に楽器を演奏するワケではありませんでした。
 「ライブで楽器を演奏できる」ためにはそれなりにガッツリと時間を取って練習しなければならないため、後から「ゲームが思った以上にヒットしたからやっぱり楽器を演奏してね」というワケにはいかなかったんですね。

 でも、『BanG Dream!』のイベントをやるなら、そのバンドのライブも組み込みたい……ボーカルはもちろん声優さんにお願いするとして、演奏はどうするか。カラオケにはしたくないけど、男性によるバックバンドは(恋愛関係になりうる年齢の)男性キャラと絡ませない『BanG Dream!』の決め事を破ってしまう……


 ということで、「Afterglow、Pastel*Palettes、ハロー、ハッピーワールド」のために女性だけで構成されたバックバンドが必要だったんですね。



 2017年4月―――
 テレビアニメ『BanG Dream!』1期の放送が終了して、スマホゲーム『バンドリ!ガールズバンドパーティ』が始まったばかりのタイミングで「ミルキィホームズ&ブシロード10周年&スクフェス4周年記念ライブ」が開催されます。

 ブシロードに関わった演者が全員集合するライブと言っても過言ではないこのライブには、Poppin'PartyやRoselia、ミルキィホームズはもちろん。当時『スクフェス』を展開していた『ラブライブ!サンシャイン』のAquorsや、『けものフレンズ』や『めがみめぐり』などのユニットも出演していました。

 ここで『カードファイト!! ヴァンガードG NEXT』のエンディングテーマを披露した歌手
Raychellさん(後にレイヤさんの声優になる)のライブに、サポートとして入ったドラマー夏芽さん(後にマスキングの声優になる)、コラボとしてギターで参加した大塚紗英さん(Poppin'Partyの花園たえの声優)を見たブシロードの木谷社長(当時)が「この人達でバンド作れるじゃん」と考えたことがきっかけだったそうです。



 そして、2018年1月13日―――
 スマホゲーム『バンドリ!ガールズバンドパーティ』が大ヒットしていた時期に、東京ビッグサイトにて「ガルパライブ&ガルパーティ!in東京」というイベントが開催されます。
 このイベントは音楽ライブだけでなく様々な催しが行われたのですが、「ガルパライブ」としてPoppin'PartyやRoseliaだけでなく「Afterglow、Pastel*Palettes、ハロー、ハッピーワールド」と更に「Glitter*Green」のライブが行われました。

 その際、ボーカルはもちろん各バンドの声優さんが担当されて……演奏は、前年4月に組んだRaychellさん+夏芽さん+大塚紗英さんに、4ヶ月前に「株式会社S新人オーディション」に合格したばかりの新人:倉知玲鳳さんを加えた4人がバックバンドを担当されて。

 Poppin'Partyの大塚紗英さんを除いた3人で、新バンド「THE THIRD(仮)」を結成することが発表されました。
 この「3番目」というバンド名は、Poppin'PartyとRoseliaに続く『BanG Dream!』3番目のリアルバンドという意味だと思われます。



 この「バックバンドを担当していたメンバー」が、「表舞台に立つ」という物語がRAISE A SUILENとしては重要なのですが……Raychellさんは元々歌手だし、夏芽さんは当時はSHAZNAのメンバーでしたし(それ以前はフリーランスで様々なアーティストのサポートをしていたみたいですが)、バックバンド専門だった期間ってめちゃくちゃ短いんですよね。


 2018年3月25日―――
 「THE THIRD(仮)」の1stライブが開催されます。Raychellさん+夏芽さん+倉知玲鳳さんの正式メンバーに、サポートギターとして大塚紗英さんを加えた4人でのライブでした。このライブはライブCDが発売されていて、サブスクとかでも聴くことができます。Spotifyのリンクを埋め込んでおきますね。



 セトリは「Afterglow、Pastel*Palettes、ハロー、ハッピーワールド、Glitter*Green」の曲のカバーが主だったのですが、最後にオリジナル曲『R・I・O・T』が披露されて、ここでサポートギター大塚紗英さんから正式なギター:小原莉子さん(後の朝日六花の声優)へのバトンタッチが行われます。
 アニメ2期~3期のストーリー展開は、これをなぞったものだったんですね。



 更に、2018年7月17日―――
 「THE THRID(仮)」の2ndライブが開催され、ここで最後のメンバー:紡木吏佐さん(後のチュチュの声優)が加入してバンド名も「RAISE A SUILEN」と発表されます。


 「RAISE A SUILEN=御簾を上げろ」は「それまではバックバンドをやっていた彼女達が表舞台に立つ」ことを意味していて、『BanG Dream!』の作中でもレイヤさんやマスキングは(RAS以前は)どのバンドにも属さずにサポートメンバーとして様々なバンドに参加してきたという設定です。

 今回紹介する漫画『RAiSe! The story of my music』では、アニメ版やゲーム版以上にその辺の描写がしっかり描かれていて、RAS以前のレイヤさんやマスキングが何を考えていたかが分かりやすくなっています。



<画像は『RAiSe! The story of my music』1巻より引用>


<画像は『RAiSe! The story of my music』1巻より引用>

 アニメ2期はPoppin'Party視点だから、どうしても「RASが結成された後のレイヤさんやマスキング」しか見えなかったし。
 スマホゲーム版は、アニメ3期以降の内容しか入っていないので。

 RAISE A SUILENに出会うまでの彼女達がどれだけ渇望していたのかが、アニメ版やゲーム版ではよく分からなかったんですね。私は今回、漫画版を読んで初めて「彼女達だけの物語」をちゃんと理解できた気になりました。
 Poppin'PartyやAfterglowでは出来ない「表舞台への憧れ」や「ずっといっしょにやっていける仲間への渇望」がRAISE A SUILENの物語としては重要だったんですね。



◇ 補完性:アニメでは描き切れなかった「あの時、朝日六花は何を思っていたのか」

 さて、『BanG Dream!』プロジェクトといえばメディアとメディアが連動するメディアミックスなことが特徴です。
 例えば、最初の「星の鼓動」の漫画は、「漫画の中でメンバーが増える」のに連動してリアルライブで新メンバーが発表されたり、漫画の中で出てきた曲がその月のライブで初披露されたりしました。


 RAISE A SUILENは、「THE THIRD(仮)」の頃はアニメやゲームとどう絡んでくるのか分からなかったのですが……

 2018年12月7日―――
 『BanG Dream!』全体の 6thライブの Day1を担当して、ここでキャラクターの発表と、翌月から始まるテレビアニメ2期に登場することが発表されました。


 ……さっきからどうしてわざわざライブの日を書いているのかというと、実はこの「RAISE A SUILENに至るまでのライブやイベント」の日が、キャラクターの誕生日になっているんですってね。私は今回の記事を書くまで気付いていませんでした。


・1月13日:「ガルパライブ&ガルパーティ!in東京」にバックバンドとして参加、「THE THIRD(仮)」の発表→ レイヤさんの誕生日
・3月25日:「THE THIRD(仮)」の1stライブ、ロック役の小原莉子さんの加入→ パレオの誕生日
・5月12日:BanG Dream! 5th☆LIVE Day1:Poppin'Party、オープニングアクトにTHE THIRD(仮)が登場→ マスキングの誕生日
・7月17日:「THE THIRD(仮)」の2ndライブ、チュチュ役の紡木吏佐さんの加入、バンド名:RAISE A SUILENが発表される→ ロックの誕生日
・12月7日:BanG Dream! 6th☆LIVE Day1:RAISE A SUILEN Brave New World、キャラクターとテレビアニメ2期への登場が発表→ チュチュの誕生日



 そして、2019年1月3日から『BanG Dream!』テレビアニメ2期が放送開始になると、それに連動するように1月8日から月刊ブシロードにてこの『RAiSe! The story of my music』が連載開始となりました。


<画像は『RAiSe! The story of my music』1巻より引用>

 ストーリーは、中学生の頃の朝日六花が「SPACEのラストライブ」を観に行く回から始まります。「こんなに丁寧に前日譚を描いていたの!?」と、六花が東京に出てくるまでを4話もかけて描いていて……その間にテレビアニメ2期の放送は終わっていました。

 テレビアニメ1期のコミカライズもそうだったんですが……テレビアニメが週1本放送されてガンガン話が進むのに対して、漫画は月刊連載だからどんどん引き離されていくんですよね。




<画像は『RAiSe! The story of my music』1巻より引用>

 それはそれとして、六花が中学時代に組んでいたバンドメンバーもちゃんと登場します。名前が出ていたのここだったのか。その後、2020年に開催されたRAISE A SUILENの舞台でこの3人のフルネームが発覚して―――



<画像はiOS版『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』より引用>

 2022年のスマホゲーム版のイベントでは「高校生になった3人」が登場していました。私は当時まだ漫画版を読んでいなかったので、「なんだこのあだな!?」と思ったのを覚えています。

 漫画版の描写と照らし合わせると、多分こんなカンジの編成だったと思われます。

・ギターボーカル:則本いちご(ベリー)
・ギター:朝日六花(ロック)
・ベース:鳥山小春(トリコ)
・ドラム:鳩村真波(パト)



<画像は『RAiSe! The story of my music』1巻より引用>

 ちなみに、六花が何故ライブ中に眼鏡を外すのか―――も説明されていて、眼鏡をかけていると周りが見えすぎてしまって緊張するからみたいですね。テレビアニメ3期のオーディション回を観ても、なるほどそういうことかと思いますね。




 さて、そうこうしている間に2020年1月―――
 テレビアニメ3期の放送が始まります。

 でも、確かテレビアニメ3期は元々2019年10月から放送される予定だったのが3ヶ月延期したので……そのせいか、テレビアニメ3期放送開始前にパレオの正体が明らかになっちゃっているんですよね。この辺は、メディアミックスプロジェクトならではの誤算なのかどうなのか。


 では、実際にテレビアニメ3期が放送された頃には、漫画版はどんな話をやっていたかというと……


<画像は『RAiSe! The story of my music』2巻より引用>

 なんと、テレビアニメ2期の1話!
 (を朝日六花視点で描いたもの)


 ということで、「前日譚」を丁寧に描いていたせいで、テレビアニメとあまり連動していない漫画版の連載になっちゃったのですが……逆に言うと、とっくに終わっているテレビアニメ2期を1年遅れでコミカライズしているため、アニメ版では描写が足りなかったところが補足されて分かりやすくなっているんですね。



<画像は『RAiSe! The story of my music』3巻より引用>

 例えば、テレビアニメだと2期の6話―――
 六花がAfterglow結成のきっかけを聞くシーン、アニメ版だと「唐突にそんなことを聞くんだな」と思っていたんですが……
 漫画版だと六花視点で話が進んでいるため、メンバー探しをしていて、とにかく片っ端から声をかけている頃で、そんな中「この人達じゃなきゃ」と幼馴染で結成されたAfterglowの話を聞くって流れだったんですね。

 「誰でもいい」ワケじゃないんだ―――
 せっかく地元のメンバーに別れを告げて東京に出てきたのに、そんな気持ちでバンドを組んじゃダメだって気付くためのシーンだったんですね。



 とまぁ、丁寧すぎるほど「六花視点で振り返るアニメ2期」をやっていたのですが……2022年になってもまだ「アニメ2期の文化祭」前夜までしか進んでいなくて、そこで長期休載に入ってしまったみたいです。
 連載が再開されたのは2024年と……もう、アニメ3期どころか劇場版『ぽっぴんどりーむ』も公開されて、スマホゲーム版はシーズン3になって、テレビアニメ『It's MyGO!!!!!』の放送も終わったあたりです。この時期に、アニメ2期の文化祭の話を描いていたのか……

 そのため、そこから先は「残り話数で話をまとめる」モードに入って、アニメ3期の話を5話分にまとめてフィニッシュしました。アニメ3期を知っていると「あの話もあの話もカットなの!?」と思うんですが、「朝日六花が主人公の漫画」としてはキレイにまとまっていたと思います。よくやったよ、マジで……



<画像は『RAiSe! The story of my music』4巻より引用>

 特に最終話、「ガールズバンドチャレンジ」で敗退した名もなきガールズバンドのモブが、「ガールズバンドチャレンジ」決勝のライブを観に行くというラストで―――朝日六花が「SPACEのラストライブ」を観に行く第1話と対になっているのがすごく好きです。

 『BanG Dream!』というプロジェクトが描いているものをしっかりと継承しているラストで、すばらしいオリジナル描写だと思いました。



◇ 総括


<画像は『RAiSe! The story of my music』1巻より引用>

 丁寧に描きすぎたせいで、「作品としての旬」を逃してしまったのかも知れません。単行本の1~2巻は紙の単行本も出たのですが、3~4巻は電子書籍のみの発売となってしまいました。

 でも、「朝日六花の物語」を真摯に描いて、しっかりと着地させて完結させたのは本当にすごいと思います。アニメ1期のコミカライズとはまた別の方向性で、「コミカライズ作品でしか出来ないこと」をちゃんとやったと思います。




 さて、9月から続けてきた『BanG Dream!』の漫画レビューは、とりあえずこれにて終了です。みなさんお付き合いくださってありがとうございました! どの作品もちゃんと「役割」を真っ当した素晴らしいコミカライズだったと思います。

『BanG_Dream![星の鼓動]』(プロトタイプ版)レビュー
コミック版『BanG Dream!』(テレビアニメ1期のコミカライズ)レビュー
『バンドリ! ガールズバンドパーティ! The first page』(各バンドのメインストーリー1章)レビュー
『バンドリ! ガールズバンドパーティ! イベントダイアリー』(スマホゲーム版のイベント選り抜き)レビュー

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