<画像はスーパーファミコン用ソフト『マリオとワリオ』より引用>
・ゲーム性:マウスを「クリックする」だけで遊べる多種多様なギミック
・作家性:ポップな見た目に反して、「全クリアさせる気のない」ゲーフリ難易度
・総括
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◇ 時代性:『ポケモン』前夜のゲームフリークが「任天堂IPを任された」時期
このゲームは1993年に発売されたスーパーファミコン用ソフトで、後述しますが2本しか出なかった「スーパーファミコンマウス」専用ゲームです。
そのためか、マリオが出ているゲームにも関わらず今日までバーチャルコンソールなどでの復刻はされてきませんでした。マウス機能が標準搭載されたNintendo Switch2ならば復刻されるかも……と思い、先回りしてプレイしたのですが。
最初に言っておきます。
このゲームは、トンデモなく難しいです。
私はレトロフリークの機能を使って無理矢理クリアしましたが、実機でクリアできるとは思いません。そもそもこの頃のゲームフリークは、「ゲームはクリアできなければならない」と思って作っていないよね……という話も後で書きます。
ということで、このゲームを開発したのはゲームフリーク―――後に『ポケットモンスター』を開発して大ヒットを飛ばす会社……ではありません!
ゲームフリークは1990年頃からゲームボーイ用に『ポケットモンスター』の開発を始めていたのだけど、複雑かつ要素の多いゲームのため、開発は長期化してしまいます。そこでゲームフリークは、会社の運転資金確保のために"比較的短期間で開発できる"ジャンルのゲームを受注して作るんですね。

<画像は学習まんが人物館『ポケモンをつくった男 田尻智』より引用>
つまり、このゲームは……『ポケットモンスター』と同時並行で作られたゲームの1つであり、『ポケットモンスター』の開発資金となったゲームの1つなんです。
【初期のゲームフリークが手がけたゲーム達】
・1989年ファミコン『クインティ』(ナムコから発売)
――1990年頃から『ポケットモンスター』の開発が始まったと言われる―――
・1991年スーファミ『ジェリーボーイ』(EPICソニーから発売、開発はシステムサコム)
・1991年ファミコン、ゲームボーイ『ヨッシーのたまご』(任天堂から発売)
・1992年メガドラ『まじかる☆タルるーとくん』(セガから発売)
・1993年スーファミ『マリオとワリオ』(任天堂から発売)
・1994年ゲームボーイ、スーファミ『ノンタンといっしょ くるくるパズル』(ビクターから発売、開発はゲームボーイ版はアクセス、スーファミ版はタオヒューマンシステムズ)
・1994年メガドラ『パルスマン』(セガから発売)
・1996年ゲームボーイ『ポケットモンスター 赤・緑』(任天堂から発売)
「へぇ~~、『ポケモン』を作った会社にもそんな下積みの時代があったんだなー」という話なのですが、手がけている作品がなかなかに興味深いです。
例えば、1991年に発売された『ヨッシーのたまご』です。
ヨッシーは1990年11月に発売された『スーパーマリオワールド』にて初めて登場した「マリオの相棒」で、この『ヨッシーのたまご』でそのヨッシーが初めて主役として別の作品に登場したんですね。
【ヨッシーが登場する初期作品】
・1990年11月『スーパーマリオワールド』
・1991年12月『ヨッシーのたまご』
・1992年8月『スーパーマリオカート』
・1992年11月『ヨッシーのクッキー』
・1993年7月『ヨッシーのロードハンティング』
・1993年8月『マリオとワリオ』
最初から「ヨッシーのパズルゲームを作ろう」としたのではなく、考えられたゲームにヨッシーが当てはまったかららしいのですが……『クインティ』しか実績のなかった小さな会社に、今後任天堂の顔となるであろう「マリオの相棒」となるヨッシーを任せたのは凄い話だなぁと思います。

<画像はWii Uバーチャルコンソール版『ヨッシーのたまご』より引用>
この『マリオとワリオ』もそうです。
「ワリオ」は、1992年10月に発売されたゲームボーイ用ソフト『スーパーマリオランド2 6つの金貨』に登場するキャラクターで、「マリオの新たなライバル」としてTVCMなどでも大きく取り上げられていました。
この『マリオとワリオ』も、マリオシリーズに新たに登場した「ワリオ」というキャラが初めて他作品に出たゲームだったんですね。
【ワリオが登場する初期作品】
・1992年10月『スーパーマリオランド2 6つの金貨』
・1993年8月『マリオとワリオ』
・1994年1月『スーパーマリオランド3 ワリオランド』
・1994年2月『ワリオの森』
・1995年9月『マリオのスーパーピクロス』
・1995年12月『バーチャルボーイワリオランド アワゾンの秘宝』
この時期のゲームフリーク……『ポケモン』を出す前から、任天堂から特に信頼&期待されていたんだなって思いますね。
◇ ゲーム性:マウスを「クリックする」だけで遊べる多種多様なギミック

さて、このゲーム―――
先にも書いたように、スーパーファミコン用に出た周辺機器「マウス」専用ソフトです。
任天堂は元々ウルトラハンドなどのおもちゃを作っていた会社なこともあって、昔も今も「別売りの専用コントローラー」を周辺機器として出すことが多かったんですよね。
<ファミリーコンピュータ―>
・1984年 光線銃
・1984年 ファミリーベーシック
・1985年 ロボット
<スーパーファミコン>
・1992年 マウス
・1993年 スーパースコープ
<NINTENDO 64>
・1998年 NINTENDO64 VRS(マイクと音声入力認識システム)<ゲームキューブ>
・2003年 タルコンガ
・2004年 マイク
・2005年 マットコントローラ
<Wii>
・2007年 Wiiザッパー
・2007年 バランスWiiボード
・2008年 Wiiハンドル
・2009年 Wiiモーションプラス
<Wii U>
・2013年 フィットメーター
<Nintendo Switch>
・2017年 Joy-Conハンドル
・2018年~ 各種Toy-Con
・2018年 モンスターボールPlus
・2019年 リングコン
スーパーファミコン用のマウスは、その中の一つです。
1992年7月に発売された『マリオペイント』に同梱されたマウスは、専用ソフトこそ『マリオペイント』『マリオとワリオ』の2本しかありませんでしたが、対応ソフトはどうやら115本も出ていたそう。『スパロボ』シリーズや、光栄の『信長』『三國志』、『ときめきメモリアル』や『同級生2』なんかも対応していたんだとか。
光栄のシミュレーションゲームが対応していることで、当時のことを知らない若い人は「なるほど、PCで慣れ親しんだマウス操作でPCゲームの移植が遊べるようにマウスが発売されたんですね」なんて思うかも知れませんが……そうではない!
例えばこの記事に載っている「内閣府の消費動向調査」によると、2018年には78.4%となるパソコンの普及率は、1992年時点ではまだ10%ちょっとしかないことが分かります。
ほとんどのこどもは「パソコンもマウスも触ったことがない」、もしくは「学校の授業でのみ触らせてもらった」みたいな時代に、大人がパソコンで使っている「マウス」って入力デバイスをスーファミでも使えるぞ―――という商品だったんですね。


<画像はスーパーファミコン用ソフト『マリオペイント』より引用>
そのため、マウスが同梱してくるソフトは、PCのお絵かきソフトにもっと遊び心を加えた+マウス操作に慣れさせるためのハエたたきが遊べる『マリオペイント』だったのでしょう。想定しているターゲット層は、「まだ自由にパソコンを触れないこども達」だったのだと思います。
この『マリオとワリオ』は、そこから1年後に発売されたソフトです。
ネット上などでは『マリオとワリオ』は元々スーパースコープ用として開発されていた―――みたいに書かれているところが多いのですが。
音楽・プログラムを手がけた増田順一さんがこのゲームについて語った動画によると、「元々は全然ちがうゲームをスーパースコープ用に開発していた」けど「その企画がなくなり」「マウスを使ったパズルアクションにしたらイイんじゃないかと横井軍平さんと話した」とのこと。
つまり、スーパースコープ用に開発していたゲームは全然別のゲームだったっぽいんですね。流石に『マリオとワリオ』をスーパースコープで遊ぶのはムリすぎる……
そのため、スーパースコープが発売した2ヶ月後に、マウス専用ゲームとして『マリオとワリオ』が世に出るという不思議な発売時期になったのでしょう。
当時私の周りだと『マリオペイント』は持っている友達がそこそこいたけど、『マリオとワリオ』を持っている友達はいませんでした。マウス発売から時間が空きすぎたから、「今更マウス?」という空気になっちゃっていたように思われます。
さて、という経緯で……スーファミマウス専用として作られたこのゲーム―――
どんなゲームかまったく知らない人のために説明すると。
『マリオとワリオ』というタイトルですが、プレイヤーキャラはマリオでもワリオでもありません。

<画像はスーパーファミコン用ソフト『マリオとワリオ』より引用>
プレイするワールド(LEVEL)を選ぶと、一人で歩いているマリオの頭上にワリオが現れて、頭にバケツを被せて去っていきます。マリオは自分でバケツを取ることも出来ず、立ち止まることも出来ず、ただただ前進を続けます。何で???

<画像はスーパーファミコン用ソフト『マリオとワリオ』より引用>
そのままだとマリオがトゲに当たって死んでしまったり、敵に当たって死んでしまったりします。「マリオなら2発はダメージ耐えられるかな」とかありません。このゲームのマリオは一撃で容赦なく死にます。タイムアップで死ぬのも割と早いです。
プレイヤーは「妖精ワンダ」を操作して、「勝手に前進し続けるマリオ」を「ゴールにいるルイージ」まで誘導するとステージクリアとなります。
「妖精がマリオのバケツを取ってあげたらイイんじゃないの?」と誰もがツッコミを入れるのでしょうが……
ゲーム的にはマリオと同じくらいのサイズで描かれているこの妖精ちゃん、本当はめちゃくちゃ小さくて、バケツを持ち上げるだけの腕力はないんじゃないかと思われます。敵も妖精ちゃんに気付いていないし、進み続けるマリオを押し返して止めたりも出来ませんから。
この妖精ちゃんは実質的な「マウスカーソル」で、マウスを動かすと同じように画面を飛び回りますし、左クリックすると持っている魔法のステッキを振ってくれます。
この「マウスのカーソルに合わせて画面の端から端までピュンと飛ぶ」カンジが、十字キーとかでは遊べないゲームなんだと納得できますね。その分、「精密な動き」がしづらくてイライラするのですが……

<画像はスーパーファミコン用ソフト『マリオとワリオ』より引用>
マリオをステッキで叩く(=マリオをクリックする)と、前に進み続けたマリオが方向転換してもどります。
ゲームが進むと、マリオを高速で殴り続けて「前→ 後ろ→ 前→ 後ろ→ 前→ 後ろ→ 前→ 後ろ」と方向転換させ続けてその場に留まらせる場面が多々出てきます。これが基本テクニックなのどうかしてると思います。

<画像はスーパーファミコン用ソフト『マリオとワリオ』より引用>
この魔法のステッキはステージ内のオブジェクトにも干渉できて、ブロックを出現させたり・消したり、敵が吐く火の玉を消したり、やることはむちゃくちゃ多いです。「アクションパズル」というジャンルですが、配分としては「アクション:パズル=8:2」くらいだと思います。

<画像はスーパーファミコン用ソフト『マリオとワリオ』より引用>
このゲームの大きなポイントとして、「カメラはマリオの動きに追従してしまう」があります。
妖精ちゃんは画面に映っている範囲でしか動けないため、例えば「先回りしてあっちのブロックを壊しておこう」としたくても、マリオの周辺しか干渉できないんですね。画面内に入ったと思ったらマリオが動き続けるし……むっちゃ忙しないし、画面がスクロールするから照準が合いにくいし、むちゃくちゃ大変!

<画像はスーパーファミコン用ソフト『マリオとワリオ』より引用>
一応、ステージが始まる前に全体を見回す時間はあります。
これでルートを考えておいて、その通りにマリオを誘導すればイイだけなんで、パズルゲームとしてはそこまで難しくないです。その通りに操作するアクションゲームとして激ムズなだけで……
ちなみに、この「ステージ全体を見回す時間」は開発序盤はなくて、割と開発終盤に入れたんだとか。もしこれがないまま発売されていたら、パズルゲームとしての難易度が跳ね上がっていたとゾッとしますね……

<画像はスーパーファミコン用ソフト『マリオとワリオ』より引用>
ちなみに、ワールド(LEVEL)をクリアすると「飛行機に乗ったワリオをぶん殴るだけコインをぶんどれる」治安の悪いボーナスステージが遊べるのですが……
よく見ると、妖精ちゃんの持っている獲物が普段の「魔法のステッキ」ではなく「ハンマー」になっているんですね。「魔法のステッキ」には殺傷能力がないけど、ボーナスステージのみ「ハンマー」に持ち替えているから、攻撃できる―――という芸の細かい演出だと思います。
そのハンマーなら、マリオが被っているバケツ、叩き割れないかな……
田尻智さんは、ゲームを「動詞」で考える人だと言われます。
『クインティ』は「めくる」。
『ヨッシーのたまご』は「まわす」。
『ポケットモンスター』は「集める」。
この『マリオとワリオ』は「マウスを左クリックする=叩く」だけで遊べて、画面内のいろいろなものを叩くことで干渉していくのが楽しいというゲームなんですね。
マウスの操作と言えば、「左クリック」だけでなく「ドラッグ」&「ドロップ」などがありますがそれらは使いませんし、「右クリック」もポーズにしかなりません。このゲームを通じてマウスの使い方を学ぼうみたいなゲームじゃないんです。
その「プレイヤーができる操作は少ない」、けど「ステージギミックが多彩」で色々な遊びが詰め込まれているのは『クインティ』に通じる部分があります。メーカーもキャラクターもちがいますが、「『クインティ』の精神的続編」と言われても違和感ないくらい、ゲームのポリシーが近いんですね。

<画像はスーパーファミコン用ソフト『マリオとワリオ』より引用>
また、『マリオとワリオ』というタイトルですが、誘導するキャラは「マリオ」固定ではなく、移動スピードの遅い「プリンセス(※1)」、移動スピードの速い「ヨッシー」を選ぶことも出来ます。
キャラクターが選べるということは「キャラクターのアニメーション」もそれぞれ描かなくちゃなりませんし、全部のキャラで一応クリアできるような調整もしなくちゃならないしで手間がかかってますよね。
ワールド(LEVEL)ごとにギミックだけでなく背景やバケツのデザインも変わるし、短時間で開発できるジャンルのゲームとして作られている割に、むちゃくちゃ細部まで凝ったゲームだと思います。
(※1:要は「ピーチ姫」なのだけど、このゲームが出た1993年当時は「ピーチ姫」の海外名が統一されていませんでした。
1985年に出た『スーパーマリオブラザーズ』で初登場した際は、英語版のマニュアルには「Princess Toadstool(キノコ姫)」と書かれていて、以後しばらくはそれが続いていたのですが……1993年の海外版『ヨッシーのロードハンティング』では「Peach」という名前が使われて、1994年の『スーパーマリオランド3』ではまた「Princess Toadstool(キノコ姫)」に戻ったそう。
NINTENDO64以降それを統一しようとしたのか、1996年の『スーパーマリオ64』の海外版では両方の名前が書かれていて、『マリオカート64』以降は「Peach」に統一された模様です。
ということで、海外展開した際のローカライズの手間を考えてどちらでも通じる「Princess」にしたのだと思います。しかし、ここまで書いておきながらアレなんですが、このゲームは海外で発売していないんですね。じゃあ、なんでやねん)
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◇ 作家性:ポップな見た目に反して、「全クリアさせる気のない」ゲーフリ難易度
というワケで……「出来の悪いゲーム」ではないです。
クリアさえ目指さなければ楽しいゲームだとも思います。
それは大前提で……
しかし、エンディングを見ようと全クリアを目指すと、正直「どうかしているとしか思えない」難易度に気が狂いそうになります。

<画像はスーパーファミコン用ソフト『マリオとワリオ』より引用>
このゲームは最初からワールド(LEVEL)が選べて、それぞれのワールド(LEVEL)には10のステージが用意されています。
「なるほど全80面か」と思うと、LEVEL8をクリアするとLEVEL9、それもクリアするとLEVEL10が現れるので……エンディングまでには全100面が用意されているんですね。
ただし、セーブもパスワードもありません。
どの面までクリアしたかは記録されないので、電源を入れるたびに毎回このまっさらな画面からスタートです。
一応、まぁ……「LEVEL8をクリアするとLEVEL9、それもクリアするとLEVEL10が現れる」仕様のため、LEVEL1~7はガン無視で構わないと考えるなら、30面を一気にクリアすればイイだけと言えなくもないのですが……

<画像はスーパーファミコン用ソフト『マリオとワリオ』より引用>
初期残機は「3機」で、コインを100枚集めるか、各ステージに4つ置かれているスターを全部取ると1UPします。
このスターは『Newマリオ』のスターコインのような「記録される収集要素」ではなく、『スーパーマリオワールド』のドラゴンコインのように全部集めると1UPするだけのものですが……通常ルートでは取れない位置にあるものがほとんどなので、敢えて「スターを全部入手するルート」を構築しなくちゃなりませんし、移動スピードの遅い「プリンセス」だとタイムアップの危険性も相当高くなります。

<画像はスーパーファミコン用ソフト『マリオとワリオ』より引用>
残機がすべてなくなると、「コンティニュー」か「エンド」かを選べます。
「コンティニュー」を選ぶと、スコアやコインは失いますが、同じステージから再開です。「8-3」でゲームオーバーになっても「8-3」から再開! うぉぉぉおおおお!ゲームフリーク優しい!!!
と、思っていた時は幸せでした。
LEVEL8をクリアして出てくるLEVEL9は、コンティニューすると「9-1」からやり直しです。「9-10」でゲームオーバーになったら「9-1」からやり直しです。
そして、LEVEL9をクリアして出てくるLEVEL10は、コンティニューすると「9-1」からやり直しです。「あれ、やまなしさんコピペをミスった?」って思うかもですが、ミスではありません。このゲーム、LEVEL10でコンティニューするとLEVEL9の最初からやり直しになります。「10-10」でゲームオーバーになっても「9-1」からやり直しです。
繰り返しますが、このゲームの初期残機は「3機」です。
残機を増やす手段は、むちゃくちゃ難易度が高くて逆に残機を失うリスクの方が高いです。
LEVEL9とLEVEL10は1つ1つのステージが激ムズで、一瞬の判断ミスで残機が溶ける難易度なのに……「たった3機」で20面連続でクリアしなくちゃならんのですよ。正気か????
例えば、『スーパードンキーコング』シリーズのように「序盤の簡単なステージを何度もクリアして残機を稼ごう」みたいなことも出来ません。一度クリアしたステージはもう遊べませんし、そもそも一番簡単なLEVEL1は、安易に残機を増やせないように「スター」が置かれていません。
プレイヤーをクリアさせないように、安易な抜け道は予め全部潰してあるのです。

<画像はWii Uバーチャルコンソール版『クインティ』より引用>
なんでこんなイジワルなことをするんだろう……と思っていましたが。
『ポケモン』以前のゲームフリークって元からそういうとこだわ、って思い直しました。
『クインティ』も「セーブもパスワードもないゲーム」で、全100面をクリアしなくちゃなりません。『マリオとワリオ』はLEVEL8からプレイすれば全30面を通しでクリアすればイイけれど、『クインティ』は全100面を通しでクリアしなくちゃなりません。
その代わり『クインティ』も、最初から8種類のステージのどれから遊ぶか選べますし……「コンティニューしてもパワーアップは引き継がれる」仕様なので、序盤で稼ぎプレイをすれば後半は楽になります。

<画像はWii Uバーチャルコンソール版『ヨッシーのたまご』より引用>
そりゃ落ちモノパズルならそうでしょって話ですが……
『ヨッシーのたまご』も、セーブもパスワードもなく、最初からLEVELが選べるゲームです。
私は未プレイですが、メガドライブの『まじかる☆タルるートくん』や『パルスマン』も「セーブもパスワードもない」「コンティニューに制限がある」「(裏技で)ステージセレクト」ができるゲームらしいので……
『ポケットモンスター』以前のゲームフリークのゲームは……
・セーブもパスワードもなく、ゲームを始めたら毎回最初から
・コンティニューに制限がかかるなどして、簡単にはクリアさせない
・その代わりステージセレクトができて、どこの面からでも遊べる
共通でこういう特徴を持っていたんですね。
「全クリアさせる気はない」が「ゲームの色んな要素は楽しんで欲しい」という確固たるポリシーを持っていたと思うんですね。
考えてみると、田尻さん達のゲーム体験の原点は1970年代末期~1980年代前半のゲームセンターであって、その時期のゲームは別に「クリアを目指すゲーム」じゃなかったんですよね。
最終面まで行っても1面に戻るだけでエンディングとかないのが普通でしたし、そもそも最終面まで行って「そのゲームを全部遊ばれた」状態になると困るから難易度を高くするし、100円で長く遊ばれると困るから残機アップもそうポンポンさせるワケにはいきませんでした。もちろんセーブもパスワードもありません。
ゲームはエンディングを見てようやく「ちゃんと遊んだと言える」みたいな文化は、1988年の『ドラクエIII』辺りからじゃないかと思うので……このゲームが出た1993年にはもうそういう文化はあったはずですが。
時代に逆行して「昔ながらのアーケードゲームのような」スタイルだった『クインティ』も、誰もがエンディングを見られたゲームじゃなかったでしょうし。その後にゲームフリークが作ったゲーム達も、基本的にはそうだったと思うんですね。
そもそも『ポケットモンスター』だって、ウルトラ大ヒットしたから「攻略情報」が友達みんなで共有されてクリアできたんであって、何の予備知識もなく一人で遊ぶゲームとしてはむちゃくちゃ難しいゲームだったと思いますしね……
ゲームフリーク is 難しい!!
◇ 総括

<画像はスーパーファミコン用ソフト『マリオとワリオ』より引用>
可愛らしい見た目と、直感的な操作と多彩なギミックで楽しませてくれるゲームだと思うんですが……「ゲームは簡単にクリアできないもんだぞ」というゲームフリークの哲学によって、全クリアを目指すとトンデモない難易度になってしまった作品だと思います。
発売されたのは1993年ですが、ゲームの価値観が1980年代前半のゲームだったというか……この辺、もしSwitch2でリメイクされたなら、しっかり改修されて遊びやすくなりそうなカンジはしますし、もし「Nintendo Classics」で配信されたら「まるごとバックアップ」や「巻き戻し」が使えるから楽にはなるとは思いますが。
そもそも「ステージの構成」が、「ちょっとの油断でリカバリー不可能になる」イジワルなものばかりだから「まるごとバックアップ」使っても難しいんですけどね!
この「自分ではキャラを操作できない」「ステージを変化させることで動き続けるキャラをゴールまで誘導する」遊びは、ニンテンドーDS以降のタッチパネルと相性が良かったため、『マリオvsドンキーコング』シリーズに継承されます。
こちらだとタッチ操作だから「マウスが思ったように動かない!」と発狂することもなさそうですし、「おもちゃだから勝手に動く」納得感がありますね。いや、マジで「バケツを被せられたマリオ」、どうして勝手に歩くんだよアイツ。(なのに、ゴールで待っているルイージはどうして助けに来てくれないんだよ)
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