「面白かった作品をオススメする」のは、もうやめようと思います

 毎年新年一発目の記事は「普段書いたら炎上しそうなことを、どうせ誰もブログなんて見ていない正月の間に書いてしまおう」の記事としているので……せっかくだから、新ブログに移行しての方針変更についての記事を書いておきます。


 旧ブログでは基本的に「自分が面白いと思った作品」を「オススメですよ!」と紹介するスタンスでやっていました。

 「面白かったゲーム」「面白かった漫画」「面白かったアニメ」―――そういうものを紹介して、みなさんが触れてくれて、それでみなさんの人生がちょっとでも豊かになったのなら、「紹介した私も嬉しい」「楽しんでくれた読者さんも幸せ」「紹介した作品にも恩返しができる」と思っていたんですね。


 それ、もうやめます。


新ブログは記事ごとに画像のサムネイルが出るので、×を表す「天空×字拳」の絵を自分で描こうと思ったら、『学マス』の藤田ことねが「天空×字拳」やってたわと気付いたので何か貼られた画像



 私が面白かった作品を紹介したところで、誰も幸せにならないこと―――正直、数年前から気付いていて徐々にフェードアウトしようとしていたのですが、新ブログに移転して、正月のこの機会だからハッキリと明言しておきます。


 このブログでは「面白かった作品をオススメ」したりはしません!


 僻んでいるとか、拗ねているとか、「そんなことないですよ」と引き止めて欲しくて敢えてそう言っているとかじゃないんですよ。私の人生の残り時間を考えたら、「自分に向いていること」に力を注ぐべきで、「自分に向いていないこと」にはなるべく時間を割きたくないって話です。


 「向いているか向いていないかなんて分からない」って思うかも知れませんが、こちとら18年間……いや、その前の個人サイト時代から考えたら20年くらいやってきて、その上で「自分には向いていない」って確信したのです。


 私が「○○面白かったです! オススメですよー」とブログに記事を書いて、実際に「やまなしさんがオススメしてくれたから観てみた(遊んでみた)ら面白かったです!」と言われたこと―――18年間で5回くらいしかないんですよ。

 『Wii Fit』、『Yoku's Island Express』、『バンドリ』シリーズのアニメ達、『学園アイドルマスター』……思い出してみたら4回しかなかったわ!18年間で4回、オリンピックより周期が長い!


 もちろん「コメントでわざわざ伝えていない」だけでそういうことがあった人もいるかと思いますが、それにしても数が少なすぎる。同じようにブログを続けている人達と比べても、極端に数が少ないと思います。


理由1:そもそも現代人は「面白い作品をオススメしてほしい」なんて思っていない

 私も含めて、現代人はとにかく時間がありません。

 何故なら「摂取可能な娯楽」が溢れまくっているからです。


 ゲーム一つとっても、昔は「パッケージソフト」しかありませんでしたが、スマホゲーのような「運営型のゲーム」は顧客を逃さないように常時アップデートし続けて遊び尽くせませんし、Steamのようなダウンロード販売ゲームの場所が定着したことで小規模で制作されたインディーゲームも販売できるようになりました。

 更に、バーチャルコンソール的な「過去作の移植」も盛んに行われてるだけでなく、レトロフリークのような互換機で昔のソフトを遊ぶ人もいるでしょうし、更にはサブスクでゲームが遊べるようになって……


 とにかくゲームが……ゲームが多い……!


 アニメもそう。

 単純に「今季始まるアニメ」の数も多くて、観たいもの全部観ることが不可能なのに、サブスクで過去の名作が見放題になっただけでなく、You Tubeで期間限定無料公開とかする作品も多くて。


 とにかくアニメが……アニメが多い……!


 30年前の娯楽の中心は「テレビ」でしたが、そのテレビだってBSやCSなど多チャンネル化した上に、You Tubeに代表される「テレビではない映像コンテンツ」を観るのが普通になって……


 気付いたら、「ラジオで野球中継を聴きながら」「テレビでサッカー中継を観ながら」「PCでYou Tubeのゲーム実況を二窓しながら」「iPadでは『バンドリ』をオートライブで周回しながら」「紙と鉛筆で絵を描いている」みたいな生活を私もしていますもの。


 私の話は極端な例としても、現代人は「スキマ時間に娯楽を摂取する」のでも足りなくて、「スキマ時間などないから複数の娯楽を同時摂取する」領域に入っていると思います。


 こんな状況で、素人の書くブログなんて読んでくださる人には感謝しかないのですが……そういう人も、「スキマ時間」だったり「ながら」だったりで時間を捻出して何とか読んでくれている人が多いでしょうに。

 そういう人に「○○面白かったよ! オススメだよ!」なんて言っても、


「こちとら時間割いてオメーのブログ読んでやってんのに、これ以上時間を割く“他の娯楽”を勧めてくんのか!? オラァ!?」


 って思われるだけでしょうよ。

 なので、「オススメ作品」を書くのはもうやめようって思うのです。


理由2:私の「面白かった」には価値がない

 しかし、こんなご時世でも「面白かった作品をオススメする」活動を続けている人はまだまだたくさんいます。そういう人達の活動を否定したいワケじゃないし、私もそういう人達の活動を見て「自分もそうなりたい」と思ったから18年間も続けてきたのですが……


 そういう人達には「○○さんが面白いと思うなら信用が置ける」ってブランドが出来ているんですね。私は18年間やってきたけど、こうしたブランド力を築くことが出来ず、作品紹介系の記事はホンッッッッッッッッッットに読まれなかったんですね。「他の記事は楽しく読んでますが、ゲーム紹介の記事だけは読みません」と言われたことすらあります。


 それはまぁ、しょうがないと自分でも思っています。

 というのも……私の「面白い」のストライクゾーンはむちゃくちゃ狭い上に、偏っているんですよ。


 例えば、ゲームが分かりやすいです。

 「難しいゲームが嫌い」「3Dアクションというジャンルの面白さがイマイチ分からない」「一人称視点のゲームは3D酔いしてしまう」「オンライン対戦もオンライン協力プレイも(こんなクソ下手な俺なんかとマッチングして相手の時間を奪っていると思ってしまって)苦手」「シミュレーションゲームを遊ぶと勘所が悪くてムチャクチャになる」「RPGもドラクエやFF(スーファミ時代)より複雑なゲームは遊べない」


 好きなゲームは「パズルゲーム」で、例えば『ファイアーエムブレム』のようなSRPGは「パズル」だと思っているから楽しく遊べるのだけど。別に、得意でもないし、「アクションパズル」になるとアクション部分がクソ下手なので、「落ちモノパズルは全然楽しめません」。


 こんなヤツの言う「面白い」なんて信用できないでしょ?

 「○○さんが面白いと思うなら信用が置ける」となるには、ある程度その人と「面白いと思った作品が共通している」必要があると思うのですが……こんなに「苦手なジャンル」のある人の「面白い」なんて、誰にも共感されないんですよ。


 例えて言うなら……

 「肉」も「魚」も嫌いで毎日の主食がサッポロポテトな人間の書く「食べログ」、信用できるか?



 ゲームは「ある程度先に進めるだけの腕」が必要だから仕方ないとして、じゃあ「漫画」とか「アニメ」は問題ないと思われるかもですが……「漫画」はともかく「アニメ」も相当偏食家なんだと思っています。


 まず「好きな原作のアニメ化が楽しめない」―――

 これは昔書いた「いろんな作品を楽しみたい宇宙飛行士タイプ」と「一つの作品をとことんしゃぶりつくしたい天文学者タイプ」の話に通じていて、私は「いろんな作品を楽しみたい宇宙飛行士タイプ」だから、基本的に「同じ話を2回観ると時間を無駄にしている」ように思えるし。


 その上で厄介ヲタクなので、ちょっとでも自分の思っていた演出や芝居でないと「この人はちっとも原作の良さを分かっていない……!」とか思っちゃって楽しめないのです。アニメ→原作の順だと、「元はこうだったのか」という気づきがあるから普通に楽しめるのですが。


 更に、最近よく話題にしている「男女の恋愛の描写が地雷」というのもあります。すっっっごくデカイものを敵に回しそうな発言を今から書きますが、「他人の恋愛をエンタメとして楽しむ感覚が自分には分からない」んです。

 でも、それを言うと「オマエの好きなエロ漫画なんて他人のSEXをエンタメとして楽しむ娯楽じゃねえか」って話になるし、スポーツ漫画どころかスポーツ観戦だって「他人の努力の結晶をエンタメとして楽しんでいる娯楽」なんですけど……


 リアルにあまり興味のない分野は、フィクションの世界で描かれても共感できないってことなんかなぁ。グルメ漫画とかも、食にあまり興味がないので楽しめないし……でも、楽器やったことはないけどバンドアニメは好きだから、うーん……まぁ、個人の嗜好なんて一貫しないものではあるのですが。


理由3:鮮度のある内に作品を紹介できない

 「○○さんが面白いと思うなら信用できる」ってブランド力を持っている人達は、とにかくたくさんの作品に触れている“守備範囲の広さ”と、誰よりも早くその作品を知って実際に触れてみる"アンテナの高さ"と"行動の速さ"を持っています。

 それが実現できるのは、1日の時間の多くを「その趣味」に使えているからなんだと思います。例えばゲームだったら、発売日にしっかり遊んで、1週間以内にクリアするくらいの時間がないと、翌週また新しいゲームが出るので話題が埋もれていってしまいます。。


 私にはそれができません。そんなにゲームに時間をかけられないんです。
 「私はリア充だからゲームばっかり遊んでらんねえんだよ」って言いたいんじゃないですよ? 私は裏アカでエロ小説を書いているので、一日中エロ小説を書いて、エロ小説のことばかり考えて、エロ小説のアイディアを練らなければならないので、ゲームばっかり遊んでらんねえんですよ。

 創作活動をしている人間は、膨大な時間をそちらに回さなくちゃならんので……発売直後のゲームを誰より早くクリアして、買うか迷っている人に向けてレビューを書くみたいなことができません。
 昨年3月に発売した『ユニコーンオーバーロード』を発売日に買ったのにまだクリアできていないくらいですもんね……あんなに面白いゲームなのに……


 発売から1年半後くらいにようやくクリアして「○○面白かったよ、オススメだよ!」なんて記事を書いても、そのタイミングで「買うかどうかの参考にする」人なんていないと思うんですね。


 ゲーム以外の分野もそうです。

 漫画も読む時間がなくて、最新刊が出ても「とりあえず買っておいて未読が6~7冊になったらまとめて読む」みたいな摂取の仕方をしていますし。


 リアルタイムに追えているのはアニメくらいなんですが。

 逆に、アニメは「毎週やってる」からどのタイミングでオススメすればイイのか分からないんですよね……1話の段階で「面白いよ」って言っても、そこから急下降しちゃうものもあるので。「しっかり全話観てからオススメしよう」ってして、鮮度が落ちちゃうこともあるし。



では、これからどうするのか―――

 ということで、面白かった作品を「オススメする」のは辞めます。

 このブログでやっていきたいのは、「面白かった作品を紹介する」のではなく、「その作品がどうして面白いのかの分析と説明」です。


 実を言うと、旧ブログも後半書いているゲーム紹介記事は大体そんなカンジで、反応が良かった記事もそういう記事が多かったです。まだ記事は移行できていないのでリンクは貼りませんが、『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』や『クロノ・トリガー』の紹介記事とかね。

 向いている/向いていないで言うと、自分に向いているのはこっちの方向性だと思うんですね。


 分かりやすく言うと、

 (まだその作品を知らない人に向けて)「新作が面白いか/面白くないか」を紹介するのではなく。

 (もうその作品を熟知している人に向けて)「名作がどうして面白いのか」を説明する―――そういうスタンスで行こうと考えています。


 なので、今まで使ってきた「紹介記事」というカテゴリー分けはやめて。

 「レビュー記事」というカテゴリーを新設して、そこに入れていこうと思います。



 私、これからは「ゲームレビュー」の記事を書くんですね……

 旧ブログを始めたばかりの頃、「レビュー(批評)なんて大層なことはできない」から「この作品を楽しめるかも知れない人に向けて紹介する記事を書こう」と紹介記事と頑なに呼び続けていたんですが。

 今後は、そういう言い訳ができなくなり、「私は! ゲームレビューを書いている者です!!」と胸を張って言わなくちゃなりません。緊張する……!

コメント

  1. そんなふうに思ってたなんて知りませんでした。やまなしさんの記事に影響されて買って面白かった作品は、
    ・U-EXPLORE SPACE ADVENTURES
    ・Little Inferno
    ・デスマッチラブコメ
    ・タケシとヒロシ
    ・ヴォイニッチホテル
    あたりですね。

    やまなしさんの記事だけに影響されて楽しんだ作品はそんなになかったですが、やまなしさんの記事も含めて「あの人もこの人もお勧めするなら......」と手を出して楽しかったものはたくさんあります。ゆるキャン、グノーシア、RPGタイムなどです。特にやまなしさんがクリアしたかしていないかは、なんとなくアクションの難易度の参考にしています(ラビラビは「アクションパズル」とは言っても、そこまで反射神経を要求しないのだな......など)。

    「One shot」も色々な人から良い評判を聞くので気になっています。まだ遊んでいませんし、やまなしさんの記事も数行しか読んでいませんが、「とにかく面白い」「steam版がいい」ということだけ頭に入れてあって、いつかやりたいなと思っています。

    とはいえ、One shotが遊べていないように、紹介されたところで遊ぶ時間が足りないのは確かですね......。世界がコンテンツで溢れかえっていて脳が追いつきません。走りながら倍速で映像を見る桜井さんはすごい......。

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  2. おぉ……ありがとうございます。
    挙げてもらった作品達、ちょうど私が「面白かった作品をみんなにオススメしよう」と考えていた時期に書いたものですね(タケシとヒロシだけはもうちょっと後か)。素直にうれしいです。

    >特にやまなしさんがクリアしたかしていないかは、なんとなくアクションの難易度の参考にしています
    なるほど!これは参考にしたい意見ですね。
    一応「今月何のゲームを遊んでいたか」の近況報告の記事は続ける予定なので、「クリアできたかどうか」はそこで参考にしてもらえると幸いですし、クリア報告ってちゃんとした方がイイんだなと思いました。

    >「One shot」も色々な人から良い評判を聞くので気になっています。
    「オススメですよ!」と書くと、この記事に書いたことに思いっきり矛盾しちゃうんですけど(笑)オススメですよ!

    向こうの記事には挙げてもらった記事を移行し終えた人から返信していく予定なのでこちらで答えますが、記事の移行了解しました!あの記事は実際にプレイしてクリアして読み返すので構いませんから、長く読める環境にするために取っておきます!

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  3. 記事の移行の件、ありがとうございます!お手数おかけします。
    これでやらないといけない理由ができてしまった……笑

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  4. お伝えできてなかったので申し訳ないのですが、デスマッチラブコメは完全にこのブログの紹介記事きっかけで買いました

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    1. 『デスマッチラブコメ』の紹介記事は当時まったく反響がなくて、その年はその後にいろいろあって「もうゲームの紹介記事を書くのは辞めよう」としばらく封印することになるので、あまり良い思い出がなかったのですが。
      今、記事を確認したら、書いた数年後に「やまなしさんが面白いと言っていたので買いました!」というコメントが付いていました。

      「18年間で4件」じゃありませんでした!少なくとも「18年間で5件」でした!

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  5. サブスクって作品数が多すぎて好みがどうか分からないけどとりあえず見てみようって作品を選ぶのにも苦労してしまうので、ネットフリックスとアマプラのおススメ紹介記事はありがたかったです。
    特に「メメント」と「デビルマン」は自分で見ようと思わなかっただろう好きになれた作品です。

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    1. ありがとうございます、参考にします!
      「オススメ作品をオススメと書いても読んでもらえない」問題に対して、僕が解答の一つだと思っているのが仰られているネトフリやアマプラの記事で……

      例えば「メメントがオススメだよ!」という記事を単独で書いても読んでくれる人は少ない(そもそもクリックしてもらえない)けど、「アマプラで観れるオススメの映画を列挙するよ! その中の一つがメメントだよ」だと目に止めてもらえるんじゃないかと思っていて……なので、旧ブログの後半は「たくさんの作品の感想を1つの記事に列挙する」ものを意図的に増やしていました。

      新ブログでもそれを続けるかはまだ考え中ですが、参考にさせていただきます。

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  6. なんとやまなしさんがそんなことを感じていたとは……。
    自分は当ブログのまあまあの古参読者だと思いますが、やまなしさんのエントリはそのほぼが面白くて、今これと言って言えるタイトルを思い出せませんが、影響を受けて買ったゲームなどはあるんですよね。
    でも基本的には僕はやまなしさん自身のファンなので、スタンスの変更に変わりなく静かに応援させていただきますよ。
    って、これじゃマズいのかな笑 面白いよ!って声をあげられる話があればまたコメントさせていただきますね。

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    1. ありがとうございます!
      ウサゲさんは僕の中では「博識」で「フットワークが軽い」人という印象で尊敬をしているので、そのウサゲさんにそう仰ってもらえて嬉しいです。

      この記事を書いて、いろんな人から反応をもらって、そこから考えたことなんですが……恐らくブログに書くこと自体はそんなに変わらないんじゃないかと思うんです。旧ブログも後半はほぼそういうスタンスでしたし。
      多分、変わるのは「僕がどういう作品に触れるか」で、例えば「みんなが買うか迷ってそうな新作ゲーム」を発売日に買って突撃して、なるべく早くクリアして紹介記事を書こう―――みたいなことをしなくなる・無理して新作ゲームに突撃しなくなるんじゃないかと思います。

      なので、多分……みんながSwitch2のゲームの話題をしている時に、僕だけはドリームキャストのゲームをレビューしてる……みたいになっていると思います(笑)

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