漫画『バンドリ! ガールズバンドパーティ! イベントダイアリー』全4巻レビュー/スマホゲームの魅力をギュギュッと濃縮した神コミカライズ

 
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『バンドリ! ガールズバンドパーティ! イベントダイアリー』
・巻数:全4巻
・掲載:コミックブシロードWEB(※ 2023年12月にコミックグロウルに改称)
    2021年5月28日~2024年2月23日
・原作:Craft Egg・ブシロード/漫画:黒渕かしこ
・シリーズの位置づけ:スマホゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』のコミカライズ



【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
※ 苦手な人もいそうなNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:◎(しっかり作品内で解決はしてくれるけど)
・恥をかく&嘲笑シーン:◎(会話練習の回は共感性羞恥を感じる人いそう)
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×(メインキャラは女性のみ)
・白人酋長もの:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:○(紗夜日菜姉妹の真骨頂)
・BL要素:×
・男女の恋愛:×
・ラッキースケベ:△(水着イベントは収録されています!)
・セックスシーン:×



◇ 独自性:ゲームでは「想像」で補うしかなかった絵をしっかりと漫画で表現

 この作品は、2021年からブシロードが運営する漫画配信サイトにて連載されていた漫画です。

 2017年に始まったスマホ用ゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』のコミカライズ作品なのだけど、先に紹介した『The first page』が主に「バンドストーリーの1章」を(部分的に)漫画化したのに対して、こちらは「イベントストーリー」を漫画化したものです。


 とは言え、スマホ用ゲームを遊んでいない人には「バンドストーリー? イベントストーリー? 何がちがうの?」と分からないと思うので、そこから説明します。


<画像はiOS版『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』より引用>


 『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』のストーリーは、大きく分けて3種類あります。これはゲームを始めたばかりの人にも分かりにくい、「罠かよ」と言いたくなる仕様なのですが……

 まず、真ん中の「メインストーリー」は、ゲームを始めたばかりの頃に読まされる「チュートリアル」の延長にあるものです。全バンドが登場して、それぞれのキャラクターの説明をしてはくれるけど、人数が多いのでコレだけでは把握できませんし、話としてコレ単体で面白いものではありません。

 次に、左端の「バンドストーリー」は、各バンドの「始まり」や「転機」が描かれるストーリーです。特に「バンドストーリー1章」は、ゲームの最初から実装されている「各バンドの始まり」が描かれる話で、基本的にはここから読み始めることをオススメします。『The first page』が漫画化したのは、こちらね。

 最後に、右端の「イベントストーリー」が今回紹介する『イベントダイアリー』が漫画化した部分です。



<画像はiOS版『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』より引用

 このゲームは「10日周期」で開催されるイベントが切り替わり、「今回のイベントではこのキャラを使用するとボーナスが付くよ!」というキャラが決められています。Poppin'Partyのイベントだったら、Poppin'Partyのキャラを編成するとポイントがたくさん入って、ランキングに有利ってことですね。

 このイベントに付いてくるのが「イベントストーリー」で……



<画像はiOS版『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』より引用

 言ってしまえば、「10日に1本ペースで、新しいストーリーがどんどん追加されていく」んですね。漫画雑誌に連載されている漫画や、毎週放送されているテレビアニメのように、定期的に話が続いていくのです。
 これが「買い切りのアドベンチャーゲーム」とはちがうところで、このゲームに限らず「運営型のスマホ用ゲーム」が人気になった一因だと思います(※1)

(※1:最初期のスマホ用ゲームは「ストーリーなどあってないようなもの」でしたが、次第にストーリーが重視されていき、例えば『学園アイドルマスター』はシナリオライターに売れっ子ライトノベル作家を起用していたりするくらいです)



 「どうしてバンドリは売れたのか?」の理由の一つに、私はこのイベントストーリーの面白さがあったと思っています。
 テレビアニメ1期は盛大にコケました。でも、その後のスマホゲーム版が「カバー曲でも遊べるリズムゲーム」として受けて、バンドストーリー1章でキャラを知ってもらい、そのキャラ達の「その後」が描かれ続けるイベントストーリーでキャラ達が人気になっていったんだと思います。


 この『イベントダイアリー』に収録されているイベントストーリーは、その時期の「シーズン1(ゲームが始まって2年間)(香澄達が高校1年生の頃の話)」の中から選ばれたものです。
 流石に全部のイベントストーリーを漫画化することは出来ませんでしたが、なるべく“漫画映えする”話で、かつ初期メンバー25人が満遍なく登場するようにと考えられていると思います。


 「それならスマホゲーム版で読めば、わざわざ漫画版を買わなくて良くない?」という人もいるかも知れませんが……スマホゲーム版は「Live2Dの立ち絵」だけで表現されるので、ある程度「脳内で想像して補完」しなくちゃいけなかったんですね。



<画像はiOS版『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』より引用


<画像は『バンドリ! ガールズバンドパーティ! イベントダイアリー』1巻より引用>

 でも、漫画版ならそれをちゃんとビジュアルで見せてくれるのです。




<画像はiOS版『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』より引用


<画像は『バンドリ! ガールズバンドパーティ! イベントダイアリー』1巻より引用>

 それでいて、スマホゲーム版の1枚絵をストーリーの中に組み込んでくれたりもしていて、非常に原作愛を感じるコミカライズとなっています。


 スマホゲーム版を遊んでいる人にとっても嬉しいし、スマホゲーム版のような「立ち絵だけでストーリーが進行していくゲーム」が苦手な人にとっても読みやすいでしょう。
 「運営型のスマホゲームは終わりがないから手が出しづらい」という人も、シーズン1という一応の区切りがついているので、この『イベントダイアリー』だけ読んでみるというのも全然アリだと思います。




◇ 群像性:毎回主人公が変わる「群像劇」の魅力を、よくぞ漫画に落とし込んだ!

 それでは、収録されているイベントを1つ1つ見ていきましょう。


○  『SAKURA BLOOMING PARTY』
 開催時期:2017年3月24日~
 メインキャラ:市ヶ谷有咲(Poppin'Party)
 その他の登場キャラ:戸山香澄、花園たえ、牛込りみ、山吹沙綾(Poppin'Party)、弦巻こころ、奥沢美咲、北沢はぐみ(ハロー、ハッピーワールド)、若宮イヴ(Pastel*Palettes)

 このゲーム最初のイベントです。
 メインキャラ25人の中から「花女の1年生」9人だけで集まってお花見をしようと話すのだけど……この時期の有咲は「ポピパ以外には余所行きの猫を被っている」上に、リアリティラインがまるでちがうポピパとハロハピの話が交差するのが面白い神回でした。

 当時はまだイベントストーリーをイベント終了後に読み返せるのか分からなかったので、動画にして保存してたくらい当時は大笑いしたなぁ……


 声優さんの演技ありきの面白さだと思っていましたが、漫画にすると有咲の表情変化がすごくて新たな面白さを生んでいました。最高の素材をむちゃくちゃ丁寧に調理してくれました。


<画像は『バンドリ! ガールズバンドパーティ! イベントダイアリー』1巻より引用>



○  『ハッピーサマーバケーション』
 開催時期:2017年7月31日~
 メインキャラ:白金燐子(Roselia)
 その他の登場キャラ:宇田川あこ、今井リサ(Roselia)、上原ひまり(Afterglow)、丸山彩(Pastel*Palettes)

 このゲーム初の水着イベント。
 ひまりちゃんがAfterglowのみんなを海に誘って断れるくだりはカットされて、燐子さんメインの話に上手く再構成されていました。当時は「人混みが苦手」で「引っ込み思案」だった燐子さんが、好きなゲームとのコラボカフェに行きたくて、あこちゃん達といっしょに海に行く……けど、という話です。

 漫画映えする「水着イベント」というのもそうなんですけど、なかなかビジュアルがイメージできない「コラボカフェのメニュー」をしっかりと漫画化してくれたのが嬉しいです。「燐子さんの成長物語」としても、ここから描いてくれるのも分かっているチョイスですね。


<画像は『バンドリ! ガールズバンドパーティ! イベントダイアリー』1巻より引用>

 まだ『バンドリ』が自分のことをギャルゲーだと思っている時期なので、8年半の歴史の中で唯一といってイイ「おっぱいが大きい」ことを話題にするシーンもちゃんと漫画化されている! イイんだ!?



○  『涙のスマイルアンカー』
 開催時期:2017年10月20日~
 メインキャラ:北沢はぐみ(ハロー、ハッピーワールド)
 その他の登場キャラ:山吹沙綾、市ヶ谷有咲、戸山香澄、花園たえ、牛込りみ、(Poppin'Party)、丸山彩、若宮イヴ(Pastel*Palettes)、奥沢美咲(ハロー、ハッピーワールド)

 1年目の……というか、今のところ1回しか行われていない「運動会」イベント。
 運動神経抜群だけど「勝負ごと」が苦手というはぐみのバックボーンが描かれる話で、「25人全員が主人公で、全員に物語がある」このゲームを象徴するストーリーだと思っています。

 運動会イベントの漫画化なので「走る」シーンがビジュアルで見られるのも大きいんですが、「漫画ならではの心理描写」がされていて、はぐみが何を考えていたかが分かりやすくなっているのもムチャクチャいいところです。


<画像は『バンドリ! ガールズバンドパーティ! イベントダイアリー』1巻より引用>

 りみりんの出番である玉入れのシーンはカットかーと思ったら、カバー裏の4コマで補足されていました。こういうところも、本当に愛がある!



○  『いつか、届け、アタシの詩(ことば)』
 開催時期:2017年11月21日~
 メインキャラ:今井リサ(Roselia)
 その他の登場キャラ:青葉モカ、美竹蘭(Afterglow)、戸山香澄、市ヶ谷有咲(Poppin'Party)、弦巻こころ、奥沢美咲(ハロー、ハッピーワールド)

 リサ姉が「Rosliaのために何かできること」をやろうとして、作詞にチャレンジするイベントです。リサ姉の物語としては、この後の『約束』の話(劇場版アニメ『Episode of Roselia』の前編の表題にもなったシーズン2のイベント)につながる重要なイベストなんだけど……

 リサ姉が「各バンドの作詞担当」に話を聞きに行く展開は、「各バンドのちがい」を分かりやすく見せてくれるので、キャラやバンドの把握にすごく向いているんですね。リサ姉とモカちゃんのバイトコンビのやり取りも見れるし、1巻にこの話が選ばれたのも納得です。




<画像は『バンドリ! ガールズバンドパーティ! イベントダイアリー』1巻より引用>

 また、アクションシーンのあるイベストではないんですが、「ビジュアルがあると分かりやすくなる場面」が多くて漫画化してもらって嬉しい話でした。リサ姉がお菓子に例えるところとか、ハロハピの作詞風景とか。



○  『はじめての!? ウィンタースポーツ』
 開催時期:2018年2月10日~
 メインキャラ:大和麻弥(Pastel*Palettes)
 その他の登場キャラ:北沢はぐみ、奥沢美咲(ハロー、ハッピーワールド)、宇田川あこ(Roselia)、氷川日菜(Pastel*Palettes)

 運動が苦手な麻弥さんが、日菜ちゃんにムリヤリ雪山に連れてこられてスキーをさせられる話です。むちゃくちゃな会話で雪山に行くことが決まる冒頭部分はカットされて、麻弥さん中心に話がまとめられているカンジですね。

 雪遊び広場のシーンや、スキーのシーンがビジュアルで伝わるようになったのイイですね。この回、「苦手なことにチャレンジしている麻弥さん」の物語もそうだけど、「他人に伝わるように言葉を考えるはぐみ」の物語でもあって、『涙のスマイルアンカー』から続く話になっているんですよね。



<画像は『バンドリ! ガールズバンドパーティ! イベントダイアリー』2巻より引用>

 青空カレーのくだりは記憶にない展開だったので「漫画版オリジナル展開か?」と思ったのですが、イベント報酬キャラのエピソードだったみたい。この時期は私はゲームから離れていた時期なので、ミッシェルシールで引き換えて確認しました。

 ゲーム版だと悲壮感のある終わり方だったのを、漫画版だと「その場に麻弥さんがいる」ことで独自のオチをつけていたのがよかったです。



○  『新緑のラルゴ』
 開催時期:2018年3月31日~
 メインキャラ:白金燐子、氷川紗夜(Roselia)
 その他の登場キャラ:若宮イヴ(Pastel*Palettes)、奥沢美咲、松原花音(ハロー、ハッピーワールド)

 燐子さんが「自分を変えたい」と思って、紗夜さんに部活の見学に連れまわされる話です。「ハッピーサマーバケーション」から読むと「燐子さんが変わる」きっかけの話が連続になっているのがイイですね。
 紗夜さんの物語としては、漫画版だとこの後に収録されている「秋時雨に傘を」の後だからこその行動だろうと思うのだけど……この順番で読んでも、まぁ矛盾はしていないかな。

 元々このイベストが大好きなので漫画化してもらって嬉しかったし、部活動の動きはビジュアルが映えますね。


<画像は『バンドリ! ガールズバンドパーティ! イベントダイアリー』2巻より引用>

 ページ数は少ないけれど、テニスのシーンは「ボールを打つ時に目をつむっちゃう燐子さん」と「正確無比にどんなボールも返してくる紗夜さん」が両方描かれていてすごい。ゲームでは(Live2Dの都合上)なかった、二つ結びにしている燐子さんの髪型も可愛い……!




○  『もういちど ルミナス』
 開催時期:2018年6月20日~
 メインキャラ:白鷺千聖、丸山彩(Pastel*Palettes)
 その他の登場キャラ:氷川日菜、大和麻弥、若宮イヴ(Pastel*Palettes)、瀬田薫(ハロー、ハッピーワールド)

 イベントストーリーを漫画化する『イベントダイアリー』なのに、パスパレのバンドストーリー2章だけが選ばれました。なんで? もちろん「パスパレ2章」も大好きなんですが、コレがアリなら「ハロハピ2章」も漫画化して欲しかった……


 バンドストーリー2章は通常のイベントストーリーの2倍くらいボリュームがあるので、前後編の2話構成ではなく、前中後編の3話構成になっています。それでもこの話を60ページちょっとに収めるの、すごい構成力だと思いますよ。

 派手なアクションシーンのある回ではないのですが、漫画特有の演出で彩ちゃんや千聖さんの心理描写が分かりやすくなっていて、すんなりと入ってくるようになりました。


<画像は『バンドリ! ガールズバンドパーティ! イベントダイアリー』2巻より引用>

 この話、バンドストーリー1章からつながっている話なので『The first page』から続けて読めばイイ―――って言いたいところなんですが、あっちは一番イイところで尻切れトンボで終わっちゃうので、漫画でしか読んでいない人は繋がりがよく分かんなくなっちゃうんですよね……

 『イベントダイアリー』はどの回も尻切れトンボ感はなく、しっかりと話の結末まで描いてくれるものばかりなので、それがどれだけすごいことなのか……って思いますね。



○  『秋時雨に傘を』
 開催時期:2017年10月11日~
 メインキャラ:氷川紗夜(Roselia)、氷川日菜(Pastel*Palettes)
 その他の登場キャラ:湊友希那、今井リサ、宇田川あこ、白金燐子(Roselia)、宇田川巴(Afterglow)

 ここまで収録されていたストーリーは「実装順」に並んでいたのですが、ここに来て1年目の秋に戻りました。

 「氷川紗夜の物語」として、最も大事な「妹と向き合う」回です。
 とてつもなく重要な回の漫画化は相当プレッシャーがかかって大変だったと思うんですが、紗夜さんの心理描写がよく出来ていて、見事に成し遂げていたと思います。



<画像は『バンドリ! ガールズバンドパーティ! イベントダイアリー』2巻より引用>


 この氷川姉妹の話は、間違いなく初期『バンドリ』の人気を盛り上げた要素だと思うのですが……アニメ等で取り上げるのが難しく、アニメ映画『Episode of Roselia』ではすっとばされて「いつの間にか仲良くなっている」ように描かれていたんですね。
 ゲームをやらずにアニメだけ観ている勢には「何が起こってこのビフォアアフターになるの??」と思われていたでしょうし、漫画でその間を補足してもらうためにもこの回の漫画化はありがたい。

 本音を言うと……七夕の回から漫画化してほしかったけど、紗夜日菜だけにそこまで尺は割けないから仕方ないか。




○  『ふたつ星のアンサンブル』
 開催時期:2018年12月20日~
 メインキャラ:氷川紗夜(Roselia)、氷川日菜(Pastel*Palettes)
 その他の登場キャラ:羽沢つぐみ(Afterglow)、今井リサ(Roselia)、弦巻こころ(ハロー、ハッピーワールド)

 ということで、なんと! 
 紗夜日菜のイベントが2連発です!!!

 この姉妹は優遇されているとは思うけど、この回は実は『MyGO!!!!!』や『Ave Mujica』にもゆるーくつながっている話なので、漫画化してくれていたのは大正解だったとも思います。

 日菜ちゃん一人の羽丘天文部が廃部の危機になってしまって、どうにかして生徒会の人達に認めてもらうために頑張るんだけど……という話です。『秋時雨に傘を』を経た紗夜さんが、『新緑のラルゴ』などで見せた面倒見の良さを発揮するのが良いんですよね。


 また、ビジュアル面で分かりづらかったシーンに絵が入って分かりやすくなったところも多く、歴代の天文部部員が置いていったよく分からないものもちゃんと絵として描かれています。

 そして……

<画像は『バンドリ! ガールズバンドパーティ! イベントダイアリー』3巻より引用>

 ゲーム版だとただ「日菜ちゃんの台詞」だけだった幼少期の絵本のくだりに、シーズン2のクリスマスイベントで明らかになる「姉妹の幼少期の姿」の絵が入ったのも嬉しい! 
 イベストをただ漫画にするだけではない、「バンドリという作品の世界」をしっかり漫画にしようとしていて、最高のコミカライズだと思いました。



○  『The Whitest Day』
 開催時期:2019年2月28日~
 メインキャラ:白鷺千聖(Pastel*Palettes)、花園たえ(Poppin'Party)
 その他の登場キャラ:羽沢つぐみ(Afterglow)、弦巻こころ(ハロー、ハッピーワールド)、宇田川あこ(Roselia)

 2年目のホワイトデーイベント。
 と言っても「ホワイトデー当日」ではなく、予定が何もなくなってしまった千聖さんが、同じく予定が何もなかったおたえに振り回される話です。

 パスパレや後輩達からは「頼りになるお姉さん」的に扱われる千聖さんが、おたえ相手には食物連鎖の下の方に来るのが面白い関係性なんですよね。この2人の組み合わせは、1年目初期のうさぎが脱走する回から始まってテレビアニメ2期でも拾われたし。


<画像は『バンドリ! ガールズバンドパーティ! イベントダイアリー』3巻より引用>

 ゲーム版だとただ「コスプレコーナーがある!」とはしゃぐだけだったシーンなのに、漫画版だと千聖さんにうさ耳を付けるオリジナル要素を加えるなど、「ビジュアルがある」ことを活かした漫画版になっているのイイですね。

 何気にパスパレ2章の後に収録されているからこそ、「確実な道だけを進むのをやめた」千聖さんの行動に説得力が増しているという順番も良いですね。
 遊園地のシーンは、ハロハピ2章が収録されていないのが残念ですが……でも、ハロハピ2章を経て「活気を取り戻した遊園地」をビジュアルで見せてくれたのが嬉しかったです。



○  『夕影、鮮明になって』
 開催時期:2017年5月11日~
 メインキャラ:青葉モカ、美竹蘭(Afterglow
 その他の登場キャラ:上原ひまり、宇田川巴、羽沢つぐみ(Afterglow)

 ここに来て最初期のイベント!?
 まぁ、このイベントは「中学時代を回想する」話だからどのタイミングではさんでも矛盾はしないんだけど……

 中学2年生のころの彼女達が「どうしてAfterglowを結成したのか」が語られる話なのだけど、1巻に収録されているリサ姉が作詞に挑戦するイベント「いつか、届け、アタシの詩」の後に読むとまたちがう味わいが生まれているのがイイですね。

 コミックス3巻のカバー裏も、また泣けるんだ……



<画像は『バンドリ! ガールズバンドパーティ! イベントダイアリー』3巻より引用>

 それはそうと、「Afterglow」の名前が付けられるシーン。
 ゲーム版だと「つぐみちゃんが電子辞書を出している」描写があって、アニメ2期で回想した時には「紙の辞書」を開いている絵になってて、まぁ絵面的には紙の辞書の方がイイだろうしなぁ……と思っていたら。

 漫画版だと「つぐみちゃんは電子辞書を見ている」「蘭ちゃんは紙の辞書を見ている」と一人一人別の辞書を調べているとされていて、ゲーム版ともアニメ版も矛盾しない形にアレンジされていて唸りました。

 しかし、「候補に挙がっていた名前の一つ:Ultraviolet」はカットされてしまいましたね……まさか、その後のストーリーで拾われるだなんて誰も想像していなかったろうし仕方ないんだけど。




○  『夏にゆらめく水の国』
 開催時期:2018年8月20日~
 メインキャラ:湊友希那、氷川紗夜(Roselia)
 その他の登場キャラ:今井リサ、宇田川あこ、白金燐子(Roselia)

 2年目の水着イベント……は2つあるんだけど、もう片方が海に行く話なのに対して、こちらはプールに行く話です。しかも、まさかのRoselia5人でプールに行く回!!!


 Roseliaのバンドストーリー2章(こちらは劇場版アニメ『Episode of Roselia』前編でやったところ)での出来事を受けて、友希那さんが「音楽以外のこと」にも積極的に関わるようになったイベントの一つで……ゲーム版の頃から5人全員の魅力がしっかり見える神イベントだったのですが、そこに更にビジュアルを加えて魅力的にした神コミカライズ回だと思います!

 ボール遊びをする友希那さんや、大迫力のウォータースライダーもしっかり漫画化されている上に、ゲーム版では「いつの間にか行っていたことになっていた」激流下りやウェーブプールの描写もちゃんとあるという。


<画像は『バンドリ! ガールズバンドパーティ! イベントダイアリー』4巻より引用>




○  『有咲の悪くない休日』
 開催時期:2018年10月20日~
 メインキャラ:市ヶ谷有咲、牛込りみ(Poppin'Party)、今井リサ(Roselia)
 その他の登場キャラ:美竹蘭、上原ひまり(Afterglow)

 ようやく、私の推しのりみりんメインのイベント来た!
 「あまり喋ったことがない人と喋れない」有咲とりみりんが、コミュニケーション能力の塊のリサ姉から「人との喋り方」を教わるというストーリーです。もうこのあらすじだけで面白い。

 他バンドのキャラとあまり関わりのなかった有咲とりみりんだけど、コレ以降は「有咲と蘭ちゃん」「りみりんとひまりちゃん」はラインができるし、頼りになるようで結構抜けている人というリサ姉の化けの皮が剥がれていくし、キャラクターの関係性として転機になる回なんですね。

 この回はゲーム版だと「声優さんの本領発揮」みたいな回なので、ボイスのない漫画だとイマイチじゃないかと心配していたんですが……漫画特有の表現が多彩で、ゲーム版とはちがう魅力がまた出ていました。


<画像は『バンドリ! ガールズバンドパーティ! イベントダイアリー』4巻より引用>

 神改変だと思うのが、ひまりちゃんに「えいえいおー!」を言わせたところ。

 ひまりちゃん役をシミュレートしたリサ姉が「えいえいおー!」と言ったのに対して、有咲が「絶対本物のひまりちゃんはそんなハイテンションじゃないでしょ」とツッコんでいたところ―――「リサさんのひまりちゃんはほぼ正解だったな……」というオチがつく話なので。

 ひまりちゃんに「えいえいおー!」を言わせた方が分かりやすいんですよね。
 原作をそのまま漫画にするのではなく、原作の魅力をしっかり分かりやすくなるようにアレンジしたの最高すぎる。



○  『儚き夜の夢』
 開催時期:2019年1月21日~
 メインキャラ:奥沢美咲、瀬田薫(ハロー、ハッピーワールド)
 その他の登場キャラ:弦巻こころ、北沢はぐみ、松原花音(ハロー、ハッピーワールド)

 両親とケンカした美咲ちゃんが家に帰るに帰れず、薫さんの家に招かれて、最終的にハロハピ全員で薫さんの家にお泊まりする話です。
 この回……「美咲ちゃんの変化」を通して見ていくとグッとくる回なので、『The first page』から読んでいるとイイかも知れません。



<画像は『バンドリ! ガールズバンドパーティ! イベントダイアリー』4巻より引用>

 お泊まりのシーン、パジャマは原作のゲームからLive2Dがあるんだけど、髪型のアレンジは流石にLive2Dは作れず。ガチャで手に入る薫さんのイラストに描かれている程度なんだけど、それをちゃんと再現しているのイイですね!
 花音さんの二つ結び可愛い! このスクショには載っていないけど、はぐみの「おさる」もちゃんと描かれているぞ!



○  『君に伝うメッセージ!』
 開催時期:2019年3月8日~
 メインキャラ:戸山香澄(Poppin'Party)
 その他の登場キャラ:市ヶ谷有咲、牛込りみ、花園たえ、山吹沙綾(Poppin'Party)、氷川紗夜(Roselia)、弦巻こころ、奥沢美咲、北沢はぐみ(ハロー、ハッピーワールド)

 そして、シーズン1最後のイベントで最終回です。
 1年最後の「修了式」で、香澄が「1年生代表のことば」を喋る役に選ばれるという話……1年を締めくくる話なので、『イベントダイアリー』の最後に選ばれるのも当然、だと思うのですが……

 原作のゲームだと今までのイベントストーリーを振り返る側面があったんですが、『イベントダイアリー』では描けなかったイベントも多いし、尺も足りないし……で、その辺の要素は省かれていて、ゆり先輩に会いに行くシーンも全カットされているんですね。
 まぁ、ゆり先輩が出てくる話は『イベントダイアリー』には出てこないから、ここで突然出てこられても初見の人には感慨がないという理由は分かるんだけど……そのせいで「偶然を育てる」のくだりも特に説明なく出てきちゃっているのは少し残念かな。

 でも、「1年生代表のことば」のシーンは最後に相応しい、何回読んでもここで涙ぐんでしまうくらいイイんですよね……



<画像は『バンドリ! ガールズバンドパーティ! イベントダイアリー』4巻より引用>

 そして、修了式の前のシーン……
 このエピソードはガチャで手に入る香澄のエピソードから採用されていて、すごく良い再構成になっていました。このイベスト、主役は香澄だけど、有咲がいい働きをしていて「かす×あり」のイベントなんですよね……




 ということで、15エピソード―――
 バンドストーリー0章、1章を除いたシーズン1のイベントストーリー(+バンドストーリー2章は)全部で72個なので、漫画化してもらえたのは5分の1くらいなのですが。ちゃんと見たいものを見せてくれたコミカライズになっていたと思います。

 見てもらえれば分かると思うんですが、『バンドリ!ガールズバンドパーティ』はイベントごとに「メインとなるキャラクター」が変わり、それでいてイベストからイベストを経る中で「キャラクターが成長していく」様子が描かれるんですね。15エピソードの中で、ちゃんとそれを見せてくれているんです。


 5分の1くらいの採用率なので、『イベントダイアリー』だけを読んだら「成長までしっかり描いてもらったキャラ」「あまり出番の多くなかったキャラ」の格差はどうしても生まれてしまうもので……
 紗夜さん、燐子さん、リサ姉、はぐみあたりは結果的に優遇されていて、花音さんや巴とかはどうしても出番が少ない印象になっちゃうんですが……

 その「優遇されているように見えるキャラクター」も、例えば香澄とか友希那さんみたいな「センターのボーカル」じゃないんですよね。
 この作品の単行本の表紙ですらそうなんですが、こういう「広告塔」になるポジションはどうしたって各バンドのボーカルが多くなりがちです。でも、バンドはボーカルだけでは成り立たなくて、5人バンドなら5人全員のキャラクターに「人生」があって「物語」があるんだと描いているのが『バンドリ!』だと思うんですね。


 『バンドリ!』の顔は「戸山香澄」だったけど、『バンドリ!ガールズバンドパーティ』の主役は全バンドの全メンバー「25人全員が主役」だったのだと思います。それがちゃんと描けているこの作品は、やっぱり神コミカライズですよ!



◇ 総括

<画像は『バンドリ! ガールズバンドパーティ! イベントダイアリー』3巻より引用>

 『バンドリ!』という作品の魅力を、これ以上ない形で漫画に落とし込んだ神コミカライズでした。欲を言えばシーズン2以降の話も描いて欲しかったですが……それは言うまい。

 「スマホゲームのストーリーを8年半分なんて読めないしなぁ」とか、「アニメも作品数が多すぎて観る気が起きないなぁ」という人は、この『イベントダイアリー』だけ読むのでもイイと私は思います! これだけなら漫画4冊ですからね。

 それで「バンドリ面白いじゃん!」と思ってもらえたなら、「始まりの話」となる柏原版の漫画を読むとか、私が今せっせとアップしている「8年半分のストーリーを厳選してみんなで読む動画」もチェックしてもらえればイイですしね。
 

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