漫画『バンドリ! ガールズバンドパーティ! The first page』レビュー/ここから7つのバンドを知ってもらう入口に……なれてるかコレ?


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『バンドリ! ガールズバンドパーティ! The first page』
・巻数:全1巻
・掲載:ゲームの公式サイト
    2021年3月16日掲載
・作者・原作:Craft Egg・ブシロード/漫画:MAGNA
・シリーズの位置づけ:スマホゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』のコミカライズ



【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
※ 苦手な人もいそうなNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:◎(ギスドリシーンだけを集めたコミカライズと言える)
・恥をかく&嘲笑シーン:○(ライブで失敗するシーンはキツイ人にはキツイかも)
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×(メインキャラは女性のみ)
・白人酋長もの:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:○(収録されている分だと、あやちさがかなり)
・BL要素:×
・男女の恋愛:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×



◇ 概要
 この漫画は2021年3月16日、『BanG Dream!』のスマホゲーム『ガールズバンドパーティ!(通称:ガルパ)』の4周年の際に公式サイトに掲載された漫画です。


 同じものが各電子書籍サイトでも販売されていて、内容はいっしょです。有料の電子書籍だからといって追加ページとかはありません(最後に「続きはバンドリ!ガールズバンドパーティ!で」という文字が入っている等、まったく同じ画像を載せているワケではないみたいですが。)

 スマホゲーがいつまで続くか分からないので、ひょっとしたらスマホゲー終了とともに削除される可能性もあるなと思って、私はKindle版を購入していますが……公式サイトで読める間は、「ちょっと興味ある」くらいの人はまずは公式サイトで読むのがイイと思います。

 公式サイトだと縦にズラッと画像が並ぶので私はちょっと苦手なんですが、現代だと縦にスクロールして漫画を読むことに抵抗のない世代も多いでしょうしね。



 さて、この漫画の目的は―――
 ハッキリ言って、スマホゲーム版の販促です。

 2021年の時点でゲームには7つのバンドがいて、4年分という膨大なストーリーがあって、新規のユーザーが入りづらい」状況だったため、7つのバンドの「序盤のストーリー」を漫画にして分かりやすく伝えようとしたのでしょう。

 この時期は、「バンドストーリー3章」実装に合わせて「それまでのストーリーのダイジェスト動画」とかを作って公開していたし、新規ユーザー獲得のために頑張っていたんですよね……



 なので、描かれているのは「ゲームに実装されているストーリー」の一部分で、どの話も「続きはスマホゲーム版を遊んでね!」という形で終わります。

 作画をしている人が誰かは書かれていませんが、最後のクレジットを見るとMAGNAという漫画制作チームみたいです。もう更新されていませんが、Twitterのプロフィールによると「CyberAgent関連のゲームのコミカライズ」を担当されていたみたいなので、そのつながりでしょう(『ガルパ』を開発していたCraft EggはCyberAgentの子会社だった)。


 では、各バンドのストーリーの、どの辺りがコミカライズされているのか見ていきましょう。




◇ Poppin'Party編:爆速で進む沙綾編RTA

公式サイトで読む

 収録されているのは沙綾編です。

 テレビアニメ版で言えば、1期の6~8話。
 スマホゲーム版で言えば、ポピパのバンドストーリー0章の13~18話。
 柏原版の漫画で言えば、3巻の19話~4巻の29話。


 柏原版の漫画だと単行本1冊以上かけて描いていて、テレビアニメ版に足りなかったものを補ってくれたとレビューで絶賛したのだけど……こちらは、同じ話を40ページ弱に収めなくちゃならないため、ものすごく爆速で話が進んでいきます。

 そのため、香澄が沙綾の家に泊まって歌詞を書くくだりは全カット。
 沙綾の過去描写も全カット。
 ひなこ先輩の出番が全カットされてるため、夏希が自分から事情を説明してくれて。
 沙綾の弟と妹(純と紗南)の出番も全カットされたので、沙綾の行動の説得力が薄れてしまっているのが残念……

 これはこれで、逆にすごい。
 個人的には柏原版の漫画がとてつもない完成度だったから、無理してコレを読むくらいなら柏原版を読んで欲しいのだけど……既に他の媒体でストーリーを知っている人は、どれだけ枝葉を切ってもストーリーは成り立つのかに挑戦しているようで楽しめるかも。


 しかし、これだけ話を削っても「香澄観音」のくだりはテレビアニメ版でもスマホゲーム版でも柏原版でもこちらでも絶対やるの何なんだろう。




◇ Afterglow編:蘭モカ中心に構成され直した良アレンジ

公式サイトで読む

 収録されているのは、バンドストーリー1章の1話の冒頭部分と6~15話あたり。

 蘭ちゃんとお父さんの話から、それを救おうとするモカちゃん中心に構成され直していて、終わり方も「ここで区切ってもきっちりまとまっている」と思うのでかなりの良アレンジでお気に入りです。

 あくまで中心になっているのは蘭モカなので、ガルジャムのくだりや、ひまりちゃんが作ったおまもりのくだりもカットされているのだけど、「それがないと意味が変わっちゃう」ほどでもないので不満ではなかったです。

 蘭モカ以外の3人がちょっと不遇ではあるんだけど、Afterglowの関係性はしっかり描けていると思うし、「Afterglowってどんな人達なのかな?」って人にとっての入口になれていると思います。
 ポピパの話とちがって「テレビアニメ」や「他の漫画」があるわけじゃないから、「原作のゲームだと立ち絵しかなかったけど、こういう位置関係だったんだ」が分かるのも良かった。かなりオススメです。



◇ Pastel*Palettes編:キレイにまとまっているが、ラストが……

 収録されているのは、バンドストーリー1章の4~17話あたり。

 窮地に陥ったパスパレが再起する流れをこのページ数でまとめているのは、本当にすごいと思います。本筋と関係ないシーンを極限まで削った結果、日菜ちゃんの畜生っぷりも天才っぷりもかなりマイルドになっちゃっているとは思うけど……「パスパレの物語」としては、なくても構わないって判断も分からなくはないですもんね。

 Afterglowが蘭モカの話になっているのと同様に、こちらも結果的に彩ちゃんと千聖さんの話にまとまっていて、特に対比が分かりやすくなっているかなと思うのだけど……


 当たり前ですが、ゲームの話が出来た時には「このページの漫画になること」を想定していないので、むちゃくちゃ中途半端なところで話が終わってしまいます。「最後までやれ」とは言わないけど、この後のシーンが熱いのにーとは思わざるを得ません。

 それも含めて「先が気になるならゲーム版を遊んでね!」ということなのかも知れないけど、他のバンドの話は割と区切りのイイところまでやってくれたので……うーん、1バンド40ページ前後しか与えられない制約が厳しい。


 「ストーリーを読む動画」をプレミア公開した際にパスパレ1章も読んでいるので、この漫画の続きに時間を合わせて貼っておきます。「先が気になるよー」という人はどうぞ。





◇ Roselia編:『Episode of Roselia』でカットされた部分の漫画化

 収録されているのは、バンドストーリー1章の10~19話あたり。

 Roseliaのバンドストーリー1~2章は劇場版アニメ『Episode of Roselia』でやったところだからそっちを観ればイイじゃん―――と思うかも知れませんが、1章の後半は『Episode of Roselia』ではばっさりカットされた部分なので、『Episode of Roselia』を観た人でも「あの後こうなったの!?」という発見があると思います。

 友希那さんの心境の変化に焦点が当たっているため、漫画だと「紗夜・日菜姉妹の話」や衣装のくだりがカットされてしまっていますが、切り取り方としては間違っていないと思います。「紗夜・日菜姉妹の話」はメディアミックスだと拾いづらいんですよねぇ、『Episode of Roselia』でもしれっと済ませられていたし。

 個人的には、「リサ姉とモカちゃんが喋るシーン」がカットされてしまったのは残念でした。
 あそこは「同じシーンがAfterglowのバンドストーリーとRoseliaのバンドストーリーの両方に出てくる」「でも、視点となっているキャラがちがうのでそれぞれ何を思っているかは両方読まないと分からない」という、2つのバンドがシンクロしているシーンで……Afterglow編では残っているのに、Roselia編だけカットされているんですよ。


 とは言え、しっかりとクライマックスまで描いてくれているので満足度は高いです。




◇ ハロー、ハッピーワールド!編:元から漫画みたいな話だから、何より漫画映えする!

公式サイトで読む

 収録されているのは、バンドストーリー1章の4~10話あたり。

 美咲ちゃん視点で構成されているので花音さんや薫さんが勧誘されるくだりは描かれていないし、後半がないのであかりちゃんの出番もないし、はぐみの「戦いたくない」設定も説明されないんだけど……
 元々がぶっ飛んだ話なので、漫画にしてもらうことで「こころちゃんってこんな動きしてるんだ」とか「こころちゃん家って上からの角度だとこんななってるんだ」というビジュアルの補足ができてすごく楽しいです。


 元々のストーリーの前半部分で終わっちゃうので「山場」としては物足りない気もするんだけど、美咲ちゃんの意識が変わるまでをしっかり描いているので区切りはイイと思います。この後のあかりちゃん編を観たければスマホゲーム版をやってねってことなんでしょうしね。

 ド安定。
 「どれか1バンドだけ読んでみようかな」って悩んでいる人なら、まずこのコ達から読み始めるのをオススメします。





◇ Morfonica編:ここで終わるとキャラ全員カンジワルイままじゃない?

公式サイトで読む

 収録されているのは、バンドストーリー1章の2~12話あたり。

 歌詞作りのくだりとかカットされたところもなくはないけど、ましろちゃんが「バンド」に出会ってからを丁寧に描いていて上手くまとまっていると思います。思うんだけど……全20話の内12話までなので、「起承転結」の「承」で終わっちゃうんですね。

 ここで終わっちゃうと、キャラ全員カンジワルイまま終わっちゃってない??
 「先が気になるからゲームもやってみようかな」と思ってもらえるどころか、「なんかコイツら応援したくないな」となっちゃうんじゃないかな……

 クオリティは申し分ないんだけど、「この話のどこを切り取って40ページに収めるのか」のチョイスが上手くいっていたとは思えないなぁ……



◇ RAISE A SUILE編:モノローグ追加はコミカライズの正しい形

公式サイトで読む

 収録されているのはギター勧誘のあたりです。

 テレビアニメ版で言えば、3期の1~3話。
 スマホゲーム版で言えば、バンドストーリー1章の1~8話。

 テレビアニメ版→ スマホゲーム版に移行するにあたって「スマホゲーム版の立ち絵だと映えないシーン」はカットされていて(例えば、学校~商店街を逃げ回るシーンや、Garaxyからチュチュのマンションまで走ろうとするシーン)、漫画版もそれに準じているため「漫画で観たかったシーン」が描かれていないのは残念なんですが……

 テレビアニメ版でもスマホゲーム版でもセリフでは説明されなかった「六花はRASのことをどう思っていたのか」がモノローグで補足されていて、コミカライズとして正しい形になっているんじゃないかと思います。
 「アニメやゲームをそのまま漫画にする」のではなく、「アニメやゲームが苦手な部分をちゃんと補足する」という。

 ただ、元のテレビアニメ3期自体が「テレビアニメ2期の続き」のため、話の途中からはなじまって途中で終わる感は否めないんですけどね……




◇ 総括
 「1バンドあたり40ページ前後」の尺しか与えられていないせいで、大事なシーンがカットされていたり、淡泊になっちゃっていたりするところも多くて……倍とは言わないけど、60ページくらいあればなぁと思わざるを得ないのですが。
 無料でも読める販促漫画としては、40ページ×7バンドという大ボリュームで文句を言っちゃいけませんね……

 そう、無料作品なんですよ。
 「いつまで無料で読めるか分からない」から今のうちに読んでおきましょうってのは大前提で。


 「ハロー、ハッピーワールド編」、「Afterglow編」、「Roselia編」辺りは原作の魅力をこの短いページ数にまとめていて、話としても面白いと思うので、「バンドリをまったく知らない人」にもオススメできます。

 「RAISE A SUILEN編」もまずまず。
 「Pastel*Palettes編」や「Morfonica編」は話が途中で終わるので、それを覚悟して読む分にはクオリティが高いと思います。

 「Poppin'Party編」は柏原先生のコミカライズが神だったので、そっち読んでほしい!


 この『The first page』が公開されたのは2021年の3月で、それ以降の更新はないのですが……この年の5月から、ゲームのイベントストーリーを漫画化した『イベントダイアリー』の連載が始まるんですよね。
 MorfonicaとRAISE A SUILENはいませんが、『The first page』で「始まりの物語」が描かれた後の、彼女達の日常が描かれる―――

 ということで、次の漫画レビューはその『イベントダイアリー』です。
 これで、一応の「連続してバンドリの漫画レビューを書く」企画は一区切りの予定です。

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