2024年の埼玉西武ライオンズは、どうしてあそこまで弱かったのか



  毎年プロ野球のシーズンが終わるたびに、西武ライオンズの1年間を総括する記事を記録として書いておこうと考えているのですが……
 2024年は9月頃からトンデモなく忙しくて、「時間が出来たら書こう」と後回しにして、後回しにして、忙しいピークは一向に収まらずに、気付いたら2025年のシーズンが始まりそうな時期になってしまいました。

 まだ忙しいのは変わりませんが、なんとか書きます!
 書かないと、新しい気持ちで2025年シーズンを迎えられないので!


 2024年の埼玉西武ライオンズは恐ろしく弱かったです
 断トツ最下位だったことはもちろん、交流戦前の5月末で松井稼頭央監督が強制休養させられるほどの成績で、渡辺久信監督代行に代わってからの交流戦も最下位で―――8月以降ケガ人が戻ってきたので多少盛り返しましたが、それまではありとあらゆるプロ野球のワースト記録を塗り替えるんじゃないかというくらいに弱かったです。


<最終成績>
 ※ プロ野球ワースト記録は2リーグ制になった1950年以降の記録
 ※ ドラフト制以降の記録はドラフト実施翌年の1966年以降の記録

・負け数 91敗(49勝91敗3分け)
 ※ プロ野球ワースト記録 103敗(1961年近鉄)
 ※ ドラフト制以降の記録 97敗(2005年楽天)
・勝率 .350
 ※ プロ野球ワースト記録 .238(1955年大洋)
 ※ ドラフト制以降の記録 .264(1970年ヤクルト)
・首位とのゲーム差 42ゲーム差
 ※ プロ野球ワースト記録 61.5ゲーム(1955年セ・巨人と大洋)
 ※ ドラフト制以降の記録 51.5ゲーム(2005年パ・ソフトバンクと楽天)
・チーム打率 .212 パ・リーグワースト、ドラフト制以降ワースト
 ※ プロ野球ワースト記録 .201(1962年国鉄)
 ※ ドラフト制以降の記録 .228(2011年中日)
・ホームラン数 60本
 ※ プロ野球ワースト記録 27本(1954年近鉄)
 ※ ドラフト制以降の記録 46本(2011年ロッテ)
・総得点 350点(143試合) ドラフト制以降ワースト
 ※ プロ野球ワースト記録 319点(1951年近鉄・98試合)
 ※ ドラフト制以降の記録 377点(1973年ヤクルト・130試合)

 個人で調べた範囲なので、抜けているデータとかがあったら優しく教えてくださると助かります……


 7月くらいの時点では「100敗」でかつ「勝率2割台」、「チーム打率も1割台」を覚悟していたので。終わってみたらそこまで大騒ぎするほどじゃないと思っていたんですが、こう見ると大騒ぎするくらいヒドイなと思いました。特に「チーム打率」と「総得点」で、ドラフト制以降ワーストを記録しているのが深刻ですね。


 ちなみに、どうして「ドラフト以前」と「ドラフト以後」で分けているのかというと……1965年に日本のプロ野球が「ドラフト制」を導入した理由の一つとして、「戦力を均衡させる」ことがあったからです。
 プロ野球のワースト記録を見ていくと分かるのですが、(戦中・戦前や1リーグ制の時代はもちろん未整備だったとして)ドラフト以前の記録は「強すぎるチーム」と「弱すぎるチーム」に分かれてしまっていたんですね。

 年間130~140試合とかするプロ野球で戦力差がつきすぎると、7月頃にはもう優勝が決まってしまって、夏休み以降が消化試合になる可能性もあります。それはマズイ。
 なので、プロ野球は「戦力均衡」させるために、「有望な新人が均等に配分されるドラフト制度」や「FA資格を取るまでは自由に移籍できない」「主力選手がFA移籍で出ていった場合は人的補償でプロテクト外の選手を1人獲得できる」といったシステムがあるんですね。


 そう、プロ野球は本来「戦力を均衡」させなくちゃいけないんです。
 「圧倒的な優勝!」みたいなものをファンは望むのかも知れませんが、それは興行的にはマズくて、客が入らないチームが潰れていって、最終的にはセ・パで1チームずつしかないみたいなことになりかねません。

 同様に「100敗」でかつ「勝率2割台」、「チーム打率も1割台」みたいなチームが出来てしまうのもマズイです。それはそのチームが球団としてただ恥ずかしいだけでなくて、NPBというゲームデザインの失敗を意味しているんです。端的に言うと「クソゲー」なんです。
 『Splatoon』で毎回「80%:20%」みたいな成績だったら勝った方も負けた方も盛り上がらずにじきにやめてしまうみたいなカンジで、今のNPBは「何このクソゲー、もうやめた」と言われる一歩手前で、なんとか踏みとどまっているに過ぎない状況です。


 ということで、2024年のライオンズがどうしてこんなに弱かったのかを語らなくちゃならないのです。それは、言ってしまえば「NPBというゲームデザイン」のレビューになるのですから。




◇ 碌な戦力を揃えられなかったフロントの責任か?
 ここからはまたライオンズに話を戻します。

 チームが負け続けると、ファンはその「理由」を誰かのせいにして「ソイツが元凶だ」「ソイツが辞めれば事態は全部好転するんだ」と責任を押しつけるようになります。


 打てなかった選手、打たれた投手が悪いんだ―――
 しかし、そういった選手を試合に出さなくなっても勝てません。
 監督の選手起用が悪いんだ、マトモな監督だったら勝てたんだ―――
 しかし、松井稼頭央監督がやめた(休養した)後も勝てません。
 こんな選手を集めたGMに責任があるんだ。渡辺久信GMがやめれば勝てるんだ―――
 そして、渡辺GMもシーズン後に退任しました。
 GMが辞めても戦力を補強しない!悪いのは球団社長だ―――
 ……
 もう球団が身売りしてしまえ―――
 イソップ童話か?


 こんなカンジで、どんどんどんどん「偉い人」に責任を取らせようとする展開……野球ファンに限らず、インターネットではありとあらゆる分野でよく見ます。

 私が大昔ジャンプ感想サイトをやっていた頃は、自分の好きな作品が打ち切られた人が「編集部が悪い」「編集長が悪い」「出版社の社長が悪い」とどんどん上を叩き始めるのをよく目にしていましたし。
 ゲームに関しても、自分の好きな作品があまり売れなかった時に「プロデューサーが悪い」「社長が悪い」とどんどん上を叩き始めるのをよく目にします。


 やはりインターネット民は愚か。
 人類は滅ぼさなくてはならない(究極の責任押しつけ)。




 しかし、2024年のライオンズが「こんな選手を集めたフロントに責任があるんだ」と言われるようなチームだったのかは甚だ疑問なのです。

 例えば、去年の開幕前のプロ野球解説者の順位予想を見てみると……流石に1位と予想している人は1人しかいませんでしたが、最下位と予想している人も1人しかいませんでした。大半が「3位」か「4位」と予想していたのです。


 何故なら、オープン戦の時点では「アギラー」と「コルデロ」はまぁまぁ評価されていたから。

 2022年オフに森友哉がFAでオリックスに移籍、2023年オフに山川穂高がFAでソフトバンクに移籍した穴を埋めるために補強された「新外国人2人」を、野球解説者は高く評価していたし、西武ファンも開幕後1週間くらいまでは「いいの獲った!」って言っていたんですよ。


<オープン戦・成績>
 ○ ヘスス・アギラー(打席数40)
  打率 .289 OPS .746
 ○ フランチー・コルデロ(打席数43)
  打率 .190 OPS .590

 「アギラーはともかく、コルデロはヤバくない?」と思われるかもですが、去年のオープン戦でホームランを打ったライオンズの選手は「アギラー」「コルデロ」「中村剛也」「渡部健人」「元山飛優」の5人しかいなくて、コルデロは唯一2本ホームランを打っていた選手なので期待されていたのも分かります。


<レギュラーシーズン・成績>
 ○ ヘスス・アギラー(打席数124)
  打率 .204 OPS .575
 ○ フランチー・コルデロ(打席数73)
  打率 .129 OPS .351

 開幕戦のオーダーだと、アギラーは「4番・ファースト」、コルデロは「7番・レフト」でしたが……コルデロは「守備がヤバすぎて打てないのを我慢して使うのも限界」と4月中に2軍に落ち、アギラーは明らかに足を痛めているのが分かる状況で出続けた結果5月8日に2軍に落ちてそのまま帰国して手術を受けたようで帰ってきませんでした。

 日本に来て、キャンプを経て、日本の球団相手のオープン戦でもそれなりに活躍して、野球解説者やファンにも「まぁまぁイケる」と言われていた選手を―――日本に来る前に見極めるのなんて無理ゲーじゃない?



 そもそも、今の日本のプロ野球で「アメリカから助っ人外国人を獲得したら、その選手が即戦力で大活躍してくれてホームラン王・打点王を獲りました―――」みたいなのって難しいと思うんですね。「投手」はともかく、「打者」の即戦力なんてホント難しい。

 2025年3月19日現在、ドルと円のレートは「149.51 円」だそうです。
 これが、アベノミクス前の2010年辺りだとドルと円のレートは「80~90円台」でした。

 アメリカで活躍している選手を日本で同じ「年俸3億円」で雇おうとしても、2010年辺りの1ドル90円で想定すると「333万ドル」の選手が獲れるのですが、1ドル150円の現在では「約200万ドル」の選手しか獲れません。

 同じ年俸でも、「円安」のせいで獲ってこられる選手の「格」が落ちてしまっているんですね。


 更に、2023年のWBCで日本代表は世界一になりました。
 「ドリームチーム」というほどではありませんでしたが、しっかりメジャーリーガーが出ているチーム相手でも抑えられたくらい、今の日本のプロ野球の「投手力」は高いと思うんですね。
 今の為替ルートだと、「なかなかメジャーリーグでは出番のない」くすぶっている選手くらいしか日本に来てくれないのに、そういう選手がいきなり日本の投手を打てるとは思えません。ボールもなんか飛ばねえし!


 詳しくは後述しますが、ライオンズはFA制度が導入された1993年オフ以降、定期的に主力が流出してしまうチームになってしまいました。
 「それでも湯水のように新しい選手が湧いてくる」おかげで長くAクラスに留まっていた―――みたいに他球団のファンからは思われているかもですが、実はライオンズは「主力の流出」を「助っ人外国人の打者」で補ってきたチームなんですね。


・ドミンゴ・マルティネス(1997~1998年)
・トニー・フェルナンデス(2000年)
・アレックス・カブレラ(2001~2007年)
・スコット・マクレーン(2001~2003年、2004年)
・ホセ・フェルナンデス(2004~2005年、2010~2011年)
・クレイグ・ブラゼル(2008年)
・エステバン・ヘルマン(2012~2013年)
・エルネスト・メヒア(2014~2021年)

 しかし、2014年に獲得してホームラン王も獲ったメヒアを最後に、長く活躍してくれた助っ人外国人野手はいません。
 近年ではスパンジェンバーグ(2020~2021年)が唯一2年目も契約しましたが、2年目はイマイチでしたし。ライオンズが「切った」と見られても仕方ない選手もいましたが、ライオンズと契約が切れた後、日本の他のプロ野球チームに移籍して活躍したという選手も特にいませんでした。


 実は「FAで主力が出ていってしまっている」以上にライオンズを窮地に追い込んでいるのがコレなんですね。
 90年代~00年代、10年代前半までは「当たり外国人野手」を引いてきて、その選手の活躍で主力流出の穴を埋められていたのが……急激な円安と、日本の「投高打低」のせいで埋められなくなってしまった。


 この傾向はライオンズだけの話じゃなくて、各チームの「助っ人外国人野手」の枠の使い方も、かつての「即戦力の4番候補をアメリカのマイナーリーグから取ってくる」じゃなくなっていて……
 例えば、有望な若手選手を早めに獲得して、日本の野球にアジャストできるように育てていくとか。既に他球団で活躍して、日本のプロ野球に慣れている選手を獲得するとか。そういう方向に進んでいると思います。

 ということで、2025年の埼玉西武ライオンズは、オリックスが育成から育てていた「レアンドロ・セデーニョ」を4番候補として獲得したんですね。既に日本に慣れている選手なら、「アギラー」や「コルデロ」みたいに蓋を開けてみたら大崩れしないだろうと。

 そしたら、開幕前に怪我で離脱しちゃったんですけどね!



◇ 「ほぼ二軍」選手で戦った異常事態
 「戦力」として期待していたのに「戦力」にならなかったのは、助っ人外国人野手だけではありません。

 4番候補として期待されていた「アギラー」が早々に離脱したのは右足首の故障からでしたし、2024年の西武ライオンズはとにかく「怪我」が多かったんです。


 まず、オープン戦で.333の打率を記録したタイシンガーブランドン大河は開幕サードスタメンの座を勝ち取るも、開幕4戦目となる4月2日の試合前に肉離れで離脱。8月13日に1軍復帰するも、その試合で左手を痛めてまた離脱……「怪我さえなければ」とファンに嘆かれながら、戦力外通告→ 現役引退となりました。

 ブランドンの次にサードに定着した佐藤龍世はチームの主軸として活躍するも、5月6日にデッドボールを受けて以降は精細を欠き、しばらくは痛みをこらえながらプレイしていましたが6月12日の試合途中で交代して左有鈎骨骨折が発覚します(デッドボールを受けた場所と骨折をした場所は直接は関係がなかったみたい)。
 8月12日に復帰して以降は頼れるバッターとして貢献し、シーズン終盤は4番に座っていたので……彼が1年フルに活躍できていれば、あそこまで絶望的な弱さにもならなかったろうなと思います。


 前述したようにファーストの「アギラー」は5月8日にいなくなり、サードの「ブランドン」と「佐藤龍世」もいなくなったため……ファーストとサードは若手を使ったり、他のポジションの選手で埋めたりする時期が続きました。

 しかし、そうした選手達も思ったようにいきません。

 2020年のドラフト1位だった渡部健人は5月3日に1軍昇格するも、打率.042と大不振で5月15日にまた2軍落ち。その後も2軍では打つのに1軍に上がっても打てない日々で、最終成績は打率.030でした。

 「3年計画」で1軍の主力選手になる予定だった村田怜音は3軍→2軍と無双していたため、5月11日に1軍昇格して期待されるも、5月15日の試合の守備でネットに激突して左膝前十字靭帯損傷で登録抹消。シーズンの残り時間をリハビリに費やすこととなってしまいました。

 山村崇嘉は開幕2軍だったものの4月中に1軍に上がり、まだこの頃はアギラーがいたので本来は内野手なのにライトで起用され続け、4月21日に「右太もも裏肉離れ」で離脱。
 6月25日に復帰してからは内野手で使われて、4番として起用される時期もありましたが、打率.219、ホームラン2本とスタメンを勝ち取るほどではなく9月3日に2軍に落ちました。

 本来はショート・セカンドの選手だと思うのですが、怪我人だらけで児玉亮涼もサードで起用されることが多かったです(ショートは4試合、セカンド2試合、サード24試合)。しかし、7月6日の試合中に右ハムストリングの肉離れで登録抹消、それ以降は1軍に戻れませんでした。




 2軍で活躍している若手野手を積極的に1軍で出場させるも、「不振」か「怪我」で定着できず……という一方。ベテランはどうかというと、ベテランも「怪我」で離脱していきます。

 「不動のセカンド」として長くチームを引っ張ってきた外崎修汰は、あちこち体を痛めていたのか開幕直後から深刻な打撃不振に苦しみ、6月4日の試合中に左太もも裏を痛めて途中交代して2軍落ち。6月25日に1軍に戻るも、打撃は上向きませんでした。
 2025年シーズンは守備の負担を減らすためか、セカンド→ サードへとコンバートされ、オープン戦は絶好調の打撃を見せているので、体の状態が本当によくなかったんだなぁと思わされますね。

 大ベテラン:中村剛也は「結局今年も4番は中村剛也になるのか」と4番を務めた時期もあったのですが、ランナーがいる状態で打てなかったり、渡辺監督代行になってからファーストの守備につくようになって更に打てなくなったりした後、右手のコンディション不良のために7月11日に登録抹消されました。
 元々中村選手は「活躍する年」と「活躍しない年」が隔年で訪れると言われていて、2024年は「活躍しない年」だったんですよね……2025年は「活躍する年」になってほしい……

 栗山巧は開幕後しばらくは絶不調で2軍にも落ちて、その2軍でもしばらく苦しんでいましたが、5月後半あたりで持ち直してきて6月4日に1軍復帰、主に代打要員として活躍……しますが、7月17日に新型コロナの感染で離脱してしまいました。復帰後はまた頼れる代打として活躍してくれましたが、離脱期間が本当に惜しかった……



 こんなカンジでシーズン通して「怪我人」が本当に多く、「なんとかスタメン9人を集めて試合をする」のがやっとの状況でした。交流戦最後のこの試合とか、流石にグロすぎる。

1番レフト:奥村 打率.211
2番セカンド:滝澤 打率.192
3番センター:長谷川 打率.163
4番ファースト:元山 打率.114
5番ライト:岸 打率.244
6番DH:鈴木 打率.227
7番ショート:源田 打率.229
8番キャッチャー:古賀 打率.224
9番サード:児玉 打率.176

 オープン戦じゃなくて、普通に6月後半の1軍の試合ですからね?
 確かこの前日だっけかは「スタメン全員のホームラン数を全部足しても1本」とか言われていましたが、しょうがないんですよ。源田と古賀以外はレギュラーをつかんだのではなく、「レギュラーだった選手が怪我などでいなくなったから2軍から上げてきた選手」ばかりだったんですから……



 「野手」はこんな風に野戦病院状態だったわけですが、
 「投手」はどうだったかというと、「投手」も実はかなりヤバかったです。

 まず、3年連続2桁勝利をあげていたエース:高橋光成が2月のキャンプ序盤で怪我、調整が遅れて開幕ローテーションを外れます。メジャーリーグ移籍に向けてポスティングを要求していたため、成績を残そうとかなり焦って上がってきたのか、4月14日に1軍初登板するも本来の投球とは程遠い状況でした。
 本来なら2軍調整となってもおかしくない状態でしたが、後述するように「ローテーションを埋めるピッチャーがいない」状態だったため起用され続け開幕8連敗、6月24日にようやく2軍落ちして調整し直しとなりました。
 8月12日に1軍復帰した後は、内容はそこまで悪くなかったと思うのですが、打線の援護もなくて9月3日には開幕11連敗を記録、左脇腹の違和感で9月11日に登録抹消となりました。

 中継ぎ投手陣も開幕直後にプランが崩れました。
 山川穂高の人的補償でやってきた甲斐野央は、勝ちパターンの8回を任されていましたが、4月12日で初失点すると、その後も精細を欠いて、4月24日には右ひじの違和感で登録抹消となりました。
 1軍復帰は8月24日と長引いてしまい、その間ずっと「甲斐野の穴」を埋めるためにチームは四苦八苦することとなります。

 その白羽の矢が立ったのが、先発投手としてローテーションを守っていた松本航でした。残った中継ぎ陣では甲斐野の穴を埋められずに負け星を重ねていたため、先発投手の中から「経験の浅い武内や隅田ではなく」「中継ぎがイヤで直訴して先発に転向した平良でもなく」「中継ぎ経験のある投手」という消去法で松本が選ばれたみたいで、5月7日から中継ぎ投手に転向させられたのですが……
 当然「先発ローテーションに1つ穴が空いた」上に、本人の性格的にも能力的にもあまり中継ぎ適正があったとは思えず、救援失敗を重ねて8月11日に2軍落ちとなります。その後、先発ローテーションの穴を埋めていた青山美夏人が登録抹消した穴を埋める形で再び先発登板させられますがこちらでも振るわず……
 チーム事情で振り回され続け、貴重な戦力を無駄に使ってしまったみたいなシーズンになってしまいました。

 2023年は先発ローテーションとして11勝をあげた平良海馬も、開幕からずっと状態があまり良くなさそうで、5月9日に登録抹消となりました。結果的に、松本と平良の2人が同時期にローテーションからいなくなったため、明らかに不調だった高橋光成を使い続けるしかなくなっちゃったんですね。
 その後、平良は8月8日に1軍復帰、首脳陣と話し合って中継ぎ投手として起用されてチームの勝利に貢献しました。


 平良海馬が8月8日に、佐藤龍世が8月12日に、甲斐野央が8月24日に1軍復帰して以降、実は終盤はかなり持ち直しているんですね。

・3~4月 8勝18敗 勝率.308
・5月 9勝14敗 勝率.391
・6月 6勝15敗1分 勝率.286
・7月 5勝15敗1分け 勝率.250
・8月 9勝17敗 勝率.346
・9~10月 12勝12敗1分 勝率.500

 「ベストメンバーが揃えばそこまで悪いチームではない」けど、大事な選手が「怪我」や「不調」で外れ、その穴を埋めようとした選手も「怪我」や「不調」で外れ……という後手後手+悪循環が続いたが故の断トツ最下位だったと思います。

 その選手層の薄さこそが問題だろうと言われたら言い返せませんが……
 ここまで「怪我」が多かったのはフロントとしてはどうしようもないし、「新型コロナ」や「デッドボール」とかは仕方ないとしても、筋肉系のトラブルは管理の問題じゃないかとも思いますし。

 強いて言うなら、「体がボロボロのベテラン」と「1年通して戦える体がまだできていない若手」の間の「最も体が出来上がって安定している世代」がレギュラーに定着できなかったのが問題だったのかな……



◇ 松井稼頭央監督の休養は妥当だった?

 松井稼頭央監督は2023年からライオンズの監督となり、2年目のシーズン序盤である5月末で休養に入ったため……1年2ヶ月の短期政権となりました。

 休養は本人の意思ではなくフロントから言い渡されたものだったため、「もうちょっと長い目で見てやれなかったのか」「新庄監督の日本ハムも3年目で開花したぞ」「この戦力なら誰が監督でも変わらない」と松井監督継続を望む声もあれば、「流石に選手起用が謎過ぎる」「ようやく代わってくれた」と松井監督の事実上の更迭を喜ぶ声もありました。


 個人的な意見を言わせてもらうと……
 「そもそも監督って何やってる仕事なの?」です。

 例えば、松井監督の前の辻監督時代は、投手交代を投手コーチに一任していると思われる場面がありましたし。松井監督の後に入った渡辺久信監督代行は、「打順は俺のアイディアではない」と言っていましたし。
 今のプロ野球はデータとかが複雑になっていて、そこのポジションだけ見ている専任のコーチの意見がかなり重視されていて、監督の役割は「それらを承認してハンコを押すだけ」かもと思ったりもします。

 だから、私は松井稼頭央監督の良し悪しってよく分かりませんし、それを語る気はないです。


 ただ、一つ気になるのは「松井稼頭央監督が成立するまでの経緯」です。

 松井稼頭央は1993年のドラフト3位で西武ライオンズに入団。
 1995年のシーズン途中から1軍に定着、ショートのレギュラーとして長く活躍をします。

 秋山幸二・清原和博らの「ライオンズ黄金期」のメンバーが次々と抜けていく中、新しく出てきた「ライオンズの顔」で、プレイに華があったスター選手だったんですね。イケメンだし。

 2003年のオフにFA権を行使して、メジャーリーグに挑戦―――メッツ、ロッキーズ、アストロズとチームを渡って活躍しました。
 2011年に日本球界に復帰、選んだチームは東北楽天ゴールデンイーグルスでした。恐らくですが、このタイミングではライオンズは声をかけていなかったと思います(セカンドには片岡、ショートには中島という不動のレギュラーがいたので)。

 その後、成績も下降して、引退もちらつく年齢になった2017年のオフ―――イーグルスからのコーチ就任打診を断り、ライオンズからの「コーチ兼任選手」のオファーを受けます。
 ライオンズは「他球団に渡った功労者を、引退間近になった年だけ引き取る」ことがよくあって、工藤公康(2010年)や、松坂大輔(2020~2021年)なども最終所属はライオンズでした。それは恐らく、「将来はライオンズに入閣してくれ」って意味だと思うのですが……

 ライオンズに復帰した2018年、松井稼頭央は打率.154と精彩を欠いて、流石にこの年に現役引退します。そのまま2019~2021年はライオンズの2軍監督を務め、2022年は辻監督の下の1軍ヘッドコーチになった後、2023年からライオンズの1軍監督になりました。
 かつてのスター選手に監督になってほしくて、引退間近の選手を引き取り、自分のところで引退セレモニーをやって、そのまま2軍監督→ 1軍監督にしたかったのでしょう。

 しかし、その規定路線には甚だ疑問がありました。


<イースタンリーグ成績>
・2019年 西武 49勝66敗 6位(7チーム中)
・2020年 西武 28勝41敗 7位(7チーム中)
・2021年 西武 48勝53敗 7位(7チーム中)

 松井稼頭央監督、1軍監督に就任する前からビックリするくらい2軍でも負けまくっているんですよ。
 もちろんプロ野球の2軍は「選手を育てて1軍に送り出す」ことが第一で、2軍で優勝したって仕方ないという見方もできますが……2019年の1軍は「新しい選手が出てこないので、ほぼ固定メンバーで1年戦って優勝した年」で、2020年以降も「新しい選手が出てこない」と嘆かれている時期です。この時期に2軍で有望な若手を育てられなかったから、2023年・2024年に1軍が暗黒期を迎えたとも言えます。

 「勝ち負け」も「育成」も、もちろん2軍監督だけの責任ではないと思いますが……明らかにうまくいっていなかったのに、フロントはそれを是正しようともせず、そのまま松井稼頭央2軍監督をヘッドコーチを経由させて1軍監督に就任させます。

 正直……誰か「このまま松井稼頭央を1軍監督にして良いんですかね?」と疑問を持たなかったんだろうか。持ったから、平石ヘッドコーチとかを招集することになったのかなぁ。



 「新庄監督は3年目で開花したのに、松井稼頭央監督は2年目の途中でやめさせられちゃうんだ」という意見もありますが……新庄監督はよそからやってきて、前任者とはまったく違う野球をやろうとして、それが定着するまでに時間がかかったから1~2年目は苦しかったのだと思います。
 松井稼頭央監督は、3年間2軍監督を務め、1年ヘッドコーチを務め、それで1軍監督に就任して、そして「辻政権」とあまり変わらない野球をしていたと思います。選手がいなくなったり、衰えたりして、それが出来なかっただけで。なので、あと1年様子を見てもあんまり変わらなかったんじゃないかなぁ……



 この「明らかに上手くいっていないのに、それを変更できない」体制こそが、この時期のライオンズのマズさを象徴していて……その一つが「春季キャンプ」です。


 2023年はWBCとの兼ね合いなどもあったのですが、松井稼頭央監督の時代のライオンズは2023年も2024年もキャプインを数日遅くしていました。他のチームが2月1日にキャンプインしているのに、ライオンズは2月6日からキャンプインしていたんですよ。

 2023年も5位だったのに。
 「ヨシ、2024年も同じようにやろう!」って考えるの何なんだよ!どうして現状維持でいこうとするんだよ!

 「その分、効率的な練習をしているのだろう」と思いきや……
 渡辺監督代行になってから、交流戦明けの全体練習で「キャンプでもあまりやらなかったから」とバントとか進塁打とかヒットエンドランの練習をしていたので、「全然効率的な練習ができてねーーーー」とすっころびました。


 松井稼頭央監督政権下では、バントとかを駆使する細かい野球ではなく、とにかく打って走る豪快な野球をしたかったのかも知れませんし……インターネットで野球を語る人にも同じように「2番にはバントではなく、長打を打てる選手を置くべき」という意見の人も多いです。

 しかし、ここ数年の日本のプロ野球のボールは飛びません。長打が出ません
 ライオンズが「山賊打線」で優勝した2018年の各チームの長打率を見ると、ライオンズの長打率が.454、最も低いマリーンズでも.355あります。
 比べて、2024年の各チームの長打率を見ると、1位のホークスでも.393、6位のライオンズが.301なのは置いといても、ロッテ、楽天、オリックスでも2018年で最も低いマリーンズよりも更に低い長打率になっています。

 「バントではなく、長打を打てる選手を置くべき」と言われても、2024年でライオンズで一番ホームラン打った選手で「7本」ですよ。そもそも誰も長打を打てていません。長打が出ない環境なら、バントとか進塁打とかでランナーを2塁に進めるのも大事だと思います。

 しかし、そういう「環境に適した野球」ができなかったし、その準備もしていなかった……そういう「有事の際の備え」ができていないのが、松井監督だけでなく、フロントも含めた「ここ数年の西武ライオンズ」だったと思います。



◇ 今に限った話ではない「選手の流出」で、どうしてここまで弱体化したのか

 日本のプロ野球が、権利を取得した選手が自由にチームを移籍できる通称「FA制度」を導入したのは1993年オフ。
 また、メジャーリーグへの移籍方法を制度化しようと「ポスティングシステム」が導入されたのが1998年です。

 それ以降、ライオンズの選手はものすごーーーーーくたくさんの選手がFAやポスティングでチームを去ることになります。

 最初に私のスタンスを書いておきます。
 好きだった選手がチームを去るのは寂しいという気持ちももちろんありますが、「本当は出ていきたいのにイヤイヤ残られている」のもイヤなので……出ていった選手のことはさっぱり忘れて、残った選手を全力で応援したいと思っています。これが私のスタンス。

 しかし、2000年前後の巨人が「金で選手を集めている」と言われたみたいに思われたくないのか、近年では「FAでライオンズの主力選手を獲得」した方のチームのファンが、「金で選手を獲った」のではなく「ライオンズの球団がひどいところだから選手が出ていくのは当然」「ライオンズファンの民度が低いので選手が出ていくのは当然」「ウチはそういう可哀想な選手を救済してあげたんだ」とSNSでライオンズとライオンズファンを批判するようになって。
 それを読んだ特に事情も詳しくない人が「そうなんだ、ライオンズって酷い球団なんだ」「ライオンズファンって民度が低いんだ」と鵜呑みにして更に拡散して、インターネット上でそういう空気が出来上がっているのがホンッッットにうざいです。これならまだ「わーい、欲しい選手全員お金で集めるぞー!」って言ってる巨人ファンの方が100億倍好感が持てます。


 やはりインターネット民は愚か。
 人類は滅ぼさなくてはならない(本日2度目)。



 さて、1990年代からずっとライオンズは「選手が流出する」チームだったのですが、それでも2007年に5位になるまではずっとAクラス(3位以上)をキープしていましたし、2008年には日本一、2018年と2019年にはリーグ優勝しています。

 「選手がいなくなっても新しい選手が出てきてずっと強かった」「それがどうして近年は弱くなってしまったのか」というのが、ライオンズファン以外の野球ファンの"外から見た"印象じゃないかと思います。
 実はそれを補ってきたのが助っ人外国人で、近年は円安その他で難しくなっているんだよという話は序盤に書きましたが、もちろんそれだけでなく……「FAでの出ていき方」にも変化があるのです。

 なので、FA制度導入以降「ライオンズからFA&ポスティングで出ていった選手」をまとめてみましょう。

<1990年代>
1994年オフ 「工藤公康」FAでホークスに
1994年オフ 「石毛宏典」FAでホークスに

1996年オフ 「清原和博」FAでジャイアンツに

<2000年代>
2003年オフ 「松井稼頭央」FAでメジャー(メッツ)に
2005年オフ 「豊田清」FAでジャイアンツに
2005年オフ 「森慎二」ポスティングでメジャー(デビルレイズ)に
2006年オフ 「松坂大輔」ポスティングでメジャー(レッドソックス)に
2007年オフ 「和田一浩」FAでドラゴンズに

<2010年代>
2010年オフ 「土肥義弘」FAでアメリカに(メジャー契約はできず)
2010年オフ 「細川亨」FAでホークスに
2011年オフ 「帆足和幸」FAでホークスに
2011年オフ 「許銘傑」FAでバファローズに

2012年オフ 「中島裕之」FAでメジャー(アスレチックス)に
2013年オフ 「片岡治大」FAでジャイアンツに
2013年オフ 「涌井秀章」FAでマリーンズに
2015年オフ 「脇谷亮太」FAでジャイアンツに
2016年オフ 「岸孝之」FAでイーグルスに
2017年オフ 「牧田和久」ポスティングでメジャー(パドレス)に
2017年オフ 「野上亮磨」FAでジャイアンツに
2018年オフ 「炭谷銀仁朗」FAでジャイアンツに

2018年オフ 「浅村栄斗」FAでイーグルスに
2018年オフ 「菊池雄星」ポスティングでメジャー(マリナーズ)に
2019年オフ 「秋山翔吾」FAでメジャー(レッズ)に

2022年オフ 「森友哉」FAでバファローズに
2023年オフ 「山川穂高」FAでホークスに

 「何この色分け、見づらっ!」と思われたかも知れませんが……
 移籍先がメジャーリーグ(アメリカ)セ・リーグパ・リーグで色を分けて視覚化しています。

 1990年代・2000年代から「チームの顔」となっている選手が移籍していたので、ライオンズと言えば選手流出……というイメージがあったかも知れませんが、数で言ったら2010年代に入ってからが圧倒的に多いんですね。

 そして、2010年代に入ってからの移籍は、目に見えて「パ・リーグ」チームへの移籍が増えました。FA制度導入直後の「工藤・石毛」の流出を除くと、清原・豊田・和田はセ・リーグの移籍でしたし、松井稼頭央や松坂はメジャー移籍でしたが……2010年の細川を皮切りにパ・リーグのチームへの移籍が続くようになります。

 これが、戦力的にはむちゃくちゃマズイ。
 メジャーリーグへの移籍は、主力選手が抜けたところで「+100」が「0」になるだけです。セ・リーグへの移籍も、交流戦などはありますが、年間の中では微々たるものです。パ・リーグへの移籍は、主力選手がそのまま相手チームの戦力になるので、「+100」が「-100」になるんです。


 「日本のプロ野球はメジャーリーグの2軍」とか「日本のプロ野球はせっかく育てた選手をメジャーリーグに輸出する産業」みたいに揶揄している人がいますが、ライオンズなんてライバルチームの4番バッターになる選手を育てて、その選手にボコボコに打たれる産業ですよ。

 オマエが打てない時も、エラーばっかしてた時も、「これも成長の糧になるんだ」とガマンして使っていたのに……成長したと思ったらライバルチームに行って、ライオンズ相手に容赦なく打ってくる。
 これ、ファンよりもコーチが一番やる気なくなるんじゃないかと思いますよ。「どうせ育てても、タイトル獲るくらいに育ったら別のチームに移籍して、ライオンズを最下位に叩き落すんだ」と思ったら、マジメに選手育てるのバカらしくなっちゃうでしょ。


 「どうしてパ・リーグのチームへの移籍が増えたのか?」
 それはソフトバンクホークスや、一時期の楽天ゴールデンイーグルスのように、パ・リーグにも資金力が豊富な球団が出来たことが一つ。もう一つには、パ・リーグの球団も人気になったことがあると思います。

 かつては「人気のセ、実力のパ」という言葉があったように、セ・リーグのチームでなければ人気がない時代がありました。
 清原和博はこどもの頃から巨人ファンでしたし、和田一浩もこどもの頃から中日ファンだったことを明言しています。片岡治大も巨人移籍の際に「こどもの頃にファンだった」と言っていました。

 そういう「こどもの頃に憧れたチームに行きたい」というFA移籍は、ライオンズのフロントからしたらどうしようもないと思うんですね。だから、受け入れるしかないと思っていました。

 しかし、2000年代中盤頃、球界再編が起こって、2005年に交流戦が始まって、2006年に日本代表がWBCを優勝して、多チャンネル化やインターネット中継なんかも普及して……パ・リーグのチームも普通に人気になったし、パ・リーグのチームに「こどもの頃に憧れた」って世代もプロ野球の選手になっていきます。

 分かりやすいのは森友哉で、彼は小学生時代にオリックスジュニアに所属していて、それが理由だと明言はしていませんがオリックスバファローズへとFA移籍していきました。
 岸孝之のこどもの頃にはまだ楽天ゴールデンイーグルスはありませんでしたが、幼少期から大学まで過ごした東北にできたプロ野球のチームということで、「地元に帰る」ためのイーグルスのFA移籍だったのでしょう。
 タンパリング疑惑と書類送検などなどがあったので詳しい事情を話す機会はありませんでしたが、山川穂高も沖縄出身ということで、沖縄と距離的にも近く、歴代で沖縄出身の選手を獲得することの多かったホークスとFA宣言以前から「両想い」だったのだろうと推察されます。


 こういう選手達を引き止められなかったのを「フロントの責任」と言ってもしょうがないと思います。FA宣言する前からほぼ気持ちは固まっているケースがほとんどでしょうし。
 そのためか一時期のライオンズは、「ドラフトで指名する」時点でよそのチームに流出しないように、埼玉出身の選手や埼玉にゆかりのある選手、プロ野球球団のない北関東の選手を多く指名するようになったんですが……それはそれで「選択の幅が狭まる」だけなんですよね。



 また、この辺の話が議論に上がることはあまりありませんが……「FA権の取得までの年数」も、FA制度ができてから短くなっているのです。

<1993年~2002年>
 逆指名で入団した選手:1軍にいた期間が累計10年
 それ以外の選手:1軍にいた期間が累計9年

<2003年~2007年>
 全選手:1軍にいた期間が累計9年

<2008年~現在>
 高卒で入団した選手:1軍にいた期間が累計8年
 大卒&社会人経由の選手:1軍にいた期間が累計7年
 ※ ただし、2006年ドラフトまでに入団した選手は累計8年とする

※ ただし、メジャーリーグなどへの海外移籍のFA権は累計9年とする


 2007年と2008年の間に、特に大卒&社会人の選手は「累計9年」から「累計7年」に一気に短縮されました。この2年の違いはむちゃくちゃ大きい。

 では、先ほどの「FA&ポスティングでライオンズから移籍していった選手」を、移籍した年齢でまとめてみましょう。年齢は「そのオフの12月31日時点の満年齢」で統一しています。


<1990年代>
1994年オフ 「工藤公康」(31)
1994年オフ 「石毛宏典」(38)

1996年オフ 「清原和博」(29)

<2000年代>
2003年オフ 「松井稼頭央」(28)
2005年オフ 「豊田清」(34)
2005年オフ 「森慎二」(31)
2006年オフ 「松坂大輔」(26)
2007年オフ 「和田一浩」(35)

<2010年代>
2010年オフ 「土肥義弘」(34)
2010年オフ 「細川亨」(30)
2011年オフ 「帆足和幸」(32)
2011年オフ 「許銘傑」(35)

2012年オフ 「中島裕之」(30)
2013年オフ 「片岡治大」(30)
2013年オフ 「涌井秀章」(27)
2015年オフ 「脇谷亮太」(34)
2016年オフ 「岸孝之」(32)
2017年オフ 「牧田和久」(33)
2017年オフ 「野上亮磨」(30)
2018年オフ 「炭谷銀仁朗」(31)

2018年オフ 「浅村栄斗」(28)
2018年オフ 「菊池雄星」(27)
2019年オフ 「秋山翔吾」(31)

2022年オフ 「森友哉」(27)
2023年オフ 「山川穂高」(32)


 「ポスティングは年数関係ないんだから一緒に並べるのおかしくない?」と思われるかもですが、ライオンズの場合は「ポスティングを認めないと国内FAでライバル球団に行かれる可能性があるので、国内FA権を獲る前にポスティングを認める」ことが多いので、実はFA権の短縮と紐づいた話なんですね。

 高卒で入った選手/大卒で入った選手、若い時から即戦力だった選手/伸び悩んだ選手でもちろん差があるのですが……全体的な傾向として、2010年代以降の方が「30歳以下の選手」が多い印象は受けます。細川、中島、片岡、涌井、野上、浅村、菊池、森……

 ifの話ですが、2007年までのルールで「全選手:1軍にいた期間が累計9年」だった場合、単純計算で森友哉は2023年まではライオンズにいたことになります(28歳)し、山川穂高は2025年までライオンズにいたことになります(34歳)。


 特に大卒・社会人経由で入ってきた選手の2年ってむちゃくちゃ大きくて、2000年代までのFA流出って(工藤公康のような超例外もあるけど)基本的にはピークを越えた選手が移籍するイメージで、選手がいなくなったライオンズもいいかんじに若手へと世代交代できていたんですね。
 しかし、2010年代になると「30歳くらいの全盛期」の状態で移籍されてしまい、戦力的に大きなマイナスになるのもそうですが、後釜となる選手が育つ前に移籍されてしまうので、その後釜を育てている間が暗黒期になってしまうのです。

 浅村・秋山・森・山川と抜けていって山賊打線が解体された今が暗黒期扱いされていますが、中島・片岡・涌井が抜けた2014~2016年辺りも相当ヤバかったですからね。



 当然「FAで選手を獲る」方からしてもこの2年の差は大きくて、ピークアウトした選手よりも、全盛期の選手が獲れる方が優位になります。
 オンラインゲームがアプデでバランスが変わってしまうように、NPBのゲームデザインは、2008年のFA制度変更を境に「FAで選手を獲るチーム」が圧倒的に有利なバランスになったのです。


<2010年以降の日本一チーム>
・2010年 ロッテ
・2011年 ソフトバンク
・2012年 巨人
・2013年 楽天
・2014年 ソフトバンク
・2015年 ソフトバンク
・2016年 日本ハム
・2017年 ソフトバンク
・2018年 ソフトバンク
・2019年 ソフトバンク
・2020年 ソフトバンク
・2021年 ヤクルト
・2022年 オリックス
・2023年 阪神
・2024年 DeNA

 圧倒的ソフトバンクホークスのターン!
 言うまでもなく、ホークスは豊富な資金力でFA選手(等)を集められるチームです。毎年のように優勝してるから観てて面白くないのは置いといて、でも別にホークスは咎められるようなことをしているワケじゃありません。

 「日本プロ野球」がゲームバランスの調整を失敗しただけなんです。

 まぁ、FA権取得が早まった背景には「ドラフト逆指名」が廃止になったことがあるのだろうし、その要因にライオンズは絡んでいるので……20年前の不祥事が、今になって自分達の首を絞めているとも言えるんですけどね……


 「そうは言っても、ライオンズは2018~2019年にリーグ優勝したやん?」と思われるかも知れません。「FAで選手を獲られるチーム」の代表であるライオンズも、優勝できるゲームバランスだったじゃんと。
 しかし、これにも実は理由があって……2018~2019年の優勝に大きく貢献した1番バッター秋山翔吾は、2019年のオフに「海外FA権」を行使してメジャーリーグに移籍しました。「海外FA権」を取得するのに必要なのは累計9年で、秋山は大卒入団なので「国内FA権」を取得するのには累計7年で大丈夫だったはずです。

 つまり……もしも秋山翔吾がメジャーリーグに行く夢を持っていなくて、2017年オフの時点で「国内FA権」を行使してライオンズを出ていったとしたら、2018~2019年のリーグ優勝はなかったんです。

 「2年の差」ってそれくらいデカいんです。


 この「FA権取得までの年数」は今後、短くはなっても長くなることは恐らくないでしょう。選手会は「国内移籍も海外移籍も6年に短縮しろ」と言っていますからね。もしそうなったら、今度こそライオンズは毎年のように100敗すると思いますわ……


 日本のプロ野球は「戦力均衡」しなくちゃいけないから、ドラフトがあって、FA権を取得するまでは自由に移籍できなくて、人的補償の制度もあって―――という話を冒頭に書きました。
 「毎年ソフトバンクホークスが優勝するようなリーグ、戦力均衡なんてできてなくない?」と思いますが、特に是正もされません。何故なら「戦力均衡」しなくても問題ないゲームシステムを発明してしまったからです。

 それが「クライマックスシリーズ」です。

 リーグ戦の3位までに入れば、「日本シリーズ」に出れて、「日本一」になれるチャンスがあるこの制度……20年くらいやっていて、未だに批判的な意見もあるのですが。
 この「クライマックスシリーズ」のおかげで、仮に優勝チームが7月に決まってしまったとしても、「2位」と「3位」まで順位確定することはありえないため、8月・9月の消化試合をなくす効果があるんですね。


 正直、ゲームデザインとしては美しくないです。
 バラエティ番組で言う、「最後の問題に正解すれば100億点さしあげます」みたいなヤツですからね。でも、クライマックスシリーズがないと「戦力均衡」できていないリーグは消化試合だらけで破綻してしまいます。

 「クライマックスシリーズ否定派」の人達も、その辺も踏まえて……「クライマックスシリーズがなくなっても戦力均衡できる」提案をしてくれれば同意できるんですよ。
 「FA移籍の廃止」とか、はまぁ極端だとしても、「ドラフト1位をクジで決める」のをやめて「完全ウェーバー式にする」とかね。そうすれば今よりかは遥かにマシになる。でも、「クライマックスシリーズ否定派」の人達はそんな議論はしてくれません。だって、それをやったら贔屓のチームが弱くなってしまうかも知れないから(笑)。

 結局(私も含めて)プロ野球のシステムを語ってる連中なんて、「どうすれば贔屓のチームに得があるのか」しか考えてないですからね。




◇ ドラフトで投手ばっか獲ったから打てなかっただけじゃねえの?

 これ、シーズン中に他球団のファンからめっちゃ言われたやつ。
 2023年のドラフトで、ライオンズは投手をたくさん指名したんですね。


1位:武内夏暉<投手>國學院大學
2位:上田大河<投手>大阪商業大学
3位:杉山遙希<投手>横浜高
4位:成田晴風<投手>弘前工業高
5位:宮澤太成<投手>徳島インディゴソックス
6位:村田怜音<内野手>皇學館大学
7位:糸川亮太<投手>ENEOS

育成1位:シンクレアジョセフ孝ノ助<投手>徳島インディゴソックス
育成2位:谷口朝陽<内野手>徳島インディゴソックス
育成3位:川下将勲<投手>函館大学付属有斗高
育成4位:金子功児<内野手>埼玉武蔵ヒートベアーズ
育成5位:木瀬翔太<投手>北嵯峨高
育成6位:奥村光一<外野手>群馬ダイヤモンドペガサス


 育成ドラフトを除いて、1~7位中の6人が投手指名。
 「投手は揃っているのに、どうして投手ばっか指名したんだよ」「だから、あんなに打てなかったんだよ」みたいに言う人がたくさんいました。


 バカか。


 まず、ライオンズファンからすると「投手は全然揃ってなかった」です。
 ライオンズの場合、前述したとおりに「選手がFA&ポスティングで流出する」ことが前提のチーム作りをしなくちゃならないので、今いる主力選手は数年後にはいなくなるという逆算でチームを作っていかなくちゃいけないんですね。

 例えば、2023年オフの時点では、エース高橋光成はポスティングでのメジャーリーグ移籍を要求していて、2024年に好成績を収めていればメジャーに行っていただろうと思われます。
 平良海馬も若い頃からメジャー移籍を希望していて、25歳も越えるので数年以内にメジャーに行ってしまうことが予想されますし。
 今井達也は最近「チームが優勝するまではメジャー移籍とか言わない」と言ってくれましたが、メジャーから引く手あまたなのは確かでしょう。

 この3人が近いうちにいなくなることを想定して、「次世代の3本柱」を作らなくちゃならないのがライオンズなんですよ……


 中継ぎ&抑えピッチャーはというと、もっと喫緊に戦力補強をしないとならない状況でした。2023年に平良海馬が先発に転向して、増田達至も年齢を重ねていた状況で、2023年なんて開幕戦の抑えピッチャーにドラフト4位ルーキーの青山美夏人を起用した(そして打たれた)くらいですからね。
 そのため、2023年オフは外国人ピッチャーでアブレイユとヤンを、現役ドラフトで中村祐太を、山川穂高の人的補償で甲斐野央を獲得して……それでも甲斐野の故障で中継ぎ投手がいなくなり、松本航を中継ぎに回した、って話はさっき書きましたっけ。

 そのくらい、ライオンズは「投手」「全然」「揃っていない」んです。


 そもそも、ドラフトで加入したルーキーが1年目から主軸として活躍するケースなんて早々あるもんじゃなくて、特に打者は「投高打低」の今の日本のプロ野球だと、1年目から活躍するのは本当に難しいです。
 高卒・大卒・社会人卒、それぞれ年齢がちがうから一概には言えませんが……大体4~5年くらいで主力になっていくものだと私は思います。

 ということで、2024年から見て4~5年前のドラフトでライオンズが獲得した選手はどうだったのか……2018年のドラフト、2019年のドラフト、2020年のドラフトを振り返って、2024年のシーズンでどうだったのか見ていきましょうか。


<2018年・埼玉西武ライオンズのドラフト>
1位:松本航<投手>日本体育大学
 …先発ローテとして安定していたが、チーム事情で中継ぎに配置転換されて調子を落とす
2位:渡邉勇太朗<投手>浦和学院高
 …5月から先発ローテに定着、14試合で3勝4敗、防御率は2.67だった
3位:山野辺翔<内野手>三菱自動車岡崎
 …内外野守れるユーティリティプレイヤーとして便利に使われるも、スタメン定着ならず
4位:粟津凱士<投手>東日本国際大学
 …2021年オフから育成契約になっていたが、2024年オフで現役引退
5位:牧野翔矢<捕手>遊学館高
 …2022年の手術→育成契約から回復して2024年に支配下登録に戻る
6位:森脇亮介<投手>セガサミー
 …2023年に難病で離脱、手術とリハビリを経て、2024年に2軍で復帰を果たす
7位:佐藤龍世<内野手>富士大学
 …前半は怪我もあって苦しむも、8月に復帰した以降は主軸として大活躍

育成1位:東野葵<投手>日本経済大学
 …2021年に現役引退
育成2位:大窪士夢<投手>北海高
 …2021年に戦力外通告を受けて、現在は社会人野球クラブに所属してるらしい
育成3位:中熊大智<捕手>徳山大学
 …2023年に現役引退

 大体チームの主力になってもらわないと困るくらいの時期の選手。
 松本の配置転換の失敗さえなければ、先発ローテ級のピッチャーが2人、4番が1人、ユーティリティプレイヤーが1人と、かなり優秀なドラフトだったんじゃないかと思います。森脇が難病により離脱したことで中継ぎ・抑えに欠員が出てしまったことは、流石にこれはどうしようもない。


<2019年・埼玉西武ライオンズのドラフト>
1位:宮川哲<投手>東芝
 …2023年オフに元山飛優とのトレードでヤクルトへ
2位:浜屋将太<投手>三菱日立パワーシステムズ
 …2024年は登板は1試合のみで戦力外通告→ 育成再契約
3位:松岡洸希<投手>埼玉武蔵ヒートベアーズ
 …2022年オフの現役ドラフトで日本ハムへ
4位:川野涼多<内野手>九州学院高
 …2023年オフに戦力外通告→ 育成再契約
5位:柘植世那<捕手>Honda鈴鹿
 …第3キャッチャーとして試合に出るも、打率.167
6位:井上広輝<投手>日本大学第三高
 …2023年オフに戦力外通告→ 育成再契約
7位:上間永遠<投手>徳島インディゴソックス
 …2021年オフに手術を受けて育成契約に
8位:岸潤一郎<外野手>徳島インディゴソックス
 …4番として起用された時期もあったけど調子が持続せず、最終打率は.216

育成1位:出井敏博<投手>神奈川大学
 …2023年に現役引退

 こ、これは流石にグロイと言わざるを得ない……!
 選手として最も脂ののった時期になる年齢で、チームとしても主力になってほしい時期の選手だろうに……そもそも現在もチームに残って支配下登録されているのが柘植と岸の2人しかいない!
 その2人も現在は「1軍に残るかは当落線上の選手」だろうし、この年のドラフト失敗がモロに2024年の成績に直結していると言われても仕方ない。



<2020年・埼玉西武ライオンズのドラフト>
1位:渡部健人<内野手>桐蔭横浜大学
 …山川穂高の穴を埋める主砲として期待されるも打率.030
2位:佐々木健<投手>NTT東日本
 …2023年に手術を受けて育成契約に
3位:山村崇嘉<内野手>東海大学付属相模高
 …一時期は4番に起用されるなど期待されたが、レギュラー定着ならず
4位:若林楽人<外野手>駒澤大学
 …攻守ともに好不調が激しく、2024年6月に松原聖弥とのトレードで巨人に
5位:大曲錬<投手>福岡大学準硬式野球部
 …1軍登板なし、2024年オフに戦力外通告を受けて育成契約に
6位:タイシンガーブランドン大河<内野手>東京農業大学北海道オホーツク
 …開幕スタメンの座を勝ち取るも3試合で怪我で離脱。現役引退となりました……
7位:仲三河優太<外野手>大阪桐蔭高
 …2023年オフに戦力外通告を受けて育成契約に

育成1位:赤上優人<投手>東北公益文科大学
 …2022年に支配下登録されるも、2023年に育成契約に戻り、2024年オフに現役引退
育成2位:長谷川信哉<外野手>敦賀気比高
 …2022年に支配下登録され、2024年は72試合に出場。打率は.183だった
育成3位:宮本ジョセフ拳<外野手>名古屋学院大学
 …2024年オフに現役引退、ライオンズの栄養士になることを目指し専門学校へ
育成4位:豆田泰志<投手>浦和実業学園高
 …2023年に支配下登録、中継ぎ投手として片鱗を見せるも、2024年は防御率6.32
育成5位:水上由伸<投手>四国学院大学
 …2021年に支配下登録、中継ぎ投手として大活躍して2022年は中継ぎタイトルと新人王を獲得。2024年は絶不調で防御率5.28だった


 うぉおおおおお、何だこの年のドラフトは!?

 前2年で投手を多く獲得したこともあり、上位から野手を多く指名した年と言えます……が、レギュラーをつかみかけた時期はそれぞれあったものの現在のところはかなり苦しい状態です。山村はまぁ、まだチャンスはありそうですが。

 しかし、育成5位で獲得した水上由伸が2021~2022年に大活躍してチームに大貢献……したと思ったのですが、辻監督時代が終わってからいまいちピリッとしなくて、今や勝ちパターンで使うのが怖い選手になってしまったんですね。

 この年も大ハズレドラフトか?と思いきや、育成2位の長谷川信哉が2025年のオープン戦で絶好調で「1番ライト」の開幕スタメンは固い状況で、この選手が1年通じて活躍してくれれば一気に「当たりドラフト」になってくれるかも知れないですね。

 上位よりも育成が出世株な変な年だ……



 ということで……
 「2018年は、まぁまぁ優秀だけどまだ地味」「2019年は、グロすぎる」「2020年は、長谷川の覚醒と水上の復活次第で逆転あるぞ」というカンジですかね。しかし、前後の年に比べるとやっぱり相対的に「戦力の中心にはなれていない」3年間な気がしますね。

 ちなみに、この翌年の2021年になると、隅田、佐藤隼輔、古賀、羽田、黒田、滝澤、菅井という現在の主力を形成している面々が名を連ねていて……そう考えると、実は2026~2027年くらいのシーズンは面白そうかなと思っています。


◇ まとめ

1.2010年代に入ってから同一リーグへのFA移籍が増えて、「味方戦力の喪失」だけでなく「敵戦力の増強」になってしまった
2.2008年を機に「FA権取得までの期間」が短縮されたことで、選手が全盛期に移籍するようになり、その後継戦力が育つまでの数年間が暗黒期になる周期になってしまった
3.円安&投高打低の影響で、FA流出の穴を助っ人外国人で埋められなくなった
4.野手も投手も怪我人だらけで、その穴を埋めるために配置転換して調子を落とすor怪我をするという後手後手・悪循環を続けた
5.2018~2020年あたりのドラフトで獲得した選手が、うまく戦力になってくれなかった
6.「上手くいっていないのでプランを変更する」ができない体制で、飛ばないボールにも対応できなかった

 野球界によく知られている格言に、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」というものがあります。元々は江戸時代の大名の言葉で、それを野村克也さんが引用したのものです。

 2024年のライオンズを説明するなら、この言葉を使います。
 何かの運がよくてひょっとしたら最下位ではなかった未来があったかも知れないけど、それはあくまで「不思議の勝ち」であって。最下位になったことは「不思議」でも何でもないです。結果論ですけど、「なるべくしてなった」だけだと思っています。



 ライオンズが球団としていきなり大金持ちになって&選手からも魅力的なチームになって、「FAやポスティングでの流出が止まる」可能性は……限りなく低いと思います。まず選手にとって命の危険もありそうなドーム球場をなんとかしないと。

 んで、「FA権取得までの年数」が延びることもありえないので、現状のゲームデザインのままでもライオンズは今後しばらく「選手が大量流出して暗黒期」「暗黒期の間に起用した若手が育った全盛期」を周期的に繰り返すことになると思います。2014~2016年と、2017~2019年みたいなカンジで。

 暗黒期の間はもうどうしようもなくて、全盛期が来たときに優勝できたらイイな―――というチームだと開き直るしかないですね。


 これで「FA権取得までの年数」が短くなったら、全盛期そのものが存在しない、選手を育てては他球団に輩出するだけのチームになってしまうので、そうならないことを願って初詣の際に神様にお願いしようと思います(今年は忙しくてまだ初詣に行っていないことに今気づいた)。

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