じゃあ、実際にマンガを描いてみよう!その3~コンテ編~

※ この記事は2015年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です


 先月に発売したキンドル本『マンガは描ける!絵が描けない人でも』を読んでくださった人orこれから読んでくれるかも知れない人に向けて、実際にマンガが完成するまでの工程を見せていこうという連続企画記事です。まだお読みになっていない人はこの機会にどうぞ!価格は250円!


マンガは描ける!絵が描けない人でも
マンガは描ける!絵が描けない人でも

1.企画を立てる
2.プロットを考える&シナリオを書く
3.コンテに起こす ←今週はココ!
4.キャラクターをデザインする
5.ネームを描く
6.下描きをする
7.ペン入れをする(前編)
8.ペン入れをする(後編)
9.消しゴムをかける&修正する
10.ベタを塗る
11.トーンを貼る
12.スキャンしてセリフを入れて完成!


 「プロット」「シナリオ」「コンテ」「ネーム」は、人それぞれどの作業工程でどこまで描くのかは違う―――という話は前回書きました。誰かに見せる機会でもなければ「自分が見て分かればイイ」だけですから、「こう書かなければならない」みたいな形式に捉われる必要はないと思います。
 私も、今日描いてきた「コンテ」は私以外「何が描いてあるのか」すら判別できないと思っています。でも、それでイイんです。漫画を一人で描く以上、自分さえ読めればそれでイイんです。



 描いてきた「コンテ」を「出来ました!」とお披露目してそれで終わりにしても構わないんですが、この機会に押し入れを漁っていたら面白いものを発掘したのでそれを先にお見せしようと思います。





 これが何だか分かりますか?
 上の画像はどうやら『ドラゴンボール』8巻94話、下の画像は『バガボンド』1巻7話をコンテにしたものです。これは確か『200vs1×1』を描く前、それまでマトモにバトル漫画を描いたことがなかった自分が「バトル漫画の勉強をしよう」と手元にあった名作バトル漫画からコンテに逆算してみたのです。

 そうすることによって、「コマの大きさの変化」「アップとロングの使い方」「読者の視線をどう誘導するのか」「どうすれば“絵”に動きが生まれるのか」などなどが学べると思ってやってみたのです。『200vs1×1』が「多人数と1人の戦い」になることが分かっていたので、同じように「多人数と1人の戦い」を描いた作品を勉強したんですね。


 私だって、意外にこういう地味な「勉強」とか「研究」をして自分の作品に活かそうと頑張っているのです。何も考えずにテキトーにマンガ描いているワケじゃないんですよ!





 まぁ、途中で飽きて辞めたんですけどね(笑)。

 「研究」自体は面白かったし、「ファン活動」としては作品の面白さの根幹部分に切り込んでいるカンジもしたのですが……これが自分の作品に活きたかというと。程々にしないと、ただの真似事になっちゃうよなーとも思いました。マンガを1本描くのはとにかく時間がかかるものですから、他人の作品の研究をするよりも自分の作品を仕上げることに時間を使った方が「勉強」になるでしょうしね。

 



 それはそうと……押入れを発掘して気付いたんですけど、私は昔は1枚のコピー用紙にこうやって8枚分のコンテを描いていたんですね。これは『shine』のコンテです。1ページあたりのコマ数が半端ないけど、顔アップが多くて、今の自分とは随分スタイルが違うなーって思います。

 しかし、このコンテだけだと「セリフとか読めなくない?」って思いますよね。




 どうやらこの頃は「シナリオ」書いて、それから「コンテ」描いているから、「コンテ」の方にセリフは描かなくてイイやと省略していたみたいです。

 完成原稿と比べると「シナリオ」はページ数が多くなってしまっていて、それを「コンテ」に起こす際に結構なシーンがカットされたことが見て分かります。ムハイルが食糧を調達してくるシーンなんて、わざわざ「シナリオ」の方に「こういう絵を入れる」という指定まで描いているのに、全カットされているという(笑)。

 つまり「描きたいもの」を夢いっぱいに詰め込んだ「シナリオ」を、現実的に解体して「マンガとして」ページに載せられるものだけで組み立てていく作業が「コンテ」――――とも言えますね。入らないシーンはカットするし、足りないシーンはここで足す。ここの作業で実質的にマンガの原型は出来上がってしまうのです。


 ぶっちゃけた話、「マンガを描く工程でクリエイティブ性があって楽しいのはここまでで、残りは単純作業」「だから、ここまでで飽きて辞めちゃう」って言っている人もいます。気持ちは分からんでもない。自分も自分の絵にコンプレックスがあった頃はそんな気持ちでした。






 さて、自分の歴代作品を保管している場所を発掘してみたところ、『絵のない世界』から「シナリオ」と「コンテ」を同時にやるようになったみたいです。今まで別にやっていた「シナリオ」と「コンテ」の作業を、一緒にしちゃったんですね。

 どうしてかと言うと……単に「時間削減のため」だったと思います。
 「シナリオ」と「コンテ」を別々にやるとその分だけ時間がかかるので、1本のマンガを完成させる期間が長期化してしまっていました。それを何とかするために「シナリオ」と「コンテ」を同時に行うようにしたのです。
 それと、コンテに「ページごとのコマ数」が書き込まれているのが分かると思います。1ページ辺りのコマ数を多くすると作画に時間がかかってしまうので、なるべくコマ数を少なくする努力をしていたんですね。『shine』なんて1ページ11コマとかあったからさ……




 はい、これらを踏まえてここからが本題です。
 今回やるのは3週目の「コンテに起こす」です。


【使用する道具】
・紙と鉛筆


 今更ですけど、「作品が完成するまでの工程を見る」ということは「作品のネタバレ」にもなります。私以外は何が描いてあるか分からないコンテであっても、セリフとか流れとかが分かってしまうことと思います。「完成した作品」をまっさらな状態で読みたい人はここで引き返してください。
 ただ、個人的には、今回は「完成した作品」自体を楽しんでもらうというよりも「何もない状況から徐々に作品が完成していく過程」を楽しんでもらえたらイイなと思っているので……今の内に「コンテ」を見ておいて、「これがあんなカンジに完成するのか!」と思って欲しいかなぁ。



 ハイ、これが今回の作品の全ページの「コンテ」でございます。



 『絵のない世界』を描いていた頃ともまたコンテの切り方が変わっていて、今の私はこんな風に「見開きごと」にチェックできるようにしています。
 「←→」のマークは「ここのコマは実際にはもっと広げる」という意味で、コマの大きさを後で変えることを指示しているんですね。「※ アオリのアングル」というのはシオカラーズのことではなくて、カメラアングルを下からのアングルで描くという指定です。

 「キャラデザ」をまだやっていないので、キャラが○と十字で表情のみを描き込んでいるってカンジですね。
 「コンテ」を先にやるか「キャラデザ」を先にやるのかはどっちにも利点があって、「コンテ」が先なら「シーンにあったキャラデザ」が出来るし、「キャラデザ」が先なら「完成した画面をイメージしながらコンテ」が出来ます。
 例えばさっきの『shine』の「コンテ」で言えば、シャインのキャラデザは既に出来ているのだけど、ムハイルのキャラデザは出来ていないから○と十字しか描かれていないんですね。私にとってあの作品で最優先にしたことは「シャインというヒロインのキャラデザ」だったことが「コンテ」を見るだけでも分かります。


 今回は「コンテ」を先にやったので、例えば「全身を下からアオリで描くシーンがあるのだから、このキャラは脚がキレイに見える衣装にした方がイイな」なんてことを考えながら「キャラデザ」が出来るんですね。
 ということで、次回いよいよ「キャラデザ」ですよ。大仕事になりそうです。流石に複数日かけて作業せねば。


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