じゃあ、実際にマンガを描いてみよう!その4~キャラクターデザイン編~


 えーっと……いきなりですが。

 この記事を書き始めている22日17時の段階では、まだ終わっていません!

 連続企画記事をアップするのは毎週日曜日の夕方にしているので、この記事は23日の18時前後にアップロードされる予定です。残り1日ちょっとだけど間に合うのか、果たしてこの記事に「キャラクターデザインが出来ました!」という画像を貼ることが出来るのか。今ここの文章を書いている私も知らないし、私が一番知りたいです!

 それくらい「キャラクターデザイン」は時間がかかるし、時間をかけなければならない作業なのです。


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1.企画を立てる
2.プロットを考える&シナリオを書く
3.コンテに起こす
4.キャラクターをデザインする←今週はココ!
5.ネームを描く
6.下描きをする
7.ペン入れをする(前編)
8.ペン入れをする(後編)
9.消しゴムをかける&修正する
10.ベタを塗る
11.トーンを貼る
12.スキャンしてセリフを入れて完成!



 キャラクターデザインは「作品の顔」です。
 例えば実写のドラマや映画で言えば、どんなにシナリオやコンテや演出に力を入れた作品であっても、作品の顔になるのは「主演役者」になってしまうと思いますし、我々も「○○って映画?あー、あの役者が出ていたヤツかー」と記憶していると思うのです。作品が面白くなるかどうかはシナリオやコンテや演出で決まるとは言え、視聴者が見るのは主演役者なんです。

 キャラクターデザインは主演俳優・助演俳優の「キャスティング」だと言えますし、「オーディション」とも言えます。そのくらい重要ですし、そのくらい時間をかけてじっくりとやらなくちゃいけないものなんです。


 なので、私は普段シナリオ・コンテ・ネーム作業を進めている間に並行して行うことが多いです。
 最初からイメージが固まっているのならサクサク出来るのですが、難産なキャラがいるとコンテやネームの段階でも○と十字だけで描かれたキャラがずっと居座ることがあります。もう処分しちゃったと思うのでお披露目することは出来ませんが、確か『200vs1×1』の時はW主人公の髪型が完成時とは逆のままネームを描いていました。下描きを始めるところで「ちゃぶ台返し」をして、あの形になったんですね。

 そのくらいギリギリまで描いて描いて描きまくって「これでイイのか」を粘って考えるものなんです。「1週間に1回リアルタイムにブログ記事にしなければならないから今日の内に全キャラを仕上げよう」みたいなスケジュールで作るものではないんです!この企画が全否定される瞬間だっ!




 さて……今までこの連続企画記事では「過去に自分が描いてきた作品」を例として見せて、その後に「リアルタイムに自分が作っている『おっぱい泥棒vs.うんこマン(仮題)』の現在状況」を見せるというテンプレで書いてきました。
 しかし、今回はその手は使えません。過去作品のキャラクターデザイン画は、キンドル版『春夏秋冬オクテット』の特典として載せちゃっているので、ここで見せるのはキンドル版を買ってくださった人に対して礼を欠く行為だと思うんですね。



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 それでは今回の記事はどうするかなーと考えた結果……
 現在私が「今度電子書籍として発売する用」に描いている長編漫画のキャラクターデザイン画を例として見せようと思います。まだどこにも出していない作品のキャラクターデザイン画です。一応、作者自らが考える「宣伝の範囲内」に収めるようにして、作品の魅力を損なうネタバレはしないつもりですが、それでも気になる人はいらっしゃると思うので気になる人は読み飛ばしちゃってください。






 1枚だけ「第2話を描く前に用意した私服デザイン画」がありますが、それ以外は全て「第1話を描く前に用意したデザイン画」です。第1話を描き始める前に、これだけのキャラクターデザイン画を描いているんです。
 メインキャラクターのデザイン案、サブキャラクターのデザイン案、メインキャラは「横顔」「正面顔」「全身絵」を描いていますし、ラフ画だけではなく「ペン入れ・ベタ塗り・トーン貼り」までやってイメージを固めたものもありますし、一部のキャラは子ども時代などの過去の姿もデザインしてあります。

 長編漫画を描こうとしたら、このくらいの準備が要るんです。

 もちろん長編で話が進めば今後新たにデザインしなければならないキャラは出てきますし、私服などもその都度考えなくてはなりません。漫画を描く前に、膨大な数の絵を描かなければならないのがキャラクターデザイン作業なんです。しかも、こんなに頑張って描いても、これらの絵自体は自分しか見ないんですからねっ!



 ……そして、話はそれだけではありません。
 実はこれ、ちゃんと採用したデザイン画だけなんです。この他に没になっちゃったデザイン画もたくさんあるのです。



 これ、一人のキャラクターに対して描きまくった没デザイン画です。
 全部同じキャラです。描いても描いても描いてもイメージに合わなくて、目を変更したり髪型を微妙に変更したりして、1ヶ月くらい苦戦しました。多分、絵を描かない人から見たら「何が違うの?」という些細な違いだと思うんですけど、自分の中で「これだーっ!」と確定ランプが付くまで細かい部分を調整して、ようやく1ヵ月後に「これだっ!」というキャラになりました。


 流石に1ヶ月は長い方ですが、こういうことはどの作品にも多かれ少なかれ1キャラくらいいます。いきなり全キャラ確定ランプが付くほど完璧なものなんか生まれてくるワケがないんです。描いて描いて描いて描きまくってようやく生まれるんです。「1週間に1回リアルタイムにブログ記事にしなければならないから今日の内に全キャラを仕上げよう」みたいなスケジュールで作るものではないんです!(本日2度目)


 んで、経験則から「これから初めてマンガを描こうとする人」にアドバイスをするのならば……メインキャラはこれくらい時間をかけてもイイし、時間をかけた分だけ自分の納得いくものが出来ると思うのですが。禄に出番もないキャラのデザインにはそんなに時間かけるなとアドバイスしておきます。
 昔の私は出番が数コマしかないキャラであっても、しっかりデザインして、名前とか学年クラスとか決めて―――「こういう読者が見えない細部まできっちり作っておくことで作品世界が出来上がるんだよ!」と思ってたんですけど。

 マンガなんて、原稿用紙に描かれてることが全てなんです。

 そこに載らない設定なんか読者が見ることないんだから、そんなところに時間をかけるのなら「原稿用紙に反映されるところ」に時間をかけるべきなんです。マンガに限らず全ての創作活動がそうだと思うんですが、創作活動は「自分の使える時間をどの作業に配分するのか」が鍵なのです。無駄な作業時間は削り、必要な作業に時間をかけるべきなんです。

 だから、1ヶ月も描いて描いて描きまくって納得いくまで粘ったキャラもいれば。
 デザインもせず、本番で一発ささっと描いてしまうようなキャラもいます。

 テキトーに描かれた方のキャラには申し訳ありませんが、そういうものなんです。



 はい、これらを踏まえてここからが本題です。
 今回は4週目の「キャラクターをデザインする」です。

【使用する道具】
・紙と鉛筆
・実際に使用するペン、インク、スクリーントーン、原稿用紙など


 「どのペンを使うのか?」とか「スクリーントーンは必ず貼るべきか?」みたいな話は、それぞれの工程で語るので今日は割愛します。
 私は今回の作品は「ペン入れをして」「墨汁でベタを塗って」「アナログでトーンを貼る」予定でいますので、それと同じようにキャラクターデザイン画も「ペン入れをして」「墨汁でベタを塗って」「アナログでトーンを貼る」ものを1枚描いておくのです。そうすることで完成図のイメージが出来あがりますんで。



 今回の作品で必要なキャラクターデザインは、5人分です。





 いつからそうしているかは忘れてしまいましたが、私はキャラクターデザインは「横顔」から入ることが多いです。「横顔」を1枚描いておくと、「後ろ髪はどのくらいの長さか」「耳はどれくらいの大きさか」「鼻はどのくらいの高さか」が確認できてブレませんし。体型も横からのアングルの方が「厚み」が分かりやすいからです。

 んで、その後に正面からの絵を描きます。
 女性キャラの場合は「目の描き方」をメモしておくことも多いですね。


 誰かに見せるための絵でもないので、デッサンとか気にせず勢いでガンガン描いていきます。


 キャラによっては「後姿」を描くことも。
 ディティールの細かいパーツがあるなら、それもここで一度描いておきます。


 この時点で「このキャラの特徴はこれだ」と思っていたことも明日には忘れていることが多々あるので、忘れないようにメモ書きをどんどんしていきましょう。


 これはキャラではなく、大勢出てくるキャラの「制服」。
 自分の作品の場合、多数の敵を「敵」と認識させるために「制服」を着せて大量に並ばせることがよくありますね。『shine』のプレッセル軍や、『絵のない世界』のジェット脚などなど。読者が一番目にする部分とも言えるので、一キャラと同じようにしっかり考えてデザインします。



 鉛筆で「横」と「正面」の2枚を描いた後は、本番と同じように「ペン入れ」「ベタ塗り」「トーン貼り」を全部しっかりやった絵を1キャラ1枚ずつ描きます。アングルは斜めからの全身図。必ず足元まで入るように描きます。アナログだとインクが乾く時間が要るので、この作業がかなり時間かかるのです……


 膨大な量のスクリーントーンの中から「どれが合うのか」を選定する作業です。
 これ、1枚ごとに数百円するんですよ……

 今回は久々にアナログでトーンを貼りますが、最近の私は「ペン入れまではアナログでやって」「スキャンしてベタ塗り・トーン貼りはデジタル」としています。これから初めてマンガを描く人に「トーンはアナログとデジタル」どっちがイイのかを訊かれたら、ちょっと迷いますね。
 この量のスクリーントーンを1枚数百円出して買ってアナログでやるのならば、1万5千円くらいでペンタブとクリップスタジオ合わせて買ってデジタルでやった方が安上がりという気もします。ただ、「試しに1ページだけマンガを描いてみよう」という人ならば、1万5千円出してその1ページしか描かなかったら勿体ないし、数百円でスクリーントーンを1枚だけ買ってみるというのも手かなあと思います。

 あと、ペンタブはいずれ壊れるというのもね……忘れちゃいけませんね……(遠い目)



 ということで、これも久々にアナログでトーンを貼りました。鉛筆1本で描いた絵とは全然印象が違うことが分かるでしょう。これを1枚描いておくだけで、下描きの時に「完成した際のイメージが」しっかり出来るのです。


 他のキャラも同様に描いていきます。
 「同じようなアングル・同じようなポーズで描き続けるのは面白くない」と思うかもしれませんが、アングルとポーズを統一することでキャラごとの差が分かりやすくなるとも言えます。

 よく「同じようなアングル・同じようなポーズで絵を描き続けても上達するワケないでしょwwww」的な罵りを絵を描き始めた初心者の人にぶつけている人がいるんですけど……私は逆に、同じようなアングル・同じようなポーズでキャラや表情を描き分けることを目指して描くのならば、それも立派な練習になると思いますし、上達していくと思います。


 今回は設定が特殊なので「どのキャラがどのキャラだか見分けがつかない」みたいなことはないと思いますが、学園モノとかだと「キャラをどう識別させるのか」が重要になってきます。現実の女子高生集団なんて全員同じ人に見えてしまいますが、マンガでそれをやってはいけませんからね。

 なので、それぞれのキャラで髪型を変える・髪の長さを変える・シルエットを変えるなどして、キャラの見分けをつけていきます。私のマンガにショートカットとかボブくらいの髪型の女のコが多いのは、片方の女のコの髪を長くしたらもう片方は短くしなきゃ……みたいな理由があったりするのです。
 今回も、先に「金髪ロングの女のコが描きたい!」とデザインが決まってしまったので、もう片方が「黒髪ショート」になってしまいました。他の髪型も色々試して描いたんですけど、どうもしっくり来なくてね……


 今回はアナログでトーンを貼るので、「細かい部分にトーンは貼りたくない」と広い範囲をトーンで狭いところはベタでデザインしているキャラが多いです。そもそも私、アナログでトーンを貼っていた頃はトーンがあまり好きじゃなかったんですね。金かかるし、時間もかかるし。


 ということで、たくさん出てくる制服は、こんな風にベタ部分を多めにしました。
 ベタはイイですよ。墨汁は安いし、塗るのは難しくないし、画面が引き締まるし。





 今回は頑張ってアナログで作業をしましたけど、デジタルだと「ここはどのトーンがいいか」「もしくはベタにするか」「白に戻すか」などを切り替えて確認できるのでデジタル化の利点は大きいですねー。


 例えば、さっきのこの画像。



 デジタルならこんな風に「ブーツをベタに」「マスクにトーンを」「スカーフにもトーンを」など変更して、それぞれのバランスを見比べることが出来ます。アナログでこれをやろうとすると、すごく大変です。

 下の絵の方が収まりがイイと思うので、あんまりトーン貼りたくはなかったのだけど下の絵の方を採用にしようと思います。こんな風に「どっちがいいか」を一つ一つ吟味してデザインを決定していくのです。





 ふぅ……予定していたデザイン画が全て時間に間に合って良かったです。最後のデザイン画が出来たのは16時53分でしたよ(笑)。今後もこういうギリギリの作業が続きそうですね……

 来週はネーム!!
 そして、再来週はいよいよ「下描き」作業だっ!!

 生き残れるのか、私は!

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