・時代性:ポスト『ポートピア』の一番手!アドベンチャーゲームは優しさの時代へ
・キャラクター性:容疑者は人気芸人たち!何気にオールスターゲーの先駆者だった?
・総括
『さんまの名探偵』
・開発/発売:ナムコ
ファミリーコンピュータ用ソフト:1987年4月2日発売
・開発/発売:ナムコ
ファミリーコンピュータ用ソフト:1987年4月2日発売
・コマンド選択式アドベンチャーゲーム
・パスワードでコンティニュー(ミニゲームをクリアしてアイテムを入手する必要あり)
私がクリアまでにかかった時間は約7時間でした
※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください
【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
※ 苦手な人もいそうなNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。
・シリアス展開:○(全体的にコミカルだけど人が死んでるからね)
・恥をかく&嘲笑シーン:△(「何やらせんねん」と言われ続けるゲーム)
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:○(女のコにセクハラしたり、男は殴れたり)
・白人酋長もの:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
※ 苦手な人もいそうなNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。
・シリアス展開:○(全体的にコミカルだけど人が死んでるからね)
・恥をかく&嘲笑シーン:△(「何やらせんねん」と言われ続けるゲーム)
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:○(女のコにセクハラしたり、男は殴れたり)
・白人酋長もの:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:×
・BL要素:×
・男女の恋愛:○(文珍さんに婚約者がいたなんて……)
・ラッキースケベ:◎(下着を見つけたり、風呂を覗いたり……)
・セックスシーン:○(文字だけだけど……美人局のシーンがある)
・BL要素:×
・男女の恋愛:○(文珍さんに婚約者がいたなんて……)
・ラッキースケベ:◎(下着を見つけたり、風呂を覗いたり……)
・セックスシーン:○(文字だけだけど……美人局のシーンがある)
◇ 時代性:ポスト『ポートピア』の一番手!アドベンチャーゲームは優しさの時代へ
このゲームは1987年4月にナムコが発売したファミリーコンピュータ用のアドベンチャーゲームです。現在までに復刻・移植・リメイクなどはされておらず、理由は後述しますが、今後もされる可能性は低いと思われます。
このゲームを語るのに「発売時期」は無視できません。
1987年4月の時点ではめちゃくちゃ先駆的なことをやっているのだけど、それが後のスタンダードになりすぎていて、現代基準だと「特に珍しくもなくない?」「それの何がすごいの?」と言われかねないからです。だから、この記事ではその一つ一つの凄さを語っていきたいのですが……
まず、その前に大前提として―――
「ファミコン初期」のゲームは、「アクションゲーム」や「シューティングゲーム」「スポーツゲーム」などが中心で、「文字を読ませるゲーム」「ストーリーを読ませるゲーム」はなかったんですね。非アクションゲームの例外は、『麻雀』や『将棋』などのテーブルゲームくらいか。
今では信じられない話ですが、ファミコンを遊んでいるキッズ層にはそうしたゲームは向いていないと考えられていて、パソコンで大人が遊んでいる「アドベンチャーゲーム」や「RPG」は特に移植されませんでした。ジャンルの棲み分けが起こっていたんですね。
しかし、少年ジャンプのライターをしていた堀井雄二さんは、「ジャンプを読んでいるこども達でも楽しめるファミコン向けRPGを作れないか」と考えます。
そこでエニックスと話し合った結果、「いきなりオリジナルのRPGを作るのはハードルが高いのではないか」「まずはアドベンチャーの移植からやってみよう」と、1983年にパソコン用に発売していた『ポートピア連続殺人事件』をファミリーコンピュータ用に移植することとなります。
1985年11月に発売されたこのファミコン版『ポートピア』は「ファミコン初のアドベンチャーゲーム」としてヒットして、ファミコンキッズ達にも「文字を読ませるゲーム」「ストーリーを読ませるゲーム」の面白さを教え、翌1986年5月発売の『ドラゴンクエスト』1作目につながるのです。
ということで、『ポートピア連続殺人事件』のヒットでファミコンにアドベンチャーゲームがたくさん発売されるし、『ドラゴンクエスト』のヒットでファミコンにRPGがたくさん発売されるんですねー……とは、ならないんです。
後の時代から「ゲームの歴史」を振り返ると、そう雑にまとめたくなっちゃうし、私も過去にそう書いたことがあるのですが……実は、アドベンチャーゲームもRPGも「後追い作品」がわんさか出てくるのにはタイムラグがあるのです。
RPGの場合は、「容量の問題」と「セーブシステムが整備されていなかった」からです。
『FF1』のレビュー記事を書いた時に調べた、1987年までのファミコンのコマンドバトルRPGをリストにしてみましょう。赤字がROMカセット、金字がディスクシステムのゲームです。ディスクシステムの容量は両面合わせて896Kbらしい。
・1986年5月『ドラゴンクエスト』 512Kb
■ 1986年12月『ディープダンジョン』
・1987年1月『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』 1Mb
■ 1987年5月『勇士の紋章 ディープダンジョンII』
・1987年6月『闘人魔境伝 ヘラクレスの栄光』 2Mb・1987年9月『デジタル・デビル物語 女神転生』 2Mb
・1987年10月『覇邪の封印』 1.25Mb
・1987年10月『ウルティマ 恐怖のエクソダス』 2Mb
・1987年10月『インドラの光』 1Mb
・1987年10月『桃太郎伝説』 2Mb
・1987年10月『星をみるひと』 1Mb
・1987年12月『ファイナルファンタジー』 2Mb
・1987年12月『ウィザードリィ』 2Mb?(調べても諸説あってよく分からんかった)
・1987年12月『ファイナルファンタジー』 2Mb
・1987年12月『ウィザードリィ』 2Mb?(調べても諸説あってよく分からんかった)
見てもらえれば分かる通り、1986年5月に『ドラクエ1』が発売されてもほとんど「後追い作品」が出ないまま、1987年1月の『ドラクエ2』が発売されています。ファミコンでコマンドバトルRPGが一気に増えるのは、『ドラクエ1』から1年半が経った1987年秋からなんですね。
これは、「ドラクエ1作目は口コミでじわじわ売れて、発売日に行列ができるほどの社会現象になったのは2作目から」という要因もあると思うのですが……
一番は1987年4月に『森田将棋』がバッテリーバックアップを採用したことで、(パスワード制ではない)セーブ機能を前提としたコマンドバトルRPGを企画できるようになったからだと思われます。この辺の話は『FF1』のレビュー記事に詳しく書いてあるので、そちらをどうぞ。
では、『ポートピア連続殺人事件』以降のファミコンのアドベンチャーゲームはどうでしょうか? 同じように見ていきましょう。赤字がROMカセット、金字がディスクシステムのゲームです。ディスクシステムの容量は両面合わせて896Kbらしい。
・1985年11月『ポートピア連続殺人事件』 256Kb
・1986年10月『ミシシッピー殺人事件』 1.2Mb
■ 1986年11月『デッドゾーン』■ 1986年12月『水晶の龍』
・1986年12月『時空の旅人』 1Mb
・1987年4月『さんまの名探偵』 1.5Mb
■ 1987年4月『探偵 神宮寺三郎 新宿中央公園殺人事件』
・1987年6月『オホーツクに消ゆ』 2Mb
■ 1987年9月『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島』(前後編)
■ 1987年12月『中山美穂のトキメキハイスクール』
・1987年12月『京都龍の寺殺人事件』 ※山村美紗サスペンスシリーズ 2Mb
・1988年1月『殺意の階層 ソフトハウス連続殺人事件』 2Mb
・1988年1月『リップルアイランド』 1Mb
・1988年2月『探偵 神宮寺三郎 横浜港連続殺人事件』 2Mb
・1988年3月『ビー・バップ・ハイスクール 高校生極楽伝説』 2Mb
■1988年4~5月『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』(前後編)
・1988年5月『名探偵ホームズ 霧のロンドン殺人事件』 2Mb
・1988年5月『サラダの国のトマト姫』 2Mb
■ 1988年6月『リサの妖精伝説』
・1988年7月『じゃりン子チエ ばくだん娘の幸せさがし』 3Mb
■1988年7月『遠山の金さんすぺえす帖 MR.GOLD』
・1988年7月『めぞん一刻 〜想いでのフォトグラフ〜』 2Mb
・1988年8月『太陽の神殿』 2Mb
・1988年9月『マニアックマンション』 2Mb
・1988年9月『えりかとさとるの夢冒険』 2Mb
・1988年11月『東方見文録』 2Mb
■1988年11月『サムライソード』
・1988年11月『ディジャブ 悪夢は本当にやって来た』 3Mb
■ 1988年11月『じゃあまん探偵団 魔隣組』
■ 1988年12月~2月『探偵 神宮寺三郎 危険な二人』(前後編)
■ 1988年12月『なんきんのアドベンチア』
・1988年12月『かぐや姫伝説』 2Mb
・1988年12月『AKIRA』 3Mb
・1988年12月『小公子セディ』 2Mb
・1988年12月『プロ野球?殺人事件!』 2Mb
・1987年6月『オホーツクに消ゆ』 2Mb
■ 1987年9月『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島』(前後編)
■ 1987年12月『中山美穂のトキメキハイスクール』
・1987年12月『京都龍の寺殺人事件』 ※山村美紗サスペンスシリーズ 2Mb
・1988年1月『殺意の階層 ソフトハウス連続殺人事件』 2Mb
・1988年1月『リップルアイランド』 1Mb
・1988年2月『探偵 神宮寺三郎 横浜港連続殺人事件』 2Mb
・1988年3月『ビー・バップ・ハイスクール 高校生極楽伝説』 2Mb
■1988年4~5月『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』(前後編)
・1988年5月『名探偵ホームズ 霧のロンドン殺人事件』 2Mb
・1988年5月『サラダの国のトマト姫』 2Mb
■ 1988年6月『リサの妖精伝説』
・1988年7月『じゃりン子チエ ばくだん娘の幸せさがし』 3Mb
■1988年7月『遠山の金さんすぺえす帖 MR.GOLD』
・1988年7月『めぞん一刻 〜想いでのフォトグラフ〜』 2Mb
・1988年8月『太陽の神殿』 2Mb
・1988年9月『マニアックマンション』 2Mb
・1988年9月『えりかとさとるの夢冒険』 2Mb
・1988年11月『東方見文録』 2Mb
■1988年11月『サムライソード』
・1988年11月『ディジャブ 悪夢は本当にやって来た』 3Mb
■ 1988年11月『じゃあまん探偵団 魔隣組』
■ 1988年12月~2月『探偵 神宮寺三郎 危険な二人』(前後編)
■ 1988年12月『なんきんのアドベンチア』
・1988年12月『かぐや姫伝説』 2Mb
・1988年12月『AKIRA』 3Mb
・1988年12月『小公子セディ』 2Mb
・1988年12月『プロ野球?殺人事件!』 2Mb
キリがないので1988年いっぱいまで。
ROMカセットの容量はネットで検索して出てきた情報なので、参考程度にして下さい。
注目すべきは発売時期で、1985年に『ポートピア連続殺人事件』が出てから、1986年はほとんどアドベンチャーゲームが出ていなくて、1987年でも数えるほど(有名作品が多いので1987年はアドベンチャーゲームがたくさん出た年だと認識されていそうですが)。
ファミコンのアドベンチャーゲームが大量に発売されるのは、実は1988年になってからなんですね。山村美紗やホームズなどの本格推理モノから、『じゃりン子チエ』や『ビーバップハイスクール』などの漫画・アニメ原作モノなど、『ポートピア』から2年以上経ってからようやく多種多様なアドベンチャーゲームが出ているのです。
この理由は、恐らく「容量」問題です。
ディスクシステムの歴史を語る際に、よく「当時パソコンで流行っていたアドベンチャーやRPGをファミコンでも実現させるために、大容量・セーブ可能なメディアを採用した」的に言われるのですが……そんなワケなくない?って私は思っています。
ファミコンで『ポートピア連続殺人事件』が発売されたのが1985年11月で、それまでファミコンでは「文字を読むゲーム」「ストーリーを読むゲーム」は一切発売されていません。ディスクシステム本体発売が1986年2月ですから、「ポートピアがヒットしたからこういう仕様にしよう」と決められるワケがないんですね。
現に、任天堂がディスクシステム用にアドベンチャーゲームを発売したのは1987年9月です。「アドベンチャーゲームのためにディスクシステムを作った」と考えるには、動きが遅すぎます。
そのため……ディスクシステムの仕様でアドベンチャーゲームを作ろうとすると、絶妙に「容量が足りなかった」んだと思うのです。
任天堂の『新・鬼ヶ島』や『ファミコン探偵倶楽部』は前後編という分割商法にせざるを得ませんでしたし、ほとんどのサードメーカーはディスクシステムよりも「ROMカセットの容量が大きくなった」のを見計らって1988年あたりからアドベンチャーゲームに参入しています。ROMカセットで出たアドベンチャーゲームの容量を見ると、2Mbや3Mbばかりですからね。
ディスクシステムの仕様って、「アドベンチャーゲームを作るには容量が小さすぎる」し、「コマンドバトルRPGを作るにはセーブできる領域が小さすぎる」し……どっちにも向いていないメディアだったんじゃないかと思います。たすきには短いし帯にも短い。
今にして思うと、任天堂が最初にディスクシステムで考えていた青写真は「500円で書き替えできる」ことを活かした、今で言うダウンロード専売の小粒なタイトルの充実だったんじゃないかと思うのですが……大本営の任天堂が最初に『ゼルダの伝説』を作ったので、みんなが勘違いをしちゃったのかなぁと。
話がズレたので、戻します。
ということで、『ポートピア連続殺人事件』がヒットしたからと言ってもファミコンにアドベンチャーゲームがなかなか出なかった時期に、ようやく『さんまの名探偵』が出てくるんですね。
特に「推理モノ」としては、『ミシシッピー殺人事件』に続く2本目ですし、『ミシシッピー殺人事件』は(『ポートピア』の影響を受けていない)海外のアドベンチャーゲームとして考えると……ファミコンでようやく出てきた、「ポートピアの次の1本」だったのだと思われます。
(関連記事:『ミシシッピー殺人事件』を「ゲームの歴史」の中で考える)
ちなみに、同時期に発売された『神宮寺三郎』はディスクシステムのゲームでしたが、『さんまの名探偵』はROMカセットでの発売です。理由は簡単、ナムコはディスクシステムに参入しなかったからです。
「容量が大きければ面白いゲームが作れるワケではない」「ディスクシステムを持っていない人にも遊んでほしい」といった理由だったみたいですが……ナムコがディスクシステムにゲームを供給するのはディスクシステム末期の1990年、しかも『ゼビウス』や『パックマン』などの過去の定番ソフトを書き換え専用で出したものでした。後のバーチャルコンソールとかコンソールアーカイブスみたいなものの先駆けで、過去の名作を安価に販売するってことをディスクシステムの時代にもうやっていたんですね。
さて、この『さんまの名探偵』―――
明確に『ポートピア連続殺人事件』の影響を受けた作品だと言えます。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『さんまの名探偵』より引用>
分かりやすいのは、「相棒」に強烈なキャラクターを置いているところです。
『さんまの名探偵』というタイトルなら、普通は主人公を「さんま」さんにして「さんま」さんを操作するゲームにすると思うんですね。『神宮寺三郎』は神宮寺三郎を操作するし、『逆転裁判』は成歩堂龍一を操作するゲームですから。
しかし、『ポートピア』や『さんまの名探偵』の主人公はプレイヤー自身で、ゲーム外のプレイヤーが命令したことをゲーム内の「相棒」が橋渡し的に行ってくれるんですね。
『ポートピア』の発明は、その「相棒」のポジションに「かわいい女のコ」とかじゃなくて「小憎らしい、ちょっと抜けている部下」のヤスを置いたところだと思うんです。そして、当時の芸能界で「ヤス」に匹敵する「小憎らしくて」「お調子者で」「すけべえで」「おしゃべり」なキャラクターと言えば明石家さんまさんだったのでしょう。
ただ、当時のナムコが「『ポートピア』のキャラを芸能人に置き換えただけのゲーム」を作ったりはしません。
後の世代の人間にはピンと来ないと思いますが、1980年代のナムコは「出すゲーム全部面白い」「後に影響を与えまくる名作を連発する」メーカーでしたからね。『パックマン』『ギャラガ』『ディグダグ』『ゼビウス』『マッピー』『ドルアーガ』『スカイキッド』『パックランド』『ドラゴンバスター』、そして『ファミリースタジアム』……
時代の最先端を突き進むナムコでしたから、『ポートピア』の魅力を引き継ぎつつ、『ポートピア』が抱えていた「遊びづらさ」を徹底的に解体していきます。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『さんまの名探偵』より引用>
選べるコマンドはほとんど一緒ですが。
「ばしょいどう」が靴アイコン、「ひとにきけ」が耳のアイコン、「ひと しらべろ」は虫眼鏡アイコン、「なにか みせろ」はカバンのアイコン、「ひと さがせ」は張り紙のようなアイコン……といったカンジに、『さんまの名探偵』のコマンドはビジュアルで分かりやすく整理されています。


<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『さんまの名探偵』より引用>
推理モノに慣れていないこどもだと、キャラの名前が覚えられなかったり、知らないアイテムの名前で混乱しちゃったりするでしょう。初めて推理モノのアドベンチャーゲームを遊ぶこどものことを考えて、むちゃくちゃ配慮しているんですね。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『さんまの名探偵』より引用>
『ポートピア連続殺人事件』の「ばしょいどう」→「きょうと」などのショートカットも斬新だったのだけど、『さんまの名探偵』は更にフィールドマップを自由に移動して入る場所を選べるようになりました。
この「全体マップ」を自由に移動するスタイル、人によっては『ドラゴンクエスト』(1986年)などのRPG、人によっては『スーパーマリオブラザーズ3』(1988年)などを想起すると思いますが……ナムコ的には『ドラゴンバスター』(1985年)が元祖かなぁ。
2000年代まで行けばこうやって場所移動できるアドベンチャーゲームも多いでしょうが(レイトン教授とか)、ファミコンのアドベンチャーゲームでは珍しいんじゃないかと思われます。ストーリー進行に合わせて、『スーパーマリオワールド』のように行ける場所が解放されていくのも地味に凝ってます。
『ポートピア』もそうだったけど、現実の日本が舞台なので「実在する土地」が出てくるのもイイですよね。あっちには意味もなく大文字焼きが出てきたが、こっちには意味もなく太陽の塔が出てくるぜ!
<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『さんまの名探偵』より引用>
そして、『さんまの名探偵』と言えばコレです!
ストーリー進行に合わせて出てくる「ミニゲーム」です!
『ポートピア連続殺人事件』のファミコン版には特に理由のない「3Dダンジョン」が入っていますが、こちらには様々なミニゲームが出てきます。
最終決戦前に『ツインビー』のようなシューティングゲームが入る『コナミワイワイワールド』が1988年1月、ところどころで原作漫画を再現したようなミニゲームが入る『ファミコンジャンプ』が1989年2月……と考えると、1987年4月に出ているコレは相当先進的だと言えます(※1)。
(関連記事:『ファミコンジャンプ 英雄列伝』レビュー/大人気キャラが雑に登場する、二度と作られないであろう豪華オールスターゲー)
(※1:1985年の『チャレンジャー』や1986年の『パルテナの鏡』など、アクションゲームで「ステージによって全然ちがうルールのゲームになる」ものは当時の流行だったとは思います。『沙羅曼蛇』も1986年、『魂斗羅』が同時期の1987年2月か)
まぁ……このミニゲームがあまり面白くない、のはアレなんですが。
「ストーリーに合わせてミニゲームがはさまる」のは、『ファイナルファンタジーVII』(1997年)や『ゼルダの伝説時のオカリナ』(1998年)、『シェンムー 一章』(1999年)等で主流になっていく―――って考えると、10年前からやっているナムコの先進性よ。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『さんまの名探偵』より引用>
「アドベンチャーゲームとしての難易度」に関しては主観になってしまうのだけど、『ポートピア』に比べると相当低くなっているという印象でした。
ファミコン版『ポートピア』は1マス単位で調べなくちゃいけない場面があって、私は最終的に最近出たSteam版と並行してプレイすることで攻略したのですが……『さんまの名探偵』はそういう「何もないところを調べる」みたいな謎解きはなかったし、ストーリー進行に合わせて行けるところが増えていく仕様上、詰まるところもほとんどありませんでした。
(その分、ミニゲームの難易度はちょっと高いと思いますが)
そして、何より……コレです!


<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『さんまの名探偵』より引用>
序盤に解放されるゲームセンターに入ると、『ギャラクシアン』と『ギャラガ』を足したみたいな名前の『ギャラクシガニ』というシューティングゲームが遊べて、クリアするとヒントがもらえます。難易度はかなーり高いですが、失敗によるデメリットはないので何度でも挑戦できます。
詰まった人のために「ゲーム内でヒントをくれる」なんて普通のことだと思われるかも知れませんが、こういう「いつでも任意に聞きに行けて」「その都度必要なことを教えてくれる」救済措置としてのヒント機能は1987年時点ではなかったと思われます。『ファミコンジャンプ』の電話ボックスが1989年、『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』の占い屋が1991年ですからね。
念のため、AI(Grok)に聞いてみたら「ない」って言われました。もしあったらAIが悪い。私は悪くない。
「先に進む方法が分からないとやることがなくなってしまう」アドベンチャーゲームの構造的な弱点の解決策として、「高難度のミニゲームを遊ばせてクリアしたらヒントをくれる」ってのはなかなか上手い落としどころだと思います。
これらの斬新かつ先進的な仕様の数々が、アドベンチャーゲームをほとんど作ったことがないナムコから生まれているというのも面白い話です。
これも後の世代にはピンとこない話だと思うんですが、当時のゲームメーカーは「元々はアーケードゲームを作っていたところ」か「元々はパソコンゲームを作っていたところ」に二分されていました。ファミコンの普及以前は、家庭用ゲーム機の市場はないも同然でしたからね。
「元々アーケードゲームを作っていた」のは、タイトーやナムコ、コナミ、カプコンなど……アクションゲームやシューティングゲームを得意とするメーカーで。
「元々パソコンゲームを作っていた」のは光栄やエニックス、スクウェアなど……シミュレーションゲームやアドベンチャーゲーム、RPGを得意とするメーカーが多かったです。ざっくりとした分類ですが。
ナムコはバリバリの「アーケードゲーム畑」のメーカーで、『ギャラクシアン』『パックマン』『ゼビウス』などなど、看板タイトルもバリバリのアクションゲーム・シューティングゲームがほとんどです。アドベンチャーゲームはそれまで作ったことがなかったはず。
そんなナムコが作ったアドベンチャーゲームである本作だからこそ、「アドベンチャーゲームってこういうものだよね」って固定概念に囚われず、今ファミコンのこども達が遊ぶ気になるアドベンチャーゲームとは……をしっかり考えたゲームになっているんですね。
『ポートピア連続殺人事件』がなかったら生まれなかったゲームでしょうが、「後追い作品」としてこれ以上ないものが出てきたのだろうと思います。
◇ キャラクター性:容疑者は人気芸人たち!何気にオールスターゲーの先駆者だった?
先ほども書いた通り、このゲームの相棒は「明石家さんま」さんです。実在の芸能人です。1980年代中盤は、実在の芸能人が出てくるゲームや、実在の芸能人の名前を使ったゲームが出てきた時代だったんですね。
…アイドル石野陽子さんとのコラボレーションのゲーム。セガは10年早かった案件
・1986年『たけしの挑戦状』
…ビートたけしさんのアイディアをゲームにしたもの。主人公はたけしさんではない
・1986年『聖飢魔II 悪魔の逆襲』
…デーモン小暮閣下を操作するアクションゲーム
・1987年『さんまの名探偵』
…この記事でレビューしているゲーム。明石家さんまさんが相棒のADV
・1987年『所さんのまもるもせめるも』
…所ジョージさんが主人公の、本人企画のゲーム
・1987年『カトちゃんケンちゃん』
…加藤茶さんと志村けんさんが主人公のアクションゲーム
・1987年『中山美穂のトキメキハイスクール』
…恋愛アドベンチャーゲームの先駆け。コンソールアーカイブスに来てくれー!
1987年までのゲームをリストアップしましたが、1988年以降も「タレントゲーム」はムチャクチャ出ています。敬称略で「カケフくん」「田代まさし」「光GENJI」「TM NETWORK」「ラサール石井」……
んで、これらのタレントゲームって……
『カトちゃんケンちゃん』のような例外は稀にありますが、基本的には評判のイイゲームは少ないです。これは漫画・アニメを原作にした「キャラゲー」にも言えることですが、キャラをゲームに当てはめることに精一杯になって、ゲームとして面白くなくなっちゃうってパターンが多いと思うんですね。
なので、この『さんまの名探偵』もそういう「色物」として見る人もいるのですが。ところがどっこい、実際に遊んでみると「ゲームとしてしっかり面白い」し、「タレントを起用していることが活きている」んです。
もしバーチャルコンソールとかで復刻するためにキャラクターを差し替えたりしたら、すごくもったいないと思ってしまうほどでした。
-登場する芸能人(敬称略)-
・明石家さんま…主人公の相棒
・桂文珍…被害者
・オール阪神…容疑者の一人
・オール巨人…容疑者の一人
・太平サブロー…容疑者の一人
・太平シロー…容疑者の一人
・今いくよ…容疑者の一人
・今くるよ…容疑者の一人
・島田紳助…容疑者の一人
・西川のりお…容疑者の一人
・横山やすし…パーティに来なかった人
そんなに芸能人に詳しくない私でもほとんど分かる、ガチのオールスターメンバーです。この他、「実在の芸能人」ではないけれど「実在の芸能人の名前をモデルにしているキャラ」も何人か出てきます。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『さんまの名探偵』より引用>
「さんま」さんと「文珍」さん以外の芸人は、ほとんどが「殺人事件の容疑者」として登場します。芸能人を起用しておきながらソレは失礼では? と思われるかも知れませんが、これが意外としっかり理に適っているんです。
まず、1980年代にはまだ『名探偵コナン』はありませんから、推理小説やそれらを原作にした映画などはあったものの、ファミコンを遊ぶような小学生のこどもには「推理アドベンチャー」のハードルが高かったと思います。容疑者がたくさん出てきても、それらの名前を覚えられない……『ポートピア連続殺人事件』を遊んでも、そういうこども達も多かったんじゃないかと思われます。
でも、こども達にも大人気の「お茶の間の人気者」を容疑者にすれば、最初から容疑者の人となりが分かってごっちゃになったりしないんです。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『さんまの名探偵』より引用>
そのため、それぞれの芸人さんの再現度は非常に高いです。
顔グラフィックはどの人も「特徴を捉えている」し、言動も「この人ならこんなことを言いそう」というパブリックイメージの通りなんです。あまりにも特徴を捉えすぎた結果、その人のその後を予言したみたいな形になっちゃった人もいましたが……

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『さんまの名探偵』より引用>
そして、私は今回初めて分かったんですが、「推理モノアドベンチャーゲーム」は実はオールスターもののゲームに向いているジャンルだったんですね。キャラクター一人一人にしっかり話を聞いて、しかも何度も何度も会話して……というゲームなので、全然知らん人よりも「キャラクターが立っている有名人や有名キャラ」の方が楽しいんです。
恐らくこのゲームに影響を受けたのでしょう、このゲームから1年半後にカプコンが『プロ野球!?殺人事件!』を発売しています。こちらは実名ではありませんが、プロ野球選手をモチーフにした推理アドベンチャーです。
推理アドベンチャーが好きな私からすると、もっともっと雑にオールスターものの推理アドベンチャーを出して欲しいなって思いますね。実在の有名人でも、有名キャラでもイイから。
『アイドルマスター殺人事件』とか、『ニンテンドウオールスター殺人事件』とか、『スーパーロボット殺人事件』とか、『きららファンタジア殺人事件』とか、むちゃくちゃ遊びたいですよ。そして、むちゃくちゃ炎上しそうですよ。
さて、こんな風に「吉本の人気芸人がたくさん出てくるオールスターゲー」で「傑作タレントゲームの代表例」な本作ですが……なんと、当の人気芸人たちには無許可で、出演料も支払われずに発売されたそうです。
これはナムコが「バレなければええやろ!」と作って発売したワケではなくて、吉本興業には許可を取ったのに、その吉本興業が芸人たちに内緒にしていたから……らしいです。
吉本興業は酷いなと思う反面、ゲームが今ほど「文化」として定着する前だから仕方ないと思う気持ちもあって……例えばこの時期に出た『ファミスタ』も無許可で実名選手を出していましたからね(翌年からもじった名前になる)。良くも悪くも、ゲームが「今で言う同人みたいなノリ」で受け止められていたんじゃないかと思います。
一部の芸人さん……太平サブロー・シローさん、島田紳助さん、西川のりおさんはTVCMにも出演していたので、このゲームの存在を知らなかったワケではなくTVCMの出演料は支払われていると思うのですが。
看板を張っている明石家さんまさんはこのことを未だに許していないらしく、よゐこの有野さんが『ゲームセンターCX』で使えないかとさんまさんに直談判した際にも断られたという話があります。
なので、ムチャクチャ出来の良い傑作アドベンチャーで、後のゲームにも少なからず影響を与えている「ターニングポイント」な作品だと思うのに……復刻や移植は絶望的らしいんですね。
◇ 総括

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『さんまの名探偵』より引用>
『ポートピア連続殺人事件』が切り開いた「ファミコン用アドベンチャーゲーム」の道を、更に遊びやすく、こども達にも楽しめる形として仕上げた傑作アドベンチャーゲームです。先進的な仕様の数々は、後の作品にも受け継がれていったのですが……
当のさんまさんの許可を取っていなかったことで復刻や移植は絶望的で、当時の知名度や影響力の割に、後の世代にはあまり知られていないという作品になってしまいました。タレントゲームやキャラゲーは、高評価であっても得てしてそうなりがちではありますが……
個人的には、「やっぱり1980年代のナムコはすげえええええ!」と再確認したゲームでもありました。
今のナムコ(バンダイナムコ)のゲームがつまんないってワケじゃなくて、『学園アイドルマスター』など楽しんでいるゲームもたくさんありますが、1980年代のナムコってやっぱり特別なメーカーだったんですよねぇ。出すゲーム出すゲーム全部面白い、奇跡のようなメーカーだったんです。
Q.え? 『爆突機銃艇』もですか?
A.それはあの……あんまり面白くなかった、けど……



少ないドットなのに芸人さんの特徴をよく捉えていますよね。鬼武者とかジャッジアイズとかリアルになって実在の俳優が映えるゲームもありますけど、昔はテレビ文化が今より人気高かったので、人気芸人さんが出るゲームってだけで話題性抜群だったのかも。
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