※ この記事は2023年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です
<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
・超人気作33作品のキャラが登場する豪華オールスターゲーム
・「オールスターゲームの定番」が出来上がる前に選ばれたジャンルは、アドベンチャー
・夢の対決を実現させる最終決戦は必見!最終決戦を遊ぶために頑張って進めよう
『ファミコンジャンプ 英雄列伝』
・発売:バンダイ
ファミリーコンピュータ用ソフト:1989年2月25日発売
ミニファミコン週刊少年ジャンプバージョン収録:2018年7月7日発売
・アクションアドベンチャー+様々なミニゲーム
・セーブ機能なし、パスワード制
※ パスワードは特定の場所に立ち寄ると教えてもらえる
私がクリアするのにかかった時間は約15時間でした
※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください
【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
※ 苦手な人もいそうなNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。 ・シリアス展開:×
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:◎(亀仙人に渡すビデオで突然裸が映る、普通にエロイ)
・セックスシーン:×
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◇ 超人気作33作品のキャラが登場する豪華オールスターゲーム
このゲームは、「週刊少年ジャンプ」の創刊20周年を記念して作られた「週刊少年ジャンプ歴代連載作品」のオールスターゲームです。「週刊少年ジャンプ」の創刊は1968年7月らしいので、本来は1988年内に発売したかったのでしょうが、カセットの部品が供給に追いつかなかったことで1989年2月発売に延期となったようです。
ちなみに、この「1989年2月」という時期……
『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』が1988年2月に発売され、『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』が1990年2月に発売されているため、ちょうど『ドラクエ』シリーズの狭間に発売されたんですね。当然ながら少年ジャンプ本誌でも特集されていましたし、書店などでも販売していたとのことで、1989年発売のファミコンソフトとしては1番の売上を叩き出したと言われています。
様々な作品のキャラクターが登場する「オールスターゲーム」の歴史を紐解くと、1988年1月に『コナミワイワイワールド』が既に発売されています。コナミのファミコンゲームのキャラが揃って登場するゲームですが、映画版権の『グーニーズ』や『キングコング』のキャラも登場します。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『コナミワイワイワールド』より引用>
漫画やアニメのキャラのクロスオーバー作品と言えば、『SDガンダムワールド ガチャポン戦士』が1987年11月に発売されています。「全部ガンダムじゃないですか」と思われるかも知れませんが、『機動戦士ガンダム』と『機動戦士Zガンダム』と『機動戦士ガンダムZZ』のモビルスーツが一堂に会するゲームで、発想的には後の『スーパーロボット大戦』シリーズなどにもつながっているゲームじゃないかと思うのです。

<画像はWiiバーチャルコンソール版『SDガンダムワールド ガチャポン戦士』より引用>
ちなみに、『マジンガー』シリーズ・『ガンダム』シリーズ・『ゲッターロボ』シリーズの機体が集まったその『スーパーロボット大戦』1作目の発売は1991年4月で。
『ウルトラ』シリーズ・『仮面ライダー』シリーズ・『ガンダム』シリーズ・『戦隊』シリーズが集まったコンパチシリーズの第1弾『SDバトル大相撲 平成ヒーロー場所』の発売は1990年4月です。
1980年代に様々な漫画原作・アニメ原作のゲームが出尽くしたことで、1990年前後に「そうした作品達が一堂に会するオールスターゲーム」が出てくる土壌が生まれていたのかなぁと思います。
『ファミコンジャンプ 英雄列伝』が発売されたのは、そんな時期です。
『ドラゴンボール』のゲームや『北斗の拳』のゲームなど個別の作品のゲーム化は既にされていましたが、そうした作品達がまとめて1つのゲームに登場するだけでなく、「(アニメ化などがされておらず)ゲーム化されるほどではなかった作品」や「テレビゲームが普及する前に連載が終わっていた作品」なども登場するんですね。なので、コンセプト的には『コナミワイワイワールド』というより、後の『スーパーロボット大戦』の方が近いんじゃないかと思われます。
では、このゲームに登場する原作をまとめて紹介します!
理由は後述しますが、1988年の開発当時に連載中だった作品と、既に連載終了していた作品を分けて紹介しますね。連載時期はあくまで「少年ジャンプでの」かつ「当時から地続きの」連載時期で、『ジョジョ』のようにウルトラジャンプに移籍したものや、『キャプテン翼』のように一度連載が終了した後に復活したものは含みません。
アニメ放送時期もあくまで連載当時のもので、後年のリブートものなどは含みません。
<連載中作品>
・『こちら葛飾区亀有公園前派出所』
(連載時期:1976~2016年、アニメ放送時期:1996~2004年)
・『キャプテン翼』
(連載時期:1981~1988年、アニメ放送時期:1983~1986年)
・『北斗の拳』
(連載時期:1983~1988年、アニメ放送時期:1984~1988年)
・『ドラゴンボール』
(連載時期:1984~1995年、アニメ放送時期:1986~1997年)
・『シティーハンター』
(連載時期:1985~1991年、アニメ放送時期:1987~1991年)
・『ついでにとんちんかん』
(連載時期:1985~1989年、アニメ放送時期:1987~1988年)
・『魁!!男塾』
(連載時期:1985~1991年、アニメ放送時期:1988年)
・『聖闘士星矢』
(連載時期:1985~1990年、アニメ放送時期:1986~1989年)
・『県立海空高校野球部員山下たろーくん』
(連載時期:1986~1990年、短編アニメ映画:1988年)
・『ジョジョの奇妙な冒険』
(連載時期:1986~2004年)
・『ゴッドサイダー』
(連載時期:1987~1988年)
・『燃える!お兄さん』
(連載時期:1987~1991年、アニメ放送時期:1988年)
・『THE MOMOTAROH』
(連載時期:1987~1989年)
<連載終了作品>
・『ハレンチ学園』
(連載時期:1968~1972年、実写ドラマ放送時期:1970~1971年)
・『父の魂』
(連載時期:1968~1971年)
・『男一匹ガキ大将』
(連載時期:1968~1973年、アニメ放送時期:1969~1970年)
・『トイレット博士』
(連載時期:1970~1977年)
・『荒野の少年イサム』
(連載時期:1971~1974年、アニメ放送時期:1973~1974年)
・『アストロ球団』
(連載時期:1972~1976年)
・『包丁人味平』
(連載時期:1973~1977年)
・『サーキットの狼』
(連載時期:1975~1979年、実写映画:1977年)
・『ドーベルマン刑事』
(連載時期:1975~1979年、実写映画:1977年、実写ドラマ:1980年)
・『リングにかけろ』
(連載時期:1977~1981年)
・『キン肉マン』
(連載時期:1979~1987年、アニメ放送時期:1983~1986年)
・『Dr.スランプ』
(連載時期:1980~1984年、アニメ放送時期:1981~1986年)
・『3年奇面組』『ハイスクール!奇面組』
(連載時期:1980~1987年、アニメ放送時期:1985~1987年)
・『キャッツ・アイ』
(連載時期:1981~1984年、アニメ放送時期:1983~1985年)
・『キックオフ』
(連載時期:1982~1983年)
・『よろしくメカドック』
(連載時期:1982~1985年、アニメ放送時期:1984~1985年)
・『ウイングマン』
(連載時期:1983~1985年、アニメ放送時期:1984~1985年)
・『シェイプアップ乱』
(連載時期:1983~1986年)
・『銀牙 -流れ星 銀-』
(連載時期:1983~1987年、アニメ放送時期:1986年)
・『きまぐれオレンジ☆ロード』
(連載時期:1984~1987年、アニメ放送時期:1987~1988年)
<作品かどうか微妙なヤツ>
・『マジンガーZ』?…主人公の武器がロケットパンチ
(連載時期:1972~1973年、アニメ放送時期:1972~1974年)
・『ファミコン神拳』…電話ボックスからヒントをくれる
(漫画ではなく、コンピューターゲーム紹介コーナー、掲載時期:1985~1988年頃)
・モノリス…パスワードを教えてくれる
(ジャンプ作品ではなく『2001年宇宙の旅』のパロディ?何故?)
少年ジャンプ創刊号から掲載されている『ハレンチ学園』から、『THE MOMOTAROH』まで網羅されているのは圧巻ですね。
「どうしてこの作品が入っていないの?」という作品を敢えて探してみると、『ど根性ガエル』(※1)、『侍ジャイアンツ』(※2)、『コブラ』(※3)、『はだしのゲン』(※4)、『ストップ!! ひばりくん!』(※5)、『ブラック・エンジェルズ』(※6)辺りですかね。
(※1:1970~1976年連載。2度アニメ化された大ヒット作ですが、後年に明らかになる作者が精神的に追い詰められていた時期と重なるので、その辺の影響かと思われます。近年のジャンプオールスタースマホゲーには登場したらしい)
(※2:1971~1974年連載。野球漫画が多くなることを避けたのと、実在選手も多数登場する原作だったからかと推測されます)
(※3:1978~1984年連載。1988年時点ではスーパージャンプに移籍していたから? 2006年発売の『ジャンプアルティメットスターズ』には参戦している他、近年のジャンプオールスタースマホゲーにも登場しています)
(※4:1973~1974年連載。ジャンプでは単行本化されず、連載終了後に他出版社によって単行本化、他出版社に移っての連載が始まっていたためだと思われます)
(※5:1981~1983年連載。テレビアニメ化もされた人気絶頂時に原稿を落とし、作者から編集部に月刊連載もしくは隔週連載にすることを要請したが連載が打ち切られ、少年ジャンプを追放されたためと思われます)
(※6:1981~1985年連載。同じ平松伸二先生の『ドーベルマン刑事』が参戦しているため?)
当時の少年ジャンプ編集者の鳥嶋和彦さんが後に語ったことには、「アニメ化されなかった漫画はゲーム化もされないため、そういった作品の作者にも印税が入るような作品にしたい」という目論見があったそうなんですね。
鳥嶋さんが集英社に入った時期の、1970年代の少年ジャンプは『マジンガーZ』のゴタゴタ(※7)のせいかアニメ展開に消極的になっていて、1973年開始の『侍ジャイアンツ』から1981年開始の『Dr.スランプ アラレちゃん』までの間は少年ジャンプ原作のアニメが1本もなかったんです。作品リストを見れば分かるんですが、その時期の人気作品である『アストロ球団』も『サーキットの狼』も『リングにかけろ』もアニメ化されていなかったんですね。
鳥嶋さんにとってそれは忸怩たる思いだったのか、過去作品も含めて「アニメ化されなかった作品にもスポットを当てたい」と33作品も登場するオールスターゲームになったのだと思われます。この理由から考えると、編集部と揉めたり、他誌で連載を始めたりした作品が抜けているのも仕方ないのかなと……
(※7:『マジンガーZ』は元々アニメ主導の企画で、ジャンプ編集部は乗り気ではなかったのだけど、永井豪先生サイドの強い要望でテレビアニメと合わせて少年ジャンプで連載がスタートします。しかし、講談社のテレビマガジンでも連載が始まったため、ジャンプ編集部は連載を打ち切りました。ジャンプ掲載分も最後まで単行本に収録されずに絶版になったそうです)
では、この『ファミコンジャンプ 英雄列伝』の何がすごいのかという話を書きます。
33作品もの人気漫画のキャラクターが登場し、そのすべてではないのですが、結構な量のキャラに「顔グラフィック」が用意されているんですよ。


<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
しかも、しっかりと「原作の絵柄」を再現しようとしているという。
1980年代後半はアドベンチャーゲームのブームもあって、ファミコンであってもグラフィック面を強化して「顔グラフィック」でキャラクターを表現するゲームが多く出てきた時期です。
キャラゲーもその流れに乗って「顔グラフィック」で原作のキャラをゲーム内で表現しようとしたんですね。ファミコン時代のバンダイのゲームは「クオリティが低い」と言われることが多いのだけど、年代順に並べてみるとグラフィックがしっかり進化していることが分かるんですよ。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ドラゴンボール 神龍の謎』より引用>
1986年11月発売の『ドラゴンボール 神龍の謎』。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『聖闘士星矢 黄金伝説』より引用>
1987年8月発売の『聖闘士星矢 黄金伝説』。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ドラゴンボール 大魔王復活』より引用>
1988年8月発売の『ドラゴンボール 大魔王復活』。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
1989年2月発売の『ファミコンジャンプ 英雄列伝』。
こう見ると、しっかりと進化した上で『ファミコンジャンプ 英雄列伝』まで到達したことが分かると思います。
オールスターゲームの場合、原作を知らないキャラも登場するため「顔グラフィックの有無」ってムチャクチャ重要だと思うんですね。知っているキャラ目当てで買って、知らないキャラをそこで知って、原作に興味を持つ―――みたいなことがありますからね。そこが『ガチャポン戦士3』(1990年)と『第2次スーパーロボット大戦』(1991年)のちがいだったというか。
この『ファミコンジャンプ 英雄列伝』を遊んだ当時のこども達も、原作は知らないけど『男一匹ガキ大将』とか『アストロ球団』とかの存在をこれで覚えられたワケですからね。
この「顔グラフィック」のクオリティの高さは、もっと評価されるべきだと思います。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
まぁ、MAP上のキャラのグラフィックは相当クオリティ低いと思いますけど。
アラレちゃん、ものすごくブサイクになってるな……
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◇ 「オールスターゲームの定番」が出来上がる前に選ばれたジャンルは、アドベンチャー

<画像はSteam版『THE KING OF FIGHTERS '98 ULTIMATE MATCH FINAL EDITION』より引用>
2023年現在だと、「大人気IPのキャラクターが一堂に会するオールスターゲームを作りたい」企画が持ち上がった場合、ジャンルを「キャラクターを一人ずつ選んで戦う対戦アクション」にするのは一つの候補となるでしょう。
『THE KING OF FIGHTERS』シリーズ(1994年~、SNK)や『ファイターズメガミックス』(1996年、セガ)、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズ(1999年~、任天堂)や『ディシディア ファイナルファンタジー』(2008年~、スクウェア・エニックス)などの人気シリーズがありますからね。恐らく、多くの人が想像する「オールスターゲーム」はこのジャンルになると思われます。
現に、後に出たジャンプのオールスターゲームは『ジャンプスーパースターズ』『ジャンプアルティメットスターズ』(ニンテンドーDS、2005~2006年)にしても、『バトルスタジアム D.O.N』(PS2とゲームキューブ、2006年)にしても、このジャンルと言えますし。
「対戦格闘ゲーム」よりも『ガンダムVS』シリーズに近いと思うのですが、 『ジェイスターズ ビクトリーバーサス』(PS3とVita、2014年)や『JUMP FORCE』(PS4とXboxOneとPC、後にSwitch、2019年~)も「対戦アクション」でした。
しかし、『ストリートファイターII』(カプコン)が登場して対戦格闘ゲームがブームになる1991年はこのゲームの2年後ですし、ファミコンの対戦ゲームの定番だった『ダウンタウン熱血行進曲』(テクノスジャパン)ですらこのゲームの1年後の1990年に発売しています。「キャラクターに個性を持たせた対戦ゲーム」はスポーツゲームくらいしかなかった時期なんですね。
現代だったらファーストチョイスになるようなジャンルが、当時はまだ存在していなかったのです。
また、古今東西の様々なロボットアニメの機体が集まる『スーパーロボット大戦』(1991年~、バンプレスト)のように、シミュレーションRPGにするという選択肢も2023年現在なら候補に挙がるかも知れません。シミュレーションRPGは複数のキャラを同時並行で動かすため、キャラクターの多いオールスターゲームに向いていますからね。
ただ、『ファイアーエムブレム』(任天堂)シリーズが生まれるのが1990年なので、シミュレーションRPGというジャンルもまた『ファミコンジャンプ 英雄列伝』発売時には存在していなかったと言えます。
(関連記事:『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』レビュー/キャラでストーリーを語る「SRPGの型」の完成)
あとは、現在だったら「キャラクターを集めるタイプのスマホゲーム」という候補もあって、実際にジャンプオールスターのスマホゲームは何本か出ていますね。『週刊少年ジャンプ オレコレクション!』(2017~2020年)、『ジャンプチ ヒーローズ』(2018年~)、『週刊少年ジャンプ 実況ジャンジャンスタジアム』(2018~2019年)など。
とは言え、当然『ファミコンジャンプ 英雄列伝』が発売された1989年にはスマホは存在しないので、スマホゲーにしようなんて選択肢はなかったことでしょう。
つまり、現代で「オールスターキャラが一堂に会するゲーム」の定番ジャンルとなっているものは、1989年当時はほぼ存在していなかったんですね。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『コナミワイワイワールド』より引用>
それでは、『ファミコンジャンプ 英雄列伝』の1年前に発売された『コナミワイワイワールド』はどうだったかというと、複数のキャラクターを切り替えながら遊ぶ2D探索アクションゲームでした。
しかし、『コナミワイワイワールド』で仲間になるキャラはたった6人で、それでも後半に仲間になるキャラは「出番が少ない」「影が薄い」と言われました。
(関連記事:『コナミワイワイワールド』レビュー/キャラだけじゃない、あの時代のコナミの魅力が集まったクロスオーバーゲームの先駆け)
そのせいか、続編の『ワイワイワールド2』(1991年)になると、「一定時間のみコナミキャラクターに変身できる」「変身できるキャラは全部で5人」「その中の3人の組み合わせを最初に選ぶ」と大きくゲームデザインが変わりました。登場キャラ5人全員に、活躍の場を均等に与えるバランスを目指したのかなと思います。
『ファミコンジャンプ 英雄列伝』の参戦作品は33作品で、プレイアブルになる味方キャラは主人公を除いて16人です。『コナミワイワイワールド』のように1キャラずつ切り替える方針も、『ワイワイワールド2』のように変身できるキャラをタイミングで選ぶ方針にも出来なかったでしょうから、2Dアクションに落とし込むのは不可能だったと思われます。
では、『ファミコンジャンプ 英雄列伝』がどのジャンルを選んだのかというと……

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
アドベンチャーゲームなんです。
マップ上の様々なところにジャンプ作品のキャラクターがいて、彼ら・彼女らの話を聞くことでヒントをもらったり、フラグが立ってストーリーが進んだりするんですね。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
んで、このヒントとかフラグ立てが、作品の壁を超えたクロスオーバーなやり取りになっているのが面白いのです。↑のスクショは、『ドラゴンボール』のヤムチャが、『北斗の拳』のケンシロウに会う方法を教えてくれるシーンです。
この手法ならば、戦闘に向いていない「ラブコメ作品のヒロイン」とかも自然に登場させることが出来る!

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
そして、白眉なのが「タイムマシーン」の存在です。
このゲームの「現代」では1988年当時に少年ジャンプで連載されていた作品のキャラしか登場しないのだけど、タイムマシーンを使って「過去」に戻ると1987年までに少年ジャンプで連載されていたレジェンド作品のキャラ達が登場するのです。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
『ドラゴンボール』の「西の都」でブルマに会うとタイムマシーンに乗せられて、着いた先は『Dr.スランプ』の「ペンギン村」でセンベエさんにタイムくんを作ってもらうように頼むという激熱展開が始まります。
このケースは同じ作者の「最新作」と「前作」ですけど、他にも例えば「学園モノ漫画」というくくりで「現在の人気作」と「過去のレジェンド作」みたいな絡みも結構あります。
こうして「現代」と「過去」の2つの世界を行き来してゲームを進行させる方式を、『クロノトリガー』(1995年、スクウェア)の6年前、『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』(1991年、任天堂)の2年前にやっていたのもすごく斬新だったと思うんですね。
ただ、プレイアブルキャラになったり、イベントがしっかりある作品は良いんですけど……作品によっては主人公が「ただヒントをくれるだけのモブ」みたいな形でチラッと登場するだけなのは、賛否両論ありそうですね。
レビューサイトなんかでは、「『ドラゴンボール』や『Dr.スランプ』が優遇されすぎ、『ジョジョ』が冷遇されている」みたいな批判がよく書かれているんですけど……
『ジョジョ』はジョセフがプレイアブルだし、エリナ婆ちゃんとスピードワゴンが出てくるし、サンタナ戦と 地獄昇柱 ( ヘルクライム・ピラー ) がミニゲームになっているし、全然優遇されている方ですよ!

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
このゲームで最も冷遇されているのは、『奇面組』の連中でしょ!
一時代を築いた大ヒット作にも関わらず、プレイアブルではない、顔グラフィックもない、イベントもミニゲームもない、一堂零と河川唯が通行人として登場して「シェイプアップ乱の原宗一郎が如何にスケベか」と一言ヒントをくれるだけという。確かにこのヒントは印象的で後で活きてくるんだけど、レジェンドキャラがこんな雑に出てきて要件が終わるともう出てこなくなるの雑すぎて感動するレベルです。
ということで、実はこのゲームに一番近いゲームって『さんまの名探偵』(1987年、ナムコ)じゃないのかって思うんですね。
超有名人が雑に登場して、ところどころでミニゲームが発生するアドベンチャーゲーム―――この型にジャンプキャラクターを当てはめてバトル要素を強めたのが『ファミコンジャンプ 英雄列伝』じゃないのかなと。
『コナミワイワイワールド』でも言われていましたが、オールスターゲームの場合は一人一人のキャラに思い入れのあるファンがいるため、自分の好きなキャラの出番が少なかったり冷遇されたり感じるとそれだけで不満点になっちゃうんですね。
そのため、続編の『ファミコンジャンプII 最強の7人』(1991年12月発売)では、参戦作品を7作品に絞って、7作品のどこからでもスタートできる『オクトパストラベラー』方式に変わりました。それでも優遇されている・冷遇されていると言い出す人はいましたが、活躍の機会を均等にできる一応の解決策だったかなと思います。
そして、それ以降のオールスターゲームと言えば、先に述べたように『スーパーロボット大戦』式のSRPGや、『KOF』式の格闘ゲームなどのジャンルが定着したので……『ファミコンジャンプ 英雄列伝』みたいに、レジェンドキャラが雑にモブとして登場するオールスターゲームは出なくなったと思うんですね。
でも、私は一つの作品だけに愛情を注ぐのではなく、いろんな作品を広く浅く楽しむ宇宙飛行士タイプなので……こういう「今チラッと登場したの、○○って作品のヒロインじゃん!」みたいなこの作品がムチャクチャ楽しかったんですよねぇ。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
このゲームをジャンル分けする際には「アクションRPG」と書かれることが多いみたいで、実際に当時のTVCMでは「RPG」と思いっきり言っていたのですが……一般的に「RPG」と表現されてイメージする「敵を倒して経験値をもらってレベルアップする」要素はありません。
最終決戦で有利になる要素はあるのですが、それは次の項で書きます。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
シンボルエンカウントのザコ敵に近づくとアクションバトルが始まるので、個人的には『ポートピア』や『ドラクエ』の「アドベンチャーゲーム」の要素+アクションバトル=「アクションアドベンチャー」というジャンルで説明した方がイイと思います。
とは言え、「アクションアドベンチャー」も人によってイメージするものがちがうふわっとしたジャンルなんですよね……

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
このゲームで仲間になるキャラは、主人公である自分を除いて16人もいるのですが……「エリア」ごと、「現代」「過去」ごとに連れ歩けるキャラが分かれていて、例えばエリア1で仲間になるケンシロウはエリア2には連れていけないし、エリア2の「過去」で仲間になるアラレちゃんを「現代」に連れてくることは出来ません。
ということで、主人公+最大でも仲間2人=最大3人パーティなのですが、シンボルエンカウントで戦闘が始まると先頭のキャラだけを操作してのアクションバトルになります。途中交代とか回復とかもなし。「流石、少年ジャンプのゲーム化だ、あくまで1対1で戦うんだな」と言いたいけど、相手は2人に増殖したりするんですよね。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
正直このゲームの評判を落としている8割の原因は、このアクションバトルの出来が悪いところだと思います。
操作性があまり気持ち良くないのもアレなんですが、「Aボタンで近接攻撃」、「Bボタンで飛び道具」で、「Bボタンで飛び道具」のクールタイムがクソ長くて戦闘に時間がムチャクチャかかるんですね。かと言って、「Aボタンで近接攻撃」に頼ろうとすると大ダメージを喰らって瞬殺されるとかもあるし……
初期の状態から「Bボタンで飛び道具」のクールタイムは長いと思うのですが、「こころ」ゲージが悪に傾くとさらに長くなります。「こころ」ゲージが悪に傾く条件は、ミニゲームで負ける、筋斗雲に乗る、シンボルエンカウントで遭遇した敵が実は攻撃してこない善人だったけど気付かずに倒してしまう(見た目では区別がつかない)などなどで……
「こころ」ゲージを回復させる方法は、コンビニでジャンプを買って読むだけです。
んで、このジャンプでの回復が1目盛りしか回復しないのに、まとめ買いもまとめて消費もできないため、ひたすらコンビニを出入りしてジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててと繰り返すしかないという。
ファミコン時代のバンダイ作品にありがちな、プレイヤーを縛る余計なシステムを入れたせいで評判を落とすヤツですよ。『ドラゴンボール 神龍の謎』の高速で腹が減る悟空とかのヤツ! こればっかりは擁護できないです!
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◇ 夢の対決を実現させる最終決戦は必見!最終決戦を遊ぶために頑張って進めよう
参戦作品の33作品は、バトルあり、ラブコメあり、ギャグありという本当に多彩なラインナップです。その原作の魅力を再現するため、道中で様々なミニゲームが始まるのも先鋭的なところだと思います。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
ボクシング漫画『リングにかけろ』絡みのイベントでは、『アーバンチャンピオン』(1984年、任天堂)のような格闘ゲームが始まったり。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
野球漫画『県立海空高校野球部員山下たろーくん』絡みのイベントでは、『ファミスタ』(1986年~、ナムコ)のような野球ゲームが始まったり。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
SF漫画『ウィングマン』絡みのイベントでは、縦スクロールシューティングゲームが始まったり。
この他にも、原作を再現しようとした様々なミニゲームがストーリー展開の中で出てくるんですね。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
ちょっと待て!
『北斗の拳』の赤鯱が潜水艦に乗せてくれるミニゲームって、マジで何なの!? 私つい最近『北斗の拳』全巻読んだんですけど、赤鯱は潜水艦なんか乗っていないし、そもそも『北斗の拳』の世界に潜水艦なんか残っていないんじゃないのか!?
これらのミニゲーム、お世辞にも「出来が良い」とは言えないんですけど……ストーリー展開に合わせて様々なミニゲームが始まるのは、むちゃくちゃ先鋭的だったと思うんですよ。『ファイナルファンタジーVII』(1997年、スクウェア)の8年前ですからね。一つ一つのミニゲームを作りこむ開発期間と、多彩なミニゲームを可能にするマシンスペックさえあれば、と思わなくもないです。
そして……
このゲームを語る際に、絶対に欠かせないのが「最終決戦」の話です。
普通だったら、ゲームの「最終決戦」の話なんてこれ以上ないネタバレなんで書かない方がイイと思うのですが……このゲームは「最終決戦」が一番面白くて、「最終決戦」のためにそこまで頑張って遊ぶくらいなんですよ。だから、このゲームを碌に知らずに「クソゲーなんでしょ?」なんて言われないためにも、しっかりと「最終決戦」について語りましょう!

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
なんと、最終決戦のみ「コマンドバトル」なんですよ! このせいで公式がこのゲームのことを「RPG」と言い張ったんじゃないかと思うのですが、ここに来るまでの道中が長すぎるだろう……
「歴代ジャンプ漫画の主人公16人」vs.「歴代ジャンプ漫画の強敵13人」で、順番に出てくる強敵に合わせてこちらが1キャラずつ選んで1対1で戦う形式です。
分かりやすく言うと、『魁!!男塾』の「天挑五輪大武會」のシステムです。最終決戦の方式がコレなの、ジャンプゲームのラストに相応しすぎて大好き!

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
主人公16人はそれぞれ2~3の必殺技を持っていて、使うと専用のグラフィックが出てくる演出もすごい。すべて最終決戦でしか使わていないグラフィックですからね。
邪鬼には桃をぶつけるみたいな原作再現をしてもイイのだけど、意外なキャラが相性良かったりするので、それを探すのも面白いです。原作を知っているとニヤリと出来る組み合わせも多く、スタッフの方々のジャンプ愛を感じますね。なら、どうして赤鯱が潜水艦に乗っている設定に……
残念ながら、すべての敵に対してすべてのキャラで戦えるワケではなくて、対戦を拒否されてしまう組み合わせもあるんですが……
例えば、『アストロ球団』の峠球四郎戦は「野球のルールを知らないキャラで戦うことができない」説があったりしてなかなかに面白いんです。確かに、『ドラゴンボール』の悟空は野球のルールを知らないだろうけど、『Dr.スランプ』のアラレちゃんは原作で野球やる回があったわ!みたいな。
ちなみに、必殺技を使うためのMP的なパラメーターこそが、ザコ敵をせっせと倒すと溜まっていく経験値的な要素で……最終決戦をしっかり楽しもうとすると、そこまでゲームを進めた上で、全キャラでチマチマと経験値稼ぎをしなくちゃなりません。
『ファミコンジャンプ』面白いですよ!と私がどんなに言ったところで、そこまで我慢して遊んでくれる人も少ないでしょうから……
最終決戦直前のパスワードをここに残しておきます。
一応、全キャラのパラメータはMAX直前(パスワードで再開したら何故か半欠け分だけ減っちゃうんだけど、これは何故?)で、「こころ」パラメーターも善側MAXまで上げています。
どうぞ、一番面白いところだけ遊べばイイさ!!

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
ちなみに、このパスワード……40文字もあって「無駄に長い」とよく言われるのですが。
このゲーム、実はかなり自由度が高くて、16人いる仲間を全員仲間にしなくてもクリア出来ちゃうんですね。最低人数だと5人だったかな。そのキャラ達1人1人に経験値的なパラメータと、更にやってもやらなくても良いパワーアップイベントなんかもムチャクチャたくさんあるので、パスワードが長くなっちゃうのも仕方ないんです。
「じゃあ、バッテリーバックアップにしてくれたら良かったんじゃない?」と言いたくもなるのですが……実は、もしこのゲームがバッテリーバックアップだったら詰んでたかも知れないんですよ。
というのも、パスワードで引き継げない内容に「各キャラのライフ」があって、パスワードで再開すると必ず全キャラが全回復&死んでいたキャラも復活するんです。これがないとムチャクチャ厳しいんです。
何故なら、「エリア2の過去世界」や「エリア5」にはレストランがないため、回復手段が「パスワードで一旦中断して再開」しかないんですよ。もしこれがバッテリーバックアップで各キャラのライフも引き継がれた場合、「エリア5」の仲間のライフを回復させるためには、「他のエリアでおにぎりを買ってくる」→ 「エリア5で仲間を呼び出して、おにぎりを食わせる」→ 「それだけでは全回復しないため、また他のエリアにもどっておにぎりを買ってくる」→ 「エリア5で仲間を呼び出して、おにぎりを食わせる」を延々と繰り返すしかないんですね。
だから、セーブ機能のあるレトロフリークでプレイした私でも、パスワードでの中断→ 再開を頻繁にやっていました。
いや、そもそも各エリアに回復ポイントくらい作れや!!
◆ で、結局どういう人にオススメ?

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
減点法で考えると、ダメなところや擁護できないところはたくさんあるんだけど……
加点法で考えると、他のゲームにはない魅力がある作品だし、こんな作品は恐らく二度と作られないであろう「雑な豪華さ」だったと思うんですね。少なくとも手抜きで作ったゲームではないと思うし、原作愛がしっかりとあるゲームだと思います。赤鯱が潜水艦に乗っている件は、許す!
「作品間の垣根を超えた夢の対決」を楽しめる人には、是非オススメです!
アクションバトルやミニゲームはともかく、アドベンチャーゲームとしては難易度は高くなくて、「次にどこに行くか」とか「フラグ立て」は攻略を見ないでも大丈夫なくらいなのも良いですね。『ドラクエIII』辺りの時代なので、中盤「さぁ、好きなところに行くがイイ!」と放り出されるのも好きなところです。
個人的には、「現在のマシンスペックでフルリメイクして欲しいファミコンのゲーム」第1位なんですけど、絶対にムリでしょうね! この路線のオールスターゲーム、ジャンプと言わず、どこかが出してくれないかなぁ。
・「オールスターゲームの定番」が出来上がる前に選ばれたジャンルは、アドベンチャー
・夢の対決を実現させる最終決戦は必見!最終決戦を遊ぶために頑張って進めよう
『ファミコンジャンプ 英雄列伝』
・発売:バンダイ
ファミリーコンピュータ用ソフト:1989年2月25日発売
ミニファミコン週刊少年ジャンプバージョン収録:2018年7月7日発売
・アクションアドベンチャー+様々なミニゲーム
・セーブ機能なし、パスワード制
※ パスワードは特定の場所に立ち寄ると教えてもらえる
私がクリアするのにかかった時間は約15時間でした
※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください
【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
※ 苦手な人もいそうなNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。 ・シリアス展開:×
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:◎(亀仙人に渡すビデオで突然裸が映る、普通にエロイ)
・セックスシーン:×
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◇ 超人気作33作品のキャラが登場する豪華オールスターゲーム
このゲームは、「週刊少年ジャンプ」の創刊20周年を記念して作られた「週刊少年ジャンプ歴代連載作品」のオールスターゲームです。「週刊少年ジャンプ」の創刊は1968年7月らしいので、本来は1988年内に発売したかったのでしょうが、カセットの部品が供給に追いつかなかったことで1989年2月発売に延期となったようです。
ちなみに、この「1989年2月」という時期……
『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』が1988年2月に発売され、『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』が1990年2月に発売されているため、ちょうど『ドラクエ』シリーズの狭間に発売されたんですね。当然ながら少年ジャンプ本誌でも特集されていましたし、書店などでも販売していたとのことで、1989年発売のファミコンソフトとしては1番の売上を叩き出したと言われています。
様々な作品のキャラクターが登場する「オールスターゲーム」の歴史を紐解くと、1988年1月に『コナミワイワイワールド』が既に発売されています。コナミのファミコンゲームのキャラが揃って登場するゲームですが、映画版権の『グーニーズ』や『キングコング』のキャラも登場します。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『コナミワイワイワールド』より引用>
漫画やアニメのキャラのクロスオーバー作品と言えば、『SDガンダムワールド ガチャポン戦士』が1987年11月に発売されています。「全部ガンダムじゃないですか」と思われるかも知れませんが、『機動戦士ガンダム』と『機動戦士Zガンダム』と『機動戦士ガンダムZZ』のモビルスーツが一堂に会するゲームで、発想的には後の『スーパーロボット大戦』シリーズなどにもつながっているゲームじゃないかと思うのです。

<画像はWiiバーチャルコンソール版『SDガンダムワールド ガチャポン戦士』より引用>
ちなみに、『マジンガー』シリーズ・『ガンダム』シリーズ・『ゲッターロボ』シリーズの機体が集まったその『スーパーロボット大戦』1作目の発売は1991年4月で。
『ウルトラ』シリーズ・『仮面ライダー』シリーズ・『ガンダム』シリーズ・『戦隊』シリーズが集まったコンパチシリーズの第1弾『SDバトル大相撲 平成ヒーロー場所』の発売は1990年4月です。
1980年代に様々な漫画原作・アニメ原作のゲームが出尽くしたことで、1990年前後に「そうした作品達が一堂に会するオールスターゲーム」が出てくる土壌が生まれていたのかなぁと思います。
『ファミコンジャンプ 英雄列伝』が発売されたのは、そんな時期です。
『ドラゴンボール』のゲームや『北斗の拳』のゲームなど個別の作品のゲーム化は既にされていましたが、そうした作品達がまとめて1つのゲームに登場するだけでなく、「(アニメ化などがされておらず)ゲーム化されるほどではなかった作品」や「テレビゲームが普及する前に連載が終わっていた作品」なども登場するんですね。なので、コンセプト的には『コナミワイワイワールド』というより、後の『スーパーロボット大戦』の方が近いんじゃないかと思われます。
では、このゲームに登場する原作をまとめて紹介します!
理由は後述しますが、1988年の開発当時に連載中だった作品と、既に連載終了していた作品を分けて紹介しますね。連載時期はあくまで「少年ジャンプでの」かつ「当時から地続きの」連載時期で、『ジョジョ』のようにウルトラジャンプに移籍したものや、『キャプテン翼』のように一度連載が終了した後に復活したものは含みません。
アニメ放送時期もあくまで連載当時のもので、後年のリブートものなどは含みません。
<連載中作品>
・『こちら葛飾区亀有公園前派出所』
(連載時期:1976~2016年、アニメ放送時期:1996~2004年)
・『キャプテン翼』
(連載時期:1981~1988年、アニメ放送時期:1983~1986年)
・『北斗の拳』
(連載時期:1983~1988年、アニメ放送時期:1984~1988年)
・『ドラゴンボール』
(連載時期:1984~1995年、アニメ放送時期:1986~1997年)
・『シティーハンター』
(連載時期:1985~1991年、アニメ放送時期:1987~1991年)
・『ついでにとんちんかん』
(連載時期:1985~1989年、アニメ放送時期:1987~1988年)
・『魁!!男塾』
(連載時期:1985~1991年、アニメ放送時期:1988年)
・『聖闘士星矢』
(連載時期:1985~1990年、アニメ放送時期:1986~1989年)
・『県立海空高校野球部員山下たろーくん』
(連載時期:1986~1990年、短編アニメ映画:1988年)
・『ジョジョの奇妙な冒険』
(連載時期:1986~2004年)
・『ゴッドサイダー』
(連載時期:1987~1988年)
・『燃える!お兄さん』
(連載時期:1987~1991年、アニメ放送時期:1988年)
・『THE MOMOTAROH』
(連載時期:1987~1989年)
<連載終了作品>
・『ハレンチ学園』
(連載時期:1968~1972年、実写ドラマ放送時期:1970~1971年)
・『父の魂』
(連載時期:1968~1971年)
・『男一匹ガキ大将』
(連載時期:1968~1973年、アニメ放送時期:1969~1970年)
・『トイレット博士』
(連載時期:1970~1977年)
・『荒野の少年イサム』
(連載時期:1971~1974年、アニメ放送時期:1973~1974年)
・『アストロ球団』
(連載時期:1972~1976年)
・『包丁人味平』
(連載時期:1973~1977年)
・『サーキットの狼』
(連載時期:1975~1979年、実写映画:1977年)
・『ドーベルマン刑事』
(連載時期:1975~1979年、実写映画:1977年、実写ドラマ:1980年)
・『リングにかけろ』
(連載時期:1977~1981年)
・『キン肉マン』
(連載時期:1979~1987年、アニメ放送時期:1983~1986年)
・『Dr.スランプ』
(連載時期:1980~1984年、アニメ放送時期:1981~1986年)
・『3年奇面組』『ハイスクール!奇面組』
(連載時期:1980~1987年、アニメ放送時期:1985~1987年)
・『キャッツ・アイ』
(連載時期:1981~1984年、アニメ放送時期:1983~1985年)
・『キックオフ』
(連載時期:1982~1983年)
・『よろしくメカドック』
(連載時期:1982~1985年、アニメ放送時期:1984~1985年)
・『ウイングマン』
(連載時期:1983~1985年、アニメ放送時期:1984~1985年)
・『シェイプアップ乱』
(連載時期:1983~1986年)
・『銀牙 -流れ星 銀-』
(連載時期:1983~1987年、アニメ放送時期:1986年)
・『きまぐれオレンジ☆ロード』
(連載時期:1984~1987年、アニメ放送時期:1987~1988年)
<作品かどうか微妙なヤツ>
・『マジンガーZ』?…主人公の武器がロケットパンチ
(連載時期:1972~1973年、アニメ放送時期:1972~1974年)
・『ファミコン神拳』…電話ボックスからヒントをくれる
(漫画ではなく、コンピューターゲーム紹介コーナー、掲載時期:1985~1988年頃)
・モノリス…パスワードを教えてくれる
(ジャンプ作品ではなく『2001年宇宙の旅』のパロディ?何故?)
少年ジャンプ創刊号から掲載されている『ハレンチ学園』から、『THE MOMOTAROH』まで網羅されているのは圧巻ですね。
「どうしてこの作品が入っていないの?」という作品を敢えて探してみると、『ど根性ガエル』(※1)、『侍ジャイアンツ』(※2)、『コブラ』(※3)、『はだしのゲン』(※4)、『ストップ!! ひばりくん!』(※5)、『ブラック・エンジェルズ』(※6)辺りですかね。
(※1:1970~1976年連載。2度アニメ化された大ヒット作ですが、後年に明らかになる作者が精神的に追い詰められていた時期と重なるので、その辺の影響かと思われます。近年のジャンプオールスタースマホゲーには登場したらしい)
(※2:1971~1974年連載。野球漫画が多くなることを避けたのと、実在選手も多数登場する原作だったからかと推測されます)
(※3:1978~1984年連載。1988年時点ではスーパージャンプに移籍していたから? 2006年発売の『ジャンプアルティメットスターズ』には参戦している他、近年のジャンプオールスタースマホゲーにも登場しています)
(※4:1973~1974年連載。ジャンプでは単行本化されず、連載終了後に他出版社によって単行本化、他出版社に移っての連載が始まっていたためだと思われます)
(※5:1981~1983年連載。テレビアニメ化もされた人気絶頂時に原稿を落とし、作者から編集部に月刊連載もしくは隔週連載にすることを要請したが連載が打ち切られ、少年ジャンプを追放されたためと思われます)
(※6:1981~1985年連載。同じ平松伸二先生の『ドーベルマン刑事』が参戦しているため?)
当時の少年ジャンプ編集者の鳥嶋和彦さんが後に語ったことには、「アニメ化されなかった漫画はゲーム化もされないため、そういった作品の作者にも印税が入るような作品にしたい」という目論見があったそうなんですね。
鳥嶋さんが集英社に入った時期の、1970年代の少年ジャンプは『マジンガーZ』のゴタゴタ(※7)のせいかアニメ展開に消極的になっていて、1973年開始の『侍ジャイアンツ』から1981年開始の『Dr.スランプ アラレちゃん』までの間は少年ジャンプ原作のアニメが1本もなかったんです。作品リストを見れば分かるんですが、その時期の人気作品である『アストロ球団』も『サーキットの狼』も『リングにかけろ』もアニメ化されていなかったんですね。
鳥嶋さんにとってそれは忸怩たる思いだったのか、過去作品も含めて「アニメ化されなかった作品にもスポットを当てたい」と33作品も登場するオールスターゲームになったのだと思われます。この理由から考えると、編集部と揉めたり、他誌で連載を始めたりした作品が抜けているのも仕方ないのかなと……
(※7:『マジンガーZ』は元々アニメ主導の企画で、ジャンプ編集部は乗り気ではなかったのだけど、永井豪先生サイドの強い要望でテレビアニメと合わせて少年ジャンプで連載がスタートします。しかし、講談社のテレビマガジンでも連載が始まったため、ジャンプ編集部は連載を打ち切りました。ジャンプ掲載分も最後まで単行本に収録されずに絶版になったそうです)
では、この『ファミコンジャンプ 英雄列伝』の何がすごいのかという話を書きます。
33作品もの人気漫画のキャラクターが登場し、そのすべてではないのですが、結構な量のキャラに「顔グラフィック」が用意されているんですよ。
<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
しかも、しっかりと「原作の絵柄」を再現しようとしているという。
1980年代後半はアドベンチャーゲームのブームもあって、ファミコンであってもグラフィック面を強化して「顔グラフィック」でキャラクターを表現するゲームが多く出てきた時期です。
キャラゲーもその流れに乗って「顔グラフィック」で原作のキャラをゲーム内で表現しようとしたんですね。ファミコン時代のバンダイのゲームは「クオリティが低い」と言われることが多いのだけど、年代順に並べてみるとグラフィックがしっかり進化していることが分かるんですよ。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ドラゴンボール 神龍の謎』より引用>
1986年11月発売の『ドラゴンボール 神龍の謎』。
<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『聖闘士星矢 黄金伝説』より引用>
1987年8月発売の『聖闘士星矢 黄金伝説』。
<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ドラゴンボール 大魔王復活』より引用>
1988年8月発売の『ドラゴンボール 大魔王復活』。
<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
1989年2月発売の『ファミコンジャンプ 英雄列伝』。
こう見ると、しっかりと進化した上で『ファミコンジャンプ 英雄列伝』まで到達したことが分かると思います。
オールスターゲームの場合、原作を知らないキャラも登場するため「顔グラフィックの有無」ってムチャクチャ重要だと思うんですね。知っているキャラ目当てで買って、知らないキャラをそこで知って、原作に興味を持つ―――みたいなことがありますからね。そこが『ガチャポン戦士3』(1990年)と『第2次スーパーロボット大戦』(1991年)のちがいだったというか。
この『ファミコンジャンプ 英雄列伝』を遊んだ当時のこども達も、原作は知らないけど『男一匹ガキ大将』とか『アストロ球団』とかの存在をこれで覚えられたワケですからね。
この「顔グラフィック」のクオリティの高さは、もっと評価されるべきだと思います。
<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
まぁ、MAP上のキャラのグラフィックは相当クオリティ低いと思いますけど。
アラレちゃん、ものすごくブサイクになってるな……
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◇ 「オールスターゲームの定番」が出来上がる前に選ばれたジャンルは、アドベンチャー
<画像はSteam版『THE KING OF FIGHTERS '98 ULTIMATE MATCH FINAL EDITION』より引用>
2023年現在だと、「大人気IPのキャラクターが一堂に会するオールスターゲームを作りたい」企画が持ち上がった場合、ジャンルを「キャラクターを一人ずつ選んで戦う対戦アクション」にするのは一つの候補となるでしょう。
『THE KING OF FIGHTERS』シリーズ(1994年~、SNK)や『ファイターズメガミックス』(1996年、セガ)、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズ(1999年~、任天堂)や『ディシディア ファイナルファンタジー』(2008年~、スクウェア・エニックス)などの人気シリーズがありますからね。恐らく、多くの人が想像する「オールスターゲーム」はこのジャンルになると思われます。
現に、後に出たジャンプのオールスターゲームは『ジャンプスーパースターズ』『ジャンプアルティメットスターズ』(ニンテンドーDS、2005~2006年)にしても、『バトルスタジアム D.O.N』(PS2とゲームキューブ、2006年)にしても、このジャンルと言えますし。
「対戦格闘ゲーム」よりも『ガンダムVS』シリーズに近いと思うのですが、 『ジェイスターズ ビクトリーバーサス』(PS3とVita、2014年)や『JUMP FORCE』(PS4とXboxOneとPC、後にSwitch、2019年~)も「対戦アクション」でした。
しかし、『ストリートファイターII』(カプコン)が登場して対戦格闘ゲームがブームになる1991年はこのゲームの2年後ですし、ファミコンの対戦ゲームの定番だった『ダウンタウン熱血行進曲』(テクノスジャパン)ですらこのゲームの1年後の1990年に発売しています。「キャラクターに個性を持たせた対戦ゲーム」はスポーツゲームくらいしかなかった時期なんですね。
現代だったらファーストチョイスになるようなジャンルが、当時はまだ存在していなかったのです。
また、古今東西の様々なロボットアニメの機体が集まる『スーパーロボット大戦』(1991年~、バンプレスト)のように、シミュレーションRPGにするという選択肢も2023年現在なら候補に挙がるかも知れません。シミュレーションRPGは複数のキャラを同時並行で動かすため、キャラクターの多いオールスターゲームに向いていますからね。
ただ、『ファイアーエムブレム』(任天堂)シリーズが生まれるのが1990年なので、シミュレーションRPGというジャンルもまた『ファミコンジャンプ 英雄列伝』発売時には存在していなかったと言えます。
(関連記事:『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』レビュー/キャラでストーリーを語る「SRPGの型」の完成)
あとは、現在だったら「キャラクターを集めるタイプのスマホゲーム」という候補もあって、実際にジャンプオールスターのスマホゲームは何本か出ていますね。『週刊少年ジャンプ オレコレクション!』(2017~2020年)、『ジャンプチ ヒーローズ』(2018年~)、『週刊少年ジャンプ 実況ジャンジャンスタジアム』(2018~2019年)など。
とは言え、当然『ファミコンジャンプ 英雄列伝』が発売された1989年にはスマホは存在しないので、スマホゲーにしようなんて選択肢はなかったことでしょう。
つまり、現代で「オールスターキャラが一堂に会するゲーム」の定番ジャンルとなっているものは、1989年当時はほぼ存在していなかったんですね。

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『コナミワイワイワールド』より引用>
それでは、『ファミコンジャンプ 英雄列伝』の1年前に発売された『コナミワイワイワールド』はどうだったかというと、複数のキャラクターを切り替えながら遊ぶ2D探索アクションゲームでした。
しかし、『コナミワイワイワールド』で仲間になるキャラはたった6人で、それでも後半に仲間になるキャラは「出番が少ない」「影が薄い」と言われました。
(関連記事:『コナミワイワイワールド』レビュー/キャラだけじゃない、あの時代のコナミの魅力が集まったクロスオーバーゲームの先駆け)
そのせいか、続編の『ワイワイワールド2』(1991年)になると、「一定時間のみコナミキャラクターに変身できる」「変身できるキャラは全部で5人」「その中の3人の組み合わせを最初に選ぶ」と大きくゲームデザインが変わりました。登場キャラ5人全員に、活躍の場を均等に与えるバランスを目指したのかなと思います。
『ファミコンジャンプ 英雄列伝』の参戦作品は33作品で、プレイアブルになる味方キャラは主人公を除いて16人です。『コナミワイワイワールド』のように1キャラずつ切り替える方針も、『ワイワイワールド2』のように変身できるキャラをタイミングで選ぶ方針にも出来なかったでしょうから、2Dアクションに落とし込むのは不可能だったと思われます。
では、『ファミコンジャンプ 英雄列伝』がどのジャンルを選んだのかというと……
<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
アドベンチャーゲームなんです。
マップ上の様々なところにジャンプ作品のキャラクターがいて、彼ら・彼女らの話を聞くことでヒントをもらったり、フラグが立ってストーリーが進んだりするんですね。
<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
んで、このヒントとかフラグ立てが、作品の壁を超えたクロスオーバーなやり取りになっているのが面白いのです。↑のスクショは、『ドラゴンボール』のヤムチャが、『北斗の拳』のケンシロウに会う方法を教えてくれるシーンです。
この手法ならば、戦闘に向いていない「ラブコメ作品のヒロイン」とかも自然に登場させることが出来る!
<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
そして、白眉なのが「タイムマシーン」の存在です。
このゲームの「現代」では1988年当時に少年ジャンプで連載されていた作品のキャラしか登場しないのだけど、タイムマシーンを使って「過去」に戻ると1987年までに少年ジャンプで連載されていたレジェンド作品のキャラ達が登場するのです。
<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
『ドラゴンボール』の「西の都」でブルマに会うとタイムマシーンに乗せられて、着いた先は『Dr.スランプ』の「ペンギン村」でセンベエさんにタイムくんを作ってもらうように頼むという激熱展開が始まります。
このケースは同じ作者の「最新作」と「前作」ですけど、他にも例えば「学園モノ漫画」というくくりで「現在の人気作」と「過去のレジェンド作」みたいな絡みも結構あります。
こうして「現代」と「過去」の2つの世界を行き来してゲームを進行させる方式を、『クロノトリガー』(1995年、スクウェア)の6年前、『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』(1991年、任天堂)の2年前にやっていたのもすごく斬新だったと思うんですね。
ただ、プレイアブルキャラになったり、イベントがしっかりある作品は良いんですけど……作品によっては主人公が「ただヒントをくれるだけのモブ」みたいな形でチラッと登場するだけなのは、賛否両論ありそうですね。
レビューサイトなんかでは、「『ドラゴンボール』や『Dr.スランプ』が優遇されすぎ、『ジョジョ』が冷遇されている」みたいな批判がよく書かれているんですけど……
『ジョジョ』はジョセフがプレイアブルだし、エリナ婆ちゃんとスピードワゴンが出てくるし、サンタナ戦と 地獄昇柱 ( ヘルクライム・ピラー ) がミニゲームになっているし、全然優遇されている方ですよ!
<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
このゲームで最も冷遇されているのは、『奇面組』の連中でしょ!
一時代を築いた大ヒット作にも関わらず、プレイアブルではない、顔グラフィックもない、イベントもミニゲームもない、一堂零と河川唯が通行人として登場して「シェイプアップ乱の原宗一郎が如何にスケベか」と一言ヒントをくれるだけという。確かにこのヒントは印象的で後で活きてくるんだけど、レジェンドキャラがこんな雑に出てきて要件が終わるともう出てこなくなるの雑すぎて感動するレベルです。
ということで、実はこのゲームに一番近いゲームって『さんまの名探偵』(1987年、ナムコ)じゃないのかって思うんですね。
超有名人が雑に登場して、ところどころでミニゲームが発生するアドベンチャーゲーム―――この型にジャンプキャラクターを当てはめてバトル要素を強めたのが『ファミコンジャンプ 英雄列伝』じゃないのかなと。
『コナミワイワイワールド』でも言われていましたが、オールスターゲームの場合は一人一人のキャラに思い入れのあるファンがいるため、自分の好きなキャラの出番が少なかったり冷遇されたり感じるとそれだけで不満点になっちゃうんですね。
そのため、続編の『ファミコンジャンプII 最強の7人』(1991年12月発売)では、参戦作品を7作品に絞って、7作品のどこからでもスタートできる『オクトパストラベラー』方式に変わりました。それでも優遇されている・冷遇されていると言い出す人はいましたが、活躍の機会を均等にできる一応の解決策だったかなと思います。
そして、それ以降のオールスターゲームと言えば、先に述べたように『スーパーロボット大戦』式のSRPGや、『KOF』式の格闘ゲームなどのジャンルが定着したので……『ファミコンジャンプ 英雄列伝』みたいに、レジェンドキャラが雑にモブとして登場するオールスターゲームは出なくなったと思うんですね。
でも、私は一つの作品だけに愛情を注ぐのではなく、いろんな作品を広く浅く楽しむ宇宙飛行士タイプなので……こういう「今チラッと登場したの、○○って作品のヒロインじゃん!」みたいなこの作品がムチャクチャ楽しかったんですよねぇ。
<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
このゲームをジャンル分けする際には「アクションRPG」と書かれることが多いみたいで、実際に当時のTVCMでは「RPG」と思いっきり言っていたのですが……一般的に「RPG」と表現されてイメージする「敵を倒して経験値をもらってレベルアップする」要素はありません。
最終決戦で有利になる要素はあるのですが、それは次の項で書きます。
<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
シンボルエンカウントのザコ敵に近づくとアクションバトルが始まるので、個人的には『ポートピア』や『ドラクエ』の「アドベンチャーゲーム」の要素+アクションバトル=「アクションアドベンチャー」というジャンルで説明した方がイイと思います。
とは言え、「アクションアドベンチャー」も人によってイメージするものがちがうふわっとしたジャンルなんですよね……
<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
このゲームで仲間になるキャラは、主人公である自分を除いて16人もいるのですが……「エリア」ごと、「現代」「過去」ごとに連れ歩けるキャラが分かれていて、例えばエリア1で仲間になるケンシロウはエリア2には連れていけないし、エリア2の「過去」で仲間になるアラレちゃんを「現代」に連れてくることは出来ません。
ということで、主人公+最大でも仲間2人=最大3人パーティなのですが、シンボルエンカウントで戦闘が始まると先頭のキャラだけを操作してのアクションバトルになります。途中交代とか回復とかもなし。「流石、少年ジャンプのゲーム化だ、あくまで1対1で戦うんだな」と言いたいけど、相手は2人に増殖したりするんですよね。
<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
正直このゲームの評判を落としている8割の原因は、このアクションバトルの出来が悪いところだと思います。
操作性があまり気持ち良くないのもアレなんですが、「Aボタンで近接攻撃」、「Bボタンで飛び道具」で、「Bボタンで飛び道具」のクールタイムがクソ長くて戦闘に時間がムチャクチャかかるんですね。かと言って、「Aボタンで近接攻撃」に頼ろうとすると大ダメージを喰らって瞬殺されるとかもあるし……
初期の状態から「Bボタンで飛び道具」のクールタイムは長いと思うのですが、「こころ」ゲージが悪に傾くとさらに長くなります。「こころ」ゲージが悪に傾く条件は、ミニゲームで負ける、筋斗雲に乗る、シンボルエンカウントで遭遇した敵が実は攻撃してこない善人だったけど気付かずに倒してしまう(見た目では区別がつかない)などなどで……
「こころ」ゲージを回復させる方法は、コンビニでジャンプを買って読むだけです。
んで、このジャンプでの回復が1目盛りしか回復しないのに、まとめ買いもまとめて消費もできないため、ひたすらコンビニを出入りしてジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててジャンプ買って読んで捨ててと繰り返すしかないという。
友情度を回復するため、コンビニで少年ジャンプを買って、店先で読んで廃棄→またコンビニで少年ジャンプを買って、店先で廃棄、を繰り返す男一匹ガキ大将。 pic.twitter.com/lKJ8NTLHEZ
— やまなしレイ (@yamanashirei) May 18, 2023
ファミコン時代のバンダイ作品にありがちな、プレイヤーを縛る余計なシステムを入れたせいで評判を落とすヤツですよ。『ドラゴンボール 神龍の謎』の高速で腹が減る悟空とかのヤツ! こればっかりは擁護できないです!
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◇ 夢の対決を実現させる最終決戦は必見!最終決戦を遊ぶために頑張って進めよう
参戦作品の33作品は、バトルあり、ラブコメあり、ギャグありという本当に多彩なラインナップです。その原作の魅力を再現するため、道中で様々なミニゲームが始まるのも先鋭的なところだと思います。
<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
ボクシング漫画『リングにかけろ』絡みのイベントでは、『アーバンチャンピオン』(1984年、任天堂)のような格闘ゲームが始まったり。
<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
野球漫画『県立海空高校野球部員山下たろーくん』絡みのイベントでは、『ファミスタ』(1986年~、ナムコ)のような野球ゲームが始まったり。
<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
SF漫画『ウィングマン』絡みのイベントでは、縦スクロールシューティングゲームが始まったり。
この他にも、原作を再現しようとした様々なミニゲームがストーリー展開の中で出てくるんですね。
<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
ちょっと待て!
『北斗の拳』の赤鯱が潜水艦に乗せてくれるミニゲームって、マジで何なの!? 私つい最近『北斗の拳』全巻読んだんですけど、赤鯱は潜水艦なんか乗っていないし、そもそも『北斗の拳』の世界に潜水艦なんか残っていないんじゃないのか!?
これらのミニゲーム、お世辞にも「出来が良い」とは言えないんですけど……ストーリー展開に合わせて様々なミニゲームが始まるのは、むちゃくちゃ先鋭的だったと思うんですよ。『ファイナルファンタジーVII』(1997年、スクウェア)の8年前ですからね。一つ一つのミニゲームを作りこむ開発期間と、多彩なミニゲームを可能にするマシンスペックさえあれば、と思わなくもないです。
そして……
このゲームを語る際に、絶対に欠かせないのが「最終決戦」の話です。
普通だったら、ゲームの「最終決戦」の話なんてこれ以上ないネタバレなんで書かない方がイイと思うのですが……このゲームは「最終決戦」が一番面白くて、「最終決戦」のためにそこまで頑張って遊ぶくらいなんですよ。だから、このゲームを碌に知らずに「クソゲーなんでしょ?」なんて言われないためにも、しっかりと「最終決戦」について語りましょう!
<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
なんと、最終決戦のみ「コマンドバトル」なんですよ! このせいで公式がこのゲームのことを「RPG」と言い張ったんじゃないかと思うのですが、ここに来るまでの道中が長すぎるだろう……
「歴代ジャンプ漫画の主人公16人」vs.「歴代ジャンプ漫画の強敵13人」で、順番に出てくる強敵に合わせてこちらが1キャラずつ選んで1対1で戦う形式です。
分かりやすく言うと、『魁!!男塾』の「天挑五輪大武會」のシステムです。最終決戦の方式がコレなの、ジャンプゲームのラストに相応しすぎて大好き!
<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
主人公16人はそれぞれ2~3の必殺技を持っていて、使うと専用のグラフィックが出てくる演出もすごい。すべて最終決戦でしか使わていないグラフィックですからね。
邪鬼には桃をぶつけるみたいな原作再現をしてもイイのだけど、意外なキャラが相性良かったりするので、それを探すのも面白いです。原作を知っているとニヤリと出来る組み合わせも多く、スタッフの方々のジャンプ愛を感じますね。なら、どうして赤鯱が潜水艦に乗っている設定に……
残念ながら、すべての敵に対してすべてのキャラで戦えるワケではなくて、対戦を拒否されてしまう組み合わせもあるんですが……
例えば、『アストロ球団』の峠球四郎戦は「野球のルールを知らないキャラで戦うことができない」説があったりしてなかなかに面白いんです。確かに、『ドラゴンボール』の悟空は野球のルールを知らないだろうけど、『Dr.スランプ』のアラレちゃんは原作で野球やる回があったわ!みたいな。
ちなみに、必殺技を使うためのMP的なパラメーターこそが、ザコ敵をせっせと倒すと溜まっていく経験値的な要素で……最終決戦をしっかり楽しもうとすると、そこまでゲームを進めた上で、全キャラでチマチマと経験値稼ぎをしなくちゃなりません。
『ファミコンジャンプ』面白いですよ!と私がどんなに言ったところで、そこまで我慢して遊んでくれる人も少ないでしょうから……
最終決戦直前のパスワードをここに残しておきます。
一応、全キャラのパラメータはMAX直前(パスワードで再開したら何故か半欠け分だけ減っちゃうんだけど、これは何故?)で、「こころ」パラメーターも善側MAXまで上げています。
どうぞ、一番面白いところだけ遊べばイイさ!!

<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
ちなみに、このパスワード……40文字もあって「無駄に長い」とよく言われるのですが。
このゲーム、実はかなり自由度が高くて、16人いる仲間を全員仲間にしなくてもクリア出来ちゃうんですね。最低人数だと5人だったかな。そのキャラ達1人1人に経験値的なパラメータと、更にやってもやらなくても良いパワーアップイベントなんかもムチャクチャたくさんあるので、パスワードが長くなっちゃうのも仕方ないんです。
「じゃあ、バッテリーバックアップにしてくれたら良かったんじゃない?」と言いたくもなるのですが……実は、もしこのゲームがバッテリーバックアップだったら詰んでたかも知れないんですよ。
というのも、パスワードで引き継げない内容に「各キャラのライフ」があって、パスワードで再開すると必ず全キャラが全回復&死んでいたキャラも復活するんです。これがないとムチャクチャ厳しいんです。
何故なら、「エリア2の過去世界」や「エリア5」にはレストランがないため、回復手段が「パスワードで一旦中断して再開」しかないんですよ。もしこれがバッテリーバックアップで各キャラのライフも引き継がれた場合、「エリア5」の仲間のライフを回復させるためには、「他のエリアでおにぎりを買ってくる」→ 「エリア5で仲間を呼び出して、おにぎりを食わせる」→ 「それだけでは全回復しないため、また他のエリアにもどっておにぎりを買ってくる」→ 「エリア5で仲間を呼び出して、おにぎりを食わせる」を延々と繰り返すしかないんですね。
だから、セーブ機能のあるレトロフリークでプレイした私でも、パスワードでの中断→ 再開を頻繁にやっていました。
いや、そもそも各エリアに回復ポイントくらい作れや!!
◆ で、結局どういう人にオススメ?
<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』より引用>
減点法で考えると、ダメなところや擁護できないところはたくさんあるんだけど……
加点法で考えると、他のゲームにはない魅力がある作品だし、こんな作品は恐らく二度と作られないであろう「雑な豪華さ」だったと思うんですね。少なくとも手抜きで作ったゲームではないと思うし、原作愛がしっかりとあるゲームだと思います。赤鯱が潜水艦に乗っている件は、許す!
「作品間の垣根を超えた夢の対決」を楽しめる人には、是非オススメです!
アクションバトルやミニゲームはともかく、アドベンチャーゲームとしては難易度は高くなくて、「次にどこに行くか」とか「フラグ立て」は攻略を見ないでも大丈夫なくらいなのも良いですね。『ドラクエIII』辺りの時代なので、中盤「さぁ、好きなところに行くがイイ!」と放り出されるのも好きなところです。
個人的には、「現在のマシンスペックでフルリメイクして欲しいファミコンのゲーム」第1位なんですけど、絶対にムリでしょうね! この路線のオールスターゲーム、ジャンプと言わず、どこかが出してくれないかなぁ。
>『ファイナルファンタジーVII』(1997年、スクウェア)の8年前 8年"しか"空いてないんだな⋯この時代の進捗度がすごいぜ⋯
返信削除何なら、1999年の『シェンムー』まで10年しか空いていませんからね……
削除(2月と12月ではあるけれど)