※ この記事は2021年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>
【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
・「シミュレーションRPG」というジャンルを生んだ「ストーリーを語る装置としての型」
・若者は伸びるが、ジジイはコレ以上は強くならない! 「駒」をキャラクターにした効果
・リメイク作品では分からない、原作だからこそ「本来のバランス」がここにある
『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』
・発売:任天堂/開発:インテリジェントシステムズ
ファミリーコンピュータ用ソフト:1990年4月20日発売
スーパーファミコン版:1994年1月21日発売 ※続編とセットのリメイク
ニンテンドーDS版:2008年8月7日発売 ※再リメイク
原作のNintendo Switch Online版:2019年3月13日配信開始
スーファミリメイク版のNintendo Switch Online版:2019年3月13日配信開始
・ロールプレイングシミュレーションゲーム
・ステージの合間に出来るセーブスロット2つ
+ステージの途中で出来る中断セーブ1つ(再開すると消える)
※ Nintendo Switch版のPVです
私が1周クリアにかかった時間は約50時間でした
※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください
【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
※ 苦手な人もいそうなNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。
・シリアス展開:○(戦いたくない相手も殺さなきゃいけないストーリーは初代から)
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:△(叶わなかった恋を「寝取られ」と言うのなら)
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×(ドラゴンに変身するマムクートは殺す)
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:△(ウォームの魔法は気持ち悪いっちゃ気持ち悪いが)
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×
↓1↓
◇ 「シミュレーションRPG」というジャンルを生んだ「ストーリーを語る装置としての型」
このゲームは1990年4月にファミコン用ソフトとして発売された、今も続く『ファイアーエムブレム』シリーズの第1作です。初代ゆえに2度もリメイクされたり、キャラクターが『ファイアーエムブレム無双』や『#FE 幻影異聞録』に登場したり、『スマブラ』にもマルスが参戦していたりで、名前くらいは知っている人も多いんじゃないかと思います。

また『ファイアーエムブレム』シリーズの原点だけに留まらず、「シミュレーションRPG(以下SRPG)の元祖」と言われることも多いのですが、その反動で「いやいや、ファイアーエムブレムがSRPGの元祖ではないよ。それ以前からSRPGはあったよ」と言われることも多い作品です。
果たして『ファイアーエムブレム』は「SRPGの元祖」なのか??
人によって意見が異なるのも当然で、そもそもの「SRPGの定義」が人によってちがうんですね。そのため「ファイアーエムブレム以前からSRPGはあった」「いやいや、ファイアーエムブレム以前のゲームをSRPGと呼ぶのはムリがある」と意見が分かれるのです。
1.「シミュレーションゲーム」に「成長システム」を採用したものがSRPG説
『ファイアーエムブレム』が生まれた1990年は、RPGが大ブームだった時期です。
この2ヶ月前には『ドラゴンクエストIV』が発売され、この1週間後には『ファイナルファンタジーIII』が発売されていると言えば、イメージが出来るんじゃないでしょうか。この大ブームだったRPGの「成長要素」を、ウォー・シミュレーションゲームに融合したものがSRPG―――と定義しがちなのですが。

ウォー・シミュレーションゲームに「成長システム」を足したものがSRPGの元祖というなら、『将棋』が入っちゃうんですね。最弱の「歩」が、敵陣まで攻め込むと「金」と同じ力を持つ「と」に成長する―――SRPGの元祖は『将棋』だったんだ!
それはもちろん冗談なんですけど、「ウォー・シミュレーションゲームとは何ぞや」から語っておきましょう。

<画像はNintendo Switch Online版『ファミコンウォーズ』より引用>
『ファイアーエムブレム』の開発会社:インテリジェントシステムズは、その2年前の1988年8月にファミコン用ソフトでウォー・シミュレーションゲーム『ファミコンウォーズ』を開発・任天堂から発売しています。
ユニットは「戦車」や「戦闘機」などで、プレイヤーがそれらのユニットを選んで生産して戦わせるゲームですね。プレイ感覚は『ファイアーエムブレム』とは別物ですが、「爆撃機は地上のユニット相手にクソ強い」「でも、爆撃機は戦闘機にクソ弱い」「対空戦車は航空ユニット全般に強い」などのユニット間の相性が重要なのは『ファイアーエムブレム』にも引き継がれていますね。
PC向けゲームでは『ファミコンウォーズ』以前からウォー・シミュレーションゲームが人気で、その代表が1985年11月の『現代大戦略』から始まる『大戦略』シリーズです。
ゲーム機用の移植版は評価が高いものが少なかったため、ゲーム機用のゲームだけを遊んでいた層には「名前だけは聞いたことがある」タイトルでしかないかも知れませんが、この手のゲームのことを「大戦略系のゲーム」と呼んでいたくらいにこのジャンルの顔だったんですね。『ファミコンウォーズ』も、よく「大戦略をファミコンキッズでも遊べるように簡略化した」みたいに言われますね。
しかし、その『大戦略』シリーズも、元を辿ると1983年発売のPCゲーム『森田のバトルフィールド』の影響を受けていると言われています。後に『森田将棋』を作る森田和郎さんが、エニックスの第1回ゲーム・ホビープログラムコンテストに応募して最優秀プログラム賞を獲った作品です(※1)。
(※1:このコンテストは、優秀プログラム賞に中村光一さんの『ドアドア』、入選プログラム賞に堀井雄二さんの『ラブマッチテニス』が入り、この2人が出会ったことが『ドラゴンクエスト』誕生のきっかけの1つと言われています)
ただ、ウォー・シミュレーションゲームの変遷を見るとコンピューターゲームだけ見ていてもよく分からないんですよね。何故ならこのジャンルは元々アナログのボードゲームがあって、それをコンピューターで表現&独自に拡張していく流れで多数の作品が生まれるので……コンピューターゲームの作品だけを見て「○○は××のパクリだ」とは言えないんですね。
「SRPGに繋がる系譜」を考えると、重要なのは『大戦略』シリーズにおける「レベルアップ」のシステムです。1985年11月の初代『現代大戦略』の時点で、各ユニットに「経験値」の概念があって、敵を多く倒しているユニットほど強くなるシステムが採用されているのです。
初代『ドラゴンクエスト』の発売は1986年5月です。もちろんRPGはそれ以前からPCゲームで盛り上がっていましたが、『ドラゴンクエスト』が大ヒットしてRPGが国民的人気ジャンルになったから、ウォー・シミュレーションゲームに「経験値」のシステムが採用されてSRPGが生まれたワケではないのです。日本におけるコンピューターゲームのウォー・シミュレーションの黎明期の時点で、既に「成長」と「経験値」のシステムが採用されていたんですね。
ただし、この頃の「成長」はあくまで1マップ限りです(そもそもウォー・シミュレーションが1マップずつ遊ぶジャンルだったので)。
『大戦略』シリーズを作っていたシステムソフトは、1987年3月にPC向け『大戦略II』を発売した後、舞台を剣と魔法とモンスターの世界に変えたファンタジー路線を開拓して1987年12月に『ファンタジーナイト』、1988年10月に『マスターオブモンスターズ』を発売します。
そして、この『マスターオブモンスターズ』には複数のマップを連続して遊ぶキャンペーンモードがあり、「成長させたユニット」は次のマップ以降でもレベルが上がった状態で召喚できるようになり、PC-9800シリーズ版(1989年9月発売)に至っては「成長させたユニット」自体を持ち越せるようになりました。その流れで1989年12月発売の『キャンペーン版 大戦略II』でも、「成長させたユニット」を持ち越せるようになったんですね。
つまり、“「シミュレーションゲーム」に「成長システム」を採用したものがSRPG”という定義ならば、半年の差ですが、SRPGの元祖は『マスターオブモンスターズ』PC-9800シリーズ版になるのです! 『将棋』よりかは納得感がある!
2.「シミュレーションゲーム」の駒に「個性豊かなキャラクター」を採用したものがSRPG説
『ファイアーエムブレム』の説明で「それまでのシミュレーションゲームではただの駒に過ぎなかったユニットを個性あるキャラクターとした」と書かれることが多いです。しかし、私はこの説明が以前からピンと来ないんですね。
というのも、1985年12月発売のPCゲーム『三國志』、1988年12月発売の『信長の野望・戦国群雄伝』といった光栄の歴史シミュレーションには「配下武将」の概念があって、誰をどこに配置するかを考えさせていたんですね。「関羽はやっぱり頼りになるぜ!」「呂布、また裏切りやがった!」といったカンジに、そこには確かに“キャラクター性”が存在していました。
「いやいや、『三國志』は戦略シミュレーションであってウォー・シミュレーションじゃないから、SRPGの元祖にはならないでしょ」と思うかも知れませんが、それはSRPGをウォー・シミュレーションからの派生ジャンルだと思っている現代からの視点です。シミュレーションゲームに「キャラクター性」を持たせたのは光栄の歴史シミュレーションゲームの功績だと思うんですね。
考えてみると、「複数の国が入り乱れる戦記モノのストーリー」「説得によって敵将が仲間になることもあるシステム」「キャラクター1人1人に顔グラフィックがある」など、『ファイアーエムブレム』に引き継がれている要素が『三國志』には多々あるように思われます。直接影響を受けていなかったとしても、当時の『三国志』ブームの影響は多かれ少なかれあるんじゃないかと思うんですね。
“「シミュレーションゲーム」の駒に「個性豊かなキャラクター」を採用したものがSRPG”という定義ならば、SRPGの元祖は光栄の『三國志』になるのです! ほんとぉ?
3.「シミュレーションゲーム」に「ストーリー」を加えたものがSRPG説
RPGの元々の意味は「ロールプレイング(=役割を演じる)」なんだから、君主になりきって配下を指揮する『三國志』がSRPGでもおかしくない気がする……とか言い出すと、「SRPGの定義」どころか「RPGの定義」まで考えなくちゃならなくなりますね(笑)。
現代のゲームのジャンル分けで「シミュレーション」と「RPG」を分けるものは何かを考えると、「ストーリー」はかなり重要な判定基準になるかなと思います。「シミュレーション」はプレイヤーの好きなようにプレイできるため「自由度」は高くなるけど「決められたストーリー」は弱くなり、「RPG」は「ストーリー」を強めると「自由度」が下がるみたいな。
その話で興味深い作品が、1988年12月発売のPCゲーム『狂嵐の銀河 Schwarzschild』です。最近では百合ゲーを出してくれるメーカーという印象になった老舗メーカー工画堂スタジオの作品で、SFの世界観で「シナリオシミュレーション」というジャンルを切り開きました。
これも『信長の野望』や『三國志』などと同じ戦略シミュレーションなのですが……シナリオに沿って決められた展開をしていくために「予めこの機体を開発・量産しておかないと詰む→ 最初からやり直し」といったカンジに、「ストーリー」のために「自由度」を捨てて「難易度」が恐ろしく上がった作品だそうです。
“「シミュレーションゲーム」に「ストーリー」を加えたものがSRPG”という定義ならば、SRPGの元祖は『Schwarzschild』シリーズになる……というのは、流石にムリがあるわ!
ただ、この1988年付近のシミュレーションゲームは、1983年の『信長の野望』、1985年の『現代大戦略』を経て、新たな道を模索して様々な可能性を見出そうとしていた時期だろうと思うんですね。
その全てが『ファイアーエムブレム』に影響を与えたとは言いませんが、1980年代後半にシミュレーションゲームというジャンルが盛り上がっていたことが、1990年代のSRPG全盛期に繋がるのだろうと。
4.「シミュレーションゲーム」を「ファンタジー世界」でやろうとしたのがSRPG説
元々RPGは、『指輪物語』のような世界をベースにした『ダンジョン&ドラゴンズ』から始まり、そこから『ウィザードリィ』のような海外のPC向けRPGが生まれ、そこから影響を受けた『ドルアーガの塔』や『ドラゴンクエスト』が日本でも人気になっていくため……RPG=剣と魔法のファンタジー世界が王道だったんですね。
もちろん、『桃太郎伝説』(1987年)や『MOTHER』(1989年)といったそうではない世界を舞台にしたRPGはありましたが、あくまで『ドラクエ』的な世界がRPGの王道だったからこそ、そこから外れたRPGも生まれたのだと思います。
ならば、このRPG的なファンタジー世界を舞台にした「シミュレーションゲーム」を作ろうと考えた人達も多く、その一つが先に紹介した『大戦略』の会社が作った『ファンタジーナイト』(1987年12月)と『マスターオブモンスターズ』(1988年10月)です。
ファミコン用ソフトとしてスクウェアから発売された『半熟英雄』(1988年12月)もその一つで、『ファイナルファンタジー』シリーズに先駆けて「召喚魔法」を採用したゲームでした。ただし、このゲームは『大戦略』や『ファイアーエムブレム』とは全然ちがうシステムの、リアルタイムストラテジーっぽいゲームなんですね。そのためか「SRPGの元祖は何か」の議論ではあまり挙がることはありません。
同じようにリアルタイムストラテジーでありながら、「SRPGの元祖」としてよく名前が挙がるのは呉ソフトウェア工房の『シルバーゴースト』(1988年4月)と『First Queen』(1988年9月)です。
特に後者の『First Queen』は、『ファイアーエムブレム』シリーズ産みの親である加賀昭三さんが「墓場まで待って行きたいゲーム」「大きな影響を受けました」「これこそがSRPGの元祖かも」とブログに書いたことで、「ファイアーエムブレムの元ネタ」「SRPGの元祖は『First Queen』」と言う人がチラホラいます。
確かに、『First Queen』の「戦記モノのストーリー」「100人を超える仲間に名前が付いていて1人1人成長させられる」「レベルが一定に達するとクラスチェンジもできる」「しかし、死んだ仲間はロストしていなくなる」などのシステムは『ファイアーエムブレム』に共通しているので影響はあると思うのですが……私は、『First Queen』を『ファイアーエムブレム』の元ネタって言うのすごく抵抗あるんですね。
だって、プレイ動画を見れば一目瞭然で、ゲームシステムが全然ちがうじゃないですか!
『First Queen』は、『イース』(1987年)のような見下ろし型のアクションRPGに、『ボコスカウォーズ』(1983年)のように複数キャラを同時に動かすシステムを載せて、それでいて複数の部隊を分岐するマップに配置して敵の進行を食い止めつつ攻め上がる戦略シミュレーション的要素を加えたものです。
非アクションゲームとアクションゲームのちがいも大きいですし、「複数の部隊をマップ上で動かす」システムは、『ファイアーエムブレム外伝』(1992年3月)の方に近いんですね。南から北に向かうのもいっしょです。一億歩譲って『First Queen』は『ファイアーエムブレム外伝』の元ネタと言うのはまぁ分からなくもないけど、『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』の元ネタと言うのは流石に無理があると思うのです。
「戦記モノのストーリー」や「100人を超える仲間に名前が付いている」「ロストした仲間は復活できない」とかは『三國志』などからあるシステムですし、「レベルが一定に達するとクラスチェンジもできる」のは『ファンタジーナイト』にもあったシステムですし(そもそも『ドラクエ』や『FF』など当時のRPGのド定番だった)。
なので、加賀さんが何と言おうと、SRPGの元祖は『First Queen』になるとは私には思えません!
――2025年追記――
・ステージの合間に出来るセーブスロット2つ
+ステージの途中で出来る中断セーブ1つ(再開すると消える)
※ Nintendo Switch版のPVです
私が1周クリアにかかった時間は約50時間でした
※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください
【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
※ 苦手な人もいそうなNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。
・シリアス展開:○(戦いたくない相手も殺さなきゃいけないストーリーは初代から)
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:△(叶わなかった恋を「寝取られ」と言うのなら)
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×(ドラゴンに変身するマムクートは殺す)
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:△(ウォームの魔法は気持ち悪いっちゃ気持ち悪いが)
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×
↓1↓
◇ 「シミュレーションRPG」というジャンルを生んだ「ストーリーを語る装置としての型」
このゲームは1990年4月にファミコン用ソフトとして発売された、今も続く『ファイアーエムブレム』シリーズの第1作です。初代ゆえに2度もリメイクされたり、キャラクターが『ファイアーエムブレム無双』や『#FE 幻影異聞録』に登場したり、『スマブラ』にもマルスが参戦していたりで、名前くらいは知っている人も多いんじゃないかと思います。

また『ファイアーエムブレム』シリーズの原点だけに留まらず、「シミュレーションRPG(以下SRPG)の元祖」と言われることも多いのですが、その反動で「いやいや、ファイアーエムブレムがSRPGの元祖ではないよ。それ以前からSRPGはあったよ」と言われることも多い作品です。
果たして『ファイアーエムブレム』は「SRPGの元祖」なのか??
人によって意見が異なるのも当然で、そもそもの「SRPGの定義」が人によってちがうんですね。そのため「ファイアーエムブレム以前からSRPGはあった」「いやいや、ファイアーエムブレム以前のゲームをSRPGと呼ぶのはムリがある」と意見が分かれるのです。
1.「シミュレーションゲーム」に「成長システム」を採用したものがSRPG説
『ファイアーエムブレム』が生まれた1990年は、RPGが大ブームだった時期です。
この2ヶ月前には『ドラゴンクエストIV』が発売され、この1週間後には『ファイナルファンタジーIII』が発売されていると言えば、イメージが出来るんじゃないでしょうか。この大ブームだったRPGの「成長要素」を、ウォー・シミュレーションゲームに融合したものがSRPG―――と定義しがちなのですが。

ウォー・シミュレーションゲームに「成長システム」を足したものがSRPGの元祖というなら、『将棋』が入っちゃうんですね。最弱の「歩」が、敵陣まで攻め込むと「金」と同じ力を持つ「と」に成長する―――SRPGの元祖は『将棋』だったんだ!
それはもちろん冗談なんですけど、「ウォー・シミュレーションゲームとは何ぞや」から語っておきましょう。

<画像はNintendo Switch Online版『ファミコンウォーズ』より引用>
『ファイアーエムブレム』の開発会社:インテリジェントシステムズは、その2年前の1988年8月にファミコン用ソフトでウォー・シミュレーションゲーム『ファミコンウォーズ』を開発・任天堂から発売しています。
ユニットは「戦車」や「戦闘機」などで、プレイヤーがそれらのユニットを選んで生産して戦わせるゲームですね。プレイ感覚は『ファイアーエムブレム』とは別物ですが、「爆撃機は地上のユニット相手にクソ強い」「でも、爆撃機は戦闘機にクソ弱い」「対空戦車は航空ユニット全般に強い」などのユニット間の相性が重要なのは『ファイアーエムブレム』にも引き継がれていますね。
PC向けゲームでは『ファミコンウォーズ』以前からウォー・シミュレーションゲームが人気で、その代表が1985年11月の『現代大戦略』から始まる『大戦略』シリーズです。
ゲーム機用の移植版は評価が高いものが少なかったため、ゲーム機用のゲームだけを遊んでいた層には「名前だけは聞いたことがある」タイトルでしかないかも知れませんが、この手のゲームのことを「大戦略系のゲーム」と呼んでいたくらいにこのジャンルの顔だったんですね。『ファミコンウォーズ』も、よく「大戦略をファミコンキッズでも遊べるように簡略化した」みたいに言われますね。
しかし、その『大戦略』シリーズも、元を辿ると1983年発売のPCゲーム『森田のバトルフィールド』の影響を受けていると言われています。後に『森田将棋』を作る森田和郎さんが、エニックスの第1回ゲーム・ホビープログラムコンテストに応募して最優秀プログラム賞を獲った作品です(※1)。
(※1:このコンテストは、優秀プログラム賞に中村光一さんの『ドアドア』、入選プログラム賞に堀井雄二さんの『ラブマッチテニス』が入り、この2人が出会ったことが『ドラゴンクエスト』誕生のきっかけの1つと言われています)
ただ、ウォー・シミュレーションゲームの変遷を見るとコンピューターゲームだけ見ていてもよく分からないんですよね。何故ならこのジャンルは元々アナログのボードゲームがあって、それをコンピューターで表現&独自に拡張していく流れで多数の作品が生まれるので……コンピューターゲームの作品だけを見て「○○は××のパクリだ」とは言えないんですね。
「SRPGに繋がる系譜」を考えると、重要なのは『大戦略』シリーズにおける「レベルアップ」のシステムです。1985年11月の初代『現代大戦略』の時点で、各ユニットに「経験値」の概念があって、敵を多く倒しているユニットほど強くなるシステムが採用されているのです。
初代『ドラゴンクエスト』の発売は1986年5月です。もちろんRPGはそれ以前からPCゲームで盛り上がっていましたが、『ドラゴンクエスト』が大ヒットしてRPGが国民的人気ジャンルになったから、ウォー・シミュレーションゲームに「経験値」のシステムが採用されてSRPGが生まれたワケではないのです。日本におけるコンピューターゲームのウォー・シミュレーションの黎明期の時点で、既に「成長」と「経験値」のシステムが採用されていたんですね。
ただし、この頃の「成長」はあくまで1マップ限りです(そもそもウォー・シミュレーションが1マップずつ遊ぶジャンルだったので)。
『大戦略』シリーズを作っていたシステムソフトは、1987年3月にPC向け『大戦略II』を発売した後、舞台を剣と魔法とモンスターの世界に変えたファンタジー路線を開拓して1987年12月に『ファンタジーナイト』、1988年10月に『マスターオブモンスターズ』を発売します。
そして、この『マスターオブモンスターズ』には複数のマップを連続して遊ぶキャンペーンモードがあり、「成長させたユニット」は次のマップ以降でもレベルが上がった状態で召喚できるようになり、PC-9800シリーズ版(1989年9月発売)に至っては「成長させたユニット」自体を持ち越せるようになりました。その流れで1989年12月発売の『キャンペーン版 大戦略II』でも、「成長させたユニット」を持ち越せるようになったんですね。
つまり、“「シミュレーションゲーム」に「成長システム」を採用したものがSRPG”という定義ならば、半年の差ですが、SRPGの元祖は『マスターオブモンスターズ』PC-9800シリーズ版になるのです! 『将棋』よりかは納得感がある!
2.「シミュレーションゲーム」の駒に「個性豊かなキャラクター」を採用したものがSRPG説
『ファイアーエムブレム』の説明で「それまでのシミュレーションゲームではただの駒に過ぎなかったユニットを個性あるキャラクターとした」と書かれることが多いです。しかし、私はこの説明が以前からピンと来ないんですね。
というのも、1985年12月発売のPCゲーム『三國志』、1988年12月発売の『信長の野望・戦国群雄伝』といった光栄の歴史シミュレーションには「配下武将」の概念があって、誰をどこに配置するかを考えさせていたんですね。「関羽はやっぱり頼りになるぜ!」「呂布、また裏切りやがった!」といったカンジに、そこには確かに“キャラクター性”が存在していました。
「いやいや、『三國志』は戦略シミュレーションであってウォー・シミュレーションじゃないから、SRPGの元祖にはならないでしょ」と思うかも知れませんが、それはSRPGをウォー・シミュレーションからの派生ジャンルだと思っている現代からの視点です。シミュレーションゲームに「キャラクター性」を持たせたのは光栄の歴史シミュレーションゲームの功績だと思うんですね。
考えてみると、「複数の国が入り乱れる戦記モノのストーリー」「説得によって敵将が仲間になることもあるシステム」「キャラクター1人1人に顔グラフィックがある」など、『ファイアーエムブレム』に引き継がれている要素が『三國志』には多々あるように思われます。直接影響を受けていなかったとしても、当時の『三国志』ブームの影響は多かれ少なかれあるんじゃないかと思うんですね。
“「シミュレーションゲーム」の駒に「個性豊かなキャラクター」を採用したものがSRPG”という定義ならば、SRPGの元祖は光栄の『三國志』になるのです! ほんとぉ?
3.「シミュレーションゲーム」に「ストーリー」を加えたものがSRPG説
RPGの元々の意味は「ロールプレイング(=役割を演じる)」なんだから、君主になりきって配下を指揮する『三國志』がSRPGでもおかしくない気がする……とか言い出すと、「SRPGの定義」どころか「RPGの定義」まで考えなくちゃならなくなりますね(笑)。
現代のゲームのジャンル分けで「シミュレーション」と「RPG」を分けるものは何かを考えると、「ストーリー」はかなり重要な判定基準になるかなと思います。「シミュレーション」はプレイヤーの好きなようにプレイできるため「自由度」は高くなるけど「決められたストーリー」は弱くなり、「RPG」は「ストーリー」を強めると「自由度」が下がるみたいな。
その話で興味深い作品が、1988年12月発売のPCゲーム『狂嵐の銀河 Schwarzschild』です。最近では百合ゲーを出してくれるメーカーという印象になった老舗メーカー工画堂スタジオの作品で、SFの世界観で「シナリオシミュレーション」というジャンルを切り開きました。
これも『信長の野望』や『三國志』などと同じ戦略シミュレーションなのですが……シナリオに沿って決められた展開をしていくために「予めこの機体を開発・量産しておかないと詰む→ 最初からやり直し」といったカンジに、「ストーリー」のために「自由度」を捨てて「難易度」が恐ろしく上がった作品だそうです。
“「シミュレーションゲーム」に「ストーリー」を加えたものがSRPG”という定義ならば、SRPGの元祖は『Schwarzschild』シリーズになる……というのは、流石にムリがあるわ!
ただ、この1988年付近のシミュレーションゲームは、1983年の『信長の野望』、1985年の『現代大戦略』を経て、新たな道を模索して様々な可能性を見出そうとしていた時期だろうと思うんですね。
その全てが『ファイアーエムブレム』に影響を与えたとは言いませんが、1980年代後半にシミュレーションゲームというジャンルが盛り上がっていたことが、1990年代のSRPG全盛期に繋がるのだろうと。
4.「シミュレーションゲーム」を「ファンタジー世界」でやろうとしたのがSRPG説
元々RPGは、『指輪物語』のような世界をベースにした『ダンジョン&ドラゴンズ』から始まり、そこから『ウィザードリィ』のような海外のPC向けRPGが生まれ、そこから影響を受けた『ドルアーガの塔』や『ドラゴンクエスト』が日本でも人気になっていくため……RPG=剣と魔法のファンタジー世界が王道だったんですね。
もちろん、『桃太郎伝説』(1987年)や『MOTHER』(1989年)といったそうではない世界を舞台にしたRPGはありましたが、あくまで『ドラクエ』的な世界がRPGの王道だったからこそ、そこから外れたRPGも生まれたのだと思います。
ならば、このRPG的なファンタジー世界を舞台にした「シミュレーションゲーム」を作ろうと考えた人達も多く、その一つが先に紹介した『大戦略』の会社が作った『ファンタジーナイト』(1987年12月)と『マスターオブモンスターズ』(1988年10月)です。
ファミコン用ソフトとしてスクウェアから発売された『半熟英雄』(1988年12月)もその一つで、『ファイナルファンタジー』シリーズに先駆けて「召喚魔法」を採用したゲームでした。ただし、このゲームは『大戦略』や『ファイアーエムブレム』とは全然ちがうシステムの、リアルタイムストラテジーっぽいゲームなんですね。そのためか「SRPGの元祖は何か」の議論ではあまり挙がることはありません。
同じようにリアルタイムストラテジーでありながら、「SRPGの元祖」としてよく名前が挙がるのは呉ソフトウェア工房の『シルバーゴースト』(1988年4月)と『First Queen』(1988年9月)です。
特に後者の『First Queen』は、『ファイアーエムブレム』シリーズ産みの親である加賀昭三さんが「墓場まで待って行きたいゲーム」「大きな影響を受けました」「これこそがSRPGの元祖かも」とブログに書いたことで、「ファイアーエムブレムの元ネタ」「SRPGの元祖は『First Queen』」と言う人がチラホラいます。
確かに、『First Queen』の「戦記モノのストーリー」「100人を超える仲間に名前が付いていて1人1人成長させられる」「レベルが一定に達するとクラスチェンジもできる」「しかし、死んだ仲間はロストしていなくなる」などのシステムは『ファイアーエムブレム』に共通しているので影響はあると思うのですが……私は、『First Queen』を『ファイアーエムブレム』の元ネタって言うのすごく抵抗あるんですね。
だって、プレイ動画を見れば一目瞭然で、ゲームシステムが全然ちがうじゃないですか!
『First Queen』は、『イース』(1987年)のような見下ろし型のアクションRPGに、『ボコスカウォーズ』(1983年)のように複数キャラを同時に動かすシステムを載せて、それでいて複数の部隊を分岐するマップに配置して敵の進行を食い止めつつ攻め上がる戦略シミュレーション的要素を加えたものです。
非アクションゲームとアクションゲームのちがいも大きいですし、「複数の部隊をマップ上で動かす」システムは、『ファイアーエムブレム外伝』(1992年3月)の方に近いんですね。南から北に向かうのもいっしょです。一億歩譲って『First Queen』は『ファイアーエムブレム外伝』の元ネタと言うのはまぁ分からなくもないけど、『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』の元ネタと言うのは流石に無理があると思うのです。
「戦記モノのストーリー」や「100人を超える仲間に名前が付いている」「ロストした仲間は復活できない」とかは『三國志』などからあるシステムですし、「レベルが一定に達するとクラスチェンジもできる」のは『ファンタジーナイト』にもあったシステムですし(そもそも『ドラクエ』や『FF』など当時のRPGのド定番だった)。
なので、加賀さんが何と言おうと、SRPGの元祖は『First Queen』になるとは私には思えません!
――2025年追記――
旧ブログでこの記事を書いた後に、『シルバーゴーストは』EGGコンソールで、『First Queen』はリメイク版が、共にNintendo Switch(2)で遊べるようになりました。いつか実況して『ファイアーエムブレム』との違いを比べたいですね。
5.では、どうして『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』を「SRPGの元祖」と呼ぶ人がいるのか
ウォー・シミュレーションに成長要素を足したゲームには『将棋』がある。
それを「次のステージ」にも持ち越せるようになったのは『マスターオブモンスターズ』で。
キャラクター性を持ち込んだのは光栄の歴史シミュレーションで。
ストーリーを加えたのには『Schwarzschild』や『シルバーゴースト』があって。
ファンタジー世界でシミュレーションをやろうとした作品はたくさんあって、戦記モノのストーリーは『First Queen』が有名だ―――
これが『ファイアーエムブレム』前夜のシミュレーションゲームです。
しかし、それでもこれらのゲームではなく、『ファイアーエムブレム』こそが「SRPGの元祖」だと言う人がいて、私も今回この記事を書いていく過程で『ファイアーエムブレム』こそが「SRPGの元祖」と思うようになりました。
というのも、『マスターオブモンスターズ』や『First Queen』と、『ファイアーエムブレム』の差は簡単で……
『ファイアーエムブレム』って「真似」しやすかったんですよ。

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>
1人1人のキャラに「顔グラフィック」が用意されていて、1つ1つの面をクリアしていくことで「ストーリー」が進み、敵味方ともに新たなキャラクターが登場していく……という「型」を作ったんですね。
それぞれの要素は前述のゲーム達にもあった要素です。「顔グラフィック」は光栄の歴史シミュレーションにありましたし、1つ1つの面をクリアしてレベルが引き継がれるのは『マスターオブモンスターズ』ですし、「戦記モノのストーリー」や「敵味方に様々なキャラクターが登場する」のは『シルバーゴースト』や『First Queen』かも知れません。
しかし、それらをまとめあげて、誰でも「真似」できる型を作り上げたのが『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』だと思うのです。
そして、これが「ゲームでストーリーを語ること」を模索していた時代に見事にマッチしました。
1983年の『ポートピア連続殺人事件』以降、日本においてアドベンチャーゲームは「ストーリーを語る装置」として受け入れられ、たくさんのソフトが世に出ました。特にファミコン版『ポートピア』のような「コマンド選択型アドベンチャーゲーム」は一大ジャンルになっていて、1992年にチュンソフトが『弟切草』でノベルゲームの形を作るまでは、「真似」しやすい型になっていたと思います。
しかし、アドベンチャーゲームは「クリアまでの時間が短く中古に売られやすい」や「どうしても1人称の物語しか描けない」などの欠点があり、ジャンルとしては息詰まっていた時期だと思います。
それ以前からRPGというジャンルはあったけれど、1986年以降の『ドラゴンクエスト』シリーズ大ブームによって、次なる「ストーリーを語る装置」としてRPGが重宝されました。RPGはアドベンチャーとちがってプレイ時間を伸ばせるし、「仲間を引き連れる」ことで描けるストーリーの幅が広がったと思います。『ドラえもん』(1990年)とか、『ウルトラマン』(1988年)までRPGになっていましたからね。「真似」しやすい型だったのでしょう。
ただ、RPGにもその性質上「味方は数人」「敵も数人」という制約がありました。その制約を何とかしようと『ドラクエIV』なんかはオムニバス形式にしたり、馬車システムを取り入れたりしていたのですが、RPGも「ストーリーを語ろうとするとRPGという制約に苦められていた」時期だと思うんですね。
そこに現れた『ファイアーエムブレム』という型は、「味方は15人くらいで、それぞれに役割がちがっててイイ」「敵はそれを上回る大軍で押し寄せてもイイ」「地形を活かして様々な条件のマップでストーリーを表現できる」と、「ストーリーを語る装置」としてアドベンチャーゲームにもRPGにも描けなかったものが描けたんですね。
SRPGではないのですが、この時期を象徴する一つのシリーズについて語らせてください。それは『SDガンダムワールド ガチャポン戦士』シリーズです。
このゲーム、第1作はファミコンディスクシステム用ソフトとして1987年11月に発売された―――言ってしまえば「『大戦略』をガンダムで行う」みたいなウォー・シミュレーションゲームです。1989年6月に発売された第2作目までは戦闘がアクションなため、シミュレーションゲームでありながら「対戦で盛り上がるファミコンのゲーム」として名前が挙がることが多いですね。
ただ、1990年12月に発売された第3作からは戦闘がコマンド式になったため、2作目までのファンからは不評だったとネット上ではよく言われています。

<画像はWiiバーチャルコンソール版『SDガンダムワールド ガチャポン戦士2 カプセル戦記』より引用>

<画像はファミコン用ソフト『SDガンダムワールド ガチャポン戦士3 英雄戦記』より引用>
しかし、『ガンダム』の原作大好きな自分から言わせてもらうと、『2』と『3』の最大の変更点はそこじゃないんですよ! まさにこの『2』と『3』の間に『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』が発売されているのですが、そのために『ガチャポン戦士3』は『2』までとまったく別のコンセプトのゲームになっているのです。

<画像はWiiバーチャルコンソール版『SDガンダムワールド ガチャポン戦士2 カプセル戦記』より引用>

<画像はファミコン用ソフト『SDガンダムワールド ガチャポン戦士3 英雄戦記』より引用>
『2』は原作の単語をもじったオリジナルのマップですが、『3』は原作のストーリーに沿ってそれを再現しようとしているマップになっているんです。

<画像はファミコン用ソフト『SDガンダムワールド ガチャポン戦士3 英雄戦記』より引用>
そのため「パイロット」の概念があって、アムロやシャアはもちろん、ハヤトやリュウ、ジーンやデニムやスレンダーが原作通りに戦うのです。ちゃんとアムロやシャアはムチャクチャ強くて攻撃がなかなか当たりません。
もちろん「この時期にジムはないはずだろ!」とか「シャアが出撃するのはジーンやデニムがやられた後だろ!」みたいなツッコミは出来るのですが、「原作のストーリー」を再現しつつ、ウォー・シミュレーションゲームという対戦ツールとしてもバランスが取れているギリギリの落としどころにしてあると思います。
ちなみに、「武者ガンダム」や「ナイトガンダム」のシナリオも収録されているのですが、「ナイトガンダム」に至っては1人用専用で対戦はできません。
『ファイアーエムブレム』が見せた「型」なら、敵味方ともに多人数の部隊を描けますから、ロボットアニメのストーリーを再現できる―――『ガチャポン戦士3』は「原作のストーリーを再現」するためにステージ間で育てたキャラを引き継げはしませんでしたが(初代『ガンダム』のキャラが『0080』のマップに登場したらおかしいので)、翌年の1991年4月には『スーパーロボット大戦』が発売されます。
『スーパーロボット大戦』1作目はガンダムやマジンガーが人格を持っているコンパチヒーロー的な世界ですが、1991年12月発売の『第2次スーパーロボット大戦』からはパイロットの概念が導入されて、「このキャラでこのキャラを説得すると仲間に出来る」といった原作再現や原作では出来なかったifのストーリーを描くようになり、今も続く大人気シリーズとなりました。
つまり、『大戦略』を始めとするウォー・シミュレーションゲームはアナログのボードゲームをルーツとしているためか、どうしても「対戦ツール」としての側面を持ち、そこから「1人で遊ぶ場合はCPUが相手を務めてくれる」「CPU戦を連続で遊ぶキャンペーンモードもある」と進化していったのに対して。
『ファイアーエムブレム』や『スーパーロボット大戦』などのSRPGは、最初から1人用専用を想定して作っていて、「たくさんのキャラクターを操作してステージをクリアするとストーリーが進む型」を作っていったのです。『ガチャポン戦士3』はちょうどその過渡期の、中間くらいのゲームだったのだろうと。
電ファミニコゲーマーに、『大戦略』のスタッフの方々のインタビューが載っていて、彼らの『ファイアーエムブレム』評を見ると「なるほど、そこが分岐点だったのか」と思わせられます(3ページ目)。
<以下、引用>
――最後に『大戦略』のゲーム史的な位置づけについて考えてみたいんです。福田さんはどうお考えですか?
福田氏「まず、「ユニットが成長領域を持つ」とか「マップ間でそれをユニットが受け継いでいく」みたいなことは、後の『ファイアーエムブレム』のようなゲームに受け継がれていったとは言えます。
でも、やっぱり根本的な考え方は相当に違うと思います。というのも、『大戦略』が持つ“シミュレーターとしての面白さ”を、後の派生系はバッサリと切っていったんですよ。だから、「これは全く違うものだ」と思いながら見ていました。 」
<中略>
――ただ結局、その後のSLGの歴史は、『ファイアーエムブレム』や『スーパーロボット大戦』のようなゲームが主流になっていったのも事実なんですよね……。シチュエーション毎にマップと敵ユニットが用意されていて、それを“解いて”いく。一種の「詰将棋」のような遊びに、物語が付加されたものというか。
福田氏「まさにそうです。でも、だからこそ逆に、僕は『ファイアーエムブレム』をとても高く評価しているんです。
要するに、あれは「難しい思考ルーチンの開発なんてやめようよ」と考えたわけですよ。このユニットは敵がどこまで近づいたらどう動くのか、みたいなことは非常に固定的なアルゴリズムを置いておく。しかし、その代わりに弓兵などのユニットのタイプごとに違うアルゴリズムを埋め込んできたんです。そうして、それが攻めてくるときにどう配置しておくとゲームとして面白くなるかを考えた。
彼らはそっち側で調整してみせたんですね。そりゃ高く評価せざるを得ないですよ。」
</ここまで>
※ 強調など一部引用者が手を加えました
『大戦略』などのウォー・シミュレーションゲームは「対戦相手の替わりとしてのCPU」が必要だったから、本当に人と対戦しているような思考ルーチンを開発しようと苦労していました。
でも、『ファイアーエムブレム』の敵は「攻撃範囲にこちらが入ったら動き出す」とか「なるべくマルスを狙ってくる」、「反撃されない相手を狙って攻撃してくる」といったシンプルな思考ルーチンしか持っていません。どう考えても人間より頭の悪いCPUなんですね。その代わり、戦力は大抵こちらよりも多く、トンデモなく強い武器を持っていたりする―――戦力的には不均衡な相手を、プレイヤーが頭を使って“解いて”いくゲームになったんです。
それが「巨大な敵戦力相手に、少人数の勇者たちで立ち向かう」というストーリーにピッタリで、SRPGは「ストーリーを語る装置」として大人気になっていくのです。
1991年に『ラングリッサー』、1992年からは『シャイニング・フォース』、1993年には『オウガバトル』、1995年になると『FRONT MISSION』と次々と人気シリーズが生まれ……1997年の『ファイナルファンタジータクティクス』はミリオンセラーを達成するなど、SRPGは1990年代が最高に盛り上がっていた時代じゃないかと思います。厳密にはSRPGではありませんが、『サクラ大戦』(1996年)なんかも戦闘はシミュレーションでしたしね。
SRPGにおける『ファイアーエムブレム』の立ち位置って、対戦格闘ゲームにおける『ストリートファイターII』のそれに近いと私は思います。
『ストリートファイターII』(1991年)以前にも対戦格闘ゲームらしいものは存在していました。『空手道』(1984年)、『アーバンチャンピオン』(1984年)、『イー・アル・カンフー』(1985年)、『北派少林 飛龍の拳』(1985年)、『六三四の剣』(1986年)の対戦モード、『ケルナグール』(1989年)などなど……いや、そもそも『ストリートファイター』(1987年)がありますもんね。
ただ、「プレイヤーは最初から8人のキャラが選べる」「その8人は軽量級から重量級まで個性があって」「それぞれのキャラに2~3の必殺技コマンドが用意されていて」「選んだキャラ以外のキャラと、その相手キャラのホームを背景にして戦う」という型を完成させたことで、『ストII』は多くの作品に「真似」されやすかったんだと思うんですね。
オリジナル作品はもちろん、たくさんのキャラクターが登場する漫画・アニメなんかはこぞって「この型」に合わせて対戦格闘ゲームになっていましたから。

<画像はスーパーファミコン版『ストリートファイターII』より引用>

<画像はスーパーファミコン用ソフト『らんま1/2 爆烈乱闘篇』より引用>

<画像はスーパーファミコン用ソフト『ドラゴンボールZ 超武闘伝2』より引用>

<画像はメガドライブミニ版『幽☆遊☆白書 魔強統一戦』より引用>
という理由で私は、『ファイアーエムブレム』以前から「SRPG的な作品」はあったけれど、『ファイアーエムブレム』が「SRPGの型」を完成させたのだからSRPGの元祖は『ファイアーエムブレム』であると主張しても別に間違いはないと思います。
あと、そもそも『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』はパッケージの裏で「ロールプレイングとシミュレーションゲームが一つになる」と書いて、TVCMでも「ロールプレイングシミュレーションの幕開け」と言っているので、SRPGと順番は逆だけど「本人達が最初に言い出した」のだから元祖って認めてもイイんじゃないかなぁと。

↓2↓
◇ 若者は伸びるが、ジジイはコレ以上は強くならない! 「駒」をキャラクターにした効果
では、そうして生まれた『ファイアーエムブレム』とはどんなゲームなのか説明していきましょう。

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>
青いコマが「プレイヤー側」、赤いコマが「CPU側」です。
プレイヤーのターンは「自軍の全てのコマを1回ずつ動かせて」、それが終わるとCPUのターンになって「敵軍の全てのコマが1回ずつ動いて」―――を繰り返し、プレイヤーは相手の本拠地(城、もしくは玉座)を王将マルスで制圧したら勝ち、逆にマルスが死亡したら負けです。
自分のコマは、全て「名前」と「顔グラフィック」が用意されて個性を持っているのですが、それぞれのキャラは「アーマーナイト」や「スナイパー」のような兵種に分類されます。

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>
「アーマーナイトは鎧で固められているため防御力が高いけど、鎧が重いせいかスピードがなくて、移動力も低い」「ソシアルナイトは馬に乗っているので、移動力が高い」「ペガサスナイトは空を飛べるので、地形を無視して移動できる」といったカンジに、兵種の特徴が直感的につかみやすいのがイイですね。
初心者だとピンと来ないかもしれないのが、「ペガサスナイト・ドラゴンナイトなどの空を飛んでいるキャラは、弓に弱くて一撃でものすごい大ダメージを喰らう」点ですかね。
私、実は初『ファイアーエムブレム』は『外伝』だったのですがそれを知らずに最後までプレイしていて「ペガサスナイトはすぐに死ぬなー」と不思議で、『紋章の謎』が出た際にゲーム雑誌にそれが書かれていて「そうだったの!?」と驚いた記憶があります。よくそれでクリアできたもんだよ……

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>
『ドラゴンクエスト』などのRPGの感覚でプレイすると引っかかるかも知れないのが、「ダメージ計算」についてです。このゲームのダメージは「ちから+武器の威力-相手のしゅびりょく」で固定です。例えば、「ちから5」のマルスが「武器の威力8」のはがねのつるぎで「しゅびりょく6の敵」を攻撃して当たれば(クリティカルが出なければ)、「5+8-6」でダメージは毎回7になります。
『ドラゴンクエスト』のようなRPGは元を辿れば、テーブルトークRPGという「サイコロを使うボードゲーム」をルーツにしているので乱数の割合が高く、ダメージも毎回一定ではありません。
一方の『ファイアーエムブレム』は、ウォー・シミュレーションゲームをルーツにしているからかダメージは毎回一定で、逆に言うとこれを前提としてダメージ計算をして戦術を立てなくちゃならないんですね。相手のターンで3人の敵から攻撃されるけど、ダメージは「3」「5」「6」だから生き延びられるな―――みたいに。
ただ、このゲームにも乱数の要素はあって、「命中率」と「クリティカル率」の概念はありますし、「レベルアップした際の成長するパラメータ」は(キャラごとに上がりやすさ・上がりにくさはありますが)毎回異なります。それが、プレイヤーごとに異なるドラマを生むんですね。
さて、『ファイアーエムブレム』が「SRPGの元祖」と言われるのはここからです。
前項で「ユニットが成長する」ウォー・シミュレーションゲームには『大戦略』や『マスターオブモンスターズ』があったと書きました。ただ、これらのゲームのユニットは「プレイヤーが生産(召喚)した名もなきユニット」です。
プレイヤーが動かす「キャラクター1人1人に個性があってパラメータがちがう」シミュレーションゲームには『三國志』があったと書きました。ただ、(少なくとも初期の頃は)『三國志』にはキャラクターが成長する要素はなかったはず。
『ファイアーエムブレム』はその2つを掛け合わせて、「キャラクター1人1人に個性があってパラメータがちがう」上に「そのキャラクターが成長する」としたのですが―――そこから、このシリーズ(というかSRPGというジャンル)を象徴するキャラが生まれました。

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>
それが、「ジェイガン」です。
このキャラは、マルス王子を護衛している老兵騎士で―――
初期メンバーの中で唯一の上級職で、ほとんどのパラメータが高く、頼りになる存在なのですが……

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>
レベルが上がっても、パラメータがほぼ上がりません!
このゲームは(闘技場を除けば)敵の数は有限なため、なるべく「成長率の高いキャラでトドメを刺して経験値をあげたい」「成長率の低いキャラはいずれ二軍落ちするので経験値はあげたくない」とするため……ジェイガンが強いからといってむやみやたらにこのキャラで敵を倒していると、中盤以降がジリ貧になっていくんですね。
で、ここで『マスターオブモンスターズ』や『First Queen』とちがって「キャラクター1人1人に顔グラフィックがある」ことに意味が出てくるんです。顔を見ればジェイガンが老人であることは分かるので、プレイヤーは自然と「ジジイだからレベルが上がってもこれ以上は強くならないのか」と気付くことが出来るという。
RPGだったら、例えば『ドラゴンクエストII』(1987年)のサマルトリアの王子とムーンブルクの王女にも「将来性の差」が既にありましたが……同じようにこのゲームも、50人くらい仲間になるキャラ1人1人が、「強いキャラ」「弱いキャラ」だけでなく、「これから強くなるキャラ」「もうこれ以上は強くならないキャラ」という成長率でも個性が描かれているんですね。
これは『スーパーロボット大戦』シリーズでも「実はこのキャラをレベル○○まで上げるとレアな精神コマンドを覚えるぞ!」みたいに継承されていて、「SRPGの型」としては定番になりました。


<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>
対照的なのは、チキ。
ロリロリな幼女ながら、ドラゴンに変身するマムクートで、守備力以外の全パラメータがものすごい勢いで成長していきます。例外の人はいますが、「ジジイはレベルが上がってもまるで成長しないが、若者(特に女子)は成長率が高い」のが『ファイアーエムブレム』の定番となります。
でも、チキって設定だと……ゴニョゴニョゴニョ

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>
キャラの個性の付け方として面白いのは、ヒロインのシーダさんです。
初期パラメータはかなり低め、全体的な成長率は高いものの「HP」「ちから」「しゅび」の伸びが低いので主戦力としてはなかなか使いづらい……序盤では唯一のペガサスナイトなんで「彼女にしか出来ない立ち回り」があるものの、初心者はうっかり弓兵に撃ち落とされてしまってリセットを押すのが定番なんですが。

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>
序盤から終盤まで、シーダが話しかけないと仲間になってくれない敵キャラがたくさんいるのです。しかも、その全てが男性キャラな上に、説得台詞がぶっ飛んでいるので「得意技は色じかけ」などと言われがち。
でも、実際……シーダを序盤で失ってしまうと、「本来なら味方になってくれる敵キャラ」を殺さなくちゃいけなくなるので。戦力的にも、心情的にも、ものすごく痛手となるのです。


<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>
SRPGの歴史を考えるなら外せないキャラが、パオラ・カチュア・エストのペガサス三姉妹です。どのキャラも成長率の高いキャラなのですが、更に3人で相手を取り囲むようにして攻撃すると「トライアングルアタック」という合体特殊攻撃が発生します。
たくさんのキャラが登場するSRPGでは「キャラの個性化」を図るためにも、このキャラとこのキャラを揃えて攻撃させると合体攻撃が発生する―――といった要素があったりするのですが、その元祖とも言えるキャラ達ですね。
しかし、3人とも同じ「ペガサスナイト」なので3人とも1軍に入れるのは戦力的には偏るし、3人目が仲間になるのが終盤なのでそこから育てるのは難しいし、そもそも「3人で相手を取り囲むようにして攻撃する」というシチュエーションがあまりないんですよね。実戦に使えるというより、ロマン技の一種だと思います。



<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>
敵キャラクターにも印象的なキャラがいて、マケドニアのミシェイル、グルニアのカミユ、そして魔王ガーネフは序盤~中盤までに名前がチラホラ出てきて、終盤でようやく戦う“強敵”ポジションです。
特にカミユは「人格者であることは分かっているのに、戦争という悲しい運命のために、殺し合わなければならない敵」としてプレイヤーに強烈な印象を残し、以後の『ファイアーエムブレム』シリーズでも「戦いたくないのに戦わなければならない敵」が定番となっていきます。
ここで名前を挙げたキャラ以外にも、カイン・アベルの騎士コンビ、回避タンクのオグマと、キルソード持ちのナバール、橋を塞ぐことなら一級品のドーガなどなど……SRPGの元祖であり、『ファイアーエムブレム』1作目でありながら、ここで出てきたキャラ達がシリーズのテンプレートとなって、新作でも「今回のジェイガン枠」とか「今回のオグマポジション」とか「今回のカミュ枠」みたいに言われるようになるという。
そのため、2度もリメイクされるし、『ファイアーエムブレム無双』や『#FE 幻影異聞録』などにも初代のキャラが選ばれることが多いのだろうと思います。
「それまでのシミュレーションゲームでは駒でしかなかったユニットを個性あるキャラクターとした」と言うのは簡単ですが、単にキャラクターに顔グラと名前を与えただけでなく、序盤~終盤までのゲームプレイがドラマチックになるようなキャラクターを、味方にも敵にも用意したのが凄かったんだと思うんですね。
↓3↓
◇ リメイク作品では分からない、原作だからこそ「本来のバランス」がここにある
これまでにも書いてきましたが、このゲームはスーパーファミコンとニンテンドーDSの時に2度リメイクされています。特にスーパーファミコン版『紋章の謎』は初代のリメイク+新作の二部制だったこともありますし、SRPGというジャンルが定着したタイミングに遊びやすく作り直されたこともあって、なかなかのヒットとなりました。
かく言う私も、スーファミの『紋章の謎』の方は何周もプレイした「オールタイムベスト」級に大好きなゲームなのですが、ファミコンの『暗黒竜と光の剣』は今回が初めてのプレイでした。なので、『暗黒竜と光の剣』は黎明期の作品故に「遊びづらいなー」と思うところは多々々々ありました。
もし「やまなしさんが『ファイアーエムブレム』楽しそうに遊んでたから自分も遊んでみようかと思います!」なんて人がいましたら、『紋章の謎』の方をオススメします。

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 紋章の謎』より引用>
ファミコン版は後のシリーズとちがって攻撃する時に「武器の威力」や「武器の重さ」が分からないため、ファミコン版の攻略サイトで武器・アイテムの一覧をプリントアウトする(orスマホでいつでも観られるようにする)などして、予め自分で計算しながらプレイする必要があります。

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 紋章の謎』より引用>
当時はまだシミュレーションゲームがこどもに馴染みのないジャンルだったせいか、戦闘中の画面は数字ではなくゲージで表示されるのだけど……それがむしろ分かりづらい! 命中率のゲージが俺には95%くらいに見えるのだけど3回に1回は外すから、これは66%なのか? とか疑心暗鬼になったことが数えきれません。

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 紋章の謎』より引用>
スーファミ版を知っていると発狂間違いなしなのがアイテム周りです。
ファミコン版は武器とアイテムを合わせて、1キャラ4つしか持てません(スーファミ版は武器4つ、アイテム4つ持てる)。武器が消耗品のこのゲームで、これは……

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 紋章の謎』より引用>
持ちきれないアイテムは「預り所」で預かってもらえるのだけど、ステージに1つか2つしかないため、敵を全滅させた後に全員でスタート地点に戻ってせっせとアイテム整理をしなくちゃならなかったりが死ぬほど面倒!(スーファミ版はマルスに輸送隊がついてきているという設定で、マルスに隣接すればアイテムを出し入れできる)
更に、預り所で預かってくれるアイテムは40個まで(スーファミ版は128個まで)。
あっという間にいっぱいになってしまうため、小まめに要らないアイテムを引き出しては捨てるの作業が必要となります。売ることも出来ません!

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 紋章の謎』より引用>
アイテムの保持数は「セーブデータ」の領域にも関係してくるからファミコン版だと仕方ないのかなーと思いつつも、アイテムが「わたす」しか出来ないのも地味に不便でした。
スーファミ版は「交換」が出来るため、アイテム欄がいっぱいのキャラ同士でもアイテムのやり取りが可能だったのですが、「わたす」しか出来ないと相手のアイテム欄に空欄がないとやりとり出来ないのです。ただでさえ、武器とアイテム合わせて4つしか持てないのに!
ステージ出撃前のアイテム整理も出来ないため、二軍のキャラにうっかり重要アイテムを持たせると詰むことだってあります。
ただ、このゲームは「この不便さ」も含めたゲームバランスになっているんですね。
ところどころの仕様が変わったスーファミ版では疑問だったところの答えが、ようやく分かった気がします。

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>
このゲームの基本武器は「てつ<はがね<ぎん」の順で強くなります。
・「てつの○○」は安くて軽いけど、威力が低い
・「はがねの○○」はリーズナブルで威力もそこそこだけど、重くて当たりづらい
・「ぎんの○○」は軽くて威力も高いけど、買値も高くて壊れやすい
この「壊れやすい」って特徴が、武器アイテムを合計4つまでしか持てず、預り所はステージに1つか2つでかつ40個までしか預かってもらえないこのゲームではかなり大きいんです。

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>
「はがね」は当たらないからと主力を「ぎん」装備にしていると、武器屋のない&敵増援が果てしなく出るステージで「ぎん」の耐久力が尽きて武器を使い切ってしまう危険性があるのです。初期耐久力の17って、あっという間になくなりますからね。
「アイテムリソースのやりくり」に悩むもどかしさは、武器アイテムを持てる数が倍になった上に、マルスの輸送隊に3倍以上預けられるようになったスーファミ版では味わえなかった要素だと思います。
スーファミ版は更に、命中率の計算式が変わるので「はがね」も外れにくくなったし、「はがね」と「ぎん」の一長一短っぷりが無個性化されているんですよね。まぁ、確かに「はがね」の当たらなさも、「ぎん」が壊れて武器がなくなる緊張感も、不評だったのかなと思わなくもないですが……

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>
仕様の変更で難易度がガラリと変わったのは、「港町ワーレン」です。
このステージ、スーファミ版では画面を覆いつくさんばかりの敵増援が押し寄せてくる「序盤の難所」としてトラウマに残っていたステージなのですが……私ずっと、序盤なのにどうしてこのステージだけこんな難しいんだろって疑問だったんですね。
しかし、ファミコン版をプレイして納得しました。
ファミコン版はマムクートの竜石が消耗品ではないうえにずっと変身しっぱなしなため、バヌトゥ1人で敵全員を食い止められるんですね。更に、ファミコン版は「敵が同時に出現できる数」が厳密に決まっているため、敵を倒さずに食い止めていると増援があっさり打ち止めになるんですね。時間はかかるけど、難易度はそんなでもありませんでした。
それだとレベルが上がりきらなくて終盤が不利にならない? と不安だったのですが、ステージ数が多いからか経験値は余り気味で、クラスチェンジアイテムが出てくる前にレベル20になって持て余すことも多かったです。

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>
そして、何より…… この頃は「隠し要素」だったからか、秘密の店で買えるドーピングアイテムがクソ安い!
上のスクショはシルバーカード使用の価格なので定価は「2550」ですが、それでもスーファミ版の「10000」の約4分の1の値段で買えます。何が理由かはちょっと分からないのですが、全体的に所持金には余裕があると思うので、「武器レベル」以外のパラメータは1軍キャラ全員カンストさせることだって出来ます。
つまり……レベルが上がってもほぼ成長しないジェイガンなどのジジイキャラだって、ドーピングしまくって最終決戦で無双させることが出来るのです。これが金の力だ! 金は老いを克服するのだ!

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 紋章の謎』より引用>
アイテムの保持数は「セーブデータ」の領域にも関係してくるからファミコン版だと仕方ないのかなーと思いつつも、アイテムが「わたす」しか出来ないのも地味に不便でした。
スーファミ版は「交換」が出来るため、アイテム欄がいっぱいのキャラ同士でもアイテムのやり取りが可能だったのですが、「わたす」しか出来ないと相手のアイテム欄に空欄がないとやりとり出来ないのです。ただでさえ、武器とアイテム合わせて4つしか持てないのに!
ステージ出撃前のアイテム整理も出来ないため、二軍のキャラにうっかり重要アイテムを持たせると詰むことだってあります。
ただ、このゲームは「この不便さ」も含めたゲームバランスになっているんですね。
ところどころの仕様が変わったスーファミ版では疑問だったところの答えが、ようやく分かった気がします。

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>
このゲームの基本武器は「てつ<はがね<ぎん」の順で強くなります。
・「てつの○○」は安くて軽いけど、威力が低い
・「はがねの○○」はリーズナブルで威力もそこそこだけど、重くて当たりづらい
・「ぎんの○○」は軽くて威力も高いけど、買値も高くて壊れやすい
この「壊れやすい」って特徴が、武器アイテムを合計4つまでしか持てず、預り所はステージに1つか2つでかつ40個までしか預かってもらえないこのゲームではかなり大きいんです。

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>
「はがね」は当たらないからと主力を「ぎん」装備にしていると、武器屋のない&敵増援が果てしなく出るステージで「ぎん」の耐久力が尽きて武器を使い切ってしまう危険性があるのです。初期耐久力の17って、あっという間になくなりますからね。
「アイテムリソースのやりくり」に悩むもどかしさは、武器アイテムを持てる数が倍になった上に、マルスの輸送隊に3倍以上預けられるようになったスーファミ版では味わえなかった要素だと思います。
スーファミ版は更に、命中率の計算式が変わるので「はがね」も外れにくくなったし、「はがね」と「ぎん」の一長一短っぷりが無個性化されているんですよね。まぁ、確かに「はがね」の当たらなさも、「ぎん」が壊れて武器がなくなる緊張感も、不評だったのかなと思わなくもないですが……

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>
仕様の変更で難易度がガラリと変わったのは、「港町ワーレン」です。
このステージ、スーファミ版では画面を覆いつくさんばかりの敵増援が押し寄せてくる「序盤の難所」としてトラウマに残っていたステージなのですが……私ずっと、序盤なのにどうしてこのステージだけこんな難しいんだろって疑問だったんですね。
しかし、ファミコン版をプレイして納得しました。
ファミコン版はマムクートの竜石が消耗品ではないうえにずっと変身しっぱなしなため、バヌトゥ1人で敵全員を食い止められるんですね。更に、ファミコン版は「敵が同時に出現できる数」が厳密に決まっているため、敵を倒さずに食い止めていると増援があっさり打ち止めになるんですね。時間はかかるけど、難易度はそんなでもありませんでした。
それだとレベルが上がりきらなくて終盤が不利にならない? と不安だったのですが、ステージ数が多いからか経験値は余り気味で、クラスチェンジアイテムが出てくる前にレベル20になって持て余すことも多かったです。

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>
そして、何より…… この頃は「隠し要素」だったからか、秘密の店で買えるドーピングアイテムがクソ安い!
上のスクショはシルバーカード使用の価格なので定価は「2550」ですが、それでもスーファミ版の「10000」の約4分の1の値段で買えます。何が理由かはちょっと分からないのですが、全体的に所持金には余裕があると思うので、「武器レベル」以外のパラメータは1軍キャラ全員カンストさせることだって出来ます。
つまり……レベルが上がってもほぼ成長しないジェイガンなどのジジイキャラだって、ドーピングしまくって最終決戦で無双させることが出来るのです。これが金の力だ! 金は老いを克服するのだ!

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>
スーファミ版から入った私が、ファミコン版を始める前に不安だった「魔法攻撃力には個人差がない」仕様(スーファミ版は「ちから」が上乗せされるので、「ちから」が上がりやすいキャラが魔導士・シスター共に重宝された)も、遊んでみると「ほぼ全キャラが魔法防御力0で固定」されているため―――“当たれば固定ダメージの攻撃”と分かりやすかったですし。
アーマーナイトやハンターがクラスチェンジ出来ないのも、そもそもクラスチェンジアイテムが終盤まで手に入らないので、そこまで気になりませんでした。前述した通り、ドーピングアイテムが安価に買えてしまうので、イザとなったらどのキャラもカンストまで上げられちゃいますしね。
僧侶がレベルを上げるためには敵から攻撃されなくちゃいけない―――の仕様だけはワケが分かりませんでしたが(スーファミ版は杖を使うたびに経験値がもらえる)。成長率もクソ低いし、最序盤を除けば僧侶はまったく使いませんでしたね……
『ファイアーエムブレム』シリーズと言えば「死んでしまったキャラはロストしてしまう」ため、1人でも味方が死んだらリセットしてステージの最初からやり直す遊び方が一般的と言われますが……SRPGというジャンルが生まれる前に作られた『ファイアーエムブレム』1作目は、そんな遊び方をする人がいるとは思っていなかったみたいなんですね。
『トラキア776』発売時に、シリーズ生みの親である加賀昭三さんがN.O.M.のインタビューでこう答えています。(※ 2025年追記:N.O.M.のアーカイブが消滅してしまったため、現在はもう読めません)
<以下、引用>
そうそう遊び方ですが、パーフェクトを目指すのもいいし、なりゆきで遊ぶのもいいし、自由に楽しんでクリアしていただければ、コレが正解というのはないんです。ただし、パーフェクト・・・全員仲間にして、全員死なせずに、エンディングを全部見て・・・という遊び方ですか、コレは私の意図とは違うということは言っておきます。
私はゲームのなかに、滅びの美学を反映させているつもりなんです。50人登場したとして、全員は生き残れない。誰かが犠牲になるところにドラマが生まれる。それを大切にしたいんです。コアユーザーの目指すノーリセットプレイですね。誰かが死んだからリセットでやりなおしではなく、そこでリセットせずに、倒れていったキャラの想いをひきずってプレイを続けるという。
</ここまで>
※ 強調など引用者が一部に手を加えました
『暗黒竜と光の剣』では、1ステージに15人くらいしか仲間を出撃させられないのに、全体で40人以上が仲間になります。それは、マルス以外のキャラは誰が死んでも替わりがいるように作っているからで。大切に育てていた仲間が死んでしまったとしても、バックアップのメンバーを出してそこから育てても何とかなるようにしてあるんだと思うんですね。
そのため、あまり仲間が死なない&与える経験値を1軍メンバーに集中していると、経験値が余り気味になって、終盤は特に楽になっていくように思いました。仲間が死んでもリセットを押さない「リセット禁止」の縛りプレイくらいが、ちょうどいいバランスなのかなと。
◆ 結局、どういう人にオススメ?

<画像はNintendo Switch Online版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』より引用>
『ファイアーエムブレム』シリーズ全体を未経験の人に、「どの作品でもイイからファイアーエムブレムやってみてね!」とオススメする人を考えると……
普通のRPGよりも大所帯な、40人以上の中から出撃する15人の「編成」を考えるのにワクワクできる人。そうして出撃させたキャラ達で、「パズルのように」敵を罠にハメて1人ずつ倒していくのが気持ちいい人。敵味方合わせて50人くらいのキャラによる、国と国をまたいだ戦記モノのストーリーに胸躍る人なんかにオススメかなと思います。
そして、その『ファイアーエムブレム』シリーズの中でも、敢えて初代の『暗黒竜と光の剣』をオススメする人を考えると……普通に考えたら、リメイク版の『紋章の謎』をオススメするんですけど(笑)。SRPGなんてジャンルが明文化されていなかった時代に、こういうものを生み出そうとした作り手達の原液を浴びたい人には是非触れてほしいなと思います。
あと、『紋章の謎』を既に遊んだという人は、「元はこうだったんだ」と知るために遊ぶのもアリだと思います。私も『紋章の謎』ではほとんど使わなかったキャラ(バーツ、バヌトゥ、ミネルバ、チェイニーあたり)を使って、すごい新鮮な気持ちで遊びました。チェイニーすげえ有能キャラでした(スーファミ版は変身してもHPが増えないのでイマイチ使いづらかった)。
Nintendo Switch Onlineに入っていれば、『暗黒竜と光の剣』も『紋章の謎』も遊べるので是非どうぞ! 初心者は「まるごと保存」使いまくってもイイと思うので!
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