Wii Uが完全には成しえなかった「TV画面を使わなくても遊べる据置機」を実現したNintendo Switch

※ この記事は2017年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です


 この話はNintendo Switchの発売後、実際に何週間か遊んでから書いた方がイイかとも迷ったのですが……「Wii Uの総括」として書いておかなければならないと思ったので、Nintendo Switch発売直前のこのタイミングで書きます。


◇ Wii U前の「据置ゲーム機」


 これらの記事を書いたのは2009年3月―――
 Nintendo Switchどころか、Wii Uもまだまだ影も形もない時期の記事です。
 国内ゲーム市場の話題としては、この前の年末商戦で『Wii Music』と『街へいこうよ どうぶつの森』が振るわずにWiiが失速、PS3も『FF13』発売前でまだ浮上せず(この年の9月に値下げをして12月に『FF13』発売)、「据置ゲーム機どうすんのこれ……」という時期でした。


 家でゲームを遊ぶ場合でも、携帯ゲーム機はホント便利です。テレビを使わなくても遊べるから「テレビをつけっぱなしにして観たい番組が始まるまでの合間にプレイ」とか、画面が自由に動かせるから「ベッドで寝ころびながらのプレイ」とか、水回りにさえ気を付ければ「お風呂やトイレでのプレイ」だって可能です。
 それに比べて据置ゲーム機は、テレビに線を繋いで、テレビ画面を占拠して、テレビの前にドカッと座りながらでしか遊べませんでした。

 携帯ゲーム機と据置ゲーム機、どっちを遊ぶ?……と考えたら、携帯ゲーム機のメリットが多すぎて、据置ゲーム機は不自由極まりないじゃないか!というのが、2009年3月の記事でした。



 Wii Uが挑む相手は「据置型ゲーム機不要論」である

 そして、2011年6月にWii Uが発表されます。
 巨大な画面がドンと構えているコントローラが“顔”となり、コンセプト映像は「テレビ画面でマリオを遊んでいたけど、家族が野球を観たいと言うのでゲームパッドの画面に切り替えて続きを遊ぶ」シーンから始まりました。
 ゲームの画面を「テレビ画面」と「ゲームパッドの画面」のどちらにも自由に切り替えられることによって、据置ゲーム機でありながら“テレビを使わなくても遊べるから「テレビをつけっぱなしにして観たい番組が始まるまでの合間にプレイ」とか、画面が自由に動かせるから「ベッドで寝ころびながらのプレイ」とか、水回りにさえ気を付ければ「お風呂やトイレでのプレイ」だって可能”になると思ったのです。


<以下、セルフ引用>
 『ドラクエ』だったら「ながらレベル上げ」
 『どうぶつの森』だったら「ながら果物拾い」
 『ゼルダ』だったら「ながらミニゲーム」


 もちろんソフトによって色んな使い方があると思います。
 でも、まず僕が真っ先に嬉しかったのは、「据置型ゲーム機だと遊ぶのが苦しくなってきたソフト達」に救済の道を見せたことです。時間のかかる箇所はテレビのチャンネルを変えて液晶コントローラで「ながらプレイ」、大画面で遊びたい箇所はテレビの大画面でプレイ。

</ここまで>

 しかし、それは……今にして思えば「勝手にそう期待してしまっただけ」だったように思えます。「このゲーム機ならこんなこともこんなこともこんなことも出来ますよ」という幾つかのコンセプトの中の一つが全部そうなると思い込んで、実際に出てきたものはそうではなくて失望してしまったというか。



 実際には、Wii Uのゲームって「テレビ画面がないと遊べないゲーム」も結構あったんですよね……



◇ 発売されたWii Uの現実
 Wii Uが発売されてからの4年間で、私が「TV画面を使わないでゲームパッドの画面だけで遊んだゲーム」はそれはもうたくさんありました。
 『Wii Fit U』、『トライン2』、『ブタメダル』、『クニットアンダーグラウンド』、『役満 鳳凰』、『THE 密室からの脱出2』、『リトル インフェルノ』、『スーパーマリオメーカー』……バーチャルコンソールのソフトや、Wiiモードでのソフト、Miiverseやeショップやブラウザなどなど。

 「最初から最後までゲームパッドの画面のみで遊んだ」のではなく、例えば『スーパーマリオメーカー』は「コース作りはテレビのニュースをつけっぱなしにしてゲームパッドの画面でプレイ」して、「他の人が作ったコースに挑戦するときはテレビ画面でプレイ」というカンジに使い分けていました。
 時間のかかる作業的なところはゲームパッドの画面で、真剣にやりたいところはテレビ画面で―――と、Wii U発売前に夢みたとおりのことが出来ていました。




 しかし、こうやって“「テレビ画面」と「ゲームパッドの画面」のどちらにも自由に切り替えられる”ゲームばかりではなくて、「テレビ画面」と「ゲームパッドの画面」の二画面をフル活用したゲームは、両方の画面を使うため、テレビなしで「ゲームパッドの画面だけで遊ぶ」ということが出来なかったんですね。

 『ニンテンドーランド』の幾つかのゲーム、『レゴシティアンダーカバー』、『Splatoon』、『U-EXPLORE SPACE ADVENTURES』、『幻影異聞録 #FE』……私が遊んだゲームの中だけでも、これらのゲームは二画面をフル活用したゲームだったため、「ゲームパッドの画面だけで遊ぶ」ことが出来ませんでした。


 「Wii Uゲームパッドを活かしたゲーム」とは何だ?

 これは2014年2月に書いた記事です。
 Wii Uの発売が2012年12月ですから、Wii U発売から1年3か月が経過したタイミングの記事ですね。

 私はそれまで「今までのゲームがWii Uゲームパッドがあったから遊びやすくなった」のならそれは立派に「Wii Uゲームパッドを活かしたゲーム」と言えると思っていました。他機種では右スティック操作なのがWii Uならばタッチペンで操作できるとか、他機種とちがってテレビを使わないで遊べるとかが立派に魅力になると思っていました。

 しかし、任天堂自身は、「それでは新しいゲーム機を買ってはもらえない」「Wii Uでしか実現できないゲームがないと買ってもらえない」「Wii Uゲームパッドがなければ実現できないゲームがないと買ってもらえない」と考えて……そこから出てきたのが『Splatoon』や『スーパーマリオメーカー』だったんですね。
 まぁ、『Splatoon』は続編がNintendo Switchで、『スーパーマリオメーカー』は3DS版が出ているので、Wii Uゲームパッドなしでも実現できてしまっているような気もしますが(笑)。


 『Splatoon』なんかは「二画面をフル活用したゲーム」で、ゲームパッドの画面にリアルタイムの勢力図が表示されるだけでなく、「ここにトルネードを撃つ」とか「ここのビーコンにジャンプする」など大きなタッチパネルに常に勢力図が表示されていることを活かしたウェポンがありました。
 『Splatoon 2』は二画面ではなくなるので、勢力図はボタンで切り替えることで代用していますが、トルネードやビーコンは出せないためスペシャルウェポンやサブウェポンは入れ替えになるみたいですね。『Splatoon 2』が面白いゲームになることはもちろん期待していますが、『1』の上位互換というワケにはいかなくて、きっと「あー、トルネードやビーコンのあった『1』が懐かしいなー」みたいに懐古する人も出てくるんだろうなーと思います。私はどちらも使いこなせなかったので別にイイです!



 しかし、『Splatoon』のように「二画面をフル活用したゲーム」はテレビ画面を使わなければ遊べません。せっかくWii Uは「画面付きコントローラ」を持って、テレビ画面の前に拘束されることから解放されると思ったのに、「Wii Uならではのゲーム」を作ろうとしたらテレビ画面の前にまた拘束されてしまうのです。

 流石に『Splatoon』のオンライン対戦をテレビを観ながら遊ぼうとは思わなかったので『Splatoon』は別にイイのですが、『レゴシティアンダーカバー』とか『幻影異聞録 #FE』の「ブロック探し」や「ダンジョン探索」は時間がかかるのでゲームパッドの画面だけでも遊べるようにして欲しかったとも思いました。
 でも、『レゴシティアンダーカバー』も『幻影異聞録 #FE』も、「主人公が持っている端末」をWii Uゲームパッドに見立てていることで「ゲームの主人公」とプレイヤーをシンクロさせているゲームなので「Wii Uならではのゲーム」を作ろうとした結果なんですよね……『レゴシティアンダーカバー』は他機種に移植されますけど、あの演出はどうするんでしょう。



<画像はWii Uソフト『レゴ®シティ アンダーカバー』より引用>

<画像はWii Uソフト『幻影異聞録♯FE』より引用>


 先日Miiverseについて“「色々な機能」を持たせたが故に、それぞれがそれぞれの足を引っ張ってしまったところが多かったと思う”という記事を書きましたが、実はWii Uゲームパッドも同様のことが言えると思うのです。

 どうしてWii Uに「画面付きのコントローラ」を付けたのかという話は、2011年のE3で公開された「社長が訊く」に詳しく書かれています。

・テレビの電源が入っていなくてもすぐに中身の情報が見られる
・だれかが家のテレビを見ていても、ゲームパッドの画面だけでも遊べる
・「相手に自分の画面を見せずに遊ぶ」と「みんなが同じ画面を見て遊ぶ」を組み合わせられる
・情報画面とゲーム画面が両方映っていることで、かなり便利に遊べるゲームがある
・テレビ画面に近づかないと見えないようなものも手元で見られる
・ジャイロセンサーが入ったのでザッパーと組み合わせられる
・文字入力が快適になる
・「自分が絵を描く画面」と「人に見せる画面」に向いているサイズはちがう

 たった1ページに「画面付きのコントローラがあればあれも出来る、これも出来る」と語られていて、宮本イズムと言われる「アイディアとは複数の問題を同時に解決するものだ」を実現させたアイディアだったと思うのですが……しかし、それらの複数の機能がお互いに干渉しあってうまく作用しなかったのはMiiverseと似ていて。


 「Wii Uゲームパッドがあれば、あれも出来る、これも出来る」という使い方の筆頭だった、「テレビ画面を使わなくてもゲームパッドの画面だけで遊べる」と「テレビ画面とゲームパッドの画面の二画面の遊びが出来る」の二つは相反していて――――

・テレビ画面を使わないでゲームパッドの画面だけで遊びたい人にとっては、『Splatoon』や『幻影異聞録』や『レゴシティアンダーカバー』がテレビ画面必須だったのが不満で、
・テレビ画面とゲームパッドの画面の二画面の遊びを期待していた人にとっては、二画面を活かしたゲームが少なかったのが不満で、

 「両方できる」ようにしたせいで、どちらの人にも不満を持たれてしまったように思うのです。




 Wii Uというゲーム機は結局のところ、「アイディアとは複数の問題を同時に解決するものだ」という考えに捉われすぎたゲーム機だったんじゃないのかと思います。




◇ そこからのNintendo Switch
 さて、ここからは未来の話です。
 Wii Uは「テレビ画面を使わなくてもゲームパッドの画面だけで遊べる」と「テレビ画面とゲームパッドの画面の二画面の遊びが出来る」の両方ができるゲーム機で、その二つが相反してしまったのですが……Nintendo Switchは「二画面の遊び」の方は切り捨てて、「テレビ画面を使わなくてもNintendo Switch本体の画面だけで遊べる」方に特化したんですね。


 もちろんWii UとNintendo Switchでは仕組みがちがいます。
 Wii Uは本体が据置ゲーム機で、そこからゲームパッドに電波を飛ばして「あたかも携帯ゲーム機のように」遊べるゲーム機でした。なので、本体からの電波が届く範囲内でしか遊べませんでした。
 Nintendo Switchは本体がタブレット端末のような板で、言ってしまえば「携帯ゲーム機そのもの」なのですが、ドッグに格納することでテレビに出力することも出来ます。だから、世界中のどこにだって持ち運んで遊べることが出来るのですが。


 想定されている遊ばれ方としては、「テレビ画面」と「Nintendo Switch本体の画面」を自由に切り替えて遊べるというものなので、Wii U発売前に私が期待した“ゲームの画面を「テレビ画面」と「ゲームパッドの画面」のどちらにも自由に切り替えられる”を引き継いでいるとも思うのですね。

 しかも、今回は「二画面の遊び」を切り捨てました。
 「二画面の遊び」がなくなってしまったことには少しの寂しさがありましたし、「二画面だからこそ遊びやすくなるゲーム」はたくさんあったろうにとは思うのですが……切り捨てたおかげで、今回は恐らくすべてのゲームが「テレビ画面」と「Nintendo Switch本体の画面」を自由に切り替えて遊べるんです。

 Wii Uでは不完全だったものが、Nintendo Switchでは完全になるのです。


 任天堂がNintendo Switchを発表した際の映像やTVCMは、恐らく「Wii Uとの差別化」を図るために、「家ではテレビ画面を使って遊ぶ」「外ではNintendo Switchの画面で遊ぶ」といったカンジに家と外での使われ方を分けて見せていました。


 しかし、実際に発売されて使ってみたら、私はWii Uのように「家の中でも「テレビ画面」と「Nintendo Switch本体の画面」を自由に切り替えて遊べる」ことが大きな長所になると思っています。
 “テレビを使わなくても遊べるから「テレビをつけっぱなしにして観たい番組が始まるまでの合間にプレイ」とか、画面が自由に動かせるから「ベッドで寝ころびながらのプレイ」とか、水回りにさえ気を付ければ「お風呂やトイレでのプレイ」だって可能”といった携帯ゲーム機のような使い方はもちろん。例えば、文字入力が続くところは本体を取り出してタッチパネルで文字を入力するとか、パーティゲームだったら例えば一人の人が携帯モードで(他の人に見せずに)隠したアイテムを残りの全員がテレビの大画面で探すみたいなことも出来ると思うんですね。




 2017年2月現在、任天堂が公開しているNintendo SwitchのTVCMの内の幾つかには、冒頭に「テレビ画面に映っていたゲーム画面が、ドックから本体を引き抜いた途端に本体の方に続きの画面がシームレスに移行する」シーンが入っています。任天堂の開発者のインタビューなどを見ると、この「シームレスに移行する」ことは重視していたみたいなのですが……

 この「シームレスな移行」って、単に「家ではテレビモードで遊べて、外では携帯モードで遊べる」というだけなら特に必要もない技術だと思うんですよ。TVCMのようなシチュエーションで「遊んでいたゲームを中断して外に持ち運ぼうとする」のなら、むしろスリープモードに入ってくれた方が嬉しいはずですもの(笑)。
 この「シームレスな移行」がありがたいのは、むしろ家の中で「テレビ画面」と「Nintendo Switch本体の画面」を自由に切り替えて遊ぶ時だと思うんですね。ずっとテレビ画面でゲームを遊んでいたけど、そろそろ野球の試合が始まるからNintendo Switch本体の画面に切り替えて遊びたいとか。逆に、レベル上げ作業はベッドで寝転がりながらプレイしていたけど、ボス戦に挑むときはテレビの大きな画面に切り替えて遊びたいとか。『どうぶつの森』のマイデザインのところだけ、テレビ画面からNintendo Switch本体の画面に切り替えてタッチパネルで操作したいとか。

 Wii Uのように“家の中で「テレビ画面」と「Nintendo Switch本体の画面」を自由に切り替えて遊ぶ”ことを想定しているから、「シームレスな移行」になるように作ったのだろうし、映像やTVCMで繰り返し見せているのでしょう。



 そういう意味では、Nintendo Switchは「Wii Uを否定するもの」ではなくて「Wii Uのコンセプトを正統に引き継いで完璧にしたもの」と言えると思うのです。




 「二画面の遊び」の方は切り捨ててしまいましたけどね……
 コストを考えると難しそうではあるのですが、「二画面の遊び」はスマホ連動と上手く合わせて復活しないかなーと妄想しています。例えば『幻影異聞録』はイツキ君がスマホを取り出したらWii Uゲームパッドに「イツキくんが見ているスマホの画面」が映るようになっているのですが、それを本当に「自分のスマホ」に映せるようになったら面白そうじゃないですか。

 一つ一つのゲームごとにアプリを用意するのはコストを考えると採算が取れなさそうですけど、例えば『どうぶつの森』みたいに「ゲーム機用のソフト」も「スマホ用のアプリ」も両方ヒットすることが見込めるシリーズは、「スマホ用のアプリに、ゲーム機用ソフトのセカンドスクリーンになる機能がある」みたいな仕込みができると思うんですね。


 まぁ、Wii Uの時も「Wii Uで『どうぶつの森』が発売されたらこんなことが出来るにちがいない!」と本体発売前から妄想していたら結局ソフトは出なかったので、Nintendo Switchでも『どうぶつの森』が出るかは分かりませんけどね!

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