「Wii Uゲームパッドを活かしたゲーム」とは何だ?

<画像はWii U用ソフト『TRINE 2 三つの力と不可思議の森』より引用>

※ この記事は2014年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です


 先月の任天堂の経営方針説明会での社長説明で、「Wii Uならではのゲームがない」という話が述べられていました。


<以下、引用>
 まず、短期的に任天堂が重点として取り組んでいくことは、Wii Uというプラットフォームの最大の特長である、Wii U GamePadの存在意義を徹底的に高める、ということです。
 残念ながら、Wii Uの現状を見る限り、GamePadの存在意義をこれまで十分にお示しできていたとは決して言えないと考えるべきだと思いますし、「Wii Uが旧機種のWiiとどう違い、アップグレードするメリットがどこにあるのか?」ということを多くのお客様にご理解いただくということがまだまだ実現できていないと認識しています。

 (中略)

 このために、まず、当たり前のことではあるのですが、Wii U GamePad があるからこそ実現できるソフトタイトルを提案することを、今年の最優先課題に置きたいと思っています。
 これまで、テレビの周りに多人数が集まって楽しんでいただく際に、GamePadがあるからこそ実現できたソフトタイトルはすでにいくつか提案できたと考えていますが、テレビの前に一人でいるとき、GamePadがあるからこそ実現できたソフトタイトルとしては、まだ、決定打をお示しできていないと私達も自覚しておりますので、本件は、宮本の指揮する当社の内作開発部門の今年の最優先課題のひとつとして取り組んでいきます。

</ここまで>
※ 改行・中略・強調など引用者が手を加えています



 社長説明のことは一先ず忘れておくとして……
 Wii Uをまだ買っていない人が「Wii UにはWii Uならではのゲームがない」「Wii Uゲームパッドを活かしたゲームが出たら買うよ」と言っているのを、ブログやTwitter等ではよく見かけます。私にはそれがすごく違和感あったんですね。「え?出てるよ?」と。

 これは別に「Wii U」に限った話ではなくて、どの機種にでも当てはめられることだと思うんですが……「○○ならではのゲーム」とか「○○を活かしたゲーム」という言葉から連想されるものが、その機種を既に持っている人と、まだ持っていない人では違うのかなと(※1)

(※1:正確には「持っているか」ではなくて「頻繁に使用しているか」どうか、ですけど)




 例えば、私が現在プレイしている『TRINE2 三つの力と不可思議の森』―――
 もちろんこのゲームは他機種でも出ているシリーズなので、決して「Wii Uのためだけに作られたゲーム」ではないんですけど……(恐らく)他機種では右スティックでしなければならない操作を、Wii Uゲームパッドならばタッチペンで操作出来るんです。
 騎士ポンティアスの盾は右スティックの方が操作しやすいですし。
 盗賊ゾヤの弓矢は右スティックでも、まぁ……慣れればとは思うのですが。
 魔法使いアマデウスの操作は右スティックでは自分には無理です。無理でした。

 アマデウスを操作する際、右スティック(タッチペン)で「正方形を描くと箱」を「線を描くと板」を作り出し、それを自由に動かすことが出来るのですが。物理演算に従って動くので、テキトーに重ねるとすぐさま落下してしまいます。“狙った大きさに作り”“狙って重ねて”“精密に動かす”操作を右スティックでするだなんて私には無理です。左スティックは昔に比べれば慣れましたけど、右スティックで思い通りの大きさの正方形を描くだなんて無理無理無理無理です。



 試しに「今日は右スティックだけでプレイしてみよう!」とやってみたり、「今日はWiiリモコン+ヌンチャクのポインター操作を試してみよう!」としてみたりもしたのですが……ゲームの難度が全然違いました。「思ったように動かす」のがまず大変なので、ゲームを攻略するどころの騒ぎではありませんでした。

 ゲームパッドの操作ならば「タッチペンでの操作」も「右スティックでの操作」も自由に使えるので、ポンティアスの時は右スティック、ゾラとアマデウスの時はタッチペンで私はプレイしています。



 私は、これも立派に「Wii Uゲームパッドを活かしたゲーム」だと思うんですよ。
 他のコントローラでは「思ったように動かすのがまず難しい操作」を、タッチペンで誰でも思ったように動かせるようにしている―――これこそが「Wii Uならでは」じゃないのかって思うのです(※2)

(※2:「3DSにもタッチパネル付いているじゃん」という意見もよく見るのですが、3DSの下画面は3.02インチで、3DS LLでも4.18インチです。6.2インチのゲームパッドの方が二まわりは大きいので、性能や解像度の件を無視したとしても、『TRINE』みたいなゲームは3DSではちょっと厳しいかなと思います)





 それと、『TRINE2 三つの力と不可思議の森』についてもう一つ。
 このゲームはボイスチャット対応のオンライン協力プレイが出来るのですが、Wii Uゲームパッドには標準でマイクが付いているので「別売の周辺機器」等を買わなくても誰でもボイスチャットが出来ます。
 日本人の他機種のボイスチャット浸透率がどれくらいかを私は知らないので言及しませんが、Wiiの時は「ボイスチャットには専用の周辺機器が必要→なので、ボイスチャットをしてくれる人が少ない→だから対応ソフトがほとんど出ない」という負のスパイラルに陥ってしまっていました。

 Wii Uは本体を買った人全員がボイスチャットが可能―――ということで、Wii Uでの『マリオカート』とか『スマブラ』がボイスチャット対応したら面白いんじゃないかなと思うのですが。「オンライン対戦はないと許さないが、ボイスチャットだけは絶対にやりたくない!」という人もいるので、まぁ難しいところですね。日本では住宅事情とかもありますし。

 そうそう。『TRINE2 三つの力と不可思議の森』のボイスチャットだと、小学生くらいと思われる女のコと一緒に協力プレイをしたことありますよ。
 「ナイトさんがんばれー」と言われて、ほわー( ´∀`)ーんとなりました。いや、私はロリコンじゃないですけど別に。





 ……と、こんな風に「Wii Uゲームパッドがあるからこそ便利になるゲーム」は既にたくさん出ているんですね。
 『Wii Fit U』や『ドラクエ10』、バーチャルコンソールのソフト等は「Wii Uゲームパッドがあるからこそテレビを使わなくてもプレイ出来る」のがものすごく便利だと評判ですし。
 『ピクミン3』は「Wii Uゲームパッドをマップとして活用する」便利さがありましたし。
 『The Wonderful 101』は『TRINE2』同様に「右スティックで図形を描く」のも「タッチペンで図形を描く」のも出来るようになっていましたね。


 これらのゲームは「今までのゲームの延長線上にあるゲーム」だったり「今までのコントローラだけでも遊べるゲーム」だったりするのですが、Wii Uゲームパッドがあることで格段に遊びやすくなるゲームでした。
 だから私は「結局wiiUならではってゲームがないのよね」「Wii Uゲームパッドを活かしたゲームが出たら買うよ」という意見を読む度に、「何言ってんの?いっぱい出てるじゃん?」と思っていたんですね。




 でも、多分そういうことじゃないんですね。
 既にWii Uを持っている人にとっては「今までのゲームが格段に遊びやすくなる」のはありがたいし、それだけでWii Uゲームパッドの恩恵はあると思えるのですが。そういう人ばかりではないんです。まだWii Uを買っていない人にとっては、2万5千円とか3万円とか出して新型ゲーム機を買うのに「便利になる」くらいじゃ動機にならないんですよね。

 Wii Uは「便利になる」を目指してしまった。
 Wiiの時にユーザーから出ていた不満点を潰そうと、テレビがなくても遊べるとか、タッチペンで操作しやすいとか、マイクが最初から付いているとか、オンラインの強化とか―――「便利になる」方向に進んでしまった。それこそ不満を言っていた自分のような人間には評判の良いハードになった。でも、「便利になる」にお金を出してくれる人はそんなに多くなかったんです。



 なので、冒頭に挙げられた「結局wiiUならではってゲームがないのよね」というところに行き着くのです。「Wii Uゲームパッドのおかげで遊びやすくなる」なんてレベルではなく、社長説明にあった「Wii U GamePad があるからこそ実現できるソフトタイトル」を出すしかないとなるのです。

 経営方針説明の後、「今までそんなことも気付いていなかったのかよ!」というツッコミも見かけたんですが、それは正直仕方がないと思うのです。


 Wii U最初の1年間は「今までのゲームがWii Uゲームパッドのおかげでこんなに遊びやすくなるんですよ」と提案してきたワケで、“今までのゲーム”が好きな人達の方を向いていたワケです。
 でも、2年目のWii Uは「Wii Uゲームパッドでしか実現出来ない“今までにないゲーム”が遊べるんですよ」と提案していくことになります。それは言ってしまえば、「“今までのゲーム”が好きな人達」ではなくて「“今までのゲーム”に飽き飽きしている人達」の方を向く行為であって。Wiiの時と同様に「任天堂はまたゲーマーを軽視するのか!」と言われるのは間違いありませんからね。


 これは去年の夏にも言っていた「Wii Uは最初はゲームファンに向けたソフトを出して、新しい驚きを提案するのはその後」という戦略通りとも言えますね。「今までそんなことも気付いていなかったのかよ!」というより、最初からその予定だったというか。




 そう言えば、Wiiの時も「Wiiリモコンによって今までのゲームが格段に遊びやすくなるゲーム」がありました。
 3Dシューティング等では照準を「Wiiリモコンを画面に向ける」だけで合わせられたので、右スティックが苦手な人でも遊べるようになりましたし。『428』みたいなノベルゲームは「片手で操作出来る」のが便利でした。「Wiiリモコンを画面に向けてAボタン」で大抵の操作が出来るので、PCどころかHDDレコーダーも使えない我が家の母でも『インターネットチャンネル』や『YouTube』は毎日起動しています。

 でも、こういうソフトって「Wiiならではのゲーム」とか「Wiiリモコンを活かしたゲーム」とはなかなか言われませんでしたものね。他のゲーム機でも出来ることを「遊びやすくなる」程度では、あまり評価されませんでした。


 DSもそう。
 「二画面によってマップが常に表示されているので遊びやすい」とか「文字入力の時にソフトウェアキーボードをタッチペンで押すだけで入力出来るのは楽」とかも、「二画面+タッチパネルによって今までよりも格段に遊びやすくなる」例だったと思うんですけど……あまり「DSならではのゲーム」とか「二画面+タッチパネルを活かしたゲーム」とは言われませんでしたものね。


 『Wii Sports』のように(あの当時は)Wiiでしか実現出来なかったゲームや、
 『脳トレ』のように(あの当時は)DSでしか実現出来なかったゲームでなければ……「○○ならではのゲーム」とは言われないものなんです。





 もちろん「○○ならではのゲーム」がなければゲーム機が売れないワケではありません。
 Wii U本体が売れない最大の理由は「Wii Uならではのゲームがないから」ではなくて「任天堂以外の会社はこのゲーム機にソフトを出さない(と思われている)から」だと私は思います。
 PS3だって3DSだって本体がなかなか売れなかった時期は「PS2との違いが分からない」「DSで十分」と言われていました。でも、サードメーカーのソフトが集まってきたら誰もそんなことは言わなくなって、「○○の新作が出るから本体買おうっと」と言われるんです。


 でも、Wii Uはもうその可能性はほとんどありません。
 日本のサードメーカーには「売れないHD機用のソフトを出す」なんて余裕はありませんし、任天堂だけで出せるソフトの数には限界があります。ネット上でよく目にする「任天堂はサードに大金積んで人気シリーズを独占ソフトとして出してもらうべき」というのもそれやったXbox360がどうなったのかを知っていれば効果がないことは分かりますよね。

 『真・女神転生 meets ファイアーエムブレム』とか『ゼルダ無双』みたいなコラボタイトルを幾つか用意するくらいが限界だと思いますもの。




 じゃあ、どうするのか――――
 ということで、任天堂が唯一取れる策は「Wii Uでしか実現出来なかったゲーム」を作って、その1本で「これを遊ぶためにWii Uを買うか」と思わせることしかないんです。可能性は低くても、「サードメーカーがソフトを出してくれるのを待つ」なんてゼロに等しい可能性に賭けるよりはマシですからね。

 なので、「結局wiiUならではってゲームがないのよね」という最初の話は、現状残されている唯一の手を正確に把握していたんだなと、今なら思えます。







 「Wii Uゲームパッドでしか実現出来ない“今までにないゲーム”」が次々と出てくれるのなら、Wii Uを既に持っている一ユーザーの自分としては「どんなもんかなー」と気になるのですが。売上的には厳しくなるんじゃないかな……とも思っています。

 というのも……Wii Uを所持している人の中にも「Wii Uゲームパッドは使いたくない」って人もいるのです。重いし、デカイし、PROコンで遊びたいって人もいます。

 また、『ゾンビU』のように「テレビとゲームパッドの二画面を活かしたゲームを出して欲しい」という声はよく見るんですが、そうすると「テレビの画面を使わないで遊ぶ」ことが出来なくなるんですね。
 『レゴシティ』の時も、ガンガンオススメしていた自分も散々「面白そうだけどテレビ画面でしか遊べないなら買わない」って言われましたもの。実際、『ニンテンドーランド』はイイとしても、“テレビとゲームパッドの二画面を活かしたゲーム”だった『ゾンビU』も『ゲーム&ワリオ』も『レゴシティ』もあんまり売れませんでしたしね……


 何だか……Wiiの時に「Wiiリモコンなら自分でも遊べそうだからとWiiを買った層」と「Wiiでもクラコンで従来型ゲームを遊びたい層」が分離しちゃっていて、本体普及台数ほどソフトが売れない(特に後者に向けたソフトが)という現象になっちゃったことが。
 Wiiよりももっともっともっと普及台数の少ないWii Uでも起きちゃうんじゃないかと危惧しています。



 まぁ……私は別に株主でもないんで、「危惧」したところで何があるワケでもありませんけどね(笑)。
 私が喫緊でWii Uに抱いている最大の不満点はスクエニのバーチャルコンソールソフトがMiiverseにスクリーンショットを投稿できないことなんで、任天堂はスクエニに大金積んでMiiverseにスクショ投稿できるようにさせるべきだと思います!!


【三行まとめ】
・「Wii Uで便利になったゲーム」はたくさん出ている
・「Wii Uでしか出せないゲーム」はこれから出すそうだけど、果たして売れるのか?
・スクエニさん、スクショを貼り付けられるようにしてください。お願いしますお願いします。

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