『学園アイドルマスター』は何故「男性プロデューサー」で固定なのかという話


<画像はDMM GAMES版『学園アイドルマスター』より引用>


  なかなかブログに書く時間が作れなくて今更になっちゃいましたが、数ヶ月前にTwitterを見ていたら「学園アイドルマスターに女性主人公=女性プロデューサーを入れて欲しかった」という意見に対して袋叩きにするようなPOSTを多数見かけて、「うわぁ……」と思ってTwitterを即閉じたことがありました。

 そういう経緯だったため、「最初にそう発言した人」の元POSTは見つけられなかったし、その人に対しても、その人を袋叩きにしていた人達に対しても、アレコレ言うつもりはありません。
 もう数ヶ月経っているし、一次ソースが確認できないものに言及しても、そもそも元POSTはそういう意図じゃなかったよみたいなことになりかねませんしね。みなさんも何かを批判する時は、一次ソースに遡れるようにしてから批判しましょうね。



 だから、今日は「私の話」です。
 私も『学園アイドルマスター』(以下『学マス』)を始めたばかりの頃、「今時、主人公=プロデューサーが男性固定なんだ……」と思ったんですよ。私自身は男性プレイヤーですが、最近のこの手のゲームは「男女両方のプレイヤーがいることを想定して、主人公の性別が選べたり、性別への言及がなかったりするもの」が多い印象があったので。

 しかし、遊んでいくうちに「これは性別は濁せない」「女性主人公=女性プロデューサーでは成り立たない話だ」と思うようになっていきました。
 「女性主人公=女性プロデューサーの『学マス』」も見たい気もするけど、そういうのはスピンオフとかでやればイイので(実際に『GOLD RUSH』の漫画でやっている)、少なくともゲーム本編は「男性主人公=男性プロデューサーに固定しなければできない話」をやろうとしていたんですね。


 その辺の話をちゃんと整理しておきたくて、今日はこの話を書きます。

-目次-
0.『アイドルマスター』シリーズのプロデューサーの性別
1.「男がいない世界」でがんばる女性の物語
2.「百合に挟まる男」vs「男だからこそ入れない女同士の関係性」






0.『アイドルマスター』シリーズのプロデューサーの性別

 前提となる話をします。

 『アイドルマスター』シリーズは基本的に、初代『THE IDOLM@STER』(2005年~)の頃からプレイヤー=プロデューサーが「男性固定」でした。「男性プロデューサー」と「女性アイドル」でしか成り立たない関係性が描かれてたんですね。

 例えば、双海亜美や真美はプロデューサーのことを「兄ちゃん」と呼ぶし、「男性が苦手」な萩原雪歩や、逆に(CS版からのキャラである)「プロデューサー大好き」になる星井美希など、女性プロデューサーに置き換えると話が成り立たなくキャラが何人かいたんですね。セリフをちょこっと差し替えるだけではすまないのです。

 この傾向はシリーズが続いても引き継がれていて……
 『シンデレラガールズ』(2011年~)にも、例えば「女性の体の特定部位に異常な執着を持つ」棟方愛海のような、プロデューサーを女性にしたら話が成り立たなくなるよねってキャラが何人かいました。


 『ミリオンライブ!』(2013年~)や『シャイニーカラーズ』(2018年~)のプロデューサーも、一人称が「俺」なことから男性プロデューサーだと推測できますし、アニメ化された時にもプロデューサーは男性の姿で描かれていました。

 シリーズ共通の設定で「アイマスのプロデューサーは男性」だったと言えるでしょう。


 一つ例外があったのは、『アイドルマスターSideM』(2014年~)です。
 この作品は「男性アイドル」を扱うからか、ゲーム本編にはプロデューサーの性別をにおわせる描写は一切なかったみたい。今まで通りの男性プロデューサーとも、性別を反転させて女性プロデューサーともせず、どっちともとれるようにしてあったそうです。

 ただし、アニメ版では姿を描かないワケにはいかないので男性プロデューサーでした。
 競合作品であろう『あんさんぶるスターズ』とかは「男性アイドルを扱うから女性主人公」な作品だったと思いますが、アイマスは『SideM』であっても男性プロデューサーを貫いてきたことに当時ちょっと驚いた記憶があります。




 それが、2025年―――時代が大きく変革します。
 『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ』に実装された新ゲームモード「アイドルグランプリ」ではプロデューサーの性別が選べるというニュースが話題になりました。

「この設定により、プロデューサーの口調にちょっとした差分が発生します。

 なお、こちらの設定は、あくまでもアイグラの世界への没入感を楽しむことを目的として実装されていますので、その差分を収集するためのものではございません。」

 との公式の説明を読む限り、「女性プレイヤー」を意識しての実装だったのでしょう。
 あくまでゲームの1モードに実験的に入れられただけとは言えるのですが、長い長い『アイマス』の歴史で、20年目にしてようやく「主人公に女性を選べるようになった」歴史的瞬間だったように思われます。

 このモードに実装されているのは2026年8月現在でも北沢志保1人で、今後時間をかけて1人ずつ実装するみたいなんですが……プレイヤーを「お兄ちゃん」と呼ぶ周防桃子なんかはボイスを複数パターン用意しなくちゃならなくなるし、「無回答」を選んだらどうなるんだ問題もあるし、どうするんでしょうね。



 さて、『学園アイドルマスター』のゲームが始まったのは2024年5月なので、この「アイドルグランプリ」より前の話です。
 とは言え、運営型のゲームはいつだって新規ユーザーに門戸を開いているので、最近始めた人が「あっちとちがって、女性プロデューサー選べないんだ……」となってしまうのも分かります。

 しかし、『アイマス』シリーズは歴代「男性プロデュサーに固定されていた」「男性アイドルをプロデュースするSideMですら、アニメ版は男性プロデューサーだった」前提を知っておくと、見える風景は変わると思うんですね。

 それが20年続いたシリーズの伝統だったのなら、大きな勝算もなく変更は出来ないのも仕方ないかなと。




1.「男がいない世界」でがんばる女性の物語

 さて、ここからが本題です。

 『学マス』に限らず、ゲームのプレイヤーキャラに「女性」を選びたいという意見が出てきたからと言って―――その意見は必ずしも「女性プレイヤーの意見」とは限らないし、仮に女性プレイヤーがそう言っていたからと言って「主人公と自分を同一視したいから」そう言っているとは限りません。



 こちらは2017年に書いた記事で、
 男はついつい、「女性は女性主人公に自己投影したがる」と思っちゃうし、
 女はついつい、「男性は男性主人公に自己投影したがる」と思っちゃうのだけど、

 実際には、男女ともに「第三者目線で男女のカップルを眺めたい」層がいる―――という話でした。


 『学マス』の男性主人公=男性プロデューサーは、男性プレイヤーからしても「変なやつ」で、奇想天外なプロデュースをすることもあって……男性プレイヤーであっても自分と同一視は難しいし、「第三者目線で男女のカップルを眺めている」感覚の人が多いんじゃないかと思います。

 そう言えば、2017年に書いたさっきの記事は、『エロマンガ先生』のアニメが放送されていた時期なので例として『エロマンガ先生』の2人を描いたのですが……偶然にも、『学マス』のキャラ設定やシナリオを書いているのは『俺妹』『エロマンガ先生』の伏見つかさ先生なんですよね。(※1)
 妙に思い切りがイイところとか、解決方法がぶっ飛んでいるところとか、「男主人公のキャラの立ち方」が割と共通しているかも知れない……

(※1:シナリオを書いているのは全キャラではないですが)



 なので、これは大前提として……
 『学マス』を楽しんでいる女性プレイヤーは少なくないです。

 公式がしっかりとしたデータを出してくれているワケではないので「体感では」という話になっちゃいますが、SNSなどの反応を見ても女性と思われるアカウントで『学マス』をプレイしている人は結構います。

 女性プレイヤーであっても、「第三者目線で男女のカップルを眺めたい」人は問題なく『学マス』を楽しめているのでしょう。





 しかし、だからと言って「女性主人公=女性プロデューサーを選びたかった」という声を黙殺してイイとは思いません。
 「女性主人公に自己投影したがる女性プレイヤー」はもちろん、「第三者目線」タイプのプレイヤーの中には男女問わず「女性主人公=女性プロデューサーを選びたかった」人はいると思います。

 なんなら、私がそうです。

 私は昔からどのゲームを遊んでいても主人公=自分のような自己投影ができず、仮に自分と同じ名前を付けたとしても、主人公は「自分と同じ名前の別人格のキャラクター」にしか思えてきませんでした。『ドラクエ』を遊んでても、『ときメモ』を遊んでいてもそうです。

 そんな「第三者目線」でゲームをプレイする私だから、主人公の性別を選べるゲームを遊ぶ際には、女性主人公を選ぶことは少なくありません。主人公は他人だから、自分とちがう性別を選ぶことが特に変だとも思わないんですね。
 それは別に「本当はTS願望があって、女のコになって女のコとイチャイチャしたいから」とか、「女のケツを眺めていたい変態だから」とか、そういうことではなくて―――

 私は、なるべくなら「女のコだけでがんばる話」にしたいんですね。
 だから、『ドラクエIII』みたいにパーティ全員を自由な編成にできるゲームだと、全員女性キャラのパーティを作ったりします。そこに「男」を混ぜたくないんです。




 古来から、物語の中に「男」と「女」が登場すると、多かれ少なかれ「恋愛関係」として描かれがちだったと思います。
 例えば、『ドラえもん』みたいにこども向けの作品であっても「のび太はしずちゃんのことが好き」みたいな恋愛関係が描写されるし、『ドラゴンボール』でも『機動戦士ガンダム』でも『キャプテン翼』でも「男と女がいたらそこに恋愛感情が生まれるだろう」と描かれていました。

 私は、それがすごく窮屈だと思っていたんですね。
 人生には「恋愛」よりも大切なことがたくさんあるのに、あたかも人生において「恋愛」こそが一番大事なんだと描きがちな物語に対して――――「嫌悪する」とまでは言いませんが、「ワンパターンだなぁ」と思って過ごしてきました。もっと他のものを優先してもイイのにと。

 
 そのアンチテーゼというワケでもないのですが、2000年代以降の一大コンテンツに『あずまんが大王』(1999年~、テレビアニメ版は2002年~)から始まる「萌え4コマ漫画」のブームや、『ひだまりスケッチ』(2004年~、テレビアニメ版は2007年~)、『けいおん!』(2007年~、テレビアニメ版は2009年~)などの「きらら系アニメ」「日常系アニメ」と呼ばれる作品たちが台頭してきます。

 これらの作品は、メインキャラに男性キャラを置かず、
 「男のいない」「恋愛ごとに引っ張られない」女のコ達だけの青春を描いたんですね。




<画像はテレビアニメ『ラブライブ!』第1話より引用>

 そして、2013年―――時代が大きく動き始めます。
 「男のいない」「女のコだけのスポ根もの」として『ラブライブ!』のテレビアニメとスマホゲームが大ヒットします。

 「女のコ主人公のスポ根もの」だと、「男性コーチへの恋愛感情」よりも「スポーツ選手としての道」を選ぶ……みたいな展開が昔から王道だったと思います。
 そのためか、美少女育成シミュレーションは「男性プレイヤーと結ばれる」エンディングが必ずしも最上のエンディングではありませんでした。『プリンセスメーカー』もそうだったし、『バトルアスリーテス大運動会』もそうだったし、なんなら初代『THE IDOLM@STER』だってそうですよね。

 「男との恋愛」よりも「自分の夢の実現」を優先する女のコ主人公の物語が、ずっとずっと昔から根強くあったからこそ―――2010年代になって、『ラブライブ!』のような「そもそも男が出ない」「女のコ達だけで夢へと突き進む」物語の大ヒットにつながったのだと思います。




 『ラブライブ!』の大ヒットは、それまで可視化されなかった「美少女アニメを楽しむ女性ユーザー」がたくさんいたことを知らしめました(それ以前の『けいおん!』とかからチラホラと語られてはいたけれど)
 更には、「女性は恋愛モノが好きだから女性に受けるなら恋愛要素を入れなければならない」みたいな固定概念から解放されて、「男のいない」「女のコ達だけの物語」でも女性の共感を得られることを証明したのです。



<画像はiOS版『バンドリ!ガールズバンドパーティ』より引用>

 『ラブライブ!』が大ヒットしたことで、「男のいない」「女のコだけのスポ根もの」は一大ジャンルになりました。「アイドルもの」はもちろん、様々なジャンルに挑戦する女のコだけの物語がたくさん生まれました。
 そのフォロワーの代表作と言えば、私の贔屓目を抜きにしても2017年にテレビアニメとスマホゲームが始まった『BanG Dream!』(以下バンドリ)だったと思います。この作品も「父親」と「こども」以外の男性は登場せず、女のコ達だけでそれぞれの目標を成し遂げようとするお話です。

 ポスト『ラブライブ』の位置をしっかり狙いにいった今作は、女性プレイヤーから嫌悪感を抱かれないように、「性のにおい」を感じさせないよう気を遣っていました。

 少なくとも初期は!
 年月が経つとね……「露骨に谷間を見せてきてんな」「こっちにケツを向けてきてんな」ってカードも増えてきて、「女性比率が下がってきたのかな」と思わされましたが……

(関連記事:おっぱいのない世界





<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 そのポスト『バンドリ』の位置についたのが、ゲーム版『バンドリ!ガールズバンドパーティ』(以下ガルパ)の初代プロデューサーが手掛けた、2020年に始まったスマホゲーム『プロジェクトセカイ』(以下プロセカ)です。

 元々、初音ミクなどのボーカロイドを使ったセガのリズムゲーム『プロジェクト○○』というシリーズがゲーム機用に出ていて、それをスマホゲームで展開できないかとガルパのプロデューサーに持ち掛けられたそうです。

 そこで、「ガルパの型」を使って「初音ミク達に関わって成長していく若者達を描く青春群像劇」に仕立てたのですが……初音ミク達、『プロジェクト○○』に出ていたキャラには「鏡音レン」や「KAITO」といった男性キャラクターもいました。
 ボーカロイドに男性キャラがいるのに「男がいない世界」にするのは不自然だし、レン君やKAITOさんが歌っていた曲をカバーするにはメインキャラに男性が必要……とのことで、『プロセカ』には『ラブライブ!』や『バンドリ』とちがって「男性キャラがメインキャラとしてガッツリ登場」します。


 今となっては笑ってしまう話かも知れませんが、当時は『ラブライブ!』→『バンドリ』と「男のいない」「女のコだけのスポ根もの」がヒットしていたので、「男性キャラを出したら炎上するのでは……」と悩んだみたいな話が度々インタビューで語られています。
 実際に世に出た『プロセカ』のゲームは、この辺ものすごーーーーーーく気を遣っているという印象で。「男女が同じ空間にいても恋愛関係に見えるような関係には展開しない」ようにしてあるし、「男が女を一方的に助ける構図」にはなるべくしないように気をつけていると思いました。

 その結果……なのかは分かりませんが、『プロセカ』は『ラブライブ!』や『バンドリ』以上に高い女性比率で大ヒットしました。




 ちなみに、『バンドリ』のゲーム版『ガルパ』のプレイヤーキャラは「ライブハウスの一スタッフ」で、性別が特定できるような言及は特にありません。
 『プロセカ』のプレイヤーキャラは、「別の世界からメインキャラ達の様子を見ている何か」です。性別どころか、人かどうかもよく分からない、概念的な存在なのかも知れません。アバターはなんか、ダンボーみたいなヤツだし。

 他のゲームで言うと、『学マス』のライバルとして想定されていそうな『ウマ娘』のゲーム版(2021年~)は性別選択が可能で、どちらを選んだかで台詞が変わったりするそうな。




<画像はDMM GAMES版『学園アイドルマスター』より引用>

 こういう時代の流れからすると、『学マス』が主人公=プロデューサーの性別を「男性」に固定したのには驚きましたし、自分が見てきた『ラブライブ』→『バンドリ』→『プロセカ』の流れとは逆をいく作品だったんですね。


 「男のいない世界」ではないし、
 (ただし、プレイヤー=プロデューサー以外の男性キャラは、父親や祖父相当の年齢のキャラ、もしくは小さな男児しか出てきていない……はず。多分)
 「女のコだけで頑張る」話ではなく、男性プロデューサーが行き詰っている女性アイドルを助ける話だし、
 (ただし、プレイヤーが選ばなかったコは、なんだかんだ仲間達と力を合わせてそれなりに大成しているみたいなんですよね。要は、プレイヤーが選んだアイドル以外は「女のコだけで頑張る」構図になる)
 アイドルの中には、明確に男性プロデューサーに対して「恋愛感情」を抱いているコもいます。
 (実際、このゲームのプロデューサーとアイドルの関係はほぼティーンズラブなので、恋愛感情と親和性が高いと思うし……)


 女性アイドルがプロデューサーのことを好きになってしまうから「男性固定」にしている、とは私は言いたくないです。女性アイドルが女性プロデューサーに恋をする百合だって、全然描いてイイと思いますからね。


 しかし、この『学園アイドルマスター』―――
 「男性プロデューサー」と「女性アイドル」の性別の差を、割とガッツリとストーリーの中に組み込んでいるんですよ。


 例えば、↑ の藤田ことねさんのコミュ。
 プロデューサーから「休め」と言われているのにバイトに行こうとしていることねちゃんを、プロデューサーが女子寮の前で見張っているシーンで、ちっとも休んでくれないことねちゃんに対して「こうなったら女子寮の中に入る許可をもらってくるぞ」と脅すんですね。

 これ、プロデューサーの性別が女性だったら成り立ちません。
 もしこのプロデューサーの性別が女性だったら、初手でことねちゃんと同じ部屋で寝起きして見張ると思いますからね。


<画像はDMM GAMES版『学園アイドルマスター』より引用>

 こっちはさっきと逆で、過労でぶっ倒れたプロデューサーを介抱しようと莉波お姉ちゃんが部屋に押しかけてこようとするシーンです。この時のプロデューサーは「男性である自分の部屋に、女性アイドルを入れてはいけない」と断ろうとするんですね。

 ここも、プロデューサーの性別が女性だったら成り立たない話だと思います。
 莉波お姉ちゃんの「弟だと思っていた」というセリフを「妹だと思っていた」と差し替えるだけでは済まないんです。


 このゲームのストーリーには、こういう「男」と「女」の距離感の描写が多々出てくるので……もし女性プロデューサーを選べるようにするなら、ストーリーを大きく変更しなくちゃならなくなるんですね。それは流石に、現実的ではないでしょう。



 それはそうと……
 わたしは『ラブライブ』→『バンドリ』→『プロセカ』と、「男のいない、女のコだけで頑張る作品」や、「主人公は男とも女とも分からないふわっとした存在の作品」や、「男女がいても絶対に恋愛関係にならない作品」を見てきたから……

 『学マス』を遊んで逆にビックリしたんですよ。


 「男と女って恋愛関係になってイイんだ……」
 「主人公が男じゃないと成り立たない話って、書いてイイんだ……」


 一周まわってそこが新鮮で、「すごい!ヒロインが男主人公を好きになっている! こんなのゲームの中で描いてイイんだ!」って思ったんですよ。

 ヤックデカルチャー!
 「恋愛のない世界」に浸りすぎて、「恋愛要素のある作品」を観たらカルチャーショックを受けてゼントラーディ軍みたいになっちゃった。


 なので、「女のコだけで頑張る学マス」が観たかった気もするのだけど、それが観たかったら『ラブライブ』や『バンドリ』をやればイイのだし、「男主人公に固定して」「恋愛要素もガッツリ取り込んだ」ことで、結果的に他と差別化されて、『学マス』が独特な位置に立ったんじゃないかとも思うのです。




2.「百合に挟まる男」vs「男だからこそ入れない女同士の関係性」

 『アイドルマスター』シリーズは、初代の頃から「主人公は男性プロデューサー」ではあるのものの、「女性アイドル同士の関係性」を描いているシリーズでもあったので……「百合」というか「女×女」の様々な関係性を描く二次創作も人気だったりしました。


 『学園アイドルマスター』の場合は更に、メインキャラとなるアイドルの人数が多くないこともあって(最初期は9人、現在は13人)、「このコとこのコは姉妹」とか「このコとこのコは幼馴染」といったカンジに女性アイドル同士に最初から関係性が出来ている状態で始まっていました。
 そこは『バンドリ』や『プロセカ』っぽいし、亜美真美みたいな例外を除けば『アイマス』シリーズでは珍しいケースじゃないかと思われます。



<画像はDMM GAMES版『学園アイドルマスター』より引用>

 サポートカードの「SR」なんて、全部が「誰誰ちゃん×誰誰ちゃん」の1対1の組み合わせですからね。百合好きを釣るためのエサとしか思えぬ……!



 そのため、『学マス』の二次創作は「男性プロデューサー×女性アイドル」のものと同じくらい「女性アイドル×女性アイドル」のものが多い印象はあります。
 その結果、そうした二次創作から興味を持って『学マス』を始めた百合好きの人が、「女のコ同士の絡みが見たいのに、男性プロデューサーが混じってつらい……」と辞めていくのを何例か見かけました。

 うぉーーーー! すごい、気持ちは分かる!!
 昔、ガチな百合好きな人に「世間で人気だからバンドリのゲームを始めてみたけど、なんかこれじゃないって思ってやめました」と言われたことがあるけど、それ以上に『学マス』はガチ百合好きには勧めにくい気がする!


 かくいう私も、
 プレイアブルになる前は、「月村手毬に妄執する秦谷美鈴」をヤンデレガチ百合幼馴染キャラだと思ってニマニマしながら眺めていたのですが……


<画像はDMM GAMES版『学園アイドルマスター』より引用>

 プレイアブルになったら、男性プロデューサー相手にもそれを発揮し始めて、コイツ、特に百合キャラというワケじゃなくて、相手が誰であってもヤンデレ気味にお世話することで主導権を握ってくるタイプの女か……!と戸惑った記憶があります。




 元来、百合好き界隈には「百合に挟まる男」は悪という風潮があって……
 「女×女」の恋愛が描かれていた作品だったのに、最後の最後に男が出てきて「男×女」「もう片方の女はあぶれる」みたいなラストを迎えた作品がかつて多かったから(※2)、百合作品ではメインキャラとしてい男性キャラを出すこと自体が嫌悪されてきたのですが。

(※2:私自身には「パンをくわえて走っている女のコと曲がり角で衝突するアニメ」くらい元作品をよく知らない事例なのですが……そもそも百合作品自体に詳しくないので、深くは語らないでおきます)


 末端の末端の末端であるとは言え、創作者の端くれとして言わせてもらえば……
 「○○作品に××を出すのはタブー」とか「△△みたいな展開は嫌われる」みたいなネット上の意見をいちいち守ってたら「創作の幅が狭まる」だけだし、他の人が怖がって描かないならそれが「斬新」につながるだろうし、俺なら誰よりも面白く描いてやるぞと自信を持ってチャレンジするようじゃなかったら創作活動なんて続けてられないんですよ。

 まさに「NTR(寝取られ)」なんて、タブーから反転して一大ジャンルになったんでしょうしね。
 炎上なんか知るか! 俺は百合作品に男を出すぞ、ジョジョーーーーーーー!!



 私は、「男が存在しない(描写されない)世界の百合作品」と「男も出てくる上で女同士の関係性を選ぶ(選ばない)百合作品」は、サッカーとアイスホッケーくらい、パッと見は似ているけど別ジャンルだと思っていて―――

 前者は、『わたなれ』とか(※3)、『上伊那ぼたん』とか、『ひびめし』とか。
 後者は、『超かぐや姫』とか、『水星の魔女』とか、今季のアニメで言ったら『オールワークスメイド』とか(※4)

(※3:一応男子生徒はいるらしいのだが、ほとんど描写されない)
(※4:というか、『オールワークスメイド』すごくない?イケメンばかりの乙女ゲーの世界観で、敢えてメイドとお嬢様がイチャイチャしまくる百合を描き続けているの。)


 私は後者も好きというか、後者が現在のトレンドだと思っていて。
 『プロセカ』や『学マス』の百合二次創作が流行るのも、そういうことだと思うんですね。


 もはや「男性の存在」は、百合の邪魔にはならない―――

 もう、そういう時代に突入しているのだろうと。


<画像はiOS版『学園アイドルマスター』より引用>

 『学マス』のメインとなるストーリーは「男性主人公=プロデューサーの視点」で描かれていて、女性アイドルの中には「男性プロデューサーのことが大好き」と明確な恋愛感情を見せてくるコも少なくないのですが……

 それでも時折、見せられるんですよね。
 「男性プロデューサー」には立ち入れない、「女のコ同士の関係性」が。


 それは「男」と「女」の差でもあるし、
 「プロデューサー」と「アイドル」の差でもあるのだけど、

 このゲームのストーリーを読めば読むほど、自分には立ち入れられない「女→ 女」のとてつもない情念を見せつけられるのです。


 今後の展開はどうなるか分かりませんが、少なくとも現在実装されているSTEP4までの内容だと「百合に挟まる男」というより「百合を至近距離で見せつけられる男」というカンジはします。



 んで、今日の本題に戻るのですが……
 これが「女性プロデューサー」だったら、またちょっと話が変わってくるよなぁと思うんですね。

 男は決して「女×女」のライバル関係や親友関係、憧れだったり嫉妬だったりには混じれないけど。
 女は「女×女」のライバル関係や親友関係、憧れだったり嫉妬だったりに混じれてしまうワケで……


 「百合に挟まる男」以上に、
 「百合に挟まる女」は劇薬では!?


 秦谷美鈴が男性プロデューサーに「鍵を渡して」と言ってくるのはギャグとして許容できるし(何故なら意地でも渡さないから)、「そうは言ってもアナタにとって一番大切なのは月村手毬でしょ?」と思えるのだけど。
 秦谷美鈴が女性プロデューサーに「鍵を渡して」と言ってくるのはちょっと耐えられないかも知れない。「月村手毬より大事な女が出来ちゃってもイイの??」と思っちゃう……



 この辺、漫画版の『GOLD RUSH』はどうなっているんだろう……
 最初の数巻は買っているのだけど、怖くて読んでいないんですよね……そろそろちゃんと向き合って読むべきか。




◇ 総括

 要約してしまうとこのゲーム、「何も考えずに男性プロデューサーに固定している」のではなく、今の時代に「男主人公に固定しないと描けない話」を描こうとしているんだと思います。
 それを否定しようとするのは、多様性の消失でもあると思います。


 例えを挙げるなら、『ドラゴンクエスト』シリーズです。
 『ドラクエIII』や『ドラクエIV』は主人公を「男」「女」のどちらでも選べたのですが、『ドラクエV』は「男」主人公で固定されています。何故なら、「結婚イベント」があるから。「男主人公に固定しないと描けない話」を描くために、『ドラクエV』は主人公の性別を「男」に固定したんですね。

 それを「女性主人公も選べるようにして、女性主人公を選んだ場合は結婚相手候補に男性キャラが出るようにしろ!」って言われても、開発費も開発期間も膨らむ上に、その通りにしていたら今日における「ビアンカ」「フローラ」人気はなくなっていたと思います。

 「じゃあ、女性主人公でも女性キャラと結婚できるようにすればイイじゃないか。こどもはなんか、魔法の力で女同士でも子作りできるようにすればイイだろ!」って言うのは、世界観自体が大きく変わることになるし(魔法で子作りできるなら、主人公達以外にも同性夫婦がいないとおかしくなるし)。

 「なら、結婚イベント自体をなくせ」って言うのは、創作の幅をただ狭めるだけの「表現の自由への侵害」だと思いますし。


 私は、「主人公の性別が選べるドラクエIIIやIV」も「主人公の性別が選べないドラクエV」もどっちもあるべきだと思いますし。
 同様に、「女性キャラしか出てこないラブライブ」も「プレイヤーキャラが男か女か分からないバンドリ(ガルパ)」も「男女両方のキャラが出てくるけど恋愛関係にならないプロセカ」も「男性主人公に固定して、女性アイドルからの恋愛感情をちゃんと描く学マス」も、全部あってイイし、全部あるのが健全だと思います。



 だから、『学マスの次のアイマスシリーズ』がどうなるかは分かりません。
 『学マス』と同じように「男性プロデューサー固定」にするのか、『ミリシタ』の「アイドルグランプリ」のモード同様に「男女どちらのプロデューサーも選べる」ようにするのか―――それはきっと、「アイドルグランプリ」のモードが実際にどちらで遊ばれているのかの統計で変わってくるんじゃないかと思います。そのための実証実験でしょうからね。



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