<画像はテレビアニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』第7話より引用>
<2025年3月31日現在『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』が見放題になっているサブスク>
<2025年3月31日現在『BanG Dream! Ave Mujica』が見放題になっているサブスク>
『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』
・形式:テレビアニメ(全13話で完結、『Ave Mujica』に続く)
2023年6月~9月に放送
・原作:ブシロードによるメディアミックスプロジェクト
声優によるライブや、放送後にスマホゲーム『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』にキャラやストーリーが実装
・制作:サンジゲン
・監督: 柿本広大
・シリーズ構成:綾奈ゆにこ
・ キャラクターデザイン:Craft Egg
VIDEO
『BanG Dream! Ave Mujica』
・形式:テレビアニメ(全13話で完結、アニメ続編シリーズに続く)
2025年1月~3月に放送
・原作:ブシロードによるメディアミックスプロジェクト
声優によるライブなどがある
・制作:サンジゲン
・監督: 柿本広大
・シリーズ構成:綾奈ゆにこ
・ キャラクターデザイン:信澤収、もちぷよ
VIDEO
【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
※ 苦手な人もいそうなNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。
・シリアス展開:◎(キャラを精神的に追いつめていく)
・恥をかく&嘲笑シーン:△(街中で目立って人だかりができるシーンはある)
・寝取られ:○?(恋愛ではなく、共依存・仲間関係から離れていく描写はある……)
・極端な男性蔑視・女性蔑視:△(男によって女が迷惑を被る描写はまま……)
・白人酋長もの:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:○(イマジナリー世界の描写だけどある)
・グロ表現としての虫:×(ノートの表紙に写っているくらいには)
・百合要素:◎(これは恋愛ではなく友情です!と言い訳できなくなった)
・BL要素:×
・男女の恋愛:○(恋愛というか「赤ちゃんはどうやって生まれてくるのか」の話はある)
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×
◇ 時代性:「バンドリ」とは別のところから生まれたのに、何より「バンドリ」らしい2本のアニメ
『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』は2023年の夏に放送されたアニメで、『BanG Dream! Ave Mujica』は2025年の冬に放送されたアニメで、タイトルもメインとなるバンドも変わっているのでややこしいのですが実質「分割2クールのアニメ」と言ってイイ と思います。
『BanG Dream!』シリーズ……この記事では分かりやすくなるよう「バンドリ」という表記で以降統一しますが、「バンドリってしょっちゅうアニメやってるから、途中からなんて入れないよ」と思っている人もいるかも知れません。
大丈夫です。
『It’s MyGO!!!!!』から入るので全く問題ないです。
過去作のキャラがチラッとモブみたいに登場することはありますが、マジでモブです。ストーリーに関わることはほとんどありません。
というのも、元々この2作品は『バンドリ』とは関係のない2つのバンドの群像劇として始まっていたそう なんですね。
<以下、引用>
柿本広大監督(以下、柿本): もともとMyGO!!!!!とAve Mujicaは、2つのバンド、10人のドラマの企画として始まりました。その後『バンドリ!』シリーズに合流することが決まり、1クール目がTVアニメ『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』、2クール目が『Ave Mujica』として展開する形が決まって、そこから改めて物語の構成を固めていきました。
<中略>
──このタイミングで、「前例のない」展開を描けた理由についても、ぜひ伺いたいです。
柿本: 今回のプロジェクトが『バンドリ!』とは別のプロジェクトから始まっているという経緯がやはり大きいですね。当初はゲーム展開も決まっていなかったため、シリーズの制約にとらわれずにストーリーを作ることができ、今までとは違うアプローチが可能になった。プロデューサーの方々がそこの枠組みからあえて外してくださったおかげでできたことです。
──アニメとゲーム、それぞれの特色を活かしながらの制作だったんですね。
柿本: 『バンドリ!』と合流後、それまで作っていたものを一度止めて、『バンドリ!』用にリビルドする期間はあったんですが、ゲームサイドの方々にも「アニメチームはゲームのことは考えずに、アニメならではの表現に全振りしてください」と言っていただけたんですね。
そういった言葉をもらったことで、アニメとしてやりたいことにより集中できました。「アニメならではの表現」「アニメでしか描けないもの」にこだわる方向にどんどんエスカレートしていきました。
</ここまで>
『バンドリ』がヒットしていた2018~2019年辺りから、「バンドリの次の柱」を狙ってブシロードはメディアミックスプロジェクトを幾つも立ち上げていました。今にして思うと、「MyGO!!!!!とAve Mujica」の新プロジェクトもその1つだったのかなと推察されます。
・少女☆歌劇 レヴュースタァライト
舞台:2017年~現在も継続中
アニメ:テレビアニメが2018年7月~9月放送、劇場版アニメが2021年6月公開
ゲーム:スマホゲームが2018年10月~2024年9月、CSゲームが2024年8月発売
・from ARGONAVIS
※ 当初は「バンドリ」の派生作品だったが後に独立
ライブ:2018年9月~
アニメ:テレビアニメが2020年4月~7月、劇場版アニメが2023年3月公開
ゲーム:スマホゲームが2021年1月~2022年1月、2024年2月~2024年11月
※2025年でプロジェクトの無期限活動休止が発表されている
・D4DJ
ライブ:2019年7月~現在も継続中
アニメ:テレビアニメが2020年10月~1月と、2023年1月~3月と2作放送
ゲーム:スマホゲームが2020年10月~
※ 2024年6月20日より、運営がブシロードからDONUTSへ移行
・アサルトリリィ
※IP自体は他社のもので、2019年からブシロードが参画
舞台:ブシロード版は2020年1月~
アニメ:2020年10月~12月
ゲーム:スマホゲームが2021年1月~
(※2022年6月23日:ブシロードが運営から撤退)
・ROAD59 -新時代任侠特区-
舞台:2020年12月~ ※現在はストップしている
ゲーム:CSゲームが2025年秋に発売予定
・D_CIDE TRAUMEREI
アニメ:2021年7月~10月
ゲーム:スマホゲームが2021年9月~2022年10月
・てっぺん!!!!!!!!!!!!!!!!
※ 元々はチームYが原案の漫画
イベント:2022年8月と11月にオフラインイベント開催
アニメ:2022年7月~9月
こう言っちゃなんですが……
ブシロードのメディアミックスプロジェクトで今も生き残っている判定ができるの、『バンドリ』と『レヴュースタァライト』くらいなんですよね。 『D4DJ』と『アサルトリリィ』はもうブシロードが関わっていないと思われますし、『ROAD59』は当時公演できなかった話をノベルゲームとして拾うプロジェクトみたいですし。
ブシロードが展開する「NEXTバンドリ」がすべてうまくいかなかった反省から、「MyGO!!!!!とAve Mujica」の新プロジェクトを単体で立ち上げるのは危険だと判断したのと、『バンドリ』自体も全盛期に比べてユーザー数が減っていることを考慮して、「MyGO!!!!!とAve Mujica」を『バンドリ』に合流させて一本化させたい意図がブシロードにあったのかなぁ と思います。
ということで、『バンドリ』の冠はついていますが、今までの『バンドリ』を1作も観ていなくても大丈夫です。元々は別作品なんですから、今までのキャラがモブのようにしか登場しないのも当然なんです。
しかし、こういう経緯で生まれた割に不思議なんですが、「MyGO!!!!!とAve Mujica」って「バンドリの面白さ」を分解・再構築したようなアニメだった と思うんですね。「今までのバンドリとはちがう」という意見も分かるのですが、個人的には「ものすごくバンドリっぽい」作品だったと思っています。
なので、今までの「バンドリ」をまったく知らない人のためにも、「バンドリ」の歴史を超高速で解説しましよう。
<超おおざっぱな『バンドリ』シリーズの歴史>
・2014年12月:月刊ブシロードに漫画『BanG_Dream![星の鼓動]』の先行イラストが掲載
・2015年2月28日:愛美さんのワンマンライブで「バンドリプロジェクト」としてバンドを組むことが発表される
~しばらくは「漫画」「リアルライブ」「CD発売」などが主な展開~
・2017年1月:テレビアニメ1期『BanG Dream!』放送開始
・2017年3月16日:スマホゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』配信開始
・2019年1月:テレビアニメ2期『BanG Dream! 2nd Season』放送開始
・2020年1月:テレビアニメ3期『BanG Dream! 3rd Season』放送開始
~しばらくは「ショートアニメ」や「劇場版アニメ」「単発アニメ」などが作られる~ ・2023年6月:テレビアニメ『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』放送開始 ・2025年1月:テレビアニメ『BanG Dream! Ave Mujica』放送開始
「バンドリ」の歴史で重要なのは、まずテレビアニメ1期がコケたこと です。私としては好きなところもたくさんあるのですが、世間的な評価はかなり「酷評」寄りでした。正直、数多ある「生まれては消えるメディアミックスプロジェクト作品」の1つになってしまうとこの時は思っていました。
しかし、そのテレビアニメ1期放送中に配信開始されたスマホゲームが大ヒット します。色んな要因はあるんですが、『ラブライブ!(スクフェス)』の次の席に「バンドリ」がすっぽり収まったんですね。そして、その勢いを持ってテレビアニメ2期と3期の製作が決まります(実質的な分割2クールアニメ)。
という経緯なので……
「バンドリって何が面白かったんだろう」とファンが考えるベースとなっているのは、 最初に出てきた「テレビアニメ1期」ではなくその後に売れた「スマホゲーム」の方 なんですね。
「テレビアニメ2期~3期」は、「テレビアニメ1期の続き」というよりも、「スマホゲームの面白さをテレビアニメの形に落とし込む」アニメ化でしたし。
では、そのスマホゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』が見せてくれた「バンドリの面白さ」とは何だったのかというと……
・25人(現在は40人)のキャラ全員が主人公の青春群像劇
・「女×女」の様々な関係性がメインコンテンツ
・バンドによって奏でる音楽のジャンルがちがうように、バンドによって語られるストーリーのジャンルがちがう
私はこの3つが肝だったと思いますし。
「MyGO!!!!!とAve Mujica」のアニメも、これらを踏襲していたと思うのです。
◇ 作品性:10人のキャラ全員が主人公の青春群像劇
「バンドリの主人公は誰?」と聞くと、熱心なファンの方であっても「戸山香澄」と答える人が多いでしょう。「バンドリ」最初のバンドであるPoppin'Partyのセンターボーカルで、テレビアニメ1期のストーリーは明確に彼女が主人公でしたからね。
しかし、スマホゲーム版は「主人公は決まっていない」ゲームだ と私は思っています。
<画像はiOS版『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』より引用>
もちろんセンターボーカルが「バンドの顔」としてイラストなどで目立つ場所に来ることは多いのですが、10日周期で新しく追加されるイベントストーリーの「メインとなるキャラ(バナーキャラ)」は全キャラが満遍なくまわってくる ようになっていて、センターボーカル以外のキャラの物語もしっかり描かれます。
<画像はiOS版『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』より引用>
一例を挙げると……「バンドリ」初期の人気を支えた氷川紗夜はRoseliaのギターです。
彼女はボーカルでもなければ、全員集合のイラストが描かれる際にも目立つ位置に来るワケでもないのですが、彼女が抱えている妹への劣等感の話は多くのプレイヤーの心を打ちました。彼女の物語の中では、まぎれもなく彼女が主人公なんです。
「ゲームの歴史」を語り始めると脱線かつ長くなるので、短くまとめますが……
ギャルゲーと呼ばれる「恋愛アドベンチャーゲーム」はマルチルート&マルチエンディングなことが多く、パッケージに描かれるメインヒロインはいても、それ以外のヒロインにも「ルート」があって「エンディング」があるので、そのルートの中では彼女がまぎれもなくヒロイン でした。
「恋愛アドベンチャーゲーム」というより「育成シミュレーションゲーム」の系譜ですが、『アイドルマスター』シリーズも「作品のパブとしてのセンターポジション」はいるけれど「自分の選んだアイドルが一番のセンター」だと思ってみなさんプレイしていることでしょう。
なので、「バンドリ」以前の『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ(デレステ)』(2015年)などでも、各ヒロインごとの「コミュ(ストーリー)」がありましたし、イベントで中心となるキャラは持ち回りだったと思います。『デレステ』もまた、「メインヒロインは決まっていない」「全アイドルがヒロインになりうる存在」のコンテンツだったと言ってイイでしょう。
「一定周期でイベントを入れ替えて」「その度に新しいキャラに焦点を当てて」「そのキャラが出てくるガチャを開催する」スマホゲームに、この「登場人物全員がヒロインとなるシステム」はむちゃくちゃ相性が良かった んですね。
「バンドリ」だけが特別そうしていたワケではありませんが、この頃からスマホゲーのそのシステムでストーリーを強化したものが増えていき、「登場人物全員が主人公」で「登場人物全員が物語を持っていて」「登場人物全員が成長していく」群像劇のスマホゲームがその後の主流になっていった と思います。『プロセカ』(2020年)だって、『ヘブバン』(2022年)だってそうです。
しかし、アニメの方の『バンドリ』で群像劇をやるのは難しかった んですね。
テレビアニメ1期は明確に戸山香澄が主人公の話だし、スマホゲーのヒットを受けたテレビアニメ2期はいきなり登場人物が25人に増えたから群像劇をやるには尺が足りないし、テレビアニメ3期のRAISE A SUILENの話はちょっと群像劇っぽいですが「3バンドの三つ巴」がメインの話だったからこれも尺が足りてるように思えず……
マジメに、一番「スマホゲームと同じような群像劇」が出来ていたのはショートアニメの『ガルパ☆ピコ』だったと思います。
だから、増えすぎたキャラクターをリセットした「MyGO!!!!!とAve Mujica」のプロジェクトは、アニメで群像劇をやるには絶好のチャンスだった んです。「キャラクターは10人」「複雑な人間関係」「分割2クールの尺がある」と、人数も設定も話数も群像劇にちょうどいい塩梅でした。
<画像はテレビアニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』第10話より引用>
「MyGO!!!!!のセンターボーカル」は高松燈ちゃんですが、彼女だけがストーリーを動かして、MyGO!!!!!のバンドを前に進めていくワケではありません。5人全員の思惑が絡まりながら、ほどけながら、ちょっとずつ進んでいく物語なんです。
<画像はテレビアニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』第13話より引用>
そして、『It’s MyGO!!!!!』のアニメは主にMyGO!!!!!の5人がメインで。
『Ave Mujica』のアニメは主にAve Mujicaの5人がメインですが……
『It’s MyGO!!!!!』の方にもAve Mujicaのキャラ達は登場しますし、『Ave Mujica』の方にもMyGO!!!!!のキャラは登場します。 これはモブとかチョイ役というワケではなく、割とガッツリとストーリーに絡みます。
プロジェクトの始まりから分かるように、この2作は2作合わせて「10人の群像劇」として作られているから です。なので、作品の時間軸も明確に『It’s MyGO!!!!!』→『Ave Mujica』と繋がっています。
しかし、群像劇に興味がない人には「そもそも群像劇だから何? 主人公が決まっていないことのメリットなんかあるの?」 と思われるかも知れません。全キャラに満遍なく出番を与えたいスマホゲーならともかく、テレビアニメで「群像劇」をやるメリットってあるのか? と。
<画像はテレビアニメ『BanG Dream! Ave Mujica』第6話より引用>
あります。むちゃくちゃあります。
「群像劇」最大の魅力は、展開が予測不能になるところです。
ストーリーは「キャラクターが動く」ことで進むのだけれど、視聴者も「このキャラクターはこういうことがしたいのだろう」と把握するので……極端な話、キャラクターが1人しかいないアニメがあったら展開が予想しやすくなっちゃう んですね。
キャラクターが増えても明確な主人公がいる場合は、「その主人公がしたいこと」が話の中心として動くので……「それが実現できるか/できないか」の範囲の中にストーリーが収まってしまいます。
もちろんそれが悪いワケではなくて……
「展開がある程度分かっているからこその安心感」もありますし、世の中には漫画やアニメを「主人公=自分」に当てはめて楽しんでいる人もいるから、そういう人達にとっては「群像劇」がイマイチ面白くないという話も聞きます。
でも、私は「群像劇」が好きなのです。
キャラクター1人1人が「したいこと」を持って動くから、その他のキャラにとっては「不確定要素」として作用してグチャグチャの展開になる、 そのカオスっぷりが大好物なのです。だから、私は「バンドリ」が大好きだったし、この2作のアニメもとても楽しめました。
Q.とは言え、『Ave Mujica』の予測不能な展開は「行き過ぎ」じゃない?
A.それはそう
◇ 作家性:好意だけではない「女×女」の様々な関係性がメインコンテンツ 「バンドリ」のゲームを「百合ゲー」だと言っている人もいるし、私もそう紹介したことがあったかも知れませんが……「百合」という言葉の定義を「女性同士の恋愛感情」として使うのなら、「バンドリ」は「百合」ではないと私は思っています。
「これは流石に恋愛感情では?」「恋愛感情として解釈できる」関係性もありますが、それだけではない様々な「女×女」の関係性を描いているのが「バンドリ」だから です。
<画像はiOS版『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』より引用>
「バンドリ」初期は25人体制―――
「25人」×「24人」通りの組み合わせは、前後の順番を無視すれば「300通り」 にもなります。
そのため、キャラクター設定の時点である程度関係性を持たせている組み合わせもありました。例えば、「Roseliaのベース:今井リサ」と「Afterglowのギター:青葉モカ」は「バイト先の先輩・後輩」だし。
<画像はiOS版『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』より引用>
「Afterglowのドラム:宇田川巴」と「Roseliaのドラム:宇田川あこ」は姉妹です。
更に、もう1組「Roseliaのギター:氷川紗夜」と「Pastel*Palettesのギター:氷川日菜」も姉妹と、姉妹が2組いたので……巴と紗夜は「お姉ちゃんとしての苦悩」を共有している"お姉ちゃん仲間"だったりするし。
<画像はiOS版『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』より引用>
「Afterglowのベース:上原ひまり」と「Poppin'Partyのベース:牛込りみ」は、2人とも「ハロー、ハッピーワールドのギター:瀬田薫」の熱烈なファンなので、2人で「好き」を共有する仲間だし。
基本的にはポジティブな関係性が多いけれど、「実はこの人のことは結構苦手だな」とか「あの人には負けたくない」とか「あんまりしゃべったことがないからどうしよう」みたいな微妙な関係性もあって、それはそれで面白いんですね。
「キャラクター×キャラクター」の組み合わせの数だけ美味しい出汁が出る――― これが「バンドリ」がヒットした一つの要因だと私は思っています。
それ以前の『ラブライブ!』だって9人のメインキャラの中で様々な組み合わせの関係性が描かれて、それが受けていましたし。「ゲーム版のプレイヤー=男性P」の存在がある『アイドルマスター』でも、実は「アイドルの女のコ同士の関係性」が描かれていましたものね。もっと言うと、『けいおん!』などのきらら作品もその側面がありました。
そして、それは「バンドリ」以降のコンテンツでも同様で、『ウマ娘』(2018年~)や『プロセカ』(2020年~)、『ヘブバン』(2022年~)などにも当てはまります。(※ 『プロセカ』の場合は男性キャラも含みます)
<画像はテレビアニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』第2話より引用>
そういう時代に生まれた「MyGO!!!!!とAve Mujica」のプロジェクトもそう。
私は、第2話で「椎名立希」が「千早愛音」にずっと舌打ちをしているのを見て、「これが俺の見たかった新しいバンドリだ!」と一気にハマりました。 それは別に「舌打ちする女のコが好き」でも「舌打ちされる女のコが好き」でもなくて、こういう"関係性のバリエーション"を今作は大事に描いてくれるんだ とワクワクしたんですね。
そして、期待通り……10人いるキャラクターのどの組み合わせでも美味しい味が出る作品でした。前項の「予測不能な群像劇」なこともあって、「この組み合わせでもこんな味が出るの!?」という驚きの連続で楽しかったです。
だからこそ、Ave Mujicaの5人もスマホゲーム版に実装してもらって、一生美味しい出汁を出し続けて欲しかったし、今までのキャラとの組み合わせも見たかったんですが……それは言っても仕方ないか。その話はまた後で。
◇ 多様性:「今までのバンドリとはちがう」バンドリらしさ
『It’s MyGO!!!!!』のアニメが放送されている頃から、「絶賛」のつもりで評されている表現に「今までのバンドリとちがう」「今までのバンドリのようなキラキラした青春を描くのではなく、ドロドロした物語が素晴らしい」 的なものがありました。
<以下、引用>
──本日はよろしくお願いします。さっそくではあるのですが、羊宮さんはTVアニメ『Ave Mujica』をご覧になられて、どんな印象を受けていますか?
羊宮妃那氏(以下、羊宮氏): 『It’s MyGO!!!!!』の時も、結構衝撃が走っていましたが……『バンドリ!』プロジェクトとは思えない「ギスギス感」といいますか。なんだか「キラキラしていない」ような展開が多かったと思うのですが、『Ave Mujica』はそれを超えるかのように、#1から壮絶なストーリーが 始まっていましたよね。
</ここまで>
「バンドリ」=「キラキラした青春物語」というパブリックイメージがあったみたいで、「MyGO!!!!!とAve Mujica」のプロジェクトはそうした「今までのバンドリ」とはちがう方向性で生まれたのは確かなんですが……
私は逆に、それがすごく「バンドリっぽい」と思っているのです。
というのも、「バンドリ」ってスマホゲーム版が始まった時から「5バンド」あって、その5バンドはそれぞれが奏でる音楽のジャンルが全然ちがっているし、ストーリーのジャンルも全然ちがっているのが特徴だった んですよ。
<画像はiOS版『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』より引用>
・Poppin'Partyの物語
…キラキラした青春を仲良しの5人で全力で駆け抜ける、ポスト『ラブライブ!』のような物語
・Afterglowの物語
…「夜の学校に忘れ物を取りに行く」や「好きな漫画が打ち切りになって哀しい」といった幼馴染5人のいつも通りを描く、きらら系に代表される日常系のような物語
・Pastel*Palettesの物語
…芸能事務所によって結成されたアイドルバンドの5人が、芸能界の汚い部分やむちゃな仕事に翻弄される、『アイドルマスター』のような物語
・Roseliaの物語
…心に傷を負った5人が「最高の音楽を目指す」という名目で集まったバンドで、自身の心の傷と向き合っていく、シリアスな物語
・ハロー、ハッピーワールドの物語
…破天荒な少女:弦巻こころによって集まった5人の少女とクマが、世界を笑顔にするために今日もハチャメチャなことをやっている、ライトノベルのような物語
・Morfonicaの物語
…お嬢様学校に入学した何の取り柄ものない少女:倉田ましろがバンドに出会い、仲間達とともにバンドを通じて学校を変えていく、学園ものの物語
・RAISE A SUILENの物語
…大ガールズバンド時代のニューリーダーとなるべく、トップクラスの演奏技術を持った4人とプロデューサーによる、世界に挑戦状を叩きつける治安の悪い物語
それぞれのバンドで描かれるバンドのストーリーは、ジャンルもちがうし、リアリティーラインも大きくちがいます。
特に「ハロー、ハッピーワールド」はメンバーにクマがいるし、そのクマが空飛ぶし、唐突に野球回(正確にはソフトボール回)が始まったりするし、恐竜の卵を見つけたりするし……『Ave Mujica』があまりバンドしてないって言われていたけど、「ハロハピの前でそれ言える!?」 って思っていました。
私は、これこそが先行する『スクフェス』や『デレステ』とちがう『バンドリ』ならではの魅力だった と思っていて……『バンドリ』のゲーム1本遊んでいるだけでいろんなジャンルの話が読める様は、いろんな漫画が載っている漫画雑誌を読んでいるような感覚だった んですね。
そして、更に「バンドリ」ではそれぞれのバンドが同じ世界に住んでいるため、バンドの垣根を越えてちがうバンドのキャラと絡んだりもします。その「女×女」の関係性の多様さこそが「バンドリ」の魅力……って話はさっき書きましたわ。
漫画雑誌で例えるなら、『スラムダンク』の桜木花道と、『幽遊白書』の浦飯幽助と、『ろくでなしブルース』の前田太尊が、不良同士で仲良くなっていっしょにパチンコ屋に行くイベストがある――― みたいなのが「バンドリ」なんです! いつの時代のジャンプで例えているんですか、おじいちゃん!
ということで、ですね。
「バンドリ」=「キラキラした青春物語」というパブリックイメージって、実はPoppin'Partyという1つのバンドのイメージでしかなくて、「ジャンプってドラゴンボールみたいな漫画しか載ってないんでしょ?」とか「任天堂ってマリオみたいなゲームしか出してないでしょ?」と言うようなもの なんですよ!
『It’s MyGO!!!!!』も『Ave Mujica』も「今までのバンドリとちがう」ジャンルの話だったけど、それが「バンドリらしくない」んじゃなくて、それこそが「バンドリらしい」んですよ!
・MyGO!!!!!の物語
…傷だらけになっても、不格好でも、剥き出しの感情をぶつけ合って、心の叫びを歌にしてぶつける泥臭い青春群像劇
・Ave Mujicaの物語
…仮面を着けて、秘密を抱えた5人の少女達が、芸能界のど真ん中でズタボロになっていく予測不能なサイコサスペンス
『It’s MyGO!!!!!』も『Ave Mujica』も「今までのバンドリとちがう」んですが、『It’s MyGO!!!!!』と『Ave Mujica』もそれぞれ全然ちがう話 なんですね。ジャンルもちがっていれば、リアリティーラインも変わっていると思います。
<画像はテレビアニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』第10話より引用>
『It’s MyGO!!!!!』は、今にして思えば割とちゃんと「青春物語」 なんですよね。Poppin'Partyとかと比べれば「仲良しグループ」というワケではないかも知れませんが、別に仲良しだけが「青春」じゃないし、ギスギスしている「青春」だってあるワケですし……そういう意味では、『響け!ユーフォニアム』とかに近い作品なのかもって思います。
『Ave Mujica』は、物語全体の整合性を合わせるよりも、1話1話が予想を裏切る展開すぎて、視聴者をとにかく驚かせることに特化した『デスノート』みたいな作品だったなぁ と思います。顔芸もするし。
<画像はテレビアニメ『BanG Dream! Ave Mujica』第3話より引用>
個人的には『It’s MyGO!!!!!』が大好きだったので、『Ave Mujica』は終わった後「一体オレは何を観ていたんだろう……」と戸惑いもしたのですが……『It’s MyGO!!!!!』に比べて『Ave Mujica』がダメな作品というワケではなくて、この2作品はジャンルがちがっていた んだと思うんですね。
時間軸がつながっているし、登場人物も共通しているから、勘違いしちゃいましたが、よく見ると……この2作品、タイトルもちがう し!
◇ 将来性:功労者がいなくなった「バンドリ」はこれからどうなる
ちょっと、アニメ作品のレビューからは話が逸れてしまいますが……今この話を書かないのはアンフェアだとも思うので、余談レベルの話ですが、ちゃんとここに書いておきます。
「バンドリ」プロジェクトは、「リアルライブ」「アニメ」「スマホゲーム」の3本の柱で成り立っていたメディアミックスプロジェクトですが……現在「スマホゲーム」はかなりの窮地に立たされています。
というのも、2023年秋にMyGO!!!!!の5人をプレイアブル実装した後、立ち上げから開発・運営を行っていたCraft Eggが2024年1月にプロジェクトから離れ、2024年4月に親会社のサイバーエージェントに吸収合併される形で解散しました。
この記事の前半でも書きましたが……「バンドリ」はテレビアニメ1期がコケたのに、そこから一気にプロジェクトを盛り返したのは「スマホゲーム」のおかげだし、それを作っていたCraft Eggが「バンドリの面白さの礎」を築いたと言っても過言ではないと思います。そのCraft Eggがなくなってしまったのです。
ストーリーとイラストを手がけていた一部メンバーは「フロムトーキョー」という新しい会社を立ち上げて、そこで引き続き「バンドリ」のゲームに携わっているようなのですが……逆に言うと、「ストーリーとイラスト」以外の部分は引き継げておらず、「3DMV」は2023年12月から1年3ヶ月追加されていないし、「キラフェス」は2023年9月から1年半追加されていません。
そして、何より……
MyGO!!!!!の5人はスマホゲームに実装されたのに、Ave Mujicaの5人は実装されませんでした。 恐らくは3Dモデルの制作ができる環境ではなくなってしまった&もうそこまでコストをかけられない状況で、せっかく『Ave Mujica』のアニメが盛り上がっても、その勢いをスマホゲームに持ってくることが出来なかったんですね。本来なら、彼女らのその後がスマホゲームで定期的に読めたはずだっただろうに……
こんなことなら、当初の予定通り「バンドリとは別のプロジェクト」として発表されていた方が、双方にとって幸せだったんじゃないかとすら思ってしまいます。
そして、「バンドリ」アニメ1期からシリーズ構成をしていて、キャラクター達の設定なども手掛けていた綾奈ゆにこさんが、『Ave Mujica』のシリーズ構成を最後に「バンドリ」から離れた&出来上がったアニメも観ていないと発言されていました。
何があったのか詳細は分かりませんし、考えるべきでもないと思うので邪推はしませんが……結果として、「スマホゲーム」も「アニメ」も初期の頃からプロジェクトを支えていた功労者を失ってしまいました。
こんな状態で、今後「バンドリ」はどうなってしまうのか……
「リアルライブ」は好調なので、プロジェクト全体を畳むことはないと思いますが……『ガルパ☆ピコ』スタッフによるショートアニメで間をつないで(『ガルパ』にはAve Mujicaがいないので、『ガルパ☆ピコ』ではない名前に変わるのだと思います)、 「MyGO!!!!!とAve Mujica」が登場する海外舞台のアニメ(恐らく映画)を作るみたいなので……
「スマホゲーム」は終了させて、「MyGO!!!!!とAve Mujica」と、バンドリプロジェクトの次のバンドである「夢限大みゅーたいぷ」に力を入れていく…… って展開も全然ありえそうなんですよね。
個人的には、「バンドリ」プロジェクト自体が畳まれなければ、今の形が継続されなくても仕方ないと思っています。一番つらいのは、もう「バンドリ」の新作が作られなくなってしまうことなので……
「Ave Mujicaが最後の花火になってしまった」とならないことを願います。
◇ 総括 <画像はテレビアニメ『BanG Dream! Ave Mujica』第4話より引用>
元々は「バンドリ」ではないプロジェクトで作られたから「バンドリ」の枠に捉われていない作品なのに、それが逆に「バンドリ」らしさになって。 そして、そんな2作品を受け止めて内包できるのが「バンドリ」の幅だよなぁ と思い出したアニメでした。
学園ものの『水星の魔女』もあれば、格闘大会をする『Gガンダム』もあるし、こどもの視点から戦争を描く『0080 ポケットの中の戦争』なんてものもある。
『It’s MyGO!!!!!』と『Ave Mujica』の2作によって、「バンドリ」もそういうバリエーションを手に入れて、「バンドリらしさ」を広げることが出来た のだと思います。
ありがとう、「バンドリ」の次の10年は君達が支えてくれ。
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