『EVE burst error』レビュー/完成されたザッピングシステムが送る、90年代を象徴する極上アドベンチャー

※ この記事は2023年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2026年に移行した記事です


<画像はセガサターン版『EVE burst error』より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
・ザッピングシステムが試行錯誤された時代だった1990年代
・「売れない探偵」と「1級捜査官」、1つの街を舞台にした2人の主人公の物語
・「推理」あり、「銃撃戦」あり、「お色気」ありと、エンタメが詰まった豪華ADV



『EVE burst error』
・原作開発:シーズウェア
・18禁のPC(PC-9801VM/UV以降)版:1995年11月22日発売
 セガサターン版:1997年1月24日発売(発売はイマジニアから)
 Windows 95版:1997年5月30日発売
  FANZA GAMES版:2010年6月18日配信開始
 プレイステーション2版:2003年7月24日発売(発売はゲームビレッジから)
 18禁のWindows 98版:2003年11月28日発売(発売はホビボックスから)
 PSP版:2010年3月25日発売(発売は角川書店から)
 プレイステーションVita・Windows 7版:2016年4月28日発売(発売はel diaから)
 18禁のWindows 7版:2016年11月25日(発売はel diaから)
 Nintendo Switch版:2018年10月25日発売(発売はel diaから)
・コマンド選択式アドベンチャーゲーム
・セーブ方法:最初のPC版は拠点でのみセーブ可能、セガサターン版以降はコマンド選択時にセーブが可能

 
※ PVは『EVE burst error R』のものです
 私が1周クリアまでかかった時間は約20時間でした
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください

【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
※ 苦手な人もいそうなNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。
・シリアス展開:◎(人が死にまくるどころの騒ぎではない)
・恥をかく&嘲笑シーン:○(トンデモない水着で往来を走ったりするし…)
・寝取られ:×(W主人公の小次郎とまりなはそういう関係ではありません、念のため)
・極端な男性蔑視・女性蔑視:△(元がエロゲなのでセクハラ的なシーンはある)
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:◎(手足はもげないけど首がもげる)
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:△(真弥子→まりなはそれっぽくない?)
・BL要素:×
・ラッキースケベ:◎(元がエロゲなので)
・セックスシーン:◎(コンシューマ版は「事後」にすっ飛ぶ)
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◇ ザッピングシステムが試行錯誤された時代だった1990年代

 このゲームは元々1995年に発売されたPC用の18禁ゲームですが、後にセガサターンを始めとした様々な機種に移植され、現行機と言えるNintendo Switchやプレイステーション4(の互換がある5)で遊ぶことも出来ます。私がプレイしたのはセガサターン版ですが、遊べる機種と中身のちがいなどを調べられた範囲でまとめておきます。

 このブログでは18禁ページへのリンクは貼らない主義なので、FANZA GAMESへのリンクは貼っていません。ご理解お願いします。

・1995年11月 PC版『EVE burst error』
 …18禁要素あり。原典だけど現在では環境を整えるのは難しそう
・1997年1月 セガサターン版『EVE burst error』
 …18禁要素を削り、超豪華声優によるボイスや新規アニメーションムービーを追加
・1997年5月 Windows95版『EVE burst error』
 …サターン版をPCに逆移植したもので、18禁要素はなし。でも、FANZAではアダルトストアに置いてある
・2003年7月 プレイステーション2版『EVE burst error PLUS』
 …キャラクターデザインを一新し、一部の声優も変更になったリメイク版
・2003年11月 Windows98版『EVE』
 …↑の『PLUS』に18禁要素を加えた版。当然、声優はアダルトゲー声優になっている
・2010年3月 PSP版『burst error -EVE The 1st.-』
 …「現代風リブート」を目指してノベルゲームに変更し、シナリオも声優も変更した。↓のリマスター版ではなかったことになっているので、黒歴史扱いらしい
・2016年4月 プレイステーションVita・Windows7版『EVE burst error R』
 …サターン版に忠実なリマスター版(声優はPS2版準拠)で、2018年10月にNintendo Switch版も発売、プレイステーション4版は2019年4月発売の続編『EVE rebirth terror』内に収録されている
・2016年11月 Windows 7版『EVE burst error A』
 …↑の『R』に18禁要素を加えたもの。当然声優もアダルトゲー用に


 むちゃくちゃたくさん出ていますが、今遊ぶならNintendo Switchかプレイステーション4で『EVE burst error R』か、18禁要素が欲しかったらPCで『EVE burst error A』というカンジですかね。出費を抑えたいなら、Windows95版と同様のものがFANZA GAMESでしょっちゅうセールをやっているみたいなのでそれを待つのも手かな。

 近年の展開をしてくれているEl Dia(エルディア)は、この『EVE burst error』の復活を皮切りに、『DESIRE』や『慟哭 そして…』のリマスター、完全オリジナル作品の『神田アリスも推理スル。』、更には『EVE burst error』の続編となる『EVE rebirth terror』や『EVE ghost enemies』を展開するなど……アドベンチャーゲームに力を入れてくれているゲームブランドなのですが。

 そもそも「エルディア」という名前が、『EVE burst error』に出てくる国の名前だったんですね。私は『神田アリスも推理スル。』を最初に遊んでいたため、「覚えづらいブランド名だな……」くらいにしか思っていませんでした。




<画像はセガサターン版『EVE burst error』より引用>

 このゲーム最大の特徴は、2人の主人公の視点で話が進む「マルチサイト」システムです。厳密にはイコールではないと思うのですが、現代風に分かりやすく説明すると「2人の主人公を切り替えながら遊ぶザッピングシステム」ですね。

 1人目の主人公は「売れない私立探偵:天城小次郎」で、紛失してしまった絵画を見つけ出すことを依頼されます。
 2人目の主人公は「内閣情報調査室の1級捜査官:法条まりな」で、エルディアという国の駐日大使の娘:御堂真弥子の護衛を命じられます。

 この2人は知り合いでもなければ、2人が請け負う仕事も全く関係がないものなのだけれど……2人の物語は同じ街を舞台にしているため、絶妙にすれちがったりシンクロしたりするのです。


 こうしたザッピングシステム……実は、1990年代でちょっとした流行になっていて、色んなジャンルにチラホラ取り入れられていたんですね。
 「複数の主人公が章ごとに切り替わる」ものだと、『ドラゴンクエストIV』(1990年)や『ライブ・ア・ライブ』(1994年)などがありましたが、それらは「ライアンが主人公の1章をクリアすると、アリーナが主人公の2章が始まる」といったものでした。「ザッピングシステム」はそこから更に発展させて、「複数の主人公をプレイヤーが任意のタイミングで切り替えられる」とか「別の主人公の行動によって他の主人公のプレイに影響を与える」、そして何より「1つの事件を複数の視点から描く群像劇的な側面がある」などの特徴を持っています。




 このシステムの元祖が何かはちょっと断言できないのですが、私が最初に経験したのは『ファイアーエムブレム外伝』(1992年、任天堂)です。
 1章は「アルム」軍を、2章は「セリカ」軍を指揮するのだけど、3章からはその両軍を並行して動かしながら進めるSRPGでした。その両軍は終盤まで交わらないのだけど、互いに作用しあう要素が仕込まれていました。

 そもそもシミュレーションゲーム自体が、「こっちの軍をここまで動かして、こっちの軍をこう進めよう」ってゲームですからね。このシステムの元祖を突き詰めていくと『将棋』とかになってしまうのかも知れない……


 「ザッピングシステム」とは若干ちがうような気もしますが、同じSRPGの『スーパーロボット大戦EX』(1994年、バンプレスト)にも「インタラクティブ・シナリオ・システム(ISS)」というものが採用されていました。
 このゲームは「マサキ」を主人公にした章と、「リューネ」を主人公にした章、全く別の軍を操作する2つのシナリオが入っていてどちらからでも遊べるのですが……例えば「マサキ」でプレイしたセーブデータがあると、そのプレイ内容によって「リューネ」の章の内容が変わるシステムだったんですね。主人公を任意のタイミングで切り替えられるのとは違いますが、「ザッピングシステム」と発想は近いシステムじゃないかと思います。


 RPGのジャンルで「ザッピングシステム」を取り入れたものと言えば、スーファミ末期の『ルドラの秘宝』(1996年、スクウェア)です。このゲームは3人の主人公のシナリオを並行して遊ぶことが出来るのだけど、3人の主人公の進行具合が「今が何日目か」の表示で分かるようになっていて、3つの視点のシンクロ具合が分かりやすいようになっているんですね。
 スクウェアは1994年の『ファイナルファンタジーVI』でも、「複数のパーティを同時並行で進めるダンジョン」を用意していたので、それをゲーム全体のデザインに落とし込んだのが『ルドラの秘宝』と言えるのかも知れませんね。


 アクションゲームだと「ザッピングシステム」で有名なのは、何と言っても『バイオハザード2』(1998年、カプコン)です。
 『バイオハザード』1作目も2人の主人公の1人を選んで始めるのだけど、選ばれなかった方は敵に捕まっていて、選ばれなかった方のシナリオは体験することが出来ませんでした。『バイオハザード2』は、そこから「選ばなかった方がその間に何をしていたのかのシナリオ」も遊べるようになったんですね。「複数の主人公をプレイヤーが任意のタイミングで切り替えられる」のではありませんが、『スーパーロボット大戦EX』の「ISS」に近いシステムだと思います。

 複数の主人公を切り替えながら遊ぶのは、2002年の『0』で実現しているのですが……こうやってまとめてみると、『ファイアーエムブレム外伝』とか『スーパーロボット大戦EX』とか『バイオハザード0』とか、どれもナンバリングタイトルではない外伝的な作品で実験的に試されているのが興味深いところ。


 さて、では『EVE burst error』と同じアドベンチャーゲームのジャンルではどうかと言うと……1980年代の『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島』(1987年、任天堂)で、既に「複数の主人公を切り替えるシステム」が実装されていました。
 ただ、基本的に2人の主人公は行動を共にしているため、「1つの事件を複数の視点で描く群像劇的なシステム」というより「操作キャラを切り替えている」と言った方が良いのかも。2人を別々に動かす場面も、なかったワケじゃないと思いますが……(この辺、プレイしたのが昔すぎてちょっと記憶曖昧ですみません)

 やらない理由も想像できるけど、『新・鬼ヶ島』も『遊遊記』も現代向けに遊びやすくリメイクしてくれませんかねぇ……流石にディスクシステムのゲームを今そのままもう一度遊ぶのは厳しいので。



<画像はセガサターン版『DESIRE』より引用>

 そして、『EVE burst error』の前身とも言える、菅野ひろゆきさん(当時は剣乃ゆきひろのペンネームを使用)の前作『DESIRE 背徳の螺旋』(1994年、シーズウェア)も同様のシステムを採用したアドベンチャーゲームです。『EVE burst error』は『DESIRE』の問題点を解決した作品だと思うので、ここから『DESIRE』の多少のネタバレを含むことをご了承ください。ネタバレがイヤな人は、次の項まで飛んでね。


 このゲームは巨大な研究施設「DESIRE」を中心とした島を舞台に、「この島を訪れたジャーナリストの男」と「研究施設の技術主任の女」の2人を主人公にしていて、1つの事件を2つの視点から描くマルチサイトシステムをウリにしていました。『EVE burst error』とほぼ同じシステムだったんですね。

 ただ、『DESIRE』は「マルチサイト=複数の視点」と謳っているだけあって、あくまでも「1つの事件を複数の視点から描く」だけで、『EVE burst error』や後の『街』『428』のように「他の主人公のプレイ内容が、今プレイしているルートに影響を与える」要素がシナリオ的になかったんです。
 そのため、『DESIRE』の方は、セガサターンへの移植以降「自由に主人公を切り替える」ことは出来なくなり、「ジャーナリストの男」編をクリアしたら「技術主任の女」編が始まるシステムになってしまったそうです。

 また、『DESIRE』のW主人公は恋人同士で、「ジャーナリストの男主人公が、遠路はるばる女主人公が働いている島の研究所を訪れる」というストーリーなのですが……男主人公は別の女キャラに手を出すし、女主人公も別の男に絆されるし、現代におけるNTRの走りみたいな話なんですね。

 男主人公を操作して、なかなか女主人公に会えないんだけどどうしたんだろう? という謎が、女主人公編をプレイすると「実はあなたが○○していた間、彼女は寝取られていましたー」と明かされるの、マルチサイトシステムの使い方として最悪すぎない!?




<画像はセガサターン版『EVE burst error』より引用>

 『EVE burst error』は『DESIRE』の反省からなのか、2人の主人公同士は面識がない、まったくの赤の他人になりました。これならNTRになりません。寝取られたくないのなら、最初から恋人なんか作らなければイイんですよ!

 またシナリオ的にも「複数の視点を同時並行で進める」ことを活かしたものになっていて、そのため2人の主人公の話を同時並行で進めなくてはならなくなりました。例えば、片方の主人公の視点で「殺人事件があったと発見する」と、もう片方の主人公の視点でも「殺人事件があったらしいぞ」とストーリーが進行する―――といったカンジです。



<画像はプレイステーション版『街 ~運命の交差点~』より引用>

 影響を受けているのかは分かりませんが、1998年の『サウンドノベル 街 -machi-』(チュンソフト)はこれをマルチエンディングのノベルゲームに落とし込んだようなシステムでした。8人の主人公のシナリオを同時並行で読んでいき、そのままだとバッドエンドに向かってしまうシナリオなのですが、別の主人公の行動を変えることでバッドエンドから“逸らす”ゲームだったんですね。

 『EVE burst error』は「別の主人公の話を進めないと、話が進まない」だったのが、『街』では「別の主人公の話を進めないと、バッドエンドになってしまう」になったというべきか。このシステムは同じチュンソフト開発の『428 ~封鎖された渋谷で~』(2008年)などにも引き継がれています(※1)。

(※1:『街』はほとんど関連のない8つの小説を読むゲームだったので、「1つの事件を複数の視点で描く群像劇的なシステム」なのは『428』の方が近いかも)


 要約しますと、1990年代は「ザッピングシステム」が模索された時期で、『DESIRE』の時点では正直そのシステムを活かしきったとは言えないと思うのですが、この『EVE burst error』でシナリオ的にもシステム的にも完成されたものになりました。そういう意味でも、このゲームは「1990年代を象徴するゲーム」なんだと思うのです。
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◇ 「売れない探偵」と「1級捜査官」、1つの街を舞台にした2人の主人公の物語

<画像はセガサターン版『EVE burst error』より引用>

 『EVE burst error』が発売された1995年は、サウンドノベルはありましたが(1992年『弟切草』~)、ビジュアルノベルが生まれる前なので(1996年『雫』~)、ジャンルは「コマンド選択式のアドベンチャーゲーム」です。

 大別すれば、『逆転裁判』とか『レイトン教授』なんかと同じジャンルですね。基本的には一本道で、マルチシナリオではありません。



<画像はセガサターン版『EVE burst error』より引用>

 1人目の主人公:天城小次郎は私立探偵で、なくなってしまった絵画の捜索を依頼されるところから始まります。この絵画はどこに行ったのか、そもそもこの絵画は何なのかという謎を解いていくミステリー要素が強めですね。

 小次郎の探偵事務所は港の倉庫跡で、如何にも20世紀のハードボイルドな探偵ものという雰囲気です。前髪が長くて目が描かれないのは典型的な「1990年代のエロゲ主人公」なんですが、前作の『DESIRE』の主人公アルバートは普通に目が描かれてたんですよね……



<画像はセガサターン版『EVE burst error』より引用>

 2人目の主人公:法条まりなは公僕の立場で、エルディア共和国の駐日大使の娘:御堂真弥子の護衛を命じられます。『DESIRE』のマコトが「状況に流される女性主人公」で好感度が恐ろしく低かった反動なのか、『EVE burst error』のまりなは良い意味で大雑把で豪放磊落な女性主人公で、見てて気持ちがイイですね。

 護衛される御堂真弥子の方は「マジメを絵に描いたような女子高生」なのだけど、徐々にまりなに心を開いていく展開は王道だけどグッとくるものがあります。




<画像はセガサターン版『EVE burst error』より引用>

 この2つの物語はまったく別のストーリーを進むのですが、同じ街を舞台にした物語なので、それぞれ別のタイミングで同じ場所を訪れたりするんですね。

 制作サイドからすると「背景の絵を使いまわせる」上に、プレイヤーからすると「もう片方の主人公で見知った場所に、別のキャラで訪れるのが楽しい」のです。宮本茂さんがWiiの時代に実現した「アイランド構想」に近いものがありますし(2009年『Wii Sports Resort』~)、1つのステージに色んな遊びを取り込んだ『スーパーマリオ64』(1996年)にも通じるものがあるかも知れない。
 『街』や『428』のようなノベルゲーム以上に、自分でコマンドを選択して主人公を動かすアドベンチャーゲームだからこそ「知っている場所を歩いている」と強く感じるところはあると思います。



<画像はセガサターン版『EVE burst error』より引用>

 何度も書いているように、W主人公の小次郎とまりなには面識がありません。
 けれど、その2つのストーリーがクロスしているように感じさせるため、両方の主人公に接点があるキャラが配置されているのです。

 例えば、この「桂木弥生」というキャラは―――小次郎にとっては、かつて勤めていた探偵事務所の同僚で、現在はライバル探偵事務所の所長です。


<画像はセガサターン版『EVE burst error』より引用>

 しかし、まりなにとっては昔からの女友達で、ガールズトークで語られる「男の愚痴」が実は小次郎のことだったりするという。

 同じキャラクターでも「小次郎に見せる顔」と「まりなに見せる顔」はまったくちがっていて、2つの視点から描くことでキャラクターも事件も多角的に見られるのが「マルチサイトシステム」の面白いところです。

 特にこのゲームは「事件の真相に迫る」ミステリー要素も強いので、“神の視点”で2つの話を読めるのがムチャクチャ楽しいんですね。『DESIRE』と比較しても、2つの視点があることを活かしたストーリーになっていると思います。




<画像はセガサターン版『EVE burst error』より引用>

 このゲームが「マルチサイトシステム=複数の視点を持つゲーム」なだけでなく、「ザッピングシステム」の完成形だと思うところが……2つの主人公を切り替えながら遊ぶところです。『DESIRE』は特にセガサターン版以降は、「アルバート編」をクリアした後に「マコト編」を遊ぶというカンジでしたが。『EVE burst error』は、片方の主人公だけではストーリーが進まなくなっているんですね。
 
 例えば、ここ。
 「まりな編」では何をしても御堂大使が不在のままなのですが……



<画像はセガサターン版『EVE burst error』より引用>

 「小次郎編」で話を進めると、氷室恭子が「大使館の前で法条まりなに会った」と教えてくれます。さっき「まりな編」をプレイした時にはそんなシーンはなかったはずなんだけど……と、セーブして「まりな編」に切り替えると。


<画像はセガサターン版『EVE burst error』より引用>

 「まりな編」でも、大使館の前で氷室恭子で遭遇するイベントが起こりました。このイベントが起こると大使が大使館に戻ってくるので話が進むようになります。
 テレビのチャンネルを切り替える「ザッピング」のように主人公を切り替えることで、ストーリーが進んでいくゲームなんですね。


 近年のリメイク版だと「ここで主人公を切り替えた方がイイですよー」と表示されるらしいので、難しそうと思った人でも安心して遊んでください。
 セガサターン版は「小次郎編」と「まりな編」でディスクが別になっていて、主人公を切り替えるたびにディスクを入れ替えるのがワクワクしたので、そんな必要がなくなったリメイク版だとちょっと味気ないかなとは思いましたが……まぁ、普通の人は「ディスク入れ替えがなくなって面倒じゃなくなった!」ってカンジでしょうね。
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◇ 「推理」あり、「銃撃戦」あり、「お色気」ありと、エンタメが詰まった豪華ADV

<画像はセガサターン版『EVE burst error』より引用>

 「元々はエロゲーの移植」という話だけ読んで、その辺の文化に疎い人は「お色気要素だけの中身のないストーリーなんじゃないの」とか思うかも知れません。エロゲー=オナニーのオカズみたいに思っている人もいるかも知れません。
 エロゲーの歴史から言っても、「(抜きゲーではなく)泣きゲー」の元祖として名前が挙がるゲームは『痕』(1996年、Leaf)や『To Heart』(1997年、Leaf)など、『EVE burst error』が出た1995年より後の作品が多いですからね。

 ただ、『同級生』(1992年、エルフ)の時点でドラマ性の強い「ストーリー重視のエロゲー」は存在していて、それ以降のエロゲーには「ストーリーを語る装置」という側面があったと思うんですね。
 エロシーンはあるけれど、本当に描きたいのはそれ以外の部分―――そういうエロゲーが多かったからこそ、後に「エロゲーからエロシーンを抜いてゲーム機に移植する」とか「エロゲー会社がエロなしのPCゲームを発売する」みたいな流れが出てくるのでしょう。

(関連記事:『同級生』レビュー/21日間を自由に歩き回れる夏休みシミュレーション)

 菅野さんの前作『DESIRE 背徳の螺旋』はその過渡期のような作品で、エロシーンがストーリーにとって必然的だったため、エロシーンをカットしたゲーム機移植版以降は納得感の薄いシナリオになってしまっていたんですね。ネタバレになるため、詳しくは反転させて書きますが……「女性主人公が間男とのSEXによって陥落させられるNTR的な内容だったけど、SEXシーンを描けないゲーム機版では“催眠術をかけられた”という理由に変更されました。催眠術無敵すぎる」

 ただ、それでも『DESIRE』を「お色気要素だけの中身のないストーリー」だとは思いません。「マルチサイトシステム」に、SFの要素を取り込んだ、めちゃくちゃに先鋭的なストーリーだったと思います。私の場合は、運悪くプレイ中にネタバレを複数箇所喰らってしまったので感動はしませんでしたが!



<画像はセガサターン版『EVE burst error』より引用>

 『EVE burst error』はエロシーンを抜いても破綻するようなシナリオでもなく、『DESIRE』から更にスケールが上がって「銃撃戦」などのド派手なアクションシーンが描かれます。
 セガサターン版(以降)は、当時としては大容量のCD-ROM媒体になったことを活かして、アニメーションムービーなんかも多く入っていますしね。主人公が「探偵」と「1級捜査官」なため、潜入や逃亡劇など“映画みたいな展開”が次々と起こって飽きさせません。



<画像はセガサターン版『EVE burst error』より引用>

 そして、始まる「殺人事件」。
 最初の依頼は、小次郎は「絵画の捜索」、まりなは「女子高生の護衛」だったはずなのに……この街で起こっている“大きな企み”に巻き込まれていくことになります。果たして、犯人は誰なのかという推理要素もあるんですね。


 エンターテイメントのいろんな要素が詰まった、超豪華アドベンチャーゲームです!

 漫画『異世界おじさん』で、異世界から帰ってきたセガ好きのおじさんが「セガサターン マガジン」をオークションで競り落として「読者レース」の最終ランキングを確認するというシーンがあります。


<画像はアニメ版『異世界おじさん』2話「1位「ガーディアンヒーローズ」だろぉおおお!」より引用>

 そのシーンで(作中では名前は出ていませんが)1位になっていた「PCの美少女ゲームの移植作」と紹介されたのが、この『EVE burst error』でした。つまりセガサターン全ソフトの中で読者人気1位だったゲームなんです。その結果をおじさんは「硬派一辺倒だった男子高生が色恋沙汰には勝てなかったような寂しさがある」と言っていたのですが……



 『EVE burst error』は、SEXはするけど「硬派なゲーム」だと思いますよ!

 ガンガン人が死ぬし、派手な撃ち合いが続くし、重ためのシナリオだし、少なくともおじさんが想像するような「女のコと付き合ってキャッキャッするゲーム」じゃあ全然ないですよ!おじさんは「美少女ゲーム」と言ったけど、(私は18禁版はプレイしていないので恐らくですが)エロシーンのある女性キャラはみんな大人のキャラだと思いますし、その関係もハードボイルドな大人な関係がほとんどだと思います。

 あと、アニメ版『異世界おじさん』のおじさんのCVが子安武人さんで、サターン版以降のゲーム機版『EVE burst error』の男主人公:天城小次郎のCVも子安武人さんなんですよね。子安武人さんvs.子安武人さんだ!!


 それはさておき、「セガサターン全ソフトの中で読者人気1位だったゲーム」なのも納得で。
 「CD-ROMの大容量を活かしたフルボイス・ムービーの入るゲーム」「CD数枚組の大ボリューム」「(プレステに比べて)PC用のエロゲーがサターンに多く移植された中の1本」「プレステには移植されなかった」と、セガサターンを象徴する1本だったんですね。軟派なゲームだなんて食わず嫌いせずに、おじさんにも是非遊んでほしい1本です。




 ちなみに、アドベンチャーゲームの歴史を語るページでは、『弟切草』(1992年、チュンソフト)がサウンドノベルというジャンルを生んでマルチシナリオ・マルチエンディングのシステムを組み込み、その影響を受けた『DESIRE 背徳の螺旋』(1994年)や『EVE burst error』(1995年)も「マルチシナリオ・マルチエンディング」のゲームになった―――と書かれているのをよく見かけるんですけど。

 『DESIRE』や『EVE burst error』は「マルチサイトシステム」であって、マルチシナリオでもマルチエンディングでもなくない!?

 一本道のゲームを2つ遊ぶことによって、1つの事件を多角的に見ることが出来るシステムなので……色んなルートと結末がある「マルチシナリオ・マルチエンディング」のゲームとはちがうと思うんですけど。
 「バッドエンドがある」ことがマルチエンディングだというなら、『スーパーマリオブラザーズ』とかだって「マリオが1-1で死んだからバッドエンド」→「スーパーマリオはマルチエンディングのゲームだ」になっちゃわないですか?

(関連記事:『弟切草』レビュー/ストーリーを読むだけでない、「何度もループして新シナリオを探す」遊びを取り込んだアドベンチャーゲームの転換点)

 

◆ で、結局どういう人にオススメ?

<画像はセガサターン版『EVE burst error』より引用>

 ゲーム機版ではエロシーンはカットされていると言っても、下ネタは多く、主人公の軽薄なノリが合わない人もいるとは思うのですが……ストーリーは超一級品なので、「テキストアドベンチャーゲーム」に興味がある人には是非オススメの1作です。

 「アドベンチャーゲームが好きな人」にはもちろん、「アドベンチャーゲームってあんまり遊んだことがないけどどれから遊んだらイイのかなー」という人に1本だけオススメするならコレを選びます。今まで遊んだコマンド選択式アドベンチャーゲームの中で、一番というくらいに私は面白かったです。


 『EVE』シリーズはこの後も続いていくし、近年El Dia(エルディア)が新作も出してくれているのだけど……『DESIRE』→『EVE burst error』と遊んできたので、私は次は菅野さんの次作『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』を遊ぼうかと考えています。
 『DESIRE』があまり楽しめなかったので「菅野さんの作品は自分には合わないんじゃないか」と思っていましたが、食わず嫌いは良くないですね!

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