「ベスト8を目指す」は口だけではなかった、日本サッカーの現在地

※ この記事は2022年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です


 サッカーW杯はまだ続きますし、私は決勝戦まで楽しむつもりですが……日本代表の戦いは「ベスト16」で終わってしまったので、今日の時点での私の感想を書いておきます。4年前も、同じタイミングで書いていたみたいなんで。

 今だからこそ、この話を蒸し返そう。「ハリルホジッチ解任は本当に正しかったのか?」

 4年前のこの記事に書いた通り、私は4年前のW杯直前のハリルホジッチ監督解任は残念だと思ったし、それ以降日本サッカー協会に対して懐疑的でした。
 東京五輪サッカー日本代表監督だった森保さんをフル代表の監督と兼任させるやり方も、「協会がコントロールしやすい人選」という印象でしたし、正直この4年間はサッカーに対して冷めてしまっていたところもあります。アジア杯は決勝でカタールに完敗、東京五輪はメダルに届かず、世界との差を感じ続けた4年間でした。


 「W杯のベスト8を目指す」という目標も正直言って空虚なものに聞こえたし、グループリーグの組み合わせを見た時は「また4年後に期待だな」と思ってしまいました。
 しかし、「W杯のベスト8を目指す」のならドイツやスペイン級の相手には勝たなくちゃなりません。それが分かっていた今回の日本代表は、ドイツやスペインに勝てるチームを作っていましたし、実際にグループリーグでは勝ちました。決勝トーナメントではPK戦での1回戦敗退で「ベスト8」には届きませんでしたが、口だけではなく、「ベスト8を目指す」のに特化したチーム作りが出来ていたと思います。



◇ 「ベスト8を目指す」とはどういうことなのか?

 4年前の記事にも書きましたが、現行の32チームで戦うサッカーW杯で「ベスト8を目指す」ということはイコールで「シード国を倒せるチームを作る」ということです。

 32チームは、4チームずつ8グループに分けられてグループリーグを戦うのですが……開催国の入ったグループ以外には、「世界ランキング上位」のシード国が入ってきます。
 今回のシード国は、「ブラジル(1位)」「ベルギー(2位)」「フランス(3位)」「アルゼンチン(4位)」「イングランド(5位)」「スペイン(7位)」「ポルトガル(8位)」の7チームです。この順位は、組み合わせ抽選会直前の3月31日時点での世界ランキングですね。ちなみにドイツは12位、日本は23位でした。開催国(カタール、51位)枠のいたグループAも、世界ランキング10位のオランダがいたのでほぼシード国みたいなものですね……(2002年の日本が戦った当時のベルギーやロシアよりも格上だと思います)

 開催国枠で出場した2002年大会以外は、1998年は「アルゼンチン」、2006年は「ブラジル」、2010年は「オランダ」、2014年は「コロンビア」、2018年は「ポーランド」が日本と同じグループのシード国として入っていました。そして、日本はこの5戦は全敗しています。今までシード国相手に、引き分けすら出来なかったんですね。


 「ベスト16」まではそれで行けたんですね。
 32チームを8グループごとに分ける今のサッカーW杯のルールなら、4チーム中2位に入れれば決勝トーナメントに進めるため、「シード国」に勝てなくても「ベスト16」までは進めるんですね。だから、毎回ベスト16までは割といろんな国が上がってくるんですよ。

 しかし、「ベスト8」に行くにはそれでは済みません。
 グループリーグを2位で突破して決勝トーナメントに進出した場合、決勝トーナメント1回戦で当たる相手は高確率で「シード国」、もしくは「シード国を倒した国」です。日本が過去2位でグループリーグを突破したのは2回で、2010年の時はシード国イタリアより上位になったパラグアイ、2018年の時はシード国ベルギーとの対戦でした。

 ちなみに今大会の8つのグループリーグで、シード国(世界ランキング最上位のチーム)がリーグ1位にならなかったのは、日本が1位になったグループEと、日本が決勝トーナメント1回戦で戦ったグループFの2つだけです。2位で決勝トーナメントに上がってきたチームの中では、クロアチアは恐らく一番強かったんじゃないかな……相性を考えると悪くない相手だとは思いましたけど。

 要は、決勝トーナメント1回戦でシード国と対戦したくなかったら、グループリーグでシード国を倒してグループリーグ1位にならなくちゃならないんですね。グループリーグか決勝トーナメント1回戦のどちらかで「シード国」を倒す必要があるんです。
 この記事を書いている時点で、決勝トーナメント1回戦は6つ終わりましたが、オランダを実質シード国と考えるならベスト8に進んだ6チーム中5チームがシード国です。多彩なチームが揃うベスト16から、ベスト8になると「いつものメンツ」感が一気に強くなるという。唯一シード国ではないクロアチアも、前回準優勝のチームですもんね……


 なので、「W杯でベスト8を目指す」ということは、「シード国を倒せる国」になる必要があるんです。「ブラジル(1位)」「ベルギー(2位)」「フランス(3位)」「アルゼンチン(4位)」「イングランド(5位)」「スペイン(7位)」「ポルトガル(8位)」、あと「オランダ(10位)」か。これらを倒せるチーム作りが必要なんですね。

 そして、日本は実際に「スペイン(7位)」に勝ちました。
 日本がW杯の舞台でシード国に勝ったのは初めてです。「ベスト8」には届かなくても、日本サッカー全体が「ベスト8を目指せるチーム」を作れた何よりの証明となったでしょう。



◇ 日本は何故ドイツ、スペインに勝てたのか

 個々のレベルアップは当然の話なので置いといて、今大会の特徴として「W杯で初めて、選手交代の枠が3人から5人に増えた」というものがあります。

 2020年の新型コロナの感染拡大の影響で「とりあえず試してみた」5人交代制は、戦術的な面白さを生んだこともあって世界的に取り入れられる傾向にあります。今回のW杯はそれを受けて、登録選手の数も23人から26人に増えたことで選手交代の引き出しも増えました。

 今回の日本代表はこれを最大限に利用したんですね。
 ゴールキーパーを除いた10人のフィールドプレイヤーの内5人を入れ替えられると、前半と後半で全く別のチームになることが出来ます。前半は守備的に入り、勝負の時間と見越した後半に攻撃的な元気な選手を次々と投入―――ドイツ戦、スペイン戦での劇的な逆転勝利を生みました。


 また、これは日本代表に限らず今大会のトレンドだと思うのですが、5人交代制を見越して、疲労も厭わず攻撃の選手が前からガンガンプレスをかけて守備をするシーンが目立つようになりました。
 そこでボールが奪えたら一気に攻撃に転じるショートカウンターを決められるワケで、現在のサッカーって「フォワードに求められるのは守備力」「ゴールキーパーやディフェンダーに求められるのは足元のトラップやパスの技術」なんですよね。「フォワードは点さえ取ってくれればええんや! 守備なんか出来なくてもかまへん!」みたいな時代ではないのです。

 スペイン戦の同点ゴールはまさに、三苫と前田が前線からボールを持った相手を追いまわし、それでも相手ゴールキーパーはパスを味方に繋ぐことが分かっていたため伊東純也がそれを狙ってヘディングで競り合ってボールを奪う、それを拾った堂安が見事なコントロールからのシュート―――と、堂安のシュートがもちろん最高だったのは大前提に、前線の選手が一丸となってプレスとボール奪取を狙ったからこその結果となっていました。


 しかし、この「5人交代制」を活かした日本の戦い方にも欠点はあって……敵に対して「前半と後半でちがうチームと戦っているみたいだ!」と困惑させられる一方で、味方も「前半と後半でちがうチーム組んで戦っているみたいだ!」と困惑させてしまうところがあるんですね。
 要は、「いつも同じメンバー」で戦うのに比べて、連携があまり上手くいっていない印象を受けました。三苫選手をあまり活かせていない場面はみなさん記憶に残っていると思いますが、久保選手も正直「宝の持ち腐れ」になってしまったなーと私は思いました。今大会のブレイク選手の一人と期待していましたが、流石に彼が活躍できるシチュエーションにはならなかった……

 そして、ドイツやスペインのように「ボールを持たれる」格上相手には、この戦い方は絶大な効果があったんですが……コスタリカみたいにガチガチに守りを固めてくる相手には、あまり活きないんですよね。ショートカウンターなんて狙えないし、かといって連携で崩すアイディアも感じられませんでした。良くも悪くも「三苫頼み」のチームになってしまったというか。


 更に、「5人交代できるから疲労なんて考えずに走りまくってプレスかけるぜ!」と言っても、中3日ペースで試合をして4戦目ともなると各選手に疲労が蓄積されていました。仮にクロアチア相手にPK戦で勝てたとしても、この次のブラジル相手に走る体力は残っていなかったんじゃないかと思います。


 本当にこのチーム、「ドイツとスペインに勝ってベスト8を目指す」に特化したチームだったと思うんですね。



◇ 4年後、「ベスト8」を目指すためには

 来年の話をすると鬼が笑うなんて言いますが、日本サッカーはここから「4年後」に向けた戦いが始まります。今回ベスト8まであと一歩のところまで行ったのだから、次こそは……と思うかも知れませんが、なんとサッカーW杯は次から大会の仕組みが抜本的に変わるんですね。

 出場チームが32から48に増えます。
 グループリーグは4チームずつだったのが、3チームずつに変更。
 3チーム中2位になると、32チームによる決勝トーナメントに進出。

 個人的にはこれ、クソアプデだと思うんですけど……まぁ、現状ルールではW杯出場が難しい国も出場させたいと運営側が考えたのなら仕方ないですね。「もうSplatoonなんて辞めてAPEX始めるぜ!」とはいかないのが、サッカーの哀しいところです。サッカーを続ける限り、FIFAの言う通りにしなければならないなんて理不尽極まりない!


 ということで、ですね……
 日本が出場した1998年のフランス大会から、2022年のカタール大会までのノウハウはもう活かされません! 「ベスト8を目指す」ためにどういうチームを作っていくべきかもよく分かりません。

 そもそも、サッカーの主要大会はずっと「4チームずつグループリーグを作って上位2チームが決勝トーナメント進出」だったので、3チームずつのグループリーグになるとどんなことが起こるか予想もつかないんですね。
 それこそ48人集めて、サッカーゲームとかでシミュレーションを組んでみたいくらいの未知の領域です。哀しいかな、私には友達が47人もいないので出来ない……! 誰か、友達がたくさんいる人がやってくれ……!



-2026年追記-
 以前の記事の追記にも書きましたが、2026年サッカーW杯のレギュレーションは「出場チームは48チーム」で「グループリーグは4チームずつ12グループで戦う」方式に変更されました。クソアプデはやっぱマズイと思って、元に近い形に修正されたカンジですね。


 決勝トーナメントに進む条件は「同グループの4チーム中2位までに入る」か、「各グループの3位になった12チームの中で成績上位8チームになる(勝ち点→得失点差→総得点→フェアプレーポイント→FIFAランキングの順で比較して決める)」ということで……

 決勝トーナメントに上がる条件はかなり緩くなったと思って間違いないです。
 今までは32チーム中16チームにならなければいけなかったのが、48チーム中32チームに入れば良くなったのですからね。


 逆に言うと、決勝トーナメントの戦い方はガラリと変わります。

 日本の入った「グループF」は1位通過すると、「グループC」の2位のチーム→ 「グループAかB」の2位のチームと戦っていきます。具体的には1回戦が「モロッコ」か「スコットランド」、2回戦が「スイス」「メキシコ」「チェコ」あたりかなぁ。「メキシコ」だったらかなーりイヤですが、それ以外はかなり日本が戦いやすそうな相手。

 2位通過した場合は、「グループC」の1位のチーム→「グループEかI」の2位のチームと戦います。まず1回戦が「ブラジル」、2回戦が「コートジボワール」「セネガル」「ノルウェー」辺り。これは、日本が苦手なタイプのチームばかりのところなので出来れば避けたい!

 3位通過した場合は、どの枠にいくかは分からないのですが……「グループAかBかDかEかI」の1位のチームと戦います。「メキシコ」「スイス」「パラグアイ」「ドイツ」「フランス」辺りで……正直どこの枠に収まるかのガチャになると思います。「フランス」を引き当てたら己の不運を恨みましょう。


 うーん……1位通過すれば、ベスト8までの道筋はかなり見える。
 2位通過だと正直キツイ。ブラジルとのガチンコ対決になる。
 3位通過は運次第で、地獄を見ることもあるけど楽なところに入る可能性もある。


 そう考えると……やっぱりグループリーグで「シード国のオランダに勝てるかどうか」がかなり鍵になりそうですね。オランダは、確か日本が(親善試合とかも含めて)1度も勝っていない相手です。
 前回大会のドイツ戦・スペイン戦のようなミラクルが起こせるのか、6月14日の初戦を心して待ちましょう!

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