
<画像はドリームキャスト用ソフト『シェンムー 一章 横須賀』より引用>
※ この記事は2017年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です
W杯出場枠拡大が決定…FIFA会長はサッカーの発展を強調「多くの国が夢を見られる」
サッカーW杯は2026年の大会から、出場チーム数が現在の32チームから48チームに増え、グループリーグの組分けも現在の「4チームずつ8グループ」から「3チームずつ16グループ」に変わることが決定したそうです。「FIFAが出場チーム数を増やしたがっている」という話は以前から出ていましたが、まさか実現することはないだろうと思っていたので驚いています。
その背景には「FIFAの財政難」があると言われていて、この改革によって
・大会全体の試合数が増えるので、興行収入や放映権収入が増える
・それでいて「1チームあたりの最大試合数」は7のままなので、選手の負担は増えない
・今まではW杯には出られなかったような国と地域にも出場機会が生まれ、新たな市場を開拓できる
といったメリットがあると考えられます。
まずは、現状の32チームの制度―――1998年のフランス大会~2022年のカタール大会までの制度を見てみましょう。
32チームを4チームずつ8グループに分けて総当たりのグループリーグを行います。
どのチームも「3試合ずつ」行って、1つのグループリーグで6試合が行われることになります。2014年のブラジル大会で言えば、日本は「コートジボワール」「ギリシャ」「コロンビア」と対戦しましたね。
グループリーグは8つですから、大会の前半戦となるグループリーグで6×8=48試合が行われることになります。
それらのグループリーグ上位2チームが決勝トーナメントに進むので、決勝トーナメントは16チームで行うことになります。トーナメント戦は「1試合ごとに1チームずつ脱落する」制度ですから全部で15試合、3位決定戦を行う場合は16試合――――グループリーグの48試合と決勝トーナメントの16試合で全64試合という計算になります。
また、決勝戦・3位決定戦まで進む4チームは「グループリーグで3試合」「決勝トーナメントで4試合」戦うことになるので全7試合を行うことになりますね。W杯は開催できる期間が限られているため、試合数が多くなればなるほど「休息日」が減って選手の負担も大きくなって怪我などのリスクも高まるのでこれ以上の試合数にはしたくないでしょう。
次に、出場チームが40チームになっていたら―――という話をします。実はW杯の出場チームの拡大案は、今回正式に決まった「48チーム」とは別に「40チーム」という案もあって、私は「40チーム」の方ならあるかなーと思っていました。
この場合は恐らく、40チームを5チームずつ8グループに分けてグループリーグを行います。どのチームも「4試合ずつ」行って、1つのグループリーグで10試合が行われることになります。
グループリーグは8つですから、大会の前半戦となるグループリーグで10×8=80試合が行われることになります。
それらのグループリーグ上位2チームが決勝トーナメントに進むとすると、決勝トーナメントは16チームで行うことになります。トーナメント戦は「1試合ごとに1チームずつ脱落する」制度ですから全部で15試合、3位決定戦を行う場合は16試合――――グループリーグの80試合と決勝トーナメントの16試合で全96試合という計算になります。
また、決勝戦・3位決定戦まで進む4チームは「グループリーグで4試合」「決勝トーナメントで4試合」戦うことになるので全8試合を行うことになりますね。現状の32チーム制の大会と比べると、1チームあたりの試合数が多くなるんですね。
日本みたいにグループリーグから上に上がれるか微妙なチームからすれば「グループリーグだけで観られる試合が3試合から4試合に増えるのはうれしい!」と思えますが、ベスト4まで進むような強豪チームは疲労や怪我の心配が生まれます。
では、正式に決まった「48チーム」の制度はどうなるのか――――
どうやら48チームを3チームずつ16グループに分けてグループリーグを行うみたい。
どのチームも「2試合ずつ」行って、1つのグループリーグで3試合が行われることになります。
グループリーグは16ですから、大会の前半戦となるグループリーグで3×16=48試合が行われることになります。現状の「32チーム」制度と同じ試合数ですね。
それらのグループリーグ上位2チームが決勝トーナメントに進むとすると、決勝トーナメントは32チームで行うことになります。トーナメント戦は「1試合ごとに1チームずつ脱落する」制度ですから全部で31試合、3位決定戦を行う場合は32試合――――グループリーグの48試合と決勝トーナメントの32試合で全80試合という計算になります。
また、決勝戦・3位決定戦まで進む4チームは「グループリーグで2試合」「決勝トーナメントで5試合」戦うことになるので全7試合を行うことになる―――ということで、決勝まで進んだチームの試合数は現状の「32チーム」制度と変わらず、疲労や怪我などの心配が現状と変わらないということになります。
日本のような「グループリーグで敗退する可能性も高いチーム」からすれば、「今までは最低でも3試合は観られたのが2試合で敗退する可能性が高くなってしまった!」ことが問題ですが。大会全体で考えれば“レベルの低いチームは2試合で帰ってくれる”という考え方もできます。
「48もチームが参加したらレベルが保てないんじゃないのか?」という不安は、逆に考えれば「そういうチームはグループリーグで敗退する可能性が高い」「強豪チームはバラけるのでグループリーグで敗退する可能性が減る」「本番は決勝トーナメントから」と言えますし、そもそも日本は「W杯に出場できるレベルうんぬんかんぬん」を言える立場じゃないですしね。日本がW杯に出場できるようになったのも、出場枠が24チームから32チームに増えてからですし。
……と考えると、この「48チーム案」。
割とよく出来ている案なようにも思えてきました。グループリーグの細かいルールをどうするのかはこれから詰めていかなければなりませんが、大会全体の方向性としては悪くないでしょう。
さて、本題はここから。
今回の改革で私が一番気になったのは、出場国数が変わることではなく「グループリーグごとのチーム数」が変わることでした。「4チームでリーグ戦をして上位2チームに入ること」と「3チームでリーグ戦をして上位2チームに入ること」では、求められる強さが全然変わると私は思うんですね。
現状のルールのまま「グループリーグのチーム数」だけを減らすことは考えられません。
グループリーグのチーム数が偶数になる「32チーム」制度の現状は、そのグループリーグの最終戦は2試合同時キックオフとなっていました。2014年ブラジル大会の日本で言えば、「日本vs.コロンビア」と「ギリシャvs.コートジボワール」は同時キックオフでした。
しかし、「グループリーグのチーム数」が3や5になる場合、全チームの最終戦を同時キックオフには出来ませんから、最終戦が最後に来るチームが有利になるのです。例えば、最終戦を戦う2チームが「引き分けなら両チームとも決勝トーナメントに上がれる」なんてことになったら、2チームが共謀してわざと引き分けにする可能性が出てくるのです。
それを防ぐ一番の手段は「引き分けの廃止」だと思うのですが、そうすると今度はじゃんけんの三すくみのように「全チームが1勝1敗で並ぶ」ケースが多発するように思えます。その場合はPK戦を行うとかFIFAランキングで決めるみたいな案が出ているそうですが、どっちも自分はしっくり来ません。2026年までに、みんながそこそこ納得できる順位決定方法を誰かが思いつくかどうか……
ということで、現状と同じような「勝利で勝ち点3」「引き分けで勝ち点1」「負けは勝ち点0」、「勝ち点の高いチームが上位、それが同じ場合は得失点差で順位を決めて、それも同じなら総得点で順位を決める」というルールのままにはならないと思うのですが……現状と同じルールならばという条件で、「4チームでリーグ戦をして上位2チームに入ること」と「3チームでリーグ戦をして上位2チームに入ること」がどう違うのかを考えていこうと思います。
まずは「4チームでリーグ戦をして上位2チームに入ること」の場合。
・「3勝0分0敗」の成績だと……確実にグループリーグ突破です
・「2勝1分0敗」の成績でも、グループリーグ突破確定です
※ 総得点で2位になる可能性はある
・「2勝0分1敗」の成績だと、計算上は突破できないこともあります
※ 有名なのはアトランタ五輪の時の日本
※ ただし、1998年以降のW杯では発生していないレアケースだそう
・「1勝2分0敗」の成績は、あまり聞かないケースですが敗退もありえます
・「1勝1分1敗」の成績だと、突破の可能性は約50%
・「0勝3分0敗」の成績だと、突破はかなり厳しい
※ 1998年大会のチリなど、2位以内に入れた例もなくはない
・「1勝0分2敗」の成績では、理論上は突破できるケースもなくもないです
・「0勝2分1敗」の成績でも、ごくごく稀に突破できることがあります
※ 24チーム制度でしたが、2005年のワールドユースの日本はこの成績でグループリーグ2位になっています
勝ち点9~7なら確実。(「3勝0分0敗」「2勝1分0敗」)
勝ち点6~4なら得失点差・総得点次第。(「2勝0分1敗」「1勝2分0敗」「1勝1分1敗」
勝ち点3~2は、よほど運が良ければ。(「0勝3分0敗」「1勝0分2敗」「0勝2分1敗」)
ってところですね。
基本的には、「1勝は必ずしなければならない」。
「残りの2試合は相手に勝ち点を与えない、無駄な失点をしない」戦い方が重要かなと思います。負けてしまうと「勝ち点3」を相手に献上してしまうので2位狙いに切り替えないといけませんし、その場合は得失点差が重要になりますんで。
では、「3チームでリーグ戦をして上位2チームに入ること」の場合はというと。
・「2勝0分0敗」の成績なら、確実にグループリーグ突破です
・「1勝1分0敗」の成績でも、確実にグループリーグ突破です
・「1勝0分1敗」の成績の場合は他チームの状況次第
・「0勝2分0敗」の成績だと、総得点が多ければグループリーグ突破です
・「0勝1分1敗」の成績だと、得失点差次第ではグループリーグ突破です
「1勝0分1敗」のケースだと……
例えばブラジルとかドイツみたいな「強豪国」が2連勝してくれて、それに劣る2チームが「1勝」を賭けて戦って勝った「1勝0分1敗」ならグループリーグ突破になります。
1位 「2勝0分0敗」← 突破!
2位 「1勝0分1敗」← 突破!
3位 「0勝0分2敗」
しかし、3チームの力が拮抗していて、じゃんけんの3すくみのように「グーはチョキに勝つがパーに負ける」「チョキはパーに勝つがグーに負ける」「パーはグーに勝つがチョキに負ける」状況になると3チームが「1勝0分1敗」に並ぶことになります。その場合は、得失点差・総得点で決まるのでややこしくなります。
1位 「1勝0分1敗」← 突破!
2位 「1勝0分1敗」← 突破!
3位 「1勝0分1敗」
「0勝2分0敗」のケースだと、残りの試合次第です。
例えば「ブラジル、ドイツ、日本」というグループリーグの組分けになった場合、日本が死にもの狂いブラジル戦もドイツ戦も引き分ければ、ブラジルとドイツの試合で勝った方が突破、負けた方が敗退となります。ここでは仮にブラジルが勝ったとしますか。
1位 ブラジル「1勝1分0敗」← 突破!
2位 日本「0勝2分0敗」← 突破!
3位 ドイツ「0勝1分1敗」
つまり、「3チームでリーグ戦をして上位2チームに入ること」ならば1敗もしなければ1勝しなくても突破できるのです。このルールだと、恐らく現状の「4チームでリーグ戦をして上位2チームに入ること」のルールよりも「引き分け狙いのチーム」が増えるんじゃないかと思います。
ただし、この「0勝2分0敗」狙いにも落とし穴があって……3チームが「0勝2分0敗」に並んだ場合は総得点で順位が決まるため、最後に試合をする2チームが共謀する危険性が生まれます。
1試合目は日本が死にもの狂いでブラジルと0-0で引き分けた、2試合目も日本が死にもの狂いでドイツと0-0で引き分けた、3試合目はブラジルとドイツの試合ですが「負けたらグループリーグ敗退」になるので両チームが共謀してわざと1-1で引き分けることにした―――というケースが起こると日本は敗退です。最終戦を戦わないチームがすっごく不利なんですね。
1位 ブラジル「0勝2分0敗 総得点1」← 突破!
1位 ドイツ「0勝2分0敗 総得点1」← 突破!
3位 日本「0勝2分0敗 総得点0」
ということで、3チームでグループリーグを行う場合は「引き分けを廃止」「90分で決着がつかなければPK戦で勝敗を決める」とかに変わるんじゃないかと思いますし、そうなると「PK戦の強いチームが同点のままPK戦に持ち込んで勝つ」みたいな試合がグループリーグから増えるんじゃないかと危惧しています。それならもう、最初からトーナメントにしちゃってもイイんじゃなかろうか……
ということで私、今回の「48チーム案」を聞いて最初に思ったのは「つまんない大会になりそうだなー」でした。今までW杯に出られなかったようなチームが出ることでレベルが下がるとか、弱いチームは2試合で大会を去らなければならないとかは別にイイんですけど、全体的に「引き分け狙い」「PK戦狙い」の守備的な戦い方をするチームが増えるだろうなーと思いました。
いや、「守備的な戦い」を面白いと思う人もいらっしゃるでしょうけど(笑)。
私は点がバカスカ入るような試合が好きなので、自分が面白いと思うような大会にはならないだろうなーと……今のうちから寂しく思っています。9年も後の話ですけど。生きているかな、私……
―2025年追記―
ここまで記事をマジメに読んで下さった方々には申し訳ないんですが……
ここまで記事をマジメに読んで下さった方々には申し訳ないんですが……
この時は「3チームごとにグループリーグを分ける」と言っていた2026年大会ですが、2023年に「やっぱり4チームずつのままにするよ」と路線が変更されました。
48チームを4つずつ12グループに分けて、4チーム中上位2チーム(計24)+12グループの3位の中から成績上位8チーム(恐らくは勝ち点の多い順)=32チームが決勝トーナメントに進出するという形式になるみたいです。
今までの話は何だったの!?と思われるでしょうが、要はこの記事で私が懸念していたようなことをFIFAも考えたのだと思います。つまんない大会にはならなさそうで良かった!
試合数を考えてみると……
48チームを4チームずつ12グループに分けて総当たりのグループリーグを行います。
どのチームも「3試合ずつ」行って、1つのグループリーグで6試合が行われることになります。
グループリーグは12コですから、大会の前半戦となるグループリーグで6×12=72試合が行われることになります。
それらのグループリーグ上位2チーム+8チームが決勝トーナメントに進むので、決勝トーナメントは32チームで行うことになります。トーナメント戦は「1試合ごとに1チームずつ脱落する」制度ですから全部で31試合、3位決定戦を行う場合は32試合――――グループリーグの72試合と決勝トーナメントの32試合で全104試合という計算になります。おぉぉ……試合数が多い!放映権! 放映権!
どのチームも「3試合ずつ」行って、1つのグループリーグで6試合が行われることになります。
グループリーグは12コですから、大会の前半戦となるグループリーグで6×12=72試合が行われることになります。
それらのグループリーグ上位2チーム+8チームが決勝トーナメントに進むので、決勝トーナメントは32チームで行うことになります。トーナメント戦は「1試合ごとに1チームずつ脱落する」制度ですから全部で31試合、3位決定戦を行う場合は32試合――――グループリーグの72試合と決勝トーナメントの32試合で全104試合という計算になります。おぉぉ……試合数が多い!放映権! 放映権!
また、決勝戦・3位決定戦まで進む4チームは「グループリーグで3試合」「決勝トーナメントで5試合」戦うことになるので全8試合を行うことになりますね。W杯は開催できる期間が限られているため、試合数が多くなればなるほど「休息日」が減って選手の負担も大きくなって怪我などのリスクも高まるので、ベスト4に進んだチームは大変そうです。
【試合数の比較】
・今までの32チーム制の大会
大会全部で64試合 上位まで進んだチームは全7試合を戦う
・没になった40チーム制の大会
大会全部で96試合 上位まで進んだチームは全8試合を戦う
・没になった3チームずつのグループに分ける48チーム制の大会
大会全部で80試合 上位まで進んだチームは全7試合を戦う
・採用されたチームずつのグループに分ける48チーム制の大会
大会全部で104試合 上位まで進んだチームは全8試合を戦う
選手の疲労とか怪我のリスクは無視して、FIFAが一番儲かる方式に決まった……という気がしなくもない
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