「バトルロイヤル」のブームは、ゲームの歴史の中でどんな意味を持つのか

※ この記事は2018年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です


 「バトルロイヤル」というジャンルのゲームが人気です。


<画像はNintendo Switch版『フォートナイト バトルロイヤル』より引用>

・オンライン上に集められた同時接続のプレイヤーが多数(例えば100人とか)
・そこそこの広さを持ったフィールドを舞台に(例えば孤島とか)
・全員ほぼ丸腰の状態から始まり、現地で武器やアイテムを集めて
・最後の1人になるまで戦う(チーム戦やコンビ戦もある)


 定義としてはこんなカンジですかね。
 元々は、2012年~2013年頃にサンドボックスゲームである『Minecraft』やFPSである『ARMA2』用に作られた改造データMODが始まりらしいですね。要は「それ用に作られたワケではないゲームを、変わったルールで遊ぼう」から発展していったとか。

 2017年3月、バトルロイヤル用に作られたゲーム『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』(以下『PUBG』)の早期アクセス版がSteamで配信開始になり、瞬く間に話題になりました。
 2017年9月、既に早期アクセス版がリリース中だった『Fortnite』に「Battle Royale」のモードが追加され、日本版は『フォートナイト バトルロイヤル』として2018年3月に配信開始されました。サッカーW杯の決勝でゴールを決めた選手がこのゲームのエモートダンスを踊ったことでも話題になりましたね。
 2017年11月にはスマホで遊べる&基本無料で遊べる『荒野行動』が配信開始になって、(『PUBG』に似ていることで)著作権侵害の訴訟なんかもありましたが、こちらも大人気になりました。


 私は「3Dアクションゲームが嫌い」「オンラインゲームが嫌い」「そもそも対戦ゲームが嫌い」な人間なので、この「バトルロイヤル」のブームにもさほど興味はなかったのですが……
 たまたま『フォートナイト バトルロイヤル』をフレンドと一緒に生配信で遊んで、その後もチラホラ一人で遊んで、「なるほど、これは流行るのも分かるわ」と思いましたし、10年以上ブログで「ゲームについて」語ることをライフワークとしてきた身としては語っておかなくちゃいけないと思いました。


 「ゲーム」を「遊び」と捉えたなら、これは「遊びとしてのゲーム」の進化の最先端だと思うんですね。正直「語るのは今更なのでは?」とも思ったのですが、来年よりかは2018年の今語っておいた方がイイだろうと思って、今現在でも「バトルロイヤル」のゲームに全然興味がない人にも説明しておきたいと思ったので書いておきます。



◇ 「オープンワールド」のその先

<画像はNintendo Switch版『フォートナイト バトルロイヤル』より引用>

 「バトルロイヤル」というゲームのジャンルが生まれる前から、「最後の1人になるまで戦う」というゲームはたくさんありました。それこそ『ストリートファイターII』のような格闘ゲームだって「最後の1人になるまで戦う」ゲームですからね。

 「2人中最後の1人」ではバトルロイヤルとは思えないというのなら、例えば『スマッシュブラザーズ』をストック制で遊んだならバトルロイヤルと言えますし、『ダウンタウン熱血行進曲』の「勝ち抜き格闘」やPCエンジン版の『ボンバーマン』なんかは元祖バトルロイヤルと言えるかも知れません。「勝ち抜き格闘」を元祖と言うなら、『熱血高校ドッジボール部』の「クラブ活動」の方が先か。
 初期のFPSと言える90年代初頭の『DOOM』なんかの時代には既に「デスマッチ」のモードがありましたし、『マリオカート』シリーズにも「レースの勝敗を競う」のではない「バトルモード」がありましたし……「生存競争」というか「殺し合い」というのは、対戦ゲームに当たり前に導入されてきた概念だと思います。


 ただ、この記事で言う「バトルロイヤル」のジャンルはそうしたものとはちょっと違っていて、「そこそこの広さを持ったフィールドを舞台に」していることにこそ特徴があるのです。


<画像はNintendo Switch版『フォートナイト バトルロイヤル』より引用>

 「バトルロイヤル」のゲームのフィールドは、例えば「一つの島」のようにそこそこ広大で、家もあれば山もあります。家の中には入ることが出来て、その中でアイテムを物色したり、その中で敵を待ち伏せたりも出来ます。山の上に登って、上から敵を狙撃することももちろん可能です。
 例えば「100人」のような大人数が同時接続して遊ぶオンラインゲームなので、当然「家の中に入るだけでNOW LOADING……になる」といったこともなく、試合開始から試合終了までシームレスに進行していきます。



 つまり、ゲームの文法としては「オープンワールド」のゲームなんです。

 「オープンワールド」のゲームとは……という話をすると、また一つ記事を書かなくちゃならなくなってしまうのですが(笑)。簡単に言うと、1999年のドリームキャスト用ソフト『シェンムー』や2001年のプレイステーション2用ソフト『グランド・セフト・オートIII』あたりを始祖とした、予めローディングされた3D空間で(比較的)自由に遊べるゲームといったところでしょうか。

 ある程度のマシンスペックを必要とするためXbox360・PS3時代にどんどん増えてきて、2010年代になると「猫も杓子もオープンワールド」といったカンジのトレンドになっていきました。
 元々はオープンワールドではない日本製の人気シリーズも、『メタルギアソリッド』は2014年の『V』で、『ファイナルファンタジー』は2016年の『XV』で、『ゼルダの伝説』は2017年の『ブレスオブザワイルド』で、『真・三國無双』は2018年の『8』で、それぞれオープンワールド化しました。

 しかし、そもそも「オープンワールド」の定義自体が「予めローディングされた3D空間で(比較的)自由に遊べるゲーム」といったようなふわっとしたもので、人それぞれ考える「オープンワールド」の定義もちがったりする中、どんなゲームも「オープンワールド」になれば面白くなるワケではないし、「オープンワールド」のゲームがどれも面白いというワケでもありません。


 「オープンワールド」というのは、言ってしまえば「フィールドをどう表現するか」って手段に過ぎませんからね。
 「ベルトスクロール2Dアクションゲーム」とか「縦スクロール2Dシューティングゲーム」みたいな分類と一緒だと考えれば、「面白いベルトスクロールアクションゲームもあればつまらないベルトスクロールアクションゲームもある」のと同様に「面白いオープンワールドのゲームもあればつまらないオープンワールドのゲームもある」し、「これからはベルトスクロールアクションの時代だ!と、とりあえずでベルトスクロールにしたようなゲームは面白くない」のと同様に「これからはオープンワールドの時代だ!と、とりあえずでオープンワールドにしたようなゲームは面白くない」というのがイメージしやすいでしょう。



 確か『ドンキーコング64』が発売される頃に、宮本茂さんが「『マリオ64』が発売された1996年の頃とちがって、1999年の今はもう“3Dアクションというだけで面白がる時期”は終わった」仰ったみたいな話で―――
 「オープンワールドというだけで面白がってもらえた時代」などとうに過ぎて、「そのオープンワールドでプレイヤーに何をさせたら面白いのか」が重要になっていて、「オープンワールド」なんてものはもはやセールスポイントにならない時代にとっくに突入していて。


 「バトルロイヤル」というのは、そんな「オープンワールド」のゲームが当たり前になった時代に、そこでやったら面白い“遊びのルール”の発明だったんですね。それこそ『ボンバーマン』という元々は1人用のゲームのシステムを使って、5人対戦で遊ぶモードを加えたとか。『ダウンタウン熱血物語』のゲームシステムをそのまま使って、4人で遊べる運動会ゲーム『ダウンタウン熱血行進曲』を作ったみたいなことだと思うんです。
 そもそも始まりが『Minecraft』や『ARMA2』といった「本来はそう遊ぶゲームじゃないゲーム」を、「こうやって遊んだら面白そうじゃん」ってところから生まれたものですしね。

 なので、『フォートナイト』を始めとして「元々はバトルロイヤルのつもりで作っていなかったゲーム」も、その素材とシステムを活かして色んなゲームが次々と「バトルロイヤル」のモードを追加していっているという。
 もちろんプレイヤー数を確保できるのかとか、そもそも“遊びのルール”に著作権はないのかとか、いろんな問題はありますけど……妄想だけで言えば、私も『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』のシステムで「100人のリンクが一斉に降り立って戦うバトルロイヤルのモード」があったらなぁとか考えますもん。回復アイテムを確保するためには料理をしなきゃいけないのだけど料理をすると煙が出て位置がバレるとか、宝箱を取り合うみたいに逃げる鹿を奪い合うみたいな(笑)。


 ゼロ年代~2010年代の「これからはオープンワールドだ!」「とにかくオープンワールドにするんだ!」と広いフィールドを作ることに躍起になっていた時代はもう終わりで、「バトルロイヤル」ブーム以降は「その出来上がった広いフィールドで何をして遊ぶか」を考える時代になっていくんじゃないかと思うんですね。

 「フィールド」を作るのではなく、「遊びのルール」を作る時代だろうと。



◇ 日本では「リアルな銃」のゲームが受けない説

<画像はNintendo Switch版『フォートナイト バトルロイヤル』より引用>

 これもちょうどXbox360やPS3の時代だと思うんですけど、海外ではFPSやTPSといった3Dアクションシューティングがバリバリで大人気なのにも関わらず日本ではほとんど売れなくて―――「開発費が上がったことで海外市場でも売れなければ赤字になっちゃうのに、海外と日本で売れるゲームがちがうのはマズイ!」みたいなことがよく言われていました。

 当時「どうして日本ではFPSやTPSが売れないのか?」という議論の中で、「日本では(アメリカなんかとちがって)銃が身近ではないからだ」という説がありました。剣とか刀を見ると侍の血がたぎるけれど、銃には「なんだかよく分からないけど怖いもの」という畏れがあるというか。迂闊に漫画とかイラストで描くと「この描写はおかしい!銃の構造も知らないで描くんじゃない!」と怒り出す人がいるから、漫画とかイラストに描けなかったりしますもんね。今のはただの恨み言です。
 そのためか、「リアルな銃ではないFPSやTPS」を日本人はこの10年の間にたくさん作ってきたんですよ。世界で人気のFPSやTPSで、それでいて日本人にもなじみのある題材にして、両方で売れるようにしようと目論んだゲームがたくさんありました。


 まずは水鉄砲
 ハドソンが2009年に発売したWiiウェア『バンバン☆キッズ』は、武器が水鉄砲や水風船のFPSでした。今はもうサービス終了していますが、当時は8人までのネット対戦に対応していました。
 今度Nintendo Switch版も出ますが、元々は2011年に発売されたWiiソフト『GO VACATION』には水鉄砲を作ったTPSである「ウォーターガン」というアクティビティがありました。

 あとは、これは別に海外市場を狙ってるワケじゃないと思いますがガンダム系
 2007年の『機動戦士ガンダム MS戦線0079』はWiiリモコンを活かしたFPSでしたし、2008年にはXbox360用のFPS『ガンダム オペレーショントロイ』が発売されました。2006年にアーケードで稼働開始した『戦場の絆』もFPSですし、TPSも含めるなら列挙するのがイヤになるくらいたくさん出てくると思います。「リアル銃に馴染みはないけど、ガンダムならニュータイプの感覚がたぎる」という日本人はたくさんいるでしょうしね。

 FPSというよりかはガンシューティングだと思うんですけど、「銃を他のもので代替しているゲーム」と言えば2011年から続いている『ぎゃる☆がん』シリーズもありますね。眼力(がんりき)によって女の子たちを昇天させていく3Dシューティングゲーム……という説明だけで、フェミニストの人達から怒られそう!



<画像はニンテンドー3DS用ソフト『新・光神話 パルテナの鏡』より引用>

 そんな中、やはり語らなくてはならないのは『新・光神話 パルテナの鏡』です。
 世界的にスーパー大ヒットしていたニンテンドーDSの後継機であるニンテンドー3DSがE3で初お披露目された2010年、3DS専用の新作ソフトとして大々的に取り上げられたのがこのソフトでした。『星のカービィ』や『スマッシュブラザーズ』の作者である桜井政博さんが手がけたTPSです。

 マニアックになりつつあるジャンルを「分解・再構築」することに定評のある桜井さんなので、この作品も既存のFPS・TPSを「分解・再構築」することによって誰にでも楽しめるアクションシューティングの基準になろうとしたところが幾つも垣間見えます。

 一つ目は「操作の簡略化」です。
 右スティックがなかった3DSで遊べるアクションシューティングということで、操作は「スライドパッドで移動」「タッチペンで照準」「Lボタンで攻撃」に限定され、照準はきっちり合わさなくてもイイように補正されています。
 この「操作の簡略化」「正確にエイムしなくても照準を合わせてくれる」というのは、同じ2012年発売のカプコンのTPS『エクストルーパーズ』にも言えることなので、この時代に「日本で売れるFPS・TPSとは」を考えたら似たような結論に達したのかなぁと思ったり。

 二つ目は「アニメのようなキャラクター達」です。
 元々は海外で人気だった『パルテナの鏡』ですが、Wiiの『スマブラX』に出演したことでピット君の知名度は日本でも高くなりました。しかも、CV.が国民的名探偵と同じ人ですからね。パルテナ様、ナチュレ、ブラックピット……と、魅力的なキャラクターがたくさん登場して、シングルプレイの最中にもガンガン話しかけてくるというのは、「ストイックなゲーム」というイメージだったFPSやTPSのハードルを下げて「親しみやすいゲーム」にする狙いがあったんじゃないかと思います。

 プロモーションとしても、Production I.G、STUDIO 4°C、シャフトといった人気スタジオによるアニメ化が行われてニンテンドービデオにて配信されていました。『新パルテナ』について「任天堂が真剣にプロモーションしなかったから売れなかったんだ」みたいに言う人がいますけど、アニメって作るのにむっちゃ金かかるんすよ……そのやり方が正しかったかはともかく、「真剣にプロモーションしなかった」とは私は思わないです。

 そして、これが本題。三つ目が「リアル銃ではない武器」です。
 銃に馴染みのない人には「アサルトライフル」とか「サブマシンガン」とか言われてもさっぱり分かりません。『ドラクエ』やったことない人には「インパス」も「ニフラム」もどんな魔法なのかさっぱり分からないのと同じようなことが、銃にも言えるのです。

 なので、『新パルテナ』ではライフル銃のような「撃剣」、ソケット銃のような「狙杖」、グレネードランチャーのような「爆筒」といったカンジに、『パルテナ』の世界観に合わせたファンタジー武器になっているのです。近接武器も兼ねているので、近接時の攻撃がイメージしやすいというのもポイント。
 まぁ、その結果……「リアル銃」以上に、名前だけ聞いてもどんな武器だか分からないとも思いましたが(笑)。とにかく、このゲームも「銃を他のもので代替しているゲーム」だったんですね。




<画像はWii U用ソフト『Splatoon』より引用>

 そして、2015年にはいよいよ『Splatoon』が出てきます。
 既に次世代機の開発が発表された状態の「負け確定ハード」と言ってイイWii Uで発売されたにも関わらず、国内だけで150万本以上、海外市場も含めれば500万本近く売れた日本製TPSです。続編の『2』はNintendo Switchで発売されたこともあって、国内で既に250万本を突破、海外市場も含めれば650万本以上を売り上げて、今でも売れ続けていますね。間違いなく、最も売れた日本製TPSでしょう。

 操作方法は『新パルテナ』や『エクストルーパーズ』とちがい、「しっかりエイムして照準を合わせなくてはならない」のですが。ジャイロセンサーによってスティックエイムが出来ない人でも直感的に操作ができる上に、ブキがインク銃のため外れても地面が塗られて相手を追い詰めることにつながるというのが特徴ですね。
 発射するのがインクなこともあって、ブキももちろん「リアルな銃」とは程遠く、水鉄砲のようなもの、筆のようなもの、バケツのようなもの……銃に詳しくない日本人どころか、子供にも馴染みのあるものなのも特徴ですね。


 『バンバン☆キッズ』が元々ある「FPS」の武器をただ水鉄砲に替えたことだったり、『新パルテナ』が元々ある「TPS」の操作を簡略化させたことだったりに対して。
 『Splatoon』は、単にブキをインク銃に替えてジャイロ操作に対応しただけでなく、「インクの塗り合い」によってそれまでのFPSやTPSにはなかった“新しい遊びのルール”を生み出したのが大きいと思うのですが……今日の記事の主題ではないので、この辺にしておきます。




 とまぁ、こんな風に……この10年間、日本人は「日本で受けるFPS・TPS」を生み出すべく「リアルな銃ではない武器で戦うFPS・TPS」を作り続けてきて、実際に『Splatoon』みたいに「日本で大ヒットしたTPS」が出てきたワケなのですが。


<画像はNintendo Switch版『フォートナイト バトルロイヤル』より引用>

 今、日本でも大人気の「バトルロイヤル」のゲームって、「リアルな銃で戦うFPS・TPS」なんですよね。

 近接武器がないワケでもないですが、『PUBG』も『フォートナイトバトルロイヤル』も『荒野行動』も、主な武器は「アサルトライフル」「ショットガン」「スナイパーライフル」「サブマシンガン」といったリアル銃ですからね。

 オイ!誰だよ!
 10年くらい前に「日本でFPSやTPSが売れないのは、日本では(アメリカなんかとちがって)銃が身近ではないからだ」とか言ってたヤツらは!
普通に大人気になってるじゃねえか!何のために10年間、日本の色んな企業が「リアルな銃ではない武器で戦うFPS・TPS」を作ってきたんだよ!


 もちろん「バトルロイヤル」のゲームの魅力は、「相手に見つからないように隠れる」ことだったり「フレンドと一緒に広大なフィールドを探索する」ことだったりするので、純粋なFPSやTPSとは言えないとは思うのですが……
 例えば、今週のゲーム売上ランキングを見ても分かるように、戦争をテーマにしているFPS『コール オブ デューティ』でも日本だけで初週20万本とか普通に売り上げるようになっているんですよね。『コール オブ デューティ』最新作には「バトルロイヤル」的なモードが入っているらしいのですが、前作の初週売上も20万本を越えているので「バトルロイヤルだから売れた」というワケでもなさそうですし。


 要は、10年前は「日本でFPS・TPSが売れないのはどうしてだ!これでは日本のメーカーが海外から遅れていってしまう!」みたいに言われていましたけど、今は「日本でもFPS・TPSが普通に売れるようになった」だけだと思うんですね。「リアルな銃」とか、「日本人の侍の血」とか、全然関係なかったんです。
 日本サッカーが海外に勝てなかった時代、「日本人は農耕民族だから狩猟民族の国には敵わないんだ」みたいなことを言う人がたくさんいたように―――上手くいかないことは全部「日本人の国民性のせい」にしてしまえば、誰も責任とらなくていいよねってヤツですよ。


 でも、ここから先はもう言い訳が効きません。
 日本でも「バトルロイヤル」のゲームが大人気になった以上、これから先「リアルな銃のゲームは日本では受けない」なんて言っても鼻で笑われるだけです。国民性なんて言い訳にならない――――それを証明してくれたのが、「バトルロイヤル」のブームだと私は思うのです。



◇ 「オンライン」必須のゲームがヒットする時代

<画像はNintendo Switch版『フォートナイト バトルロイヤル』より引用>

 「バトルロイヤル」のゲームは大人数(例えば100人とか)で対戦するのが特徴なので、同じようなことをローカルプレイで実現させようとしたら相当大変です。学校で考えると、「一学年全員で行う行事」みたいなことですからね。

 ゲームがオンラインに繋がっていることが前提のゲームデザインなんですね。

 この、「ゲーム」と「オンライン」の歴史は旧ブログで繰り返し語ってきたことでした。


 例えば、2008年の記事では当時最も普及していたと思われるゲーム機ニンテンドーDSで、オンライン対応のタイトルであってもオンライン接続率が3割に届かなかったという記事を書きました。オンラインにつなげられるゲーム機が普及しても、わざわざオンラインにつなげないって人が過半数だったんですね。

 そして、そこから4年後の2012年には、時代はニンテンドー3DSの時代になっていて、3DSを外に持っていってつなげる「ニンテンドーゾーン」を展開したからなのか3DSのオンライン接続率は6割を超えていたそうです。コメント欄に寄せられていた話だと、「6割というのはPS3やXbox360より高い」「ただ、バリバリに3DSでオンライン対戦をしているのは1~2割では」という意見もありました。

 インターネットでゲームについて語っているとついつい「みんながインターネットにつながっている」ものだと思ってしまうのだけど、実際には家にインターネット回線がない人とか、回線があってもつなげていない人とかいるんですよね。
 同じ2012年にオンライン専用タイトルと言って良い『ドラゴンクエストX』が発売されるのですが、「オンラインになってしまったのは残念」とか「オンラインだから遊ばない」という声もたくさんありました(もちろん元々「1人で遊べるゲーム」の代表だった『ドラクエ』がってのも大きいですし、月額課金に対する抵抗も大きかったのでしょうが)。


 「フレンド以外との通信プレイ」を解禁した任天堂の未来は

 接続率の話じゃないけどこんな記事も。
 Wii U発売直後の2013年の記事ですね。任天堂はDS・Wiiの時代までは「フレンド」と「フレンド以外」のオンラインプレイを区別していたけど、徐々に「フレンド以外」ともいろんなことが出来るようになって、その集大成がMiiverseだよねって記事でした。ゲーム機をオンラインに接続しても出来ることが少なければ接続する人は増えない―――と、いろんなことが出来るようになりました。

 具体的な数字は分かりませんが、その成果なのか2014年5月の決算説明会で「3DSやWii Uのオンライン接続率」が過去のハードに比べて相当高くなっていることが語られています。

 そして、この1年後――――ほぼ「オンライン必須タイトル」とも言える『Splatoon』が発売されて、日本だけで150万本を売り上げます。しかし、このソフトが開発できた背景には「Wii Uのオンライン接続率が高かった」ことと、「オンラインに接続するからこそ面白いゲームが求められていた」ことの両方があると思うんですよねぇ。「もしWii Uのロンチタイトルに『Splatoon』があれば」なんてことを私も言ってしまったことがあるのですが、Wiiの頃のオンライン接続率のデータだったら開発が進まなかったと思うんです。



 閑話休題。
 「バトルロイヤル」のゲームも「オンライン必須タイトル」ですが、特にそれが障壁になることなく普通に受け入れられています。私はそれにビックリしました。ゼロ年代の頃は、ゲーム機をなかなかオンラインにつなげてもらえなかったり、オンラインゲームに対する偏見も強かったのに。2010年代になったら、「オンライン必須タイトル」でも普通に大ヒットするようになったんだなぁと。

 その理由に関しては、スマホの普及とか、ソーシャルゲームで「オンラインで知らない人とつながること」に慣れたとか、ゲーム実況の隆盛とかで、“インターネットにつながった向こう”との心理的な距離が近くなったからなのかなぁと思います。特に若い世代には、それが普通だって感覚の人が多いでしょうしね。



<画像はNintendo Switch版『フォートナイト バトルロイヤル』より引用>

 敢えてここまで書かなかったんですけど、「バトルロイヤル」のゲームって「1人で100人の中から生き残る」モードだけじゃなくて、「2人で50チームの中から生き残る」モードや「4人で25チームの中から生き残る」モードなんかもあるんです。フレンドと一緒のチームになって遊ぶことも可能なんです。

 私が一番好きなのは「50人vs.50人」のモードです。
 こうなると超大規模なサバゲーみたいなもので、エイムが下手くそな自分でも瀕死になった味方を回復するために走り回って貢献できたりするのが楽しいのです。

―2025年追記―
 『フォートナイトの「50人vs.50人」のモードは期間限定だったのですが、『フォートナイト』実況を見ると一番見るのは「4人で25チームの中から生き残る」モードなんですね。
 4人フレンドを集めている人もいなくはないですが、野良で1人で入って知らない人と4人チームを組んで遊んだり、フレンド2人で入って残り2人は知らない人と組んだり……という遊び方をよく見かけます。



 んで、『荒野行動』はもちろん、『フォートナイト バトルロイヤル』も『PUBG』も、後発でスマートデバイス版が出ているんですね。ゲーム機をオンラインにつなげるかどうかの話をさっきまで書いていて、実際につなげている率は上がっているみたいなのですが、ゲーム機をオンラインにつなげていない人&そもそもゲーム機を持っていない人でもそれらのゲームは遊べるのです。

 スマートフォンは言うまでもなく「どこでも起動できる」し、「どこでもオンラインに接続できる」機械です。
 恐らくですけど、これらのゲームがヒットした要因の一つに「スマホを持ち寄ってその場でみんなで一緒に遊べる」というのもあったんじゃないかと思うんですね。ゼロ年代では「PSPを持ち寄って『モンハン』をみんなで一緒に遊んだ」のと同じようなことで、最近では「スマホを持ち寄って『荒野行動』をみんなで一緒に遊んでいる」のかなぁと。私には友達がいないので分かりませんけど。


 加えて言うと、『荒野行動』や『フォートナイト バトルロイヤル』は「基本無料」で遊べるタイトルです。なので、気軽に友達を誘いやすいですし、異なる機種の友達とも一緒に遊べる「クロスプレイ」が最近ではトレンドになりつつあります。

 ゼロ年代~2010年代と「ゲーム」と「オンライン」の関係性にあれこれ語ってきた私からすると、この「バトルロイヤル」のブームっていろんなことの集大成のように思えるんですね。
 「基本無料」タイトルも、「アイテム課金」だ「ガチャ」だと色々騒いだ果てに「シーズンパス」というシステムにたどり着いたワケですし。
 ゲームハードがどうだとか、スマホとゲーム機は競合するのかとか、“派閥”で争ってきた果てに「どのハードでも一緒にオンラインにつなげて遊べるクロスプレイ」にたどり着いたワケですし。




 そろそろ記事をまとめます。
 
 「オープンワールド」、「FPS・TPS」、「オンライン必須タイトル」

 ゼロ年代の頃には「どうして(日本で)売れないんだ」と言われてきたこれらの要素を持ったタイトルが、2010年代になると「それがもはや当たり前」になりつつあって、それらの要素を全部持っていた「バトルロイヤル」のゲームがブームになるというのは2010年代を締めくくるこのタイミングを象徴するようなヒットのように思えるのです。

 ゲームの歴史の中で、2010年代最大のトピックと言えば『Minecraft』だと思うのですが、そこから生まれたというのも象徴的ですよね。


 そして、「オープンワールド」も「100人同時接続」も当たり前になったこれからの時代、これを基準にゲームが判断されるというのも脅威ですし楽しみでもあります。
 例えば、来年出る『どうぶつの森』はどういう形になるのか?って思うんですよ。「バトルロイヤル」のゲームが100人対戦をやっているのに、『どうぶつの森』で村に遊びに来れるのが自分含めて4人だけとかしょぼくない?みたいに思うんです。いや、100人のフレンドが一斉にウチの村に遊びに来て好き勝手荒らしていったら溜まらないんですけど(笑)、少なくとも前作が出た2012年の頃とは時代がうんと変わってしまったなぁと。


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