※ この記事は2018年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です
この話の「ゲーム以外の話」を掘り下げていきます!
あなたは、「一つのゲーム」を何周もプレイしますか?

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元々は、ファミ通の編集委員だった永田泰大さんと小説家の宮部みゆきさんの対談で、一つのゲームを何周も隅々まで遊びつくしたい「天文学者タイプ」のゲーム好きと、一つのゲームはそこそこに色んなゲームを次から次へと遊びたい「宇宙飛行士タイプ」のゲーム好きがいるよねという話でした。
私は断然「宇宙飛行士タイプ」のゲーム好きで、これまでにも幾度もあった「世間では絶賛されているゲームが自分にはまったく楽しめない」ことの理由がようやく分かったぞ!!と、この話で気付くことが出来たのです。
さて、しかしこの話……別に「ゲーム」に限った話じゃないですよね。
宮部さんは「とある映画にこんなセリフがあったんですよ」と、それをゲームに当てはめて話しただけですから。
私、「ゲーム」に限らず、「漫画」だって「アニメ」だって「映画」だって「小説」だって「音楽」だって―――もっと言うと、「旅行」とか「買い物」とかだって「宇宙飛行士タイプ」なんです。一つのものを味わい尽くすよりも、色んなものに手を出していくのが好きなんです。
でも、「天文学者タイプ/宇宙飛行士タイプ」なんて分類の仕方を考えなかったころは、そうは思えなかったんですね。自分のことを「色んなものに手を出していくのが好きな人間」ではなくて、「飽きっぽい人間」なんだと思っていて、それがコンプレックスでもありました。
例えば、分かりやすい例は「音楽」です。
昔だったらシングルCDとか、今だったら曲単位での配信とか、「この曲が好きだから買おう!」と目当ての曲を購入することがあるじゃないですか。安くないお金を出して買ったのだから、早速聴きます!「最高!よくこんな奇跡の曲が出来たな!」と思います。そのテンションのまま2回目を聴きます!「ふむふむ、やっぱりイイ曲だ」と思います。そのまま3回目を聴きます、4回目を聴きます、5回目を聴くころにはもう飽きちゃっているんです。
1回目を聴いたころには「奇跡の曲」でしたが、再生ボタンを押せば同じものが流れるのですから、5回目のころにはもう「あるのが当たり前なもの」になってしまって1回目のころの感動はなくなってしまっているのです。
だから私は、「どんなに好きな曲でも1日1回しか聴いてはならない」とか「どうしても眠いときにテンションを上げるために1回だけ聴いて良い」とか「10曲通して聴くアルバムだとそこまで飽きないので、プレイリストを作って流れの中で聴く」といったカンジに、飽きない工夫を自分に課してきたほどです。
同じようなことが、「漫画」にも「アニメ」にも「映画」にも「小説」にも言えます。
好きな漫画の新刊を買ってきました!1回目を読みます!超面白い!そのテンションのまま2回目を読みます!さっき気付かなかったことを発見できて面白い!3回目を読みます!もう知ってる話で大した発見もないから面白くない!
こんなカンジで、どんなに楽しんでいるものでも3回目にはもう飽きてしまっているのです。それを防ぐため、私は好きな作品ほど、なるべく「1回目」と「2回目」の間を数か月間空けるとか、「3回目」は忘れたころにするなどの工夫をしてきたのですが……
世の中の人は、「この映画、好きだから20回は観ているよ!」とか「何度も繰り返し読んだ漫画だから全部のセリフを暗記しちゃっているよ!」とか―――「繰り返す回数」で「好きの度合い」を表現する人が多くて、私はそれがコンプレックスだったんです。自分もその映画が好きなのに20回も観たら飽きちゃうから、2回しか観られていない、みたいな。こちとらなるべくセリフを忘れるように忘れるように心がけているのに、あっちの人は覚えていることがとても楽しいことかのように言っている、羨ましい、みたいな。
異常なほどに「飽きっぽい」自分は、みんなのように「作品を好きになること」が出来ないんだと思っていました。
次から次へと新しい惑星に飛び立つように、一つの作品を1回ずつしか読まないように観ないようにして次の作品に飛び立つ姿は……「天文学者タイプ」の人が見たら、「作品に対する愛が足りない」とか「浮気性すぎる」とか「そうやって作品をとっかえひっかえするような男は彼女が出来たとしてもすぐに浮気するんだろうからモテナイんだよ」とか「人生にもさっさと飽きて早く死ねよ」と思うかも知れませんし、思うにちがいないし、実際に言われたこともあるようなないような、あった気がしてきて腹が立ってきました!!
でも、人間には「天文学者タイプ」の人もいれば「宇宙飛行士タイプ」もいるという話を読んで、「好きの度合い」の表現だって「天文学者タイプ/宇宙飛行士タイプ」でちがうよねと考えることが出来るようになりました。
例えば、分かりやすい例は「音楽」です。
昔だったらシングルCDとか、今だったら曲単位での配信とか、「この曲が好きだから買おう!」と目当ての曲を購入することがあるじゃないですか。安くないお金を出して買ったのだから、早速聴きます!「最高!よくこんな奇跡の曲が出来たな!」と思います。そのテンションのまま2回目を聴きます!「ふむふむ、やっぱりイイ曲だ」と思います。そのまま3回目を聴きます、4回目を聴きます、5回目を聴くころにはもう飽きちゃっているんです。
1回目を聴いたころには「奇跡の曲」でしたが、再生ボタンを押せば同じものが流れるのですから、5回目のころにはもう「あるのが当たり前なもの」になってしまって1回目のころの感動はなくなってしまっているのです。
だから私は、「どんなに好きな曲でも1日1回しか聴いてはならない」とか「どうしても眠いときにテンションを上げるために1回だけ聴いて良い」とか「10曲通して聴くアルバムだとそこまで飽きないので、プレイリストを作って流れの中で聴く」といったカンジに、飽きない工夫を自分に課してきたほどです。
同じようなことが、「漫画」にも「アニメ」にも「映画」にも「小説」にも言えます。
好きな漫画の新刊を買ってきました!1回目を読みます!超面白い!そのテンションのまま2回目を読みます!さっき気付かなかったことを発見できて面白い!3回目を読みます!もう知ってる話で大した発見もないから面白くない!
こんなカンジで、どんなに楽しんでいるものでも3回目にはもう飽きてしまっているのです。それを防ぐため、私は好きな作品ほど、なるべく「1回目」と「2回目」の間を数か月間空けるとか、「3回目」は忘れたころにするなどの工夫をしてきたのですが……
世の中の人は、「この映画、好きだから20回は観ているよ!」とか「何度も繰り返し読んだ漫画だから全部のセリフを暗記しちゃっているよ!」とか―――「繰り返す回数」で「好きの度合い」を表現する人が多くて、私はそれがコンプレックスだったんです。自分もその映画が好きなのに20回も観たら飽きちゃうから、2回しか観られていない、みたいな。こちとらなるべくセリフを忘れるように忘れるように心がけているのに、あっちの人は覚えていることがとても楽しいことかのように言っている、羨ましい、みたいな。
異常なほどに「飽きっぽい」自分は、みんなのように「作品を好きになること」が出来ないんだと思っていました。
次から次へと新しい惑星に飛び立つように、一つの作品を1回ずつしか読まないように観ないようにして次の作品に飛び立つ姿は……「天文学者タイプ」の人が見たら、「作品に対する愛が足りない」とか「浮気性すぎる」とか「そうやって作品をとっかえひっかえするような男は彼女が出来たとしてもすぐに浮気するんだろうからモテナイんだよ」とか「人生にもさっさと飽きて早く死ねよ」と思うかも知れませんし、思うにちがいないし、実際に言われたこともあるようなないような、あった気がしてきて腹が立ってきました!!
でも、人間には「天文学者タイプ」の人もいれば「宇宙飛行士タイプ」もいるという話を読んで、「好きの度合い」の表現だって「天文学者タイプ/宇宙飛行士タイプ」でちがうよねと考えることが出来るようになりました。
「天文学者タイプ」の人は何回も何回も繰り返し作品を楽しみますが、「宇宙飛行士タイプ」は「最初の1回」に全力を注ぎます。その「最初の1回」に対する情熱は、決して「天文学者タイプ」の人に負けていないはずです。
というか……ネタバレを気にするか問題も、多分これが根本にあるんですよね。
「天文学者タイプ」の人は作品を何回も何回も噛みしめるように楽しむので、1回目の楽しみを奪うネタバレはさほど気にならないどころか、事前に教えてくれてありがとうくらいに思えるんじゃないかと推測するのですが。
「宇宙飛行士タイプ」の私は「最初の1回」に全力を注ぐので、ネタバレされちゃうと一番重要な「最初の1回」が失われてしまうんですね。既にその作品が客観視された「3回目」くらいの距離感になってしまうので、最初から「もう知ってる話で大した発見もないから面白くない!」となってしまう。
それがどんなにイヤなことなのか言葉を尽くしても分かってもらえなかったのは、「天文学者タイプ」と「宇宙飛行士タイプ」では作品の楽しみ方が根本からちがうってだけの話だと思うんですね。これからは「天文学者タイプ/宇宙飛行士タイプ」という言葉を使って説明しようと思います!
(関連記事:世の中には、「ネタバレをして欲しい人」がいるという大切な事実)
「天文学者タイプ」の人もいれば、「宇宙飛行士タイプ」の人もいる―――そのたった一つのことが分かっただけで、今まで苦しかったこととか、分からなかったことが見えてきて、すごく楽になりました。
ありがとう、永田さんと宮部さん!あなたたちのおかげで私は救われました!10年以上前の本に載った対談のことで、今更そんなこと言われても本人達は覚えていないでしょうけど!
ここまでは「私個人の話」でしたけど、では「みんな」はどうなのかな?という話を書いていきます。
「漫画」や「小説」といった本や、「アニメ」や「映画」といったDVDとか、「音楽」で言えばCDとか……そういった商品としてパッケージングされるものって、基本的には「天文学者タイプ」の人向けの商品だったと思うんですね。
例えば、私は「漫画」を1回しか読まない、とある人は同じ「漫画」を20回読む―――どちらがコストパフォーマンスが高いかというと、20回読む人の方が20倍高いですよね。
もっと単価の高いもので考えると……アニメのDVDが分かりやすいです。
あなたは、「一つのゲーム」を何周もプレイしますか?のコメントでも言われたのですが、アニメのDVDって1巻あたり6000円くらいするし、12話分揃えようとすると3~4万円くらいかかってしまいます。
それを1回しか観ない「宇宙飛行士タイプ」の人と、それを20回観る「天文学者タイプ」の人―――どちらが値段分の元が取れるかを考えると、そういった商品は「天文学者タイプ」に向けたビジネスモデルだと思うんですね。ましてやテレビアニメなんて、「テレビで1回観た」ものを買わせるんですから。
この話題も昔紛糾しましたけど……「オーディオコメンタリーを聴くか」問題というのもありましたよね。
私はこのオーディオコメンタリーが聴けないのです。特に「演出意図」みたいなのは絶対に知りたくない、それを知ってしまったらもう終わりだくらいの感覚です。何も知らない状態でそれを感じるのが楽しいのに―――と。
でも、「天文学者タイプ」の人はオーディオコメンタリーを目当てにDVDを買えるんですよね。骨の髄までしゃぶりつくしたい人からすれば、作り手自らが解説してくれるなんて、喉から手が出るほどありがたいでしょうし。
「作品」を「商品」としてパッケージングして、それを買えば何回でも無限に楽しめる―――こういったビジネスモデルは「天文学者タイプ」の人に向けた形なんです。
じゃあ、「宇宙飛行士タイプ」の人達は“「天文学者タイプ」の人に向けたビジネスモデル”とどう向き合ってきたというと……例えば、ゲームでも漫画でも「遊び終わったらすぐに中古に売る」「読み終わったらすぐに中古に売る」みたいなことをするんだと思うんです。私は作り手側の人間なので、中古は極力使わないようにしていますが……一般的には、「宇宙飛行士タイプ」の人達は「天文学者タイプ」の人に比べて、中古を利用することに抵抗がないんじゃないかと思うのです。
「天文学者タイプ」の人は、ゲームでも本でもDVDでも繰り返し何度も暗記するほど楽しみますから、それをずっと手元に置いておきたいと思うでしょうが。
「宇宙飛行士タイプ」の人は、1回でイイんですもの。1回遊んだり読んだり観たりしたらもう手放しても構わないし、色んな作品に手を出したいのだから、さっさと中古に売っちゃった方が置き場にも財布にも優しいでしょうし。
中古問題はうかつに語ると炎上しかねないのですが、中古を利用する人と利用しない人の軋轢って、この「天文学者タイプ」に向けたビジネスモデルを、裏技のような手ですり抜ける「宇宙飛行士タイプ」という構図が原因じゃないのかと思うんですね。
また、中古ほど議論されませんが、「レンタルDVD」なんかもこれに近い話ですよね。
“「作品」を「商品」としてパッケージングして、それを買えば何回でも無限に楽しめる”というビジネスモデルのDVDを、安価に期間限定で楽しめるビジネスモデルに変えてしまうという―――こちらは「宇宙飛行士タイプ」に向いているので、私も頻繁に使っていました。
しかし、近年では「中古」とか「レンタル」なんてものよりも、もっと更に究極の「宇宙飛行士タイプ」に向けたビジネスモデルが確立されています。それが、「月額いくらを支払っている有料会員なら、○○放題」というサービスです。
映画やアニメだったら、NetflixやHuluとか―――
アニメ特化だったら、バンダイチャンネルやdアニメストアとか―――
音楽だったら、Apple Musicとか―――
雑誌だったら、dマガジンとか―――
Amazonプライム会員はそれだけで、(作品数は他サービスよりも少ないですが)プライムビデオもプライムミュージックもプライムリーディングも利用できるという。
ゲームもそういう流れが出来つつあって、PCゲームのサイトは既にいくつもありますし、PS NowとかPS Plusのフリープレイとかも「月額いくらを支払っている有料会員なら、対象ゲームが遊び放題」と言ってイイと思います。
そう言えば、「5月上旬に発表する」とのことで一両日中に発表されそうなNintendo Switch Onlineも「懐かしいゲームを集めた『クラシックゲームセレクション(仮称)』が遊び放題」みたいな告知もありましたね。
「1つの作品は1周しかしない」「むしろ1周もしないで途中で脱落することもある」「そうしてとにかくたくさんの作品に手を出していきたい」という宇宙飛行士タイプにとっては、この「○○放題」のサービスって夢のようなサービスだと言えるんです。あれもこれもそれも手を出しても、月額いくらを支払っていれば追加料金なし!
今までは“「天文学者タイプ」に向けたビジネスモデル”しかなかった業界に、ようやく“「宇宙飛行士タイプ」に向けたビジネスモデル”が出てきたぞーーーーー!!というのが現在なのです。
まぁ、「夢のようなサービス」過ぎて2ヶ月間でアニメ285話を視聴したみたいな経験も私にはあるので、くれぐれも体に無理のない範囲で楽しんでくださいねとは思うのですが!
んで、こういう「○○放題」のサービスが流行るということは、今までのビジネスモデルでは取りこぼしてきた「宇宙飛行士タイプ」の人間が実は結構いたって話だと思うんですね。それが可視化されたこれからはこの手のサービスはどんどんどんどん増えていくんじゃないかと思いますし、それがいずれ“「天文学者タイプ」に向けたビジネスモデル”を破壊することにもなりかねないのかなぁと思うんです。
ちょっと前のアニメ映画を観返したくなって(2回目)、近所のレンタルDVD屋に行こうかと思ったのですが、調べたらAmazonプライムビデオでも観られるみたいで―――今現在はプライム会員じゃない私ですが、レンタルDVD屋に行って借りてくるくらいなら、1ヶ月だけ400円払ってプライム会員になれば他の作品も観られるなーみたいな発想になっていますからね。
でも、1ヶ月プライム会員になったら、またプライムビデオとプライムミュージックとプライムリーディングを限界まで使い尽くさないと気が済まない1ヶ月が始まってしまう……そう考えると、時間に余裕のあるプロ野球のオフシーズンまで待つべきか。遠いな!
というか……ネタバレを気にするか問題も、多分これが根本にあるんですよね。
「天文学者タイプ」の人は作品を何回も何回も噛みしめるように楽しむので、1回目の楽しみを奪うネタバレはさほど気にならないどころか、事前に教えてくれてありがとうくらいに思えるんじゃないかと推測するのですが。
「宇宙飛行士タイプ」の私は「最初の1回」に全力を注ぐので、ネタバレされちゃうと一番重要な「最初の1回」が失われてしまうんですね。既にその作品が客観視された「3回目」くらいの距離感になってしまうので、最初から「もう知ってる話で大した発見もないから面白くない!」となってしまう。
それがどんなにイヤなことなのか言葉を尽くしても分かってもらえなかったのは、「天文学者タイプ」と「宇宙飛行士タイプ」では作品の楽しみ方が根本からちがうってだけの話だと思うんですね。これからは「天文学者タイプ/宇宙飛行士タイプ」という言葉を使って説明しようと思います!
(関連記事:世の中には、「ネタバレをして欲しい人」がいるという大切な事実)
「天文学者タイプ」の人もいれば、「宇宙飛行士タイプ」の人もいる―――そのたった一つのことが分かっただけで、今まで苦しかったこととか、分からなかったことが見えてきて、すごく楽になりました。
ありがとう、永田さんと宮部さん!あなたたちのおかげで私は救われました!10年以上前の本に載った対談のことで、今更そんなこと言われても本人達は覚えていないでしょうけど!
ここまでは「私個人の話」でしたけど、では「みんな」はどうなのかな?という話を書いていきます。
「漫画」や「小説」といった本や、「アニメ」や「映画」といったDVDとか、「音楽」で言えばCDとか……そういった商品としてパッケージングされるものって、基本的には「天文学者タイプ」の人向けの商品だったと思うんですね。
例えば、私は「漫画」を1回しか読まない、とある人は同じ「漫画」を20回読む―――どちらがコストパフォーマンスが高いかというと、20回読む人の方が20倍高いですよね。
もっと単価の高いもので考えると……アニメのDVDが分かりやすいです。
あなたは、「一つのゲーム」を何周もプレイしますか?のコメントでも言われたのですが、アニメのDVDって1巻あたり6000円くらいするし、12話分揃えようとすると3~4万円くらいかかってしまいます。
それを1回しか観ない「宇宙飛行士タイプ」の人と、それを20回観る「天文学者タイプ」の人―――どちらが値段分の元が取れるかを考えると、そういった商品は「天文学者タイプ」に向けたビジネスモデルだと思うんですね。ましてやテレビアニメなんて、「テレビで1回観た」ものを買わせるんですから。
この話題も昔紛糾しましたけど……「オーディオコメンタリーを聴くか」問題というのもありましたよね。
私はこのオーディオコメンタリーが聴けないのです。特に「演出意図」みたいなのは絶対に知りたくない、それを知ってしまったらもう終わりだくらいの感覚です。何も知らない状態でそれを感じるのが楽しいのに―――と。
でも、「天文学者タイプ」の人はオーディオコメンタリーを目当てにDVDを買えるんですよね。骨の髄までしゃぶりつくしたい人からすれば、作り手自らが解説してくれるなんて、喉から手が出るほどありがたいでしょうし。
「作品」を「商品」としてパッケージングして、それを買えば何回でも無限に楽しめる―――こういったビジネスモデルは「天文学者タイプ」の人に向けた形なんです。
じゃあ、「宇宙飛行士タイプ」の人達は“「天文学者タイプ」の人に向けたビジネスモデル”とどう向き合ってきたというと……例えば、ゲームでも漫画でも「遊び終わったらすぐに中古に売る」「読み終わったらすぐに中古に売る」みたいなことをするんだと思うんです。私は作り手側の人間なので、中古は極力使わないようにしていますが……一般的には、「宇宙飛行士タイプ」の人達は「天文学者タイプ」の人に比べて、中古を利用することに抵抗がないんじゃないかと思うのです。
「天文学者タイプ」の人は、ゲームでも本でもDVDでも繰り返し何度も暗記するほど楽しみますから、それをずっと手元に置いておきたいと思うでしょうが。
「宇宙飛行士タイプ」の人は、1回でイイんですもの。1回遊んだり読んだり観たりしたらもう手放しても構わないし、色んな作品に手を出したいのだから、さっさと中古に売っちゃった方が置き場にも財布にも優しいでしょうし。
中古問題はうかつに語ると炎上しかねないのですが、中古を利用する人と利用しない人の軋轢って、この「天文学者タイプ」に向けたビジネスモデルを、裏技のような手ですり抜ける「宇宙飛行士タイプ」という構図が原因じゃないのかと思うんですね。
また、中古ほど議論されませんが、「レンタルDVD」なんかもこれに近い話ですよね。
“「作品」を「商品」としてパッケージングして、それを買えば何回でも無限に楽しめる”というビジネスモデルのDVDを、安価に期間限定で楽しめるビジネスモデルに変えてしまうという―――こちらは「宇宙飛行士タイプ」に向いているので、私も頻繁に使っていました。
しかし、近年では「中古」とか「レンタル」なんてものよりも、もっと更に究極の「宇宙飛行士タイプ」に向けたビジネスモデルが確立されています。それが、「月額いくらを支払っている有料会員なら、○○放題」というサービスです。
映画やアニメだったら、NetflixやHuluとか―――
アニメ特化だったら、バンダイチャンネルやdアニメストアとか―――
音楽だったら、Apple Musicとか―――
雑誌だったら、dマガジンとか―――
Amazonプライム会員はそれだけで、(作品数は他サービスよりも少ないですが)プライムビデオもプライムミュージックもプライムリーディングも利用できるという。
ゲームもそういう流れが出来つつあって、PCゲームのサイトは既にいくつもありますし、PS NowとかPS Plusのフリープレイとかも「月額いくらを支払っている有料会員なら、対象ゲームが遊び放題」と言ってイイと思います。
そう言えば、「5月上旬に発表する」とのことで一両日中に発表されそうなNintendo Switch Onlineも「懐かしいゲームを集めた『クラシックゲームセレクション(仮称)』が遊び放題」みたいな告知もありましたね。
「1つの作品は1周しかしない」「むしろ1周もしないで途中で脱落することもある」「そうしてとにかくたくさんの作品に手を出していきたい」という宇宙飛行士タイプにとっては、この「○○放題」のサービスって夢のようなサービスだと言えるんです。あれもこれもそれも手を出しても、月額いくらを支払っていれば追加料金なし!
今までは“「天文学者タイプ」に向けたビジネスモデル”しかなかった業界に、ようやく“「宇宙飛行士タイプ」に向けたビジネスモデル”が出てきたぞーーーーー!!というのが現在なのです。
まぁ、「夢のようなサービス」過ぎて2ヶ月間でアニメ285話を視聴したみたいな経験も私にはあるので、くれぐれも体に無理のない範囲で楽しんでくださいねとは思うのですが!
んで、こういう「○○放題」のサービスが流行るということは、今までのビジネスモデルでは取りこぼしてきた「宇宙飛行士タイプ」の人間が実は結構いたって話だと思うんですね。それが可視化されたこれからはこの手のサービスはどんどんどんどん増えていくんじゃないかと思いますし、それがいずれ“「天文学者タイプ」に向けたビジネスモデル”を破壊することにもなりかねないのかなぁと思うんです。
ちょっと前のアニメ映画を観返したくなって(2回目)、近所のレンタルDVD屋に行こうかと思ったのですが、調べたらAmazonプライムビデオでも観られるみたいで―――今現在はプライム会員じゃない私ですが、レンタルDVD屋に行って借りてくるくらいなら、1ヶ月だけ400円払ってプライム会員になれば他の作品も観られるなーみたいな発想になっていますからね。
でも、1ヶ月プライム会員になったら、またプライムビデオとプライムミュージックとプライムリーディングを限界まで使い尽くさないと気が済まない1ヶ月が始まってしまう……そう考えると、時間に余裕のあるプロ野球のオフシーズンまで待つべきか。遠いな!
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