※ この記事は2018年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です
今日の話は「ゲーム以外の話」に持っていっても面白そうなのですが、一つの記事には収まりきらないと思ったので「ゲーム以外の話」は別の記事に書くとして、今日は「ゲームの話」に限定して書きます。

<Amazonアフィリエイトリンク>
バレンタインのプレゼントでもらった『ゲームの話をしよう』という本の第3集を読み終わりました。この本は、ファミ通の編集委員だった永田泰大さんがファミ通に連載していたインタビュー記事をまとめた本です。ゲームについて色々な人にインタビューをするのだけど、その相手が宮本茂さんや堀井雄二さんといった超大物有名ゲームクリエイターから、ただの小学1年生まで様々なのが面白い!
この本一冊で語りたいことが山ほど出てくるのですが……その中でも、これは今の自分が語らなくてはならないと思ったことがあるので取り上げます。
それは、ゲーム好きで知られる小説家の宮部みゆきさんのインタビューです。
宮部さんと永田さんは、ゲームの遊び方がものすごく正反対というところから話が始まります。
曰く、宮部さんは「一つのゲーム」を何周も何周も遊ぶそうなんです。
1周目をクリアしたら、その日の内に2周目を始めて、後日詳細な攻略本が発売されたらそれを片手に3周目を始める―――と、よほど合わないゲームでなければ「少なくとも3周」遊ぶのが普通だそうなんですね。一番多くクリアしたゲームはなんと15周半も遊んだとか、しかも短いアクションゲームとかじゃなくて『タクティクスオウガ』をですよ!
攻略本もじっくり読むし、大好きなシリーズ作品が出るときは他の作品をまた引っ張り出してきて遊んだりするそうな。とにかく「一つのゲーム」を骨の髄までしゃぶりつくすように遊ぶそうなんです。
それに対して永田さんは、どんなに好きなゲームも1周で終わりだそうです。自分が観たのとはちがうエンディングがあるからもう1周するかと言われても、やらない。1周が終わったらもう次のゲームに行ってしまう。それは別に「好き度合いが足りない」とかではなくて、「好きだからこそ封印する」カンジにもう遊ばなくなるそうです。
この二人のスタンスのちがいを、宮部さんはとある映画から拝借して「天文学者タイプ」と「宇宙飛行士タイプ」と表現していました。
前者は一つのものをとことん観察するタイプで、「条件が変わるとどう変化するだろう」みたいなことを全部調べるのが楽しい&調べないと気がすまないそうで。
後者は次から次へと「自分が知らないところ」に行きたがるタイプで、月に着いたら次は火星、火星に着いたら次は木星、その次は土星と旅に出る一方、一つのところにはあまり留まらないという。
つまんない日本語で表現しちゃうと「狭く深く」か「広く浅く」かの二分化となっちゃうのですが、「天文学者タイプ」と「宇宙飛行士タイプ」と表現するとロマンがあるし実感も湧きますよね。
オマエは「広く浅く」の人間だな!なんて言われたら悪口言われてるみたいに思うけど、キミは「宇宙飛行士タイプ」なんだね!と言われたらなんだか褒められている気分になれます。そうなんだ、私達はゲームという無限にある星から星へと渡り歩く宇宙飛行士なんだ!
◇ 何故、私は「2周目」が楽しめないのか
ということで、私は「宇宙飛行士タイプ」です。
昨年作った「今までに遊んだゲーム」リストによると、私はこれまで338本のゲームをクリアしているそうなんですが、最初から最後まで2周以上クリアしたゲームは数えるほどです。『脳トレ』みたいに同じトレーニングを繰り返すゲームとか、格ゲーみたいに毎回最初から始まる対戦を何回も遊ぶものとか、周回プレイを重ねることで新しいルートが開けるノベルゲームとかは別としてね。
2周クリアしたゲームで一番最近出たゲームは……Wii Uの『クニットアンダーグラウンド』で、これは1周プレイしただけだと分からなかったストーリーを確認するためにMiiverseに記録しながら2周遊びました。
その前が多分、DSiウェアの『ラビ×ラビ』『ラビ×ラビ2』です。これはDSiウェアを3DSに移すとセーブデータが消えてしまうため、仕方なく2周クリアしたんだったはず。
あとはDSの『Newマリオ』は、実機で1回クリアして、最近になって生配信で「Bダッシュ&壁キックなし」という検証プレイをしました。
その前が……多分『ファイナルファンタジーIX』なので。
21世紀になってからのゲームでは4本だけですね、私が2周クリアしたゲームって。
この話を「天文学者タイプ」の人が読んだら、「ゲームに対する愛が足りない」とか、「何にも一生懸命になれない中途半端なやつ」とか、「ヲタクはそうやって嫁をとっかえひっかえするような生き方をしているからモテナイんだ」とか、ボロクソに言うかも知れませんけど……それは「宇宙飛行士」と「天文学者」のどちらが宇宙を愛しているのかという話で、愛し方がちがうだけだと私は思います。
「一つのゲームを何周も遊ぶ時間がない」とか「107本も積みゲーがあればそりゃ2周遊ぶ余裕もないよね」とかも言えるんですけど、私これって子どもの頃からそうだったんですよ。時間を持て余していて、ゲームなんて半年に1本くらいしか買えなかった子ども時代から、私は「ゲームの2周目」が楽しめませんでした。
RPGとか、2周目は「別のキャラ使ってみよう」とか「別の育て方をしてみよう」とか始めてはみるのだけど……1周目に比べて全然楽しくなくて、途中で飽きてやめてしまうのです。
一つ目の理由としては、「この先起こることが全部ネタバレされている」ので新鮮な楽しみがないということがあります。ただ、じゃあ「2周目は全然ちがうプレイをすれば楽しいんじゃない?別のキャラを使うとか、別の育て方をするとか」というと、そうでもなくて……二つ目の理由として、「1周目のプレイをなかったことにしたくない」というのがあるんです。
例えば、「とある味方キャラが死んでしまう」のだけど「プレイによっては生き残らせることもできる」RPGがあったとして―――1周目で死なせてしまったら、私にとっては「死なせてしまった1周目」が正史なのです。2周目をやり直して「生き残らせた」としても、それは所詮ifの歴史というカンジがしてしまうのです。
『ガンダム』のゲームで「ガルマ・ザビが死ななかったルート」とか、『ダンバイン』のゲームで「ショウ・ザマがドレイク軍についたままのルート」が体験できても、でもそれは正史じゃないよねみたいな感覚なのです。
例えば、私「ギャルゲーの2周目」ってあまりやりたくないんですよ。
1周目、たくさんいる女のコの中から「一番好みのコ」を悩んで選ぶじゃないですか。んで、無事にそのコと結ばれるエンディングを迎えるじゃないですか。その次に、2周目を始めて「じゃあ次は二番目に好みだったコを攻略しようっと」なんて思えないんですよ!1周目で結ばれた「一番好みのコ」が、すっかりモブになっちゃうと「あれ?俺達こないだ結ばれたはずなのに、なんでもうそんなそっけないの?」となっちゃうんですよ。「一番好みのコ」と元カノみたいな疎遠な関係になってまで、「二番目に好みだったコ」を攻略なんかしたくないですよ!
「全ヒロインを攻略しないと真のエンディングへのルートが解放されないんですよ」とか言われても、俺は真のエンディングなんかよりも「一番好みのコ」と幸せな未来を築きたかったんだ――――!
という話だと、割と理解してくれる人もいるかなと思うのですが。
私の場合は更に厄介なことに、「1周目が誰とも結ばれない孤独エンディング」で終わってしまっても、2周目をあまりしたくないんですね。何故なら「誰とも結ばれない孤独エンディング」がこのゲームの正史になってしまうから。
2周目をやり直して「一番好みのコ」と結ばれるエンディングに到達しても、タイムリープを繰り返して自分の都合のイイように歴史を改竄しているような感覚になってしまうのです。
俺が歴史を改竄して幸せになったことで、どこかの誰かが不幸せになってしまったのかも知れない……!
「ということは、テメーはコンティニューとかもしねえんだろうな!」とイジワルなことを言ってくる人もいそうですが、実はそういう気持ちもちょっとあります。RPGの終盤とかでものすごい盛り上がったイベントシーンの後のボス戦で負けてゲームオーバーになると、コンティニューしてまた同じイベントシーンを観るの申し訳なくなるんですよ。「本当はもう負けたのに死に戻りして勝つまでやり直すなんて卑怯だよな」みたいな気分になります。
だから、本音を言うと「1回でもゲームオーバーになったらその場でそのゲームをやめたい」のです(笑)。そうするとほとんどのゲームが序盤で終わってしまうので、仕方なくコンティニューするんですけど。
◇ 一つの星に留まれない「宇宙飛行士タイプ」の遊び方
「2周目」を遊べるかという話はこの辺にしておくにして……
この「天文学者タイプ」と「宇宙飛行士タイプ」という考え方は、「ゲームの遊び方」についていろんなことを説明できるなあと思いました。
「宇宙飛行士タイプ」の私は、いろんな星に行きたいんですね。
だから、あまり1つの星には留まりたくありません。
「1周」遊んだら、もうすぐに次のゲームに移りたいくらいなので……やりこみ要素とか、何周も遊ばないと出てこない要素とか、そういうものはほとんど無視します。だって、そんなに長い時間をかけて「月」を堪能していたら、「火星」に向かう時間がなくなっちゃうじゃないですか。
だから、「一つのゲームを延々とプレイして極める」みたいなことは出来ません。能力とか性格とか以前に、ゲームにそれを求めていないというか、最初から立っている土俵がちがうのです。旅人に定住を求めるんじゃない!
という考え方なので、「クリアまでに時間がかかるゲーム」が嫌いです。膨大なプレイ時間をかけなくてはならないゲームとか、難しいゲームとかに出会うと、「この時間があればあと星を3つは回れたのに!」と思ってしまうのです。私が何度もこのブログに書いてきたことも、「私が宇宙飛行士タイプだから」で説明できるんですね。
(関連記事:「クリアにかかる時間=ゲームのボリューム」ではないと思うんですよ!)
(関連記事:ようやく分かりました、「私は難しいゲームが嫌い」なんです)
ですが、世の中には「天文学者タイプ」の人もいます。
「一つのゲーム」を骨の髄までしゃぶりつくしたい人からすれば、やりこみ要素とか、何周も遊ばないと出てこない要素とか、膨大な時間をかけなければクリアできないのとか、難しいのとかも、むしろ大歓迎なんじゃないのかなと思うのです。「こんなにしゃぶりつくしてもまだ味が出るぜ!」と。
「宇宙飛行士タイプ」の私は、これまでは「天文学者タイプ」という人を認識できていなかったので、クリアまでにやたら時間のかかるゲームを「どうしてこんな風に作るんだろう?」と思っていました。昔は中古ゲーム対策でクリアまでの時間を引き延ばしているんだろうと思っていましたが、ダウンロード販売しかしてないようなゲームでもやたらプレイ時間を引き延ばすゲームが多くて疑問でした。
でも、「天文学者タイプ」も「宇宙飛行士タイプ」もいると考えれば分かるんですね。一つのゲームを長く楽しみたい「天文学者タイプ」の層があって、そうした人達に向けて作られたゲームならば、クリアまでに時間のかかるゲームを作るのも当然だと思うのです。
あと、次から次へと星を転々としたい「宇宙飛行士タイプ」の私の特徴として、「面白かったゲームの続編」よりも「なんだかよく分からない新しいゲーム」とか「1本も遊んだことのないシリーズ」の方がテンションが上がるというものがあります。
見知ったものは「確実に面白い」ということが分かっている分だけ、あまりワクワクしないんですね。「果たしてこれは面白いのか…?」という未知の惑星に向かう時が一番ワクワクします。
色々文句を言いましたけど、「Wiiショッピングチャンネル終了で買えなくなるゲームの中からオススメされたものをかたっぱしから遊ぶ」配信は、自分だけでは手を出さなかったであろうシリーズやジャンルに触れる良い機会になったと思います。その結果、恐ろしい難易度に打ちのめされて「もう二度と2Dシューティングゲームは買わない」とか「もう二度とドラキュラシリーズは買いたくない」と思っているのですが……(笑)。まぁ、未知の惑星への旅をしたからにはそういうこともありますよね。
私が生配信で挑戦するゲームも、「名前は聞いたことがあるけど実際にはプレイしたことがないゲーム」を中心に選んでいるのはそういう理由です。『スペランカー』とか『たけしの挑戦状』とかが顕著ですけど。未知の惑星にたどりついて「なんじゃこりゃあああああ!」と慌てふためく姿を、ドキュメンタリーとしてそのままお届けしたいと思っているのです。つまり、私がやっているのは旅番組なんですよ。
でも、「天文学者タイプ」の人がゲーム実況をするのなら、恐らく「RTA」とか「縛りプレイ」とか極めつくしたゲームの達人プレイを見せると思うんですね。これはもう研究結果の発表というか、論文というか……同じゲーム実況でも方向性が全然ちがうんですね。
「天文学者タイプ」の人から「どうして下手くそなヤツのプレイを見なくちゃいけないんだ」と言われたこともあるんですけど、そりゃ旅番組に「碌にこの町のことも知らないでコメントすんじゃねえ」と言うようなものじゃないかと思います……けど、そういう人もTwitter見るといっぱいいるな。
「○○タイプ」「××タイプ」と名前をつけて、ラベル入りの瓶に分けることは偏見とか差別につながりかねないリスクもあるとは思うんですけど……「自分とはちがうところに楽しみを見出す人がいる」ことを認識するためにも、「天文学者タイプ」と「宇宙飛行士タイプ」という分け方は面白いんじゃないかなと思います。
それは、逆に言えば「宇宙飛行士タイプの自分には楽しめないけど、これはきっと天文学者タイプの人に向けたゲームなんだな」といったカンジに、「自分には楽しめない作品にも価値がある」ことが分かるということですからね。
あなたは「天文学者タイプ」と「宇宙飛行士タイプ」のどちらですか?
コメント
コメントを投稿