時系列をシャッフルさせるアニメの面白さ

 ※ この記事は2017年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です

※ この記事はテレビアニメ『プリンセス・プリンシパル』第5話「case7 Bullet & Blade's Ballad」までのネタバレを含みます。閲覧にはご注意下さい。


 今季の推しアニメは『プリンセス・プリンシパル』(公式サイト)です!
 19世紀末のヨーロッパを舞台にしたスパイアクションが楽しめるオリジナルアニメですよ!


<画像はテレビアニメ『プリンセス・プリンシパル』第4話より引用>

 放送開始前のPVなどでは、「女子高校生」が「スパイ」をしている―――という点を推しているのかなと思ったのですが、「女子高校生」の部分はあまり重要ではなく(高校生らしいシーンなんてほとんどないし!)。境遇も得意なこともちがう5人の少女が、潜入あり変装ありカーチェイスありチャンバラありガンアクションありといったスパイアクションを、飛行船やら工場やら列車やら色んな場所で繰り広げていくのが超楽しいのです!

 そして、「百合」もある!!

 アンジェとプリンセスが鉄板だけど、アンジェとベアトもイイし、アンジェとドロシーの関係性もアンジェとちせの関係性も好きだし、もちろんベアトとプリンセスも王道だし、あ~ベアト可愛いよベアト。


 というアレコレは置いといて。
 戦闘能力は皆無なプリンセスやベアトリスだってしっかり活躍する「一人一人得意なことがちがうチーム」によるスパイアクションというのが、自分のツボなんです。「ドロシーは何の役に立っているんですか」だって?く、車の運転が出来るだろうが!


―2025年追記―
 『プリンセス・プリンシパル』が「見放題」になっているサブスクサービスをまとめておきます(2025年6月7日現在の情報です)

<テレビアニメ版(全12話)>
 dアニメストア
 Hulu

<劇場版『Crown Handler』第1章>

<劇場版『Crown Handler』第2章>

<劇場版『Crown Handler』第3章>




 さてさて。
 『プリンセス・プリンシパル』を語るついでに、語っておきたいことがありました。

 この作品、「時系列がシャッフルされて放送されている」作品なんです。
 第1話の次に第2話が来て、その次に第3話が来る―――という普通の時系列ではなく、第2話が第1話より前の話で第3話は第2話の直後の話だけど第4話はちょっと後の話でありつつ第1話よりは前の話でうんぬんかんぬん。サブタイトルに「case○○」と書いてあるので、それを見れば分かりやすいですね。


・第1話「case13 Wired Liar」
・第2話「case1 Dancy Conspiracy」
・第3話「case2 Vice Voice」
・第4話「case9 Roaming Pigeons」
・第5話「case7 Bullet & Blade's Ballad」


 いきなり「13話」から始まって、次に「1話」に戻って順当に「2話」を描いたと思ったら、その後に一気に「9話」になって、かと思ったら「7話」に戻って――――そもそもこの作品、Blu-ray & DVDの発売スケジュールを見てみると「各巻2話収録/全6巻」と書いてあるんですね。全12話なのに、いきなり「13話」から始まっているという!(笑)


 んで、この「時系列シャッフル」―――別に視聴者を混乱させたくてそうしているワケではなくて、視聴者を楽しませるためにものすごく機能しているのです。
 例えば第1話に持ってこられた「13話」ですけど、「13話」ともなると既に5人がチームとして結束していて、それぞれに見せ場のあるアクションシーンを披露してくれました。でも、実際の時系列順に放送した場合、5人が揃うのは「7話」なんですね。ちせの格好良いチャンバラアクションは「7話」まで観続けた人しか楽しめません。それが、時系列をシャッフルして「13話」を第1話に持ってきたことで、第1話からチャンバラアクションが楽しめるようになったのです。

 また、構成としても、ヘビーな展開を見せる「13話」を第1話に持ってきたことで「スパイというのはワンミスでこうなる」と視聴者に見せつけてその後に緊張感を持たせたり、「13話」を先に見せておくことで「あと一人仲間がいたはずだけどいつ出てくるんだろう」とか「このキャラにはあんな能力があったはずだよな」といった伏線として機能したり、「13話を最初に見せる」ことを踏まえた構成になっているんですね。

 そもそもの第2話に持ってこられた「1話」は、話はすごく面白いんだけどスパイアクション的な意味では地味なので第1話にするには“引き”が弱かったと思いますし―――単純にキャラの掘り下げを見ていくと、「第1話(13話):アンジェの話」「第2話(1話):プリンセスの話」「第3話(2話):ベアトリスの話」「第4話(9話):ドロシーの話」「第5話(7話):ちせの話」と各話一人ずつ描いていたとも言えますしね。


 奇をてらったワケではなく、「この順番に観るのが一番面白い」と巧みに計算された時系列シャッフルで伏線フェチにとっても溜まらない作品になっていると思います。先の話を見せられるということは、何気ない会話が全部伏線になっていたりもしますからね(第4話(9話)のちせと堀河公の会話が第5話(7話)の伏線になっている、とか)。




 んで、ちょっと語りたくなった思い出話があります。
 アニメヲタク歴の長い人ならば「時系列シャッフル」の話をされた時点で、思い出した人も多いかと思います。『涼宮ハルヒの憂鬱』(2006年版)の話です。



 2006年ももう11年も前の話ですから、こういう話ももう「ワシらの若い頃にはこんなことがあったんじゃ……」と若者に語りかける村の長老の長話みたいなものかも知れませんね……


 『涼宮ハルヒの憂鬱』というアニメは2006年の春アニメだったのですが、第1話が放送された日のネット上のざわつきは未だに覚えています。
 当時はまだ東京MXテレビ一強時代ではないので、最初に放送されたテレビ局はチバテレビでした。そして、テレ玉。初日はこの二局で放送されて、この二局で第1話を観た人達が「これは絶対に凄いからみんな観て欲しい!」と触れまわり、当時この作品をノーチェックだった私も翌日のTVKでの放送を視聴することになったのでした。

 その後も『涼宮ハルヒの憂鬱』というアニメは毎週放送されるたびに話題になり、これは功罪あるから全肯定も出来ませんが2005年に開設されていたYouTubeに違法アップロードする人とそれで視聴する人も多く、それまで深夜アニメを観る習慣のなかった人の間でも話題になって―――ちょうどこのくらいの時期からアニメヲタクのカジュアル化が進んでいったんですね。


 んで、この『涼宮ハルヒの憂鬱』というアニメも、「時系列がシャッフルされて放送された作品」だったんですよ。
 『涼宮ハルヒの憂鬱』というアニメは2006年版は「時系列シャッフル」で放送されて、2009年版は再放送+新規エピソードが「時系列順」に直されて放送されたので、それぞれの放送順を比較してみましょうか。


【2006年版】
 第1話:朝比奈ミクルの冒険 Episode00
 第2話:涼宮ハルヒの憂鬱 I
 第3話:涼宮ハルヒの憂鬱 II
 第4話:涼宮ハルヒの退屈
 第5話:涼宮ハルヒの憂鬱 III
 第6話:孤島症候群(前編)
 第7話:ミステリックサイン
 第8話:孤島症候群(後編)
 第9話:サムデイ イン ザ レイン
 第10話:涼宮ハルヒの憂鬱 IV
 第11話:射手座の日
 第12話:ライブアライブ
 第13話:涼宮ハルヒの憂鬱 V
 第14話:涼宮ハルヒの憂鬱 VI

【2009年版】
 第1話:涼宮ハルヒの憂鬱 I
 第2話:涼宮ハルヒの憂鬱 II
 第3話:涼宮ハルヒの憂鬱 III
 第4話:涼宮ハルヒの憂鬱 IV
 第5話:涼宮ハルヒの憂鬱 V
 第6話:涼宮ハルヒの憂鬱 VI
 第7話:涼宮ハルヒの退屈
 第8話:笹の葉ラプソディ
 第9話:ミステリックサイン
 第10話:孤島症候群(前編)
 第11話:孤島症候群(後編)
 第12話:エンドレスエイト
 第13話:エンドレスエイト
 第14話:エンドレスエイト
 第15話:エンドレスエイト
 第16話:エンドレスエイト
 第17話:エンドレスエイト
 第18話:エンドレスエイト
 第19話:エンドレスエイト
 第20話:涼宮ハルヒの溜息 I
 第21話:涼宮ハルヒの溜息 II
 第22話:涼宮ハルヒの溜息 III
 第23話:涼宮ハルヒの溜息 IV
 第24話:涼宮ハルヒの溜息 V
 第25話:朝比奈ミクルの冒険 Episode00
 第26話:ライブアライブ
 第27話:射手座の日
 第28話:サムデイ イン ザ レイン

 思ったより分かりづらかったので、「2006年版」の順番に()で「2009年版」の話数を加えてみます。


【2006年版(2009年版)】
 第1話:朝比奈ミクルの冒険 Episode00(25話)
 第2話:涼宮ハルヒの憂鬱 I(1話)
 第3話:涼宮ハルヒの憂鬱 II(2話)
 第4話:涼宮ハルヒの退屈(7話)
 第5話:涼宮ハルヒの憂鬱 III(3話)
 第6話:孤島症候群(前編)(10話)
 第7話:ミステリックサイン(9話)
 第8話:孤島症候群(後編)(11話)
 第9話:サムデイ イン ザ レイン(28話)
 第10話:涼宮ハルヒの憂鬱 IV(4話)
 第11話:射手座の日(27話)
 第12話:ライブアライブ(26話)
 第13話:涼宮ハルヒの憂鬱 V(5話)
 第14話:涼宮ハルヒの憂鬱 VI(6話)


 つまりですね。この作品もいきなり「25話」から始まるんですよ。
 その内容も、言ってしまえば「劇中劇」なんですけど……「劇中劇」だから主要キャラがほぼ全員出てきますし、それでいてところどころに謎が散りばめらていますし、『プリンセス・プリンシパル』の「いきなり13話から始まる」のと同様に「キャラの顔見せ」と「伏線」の役割を果たしていたんですね。

 『涼宮ハルヒ』の場合は原作のライトノベルがありますから、「時系列シャッフル」には原作既読者にも「次はどの話が来るのか」の予想がつかないようにする効果があり、原作未読者には先の話を見せることで謎が謎を呼ぶという2つの効果がありました。だって、「○○があってから数日後」というモノローグから始まるのに、時系列シャッフルされているから「俺達まだ○○の話を観ていないぞ!」ってのが普通でしたし(笑)。

 それと、原作の盛り上がりポイントを考えて、時系列順では「6話」にあたる部分を最終話に持ってきたのもすごく良かったですよね。
 今ネット配信などで『涼宮ハルヒの憂鬱』のアニメを観ようとすると、時系列順の2009年版の順番に並んでいるんですけど、2006年版をリアルタイムに観てきた我々老人どもは「第1話はやっぱり朝比奈ミクルの冒険じゃないと!」とか「涼宮ハルヒの憂鬱 VIは6話じゃなくて最終話だろ!」とか言いたくなっちゃうんですよね。こ、これが老害というヤツか!


 でも、『スターウォーズ』のエピソードI~VIをどの順番で観るべきかを考えたら、必ずしも「時系列順」ではないように。少なくとも2006年に制作された部分の『涼宮ハルヒの憂鬱』のアニメは、「時系列シャッフル」で観てもらうことを計算されて作られたんだから、「時系列順」ではなく「時系列シャッフル=放送順」で観た方がイイと思うんですけどねぇ。

(関連記事:「エピソードゼロもの」を、先に観るか、後に観るか




 『プリンセス・プリンシパル』の話に戻ります。
 しかしこの「時系列シャッフル」には欠点もあって、先の展開を知っているが故に緊張感が失われるという側面もあるんですね。「13話」で生きているのだから、まだこのキャラはこの話数では死なないな―――と分かってしまうみたいなことです。

 ということで、全12話のはずなのに「13話」から始まっているこの作品、「13話」がラストってことではないと思うんですね。「14話」以降が描かれて初めて「この先どうなるんだろう」とワクワク出来るのですから。
 それと、「13話」が最後になっちゃうなら……アンジェとプリンセスの本当の関係だとか、二人が目的を達成できるのかだとか、それぞれの「ウソ」を知っても5人は友達でいられるのかとか、カサブランカに用意された白い家には誰が住むんだとか、明らかになりませんからね!

 ということは、当然「放送されないエピソード」もところどころに出てくるのでしょうし、そういうのはメディアミックス展開とかで埋めるんですかね。スマホアプリ版は、ゲームとしては全然興味がわかないんだけど、そういうエピソードがあるかも知れないからプレイするしかないか……


―2025年追記―
 スマホゲーム版『プリンセス・プリンシパル GAME OF MISSION』は2017年8月10日に配信が開始され、2018年12月28日にサービスが終了しました。私も1週間くらいはプレイしたものの、アニメのキャラが全然出てこないので、じきに遊ぶのを辞めてしまいました。





 それと、これはちょっと小ネタですけど。
 『プリンセス・プリンシパル』のメインキャラはアルファベット順になっていて……A=「アンジェ」、B=「ベアトリス」、C=「ちせ」、D=「ドロシー」と来たのに、「プリンセス」はPですよね(笑)。Eは第1話(13話)に出てきた「エリック」でしょうか。

 コントロールのリーダーは「L」なので、あとFとGとHとIとJとKがいるということか?
 Gは「ガゼル」、Hが「堀河公」、J「十兵衛」……意外に埋まりますね。「ノルマンディー公」はNか。「モーガン委員」はM、どんどん遠ざかっていく(笑)。そしてややこしいことにコントロールの分析屋は「7」、アルファベットですらない(笑)。

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