※ この記事は2013年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です
※ この記事内では以後、分かりやすくするために『FF15』といった表記に統一させていただきます。
この作品は元々2006年に発表された『FF13』『FFヴェルサス13』『FFアギト13』という三作品の一つ『FFヴェルサス13』で、『FF15』に改題&プラットフォームもPS4&XboxOneに変更して発表されました。言ってしまえば、“『FF13』シリーズの一作”を“ナンバリングタイトル”に昇格したものなので、“ナンバリングタイトル”ではこれまで採用されなかったアクションバトルの採用など異色の『FF』になりそうです。
自分は『FF13』シリーズは一作もやっていないのですが、元々『FF13』『FFヴェルサス13』『FFアギト13』はそれぞれストーリーが繋がっているワケではなくて、『FF13』のストーリーの続きが『FF15』だということもなく、共通の神話がテーマになっているだけで時代や世界観も違う話とのことです。
手塚治虫の『火の鳥 ○○編』みたいなカンジですかね。“火の鳥”という共通のテーマがあるけど、主人公も時代も別々で、それぞれ一本ずつ独立したストーリーになっているという(※1)。
(※1:実は『火の鳥』はそれぞれ長い時間軸で繋がっているんですけどね。知らなくても楽しめる、ということで例に出しました。)
さて、E3前に“私”個人が「どういうFF最新作だったらやりたいかなー」と考えていたものから言うと、正直ガッカリでした。自分はスーファミ直撃世代なので『FF4』とか『FF5』のような、城が建っていて王様がいて剣と魔法があって―――という中世風ファンタジー世界での最新作を期待していました。
実際の『FF15』のトレーラーを見ると、車や銃という“現代の機械文明”にモンスターや召還獣がいるという世界観で。後述しますが「これを『FF15』にする理由」は分かるんですが、「あー俺らの時代の『FF』はもう戻ってこないんだろうなー」という寂寥のようなものは感じてしまったのです。
こういう意見を持った人は私一人ではないと思います。
『FF15』が発表される前に「FF最新作に望むこと」みたいな話題が掲示板で上がると、必ずと言ってイイほど「FF5の頃のような世界観に戻して欲しい」という人と「懐古厨は黙ってろ!」という人が現れてケンカをするという光景を見かけていましたからね。
しかし、私個人が遊びたいかはともかく、「FFシリーズが今後も生き残っていくためには」という視点で考えると、「これを『FF15』にする理由」はよく分かるんです。
開発費がどうこうとか、ナンバリングタイトルじゃないと売れないからとか、色々な理由はあると思いますが……率直に言うと、これは「より海外市場で売れるためのFF」という選択肢だったと思うのです。
海外だと「日本人の作った中世風ファンタジー作品」って売れませんからね。
たまにはこういう話も書きますか。
そもそも何故私達が「中世風ファンタジーの世界観」を「RPGらしいRPG」と認識しているかというと……
RPGの原点はアメリカの『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(1974年)というテーブルトークRPGにあり、この作品はトールキンの小説『指輪物語』(1954年~)の世界観に影響を受けています。『指輪物語』とは映画『ロードオブザリング』(2001年~)の原作ですね。剣と魔法のファンタジーな世界観の代表作です。
その後、テーブルゲームだったRPGをコンピューター上で表現しようとする試みが行われ、1980年前後には『ウルティマ』(1980年)、『ローグ』(1980年)、『ウィザードリィ』(1981年)などが発売やら公表やらされて。これらもやはり『指輪物語』の世界観をベースにしていると言われています。
んで、そんな「アメリカの」「コンピューター用の」「マニアックなゲーム」だったRPG達を、一ユーザーとして楽しんでいた堀井雄二さん。
当時はフリーライターだった彼が、趣味と取材を兼ねてゲーム制作に携わり始め、『ポートピア連続殺人事件』のヒットなどを経て、「日本人でも遊びやすい」「ファミコン用の」「新しいゲーム」としてアレンジして作られたRPG『ドラゴンクエスト』を大ヒットさせたのが1986年―――日本で(マニアではない)普通の人も「RPGって面白いゲームがあるんだ!」と知るきっかけになりました。
ちょっと横道に逸れる話。
以後、日本では「RPG」=「ドラゴンクエスト的なもの」という認識が広まってしまうので、例えばアクションゲームに「レベルと経験値」を足しただけのゲームを「アクションRPG」と呼んだり、シミュレーションゲームに「レベルと経験値」を足しただけのゲームを「シミュレーションRPG」と呼んだりするようになるのです。
(関連記事:RPGにレベルアップ制度は必要ですか?)
という経緯なので……
『ドラゴンクエスト』の世界観も、先祖を辿れば『指輪物語』に行き着くんでしょうが、堀井さんが「日本人向け」に作り変えているために“もはや別物”になっているんだと思います。日本のラーメンやカレーが、中国人やインド人には「別物」と思われているようなカンジで。
だから、「日本人向け」に作られた中世風ファンタジーの『ドラクエ』シリーズは海外ではあまり受けませんし、現在では海外で注目される『FF』も『FF7』以前はさほどヒットしていませんでした(※2)。
漫画やアニメでも、海外で受けるためには中世風ファンタジーは避けるべし……みたいなところはありますからね。
(※2:『FF1』~『FF6』の間に海外でも発売されたのは、『1』『4』『6』だけ。売上げは『1』を除けば国内とは程遠い状況だったそうな。また、PSリメイク版『FFコレクション』で『5』も初収録)
確かにそう。
この記事タイトルにも「中世風ファンタジー」って書きましたけど、実際のヨーロッパの中世時代ってあんなんじゃないですよね。
Wikipediaの「ファンタジー」の項に分かりやすい話が書かれていました。
中世ヨーロッパとは大体「5世紀~15世紀」を指すのですが、日本人が作る中世風ファンタジー作品に出てくる「強力な王政」だとか「装備品」とか「民家にも本棚がある」とか「全世界を航海できる技術がある」とか、政治的にも技術的にも文化的にももっと後の時代で出てくるものが普通にあって。
時代がごっちゃになっているだけでなくて、地理がごっちゃになっていることもあって。日本人はイギリスもフランスもイタリアもドイツもまとめて「ヨーロッパ」と認識しているから、日本人の作品には角を曲がると街並みがイタリアからイギリスに変わる―――みたいなこともあるらしくて。
もし仮に、
フランス人が日本を舞台にした物語を描いて、舞台は鎌倉時代のはずなのに陰陽師が鉄砲隊を指揮してカステラを食べながら妖怪を退治して寺はあるけど神社はないし関東に首里城があるみたいな世界観になっていたら………日本人ならそれでも楽しみそうですけど(笑)、まぁ一応「時代考証めちゃくちゃだな!」とは思うじゃないですか。
ということで、「日本人の作る中世風ファンタジー」作品は、海外の人にとっては「ヘンテコな世界観」に受け止められてしまう……って話をよく聞きます。
その割に『ゼルダの伝説』は世界中で売れるんですけどね……
自分には『ゼルダ』も『ドラクエ』も同じような世界観に見えるんですけど、海外の人にはそうではないのか、それともゲーム性で『ゼルダ』が支持されているから「ヘンテコな世界観」でも楽しめるのか。よく分からんです。
――2025年追記――
2013年頃の認識はこうだったのか……!
アニメはこの後、「異世界転生もの」のアニメ化が立て続けに行われるようになります。『この素晴らしい世界に祝福を!』と『Re:ゼロから始める異世界生活』の1期がそれぞれ2016年で、「小説家になろう」原作の異世界ものアニメが次々と行われるようになり、現在は毎シーズン5~6本は中世風ファンタジー舞台の作品が放送されています。
そのため、最初から商業作品として生まれたものでも「RPG的世界観」の作品がヒットするようになって、『葬送のフリーレン』(2020年~、アニメ化は2023年~)なんかはまさにそうですよね。
この辺の変化は、「日本のアニメ」が中国などのアジア諸国で配信されるようになり、中国ではこの「日本人が作ったなんちゃって中世ヨーロッパ」が特に気にされずに楽しまれているから、むちゃくちゃデカイ中国市場向けにガンガン作られている……みたいな話を聞いたことあります。
ここからが本番です。
Wikipediaに記載されていた情報なので「絶対的に正しい数字」なんて思わないで、「参考にする」レベルに留めて欲しいんですけど……Wikipediaに歴代『ファイナルファンタジー』シリーズの海外の売上げも記載されていたので、それをまとめてみたいと思います。
「全世界売上げ=日本国内売上げ+日本国外売上げ」という順です。
数字は全て「約○万本」。
・『FF6』:343万=262万+81万 ※移植版を含めた数字
・『FF7』:980万=407万+573万 ※インターナショナル版・廉価版を含めた数字
・『FF8』:804万=369万+435万
・『FF9』:498万=282万+216万
・『FF10』:735万=235万+500万
・『FF12』:510万=232万+278万
・『FF13』:563万=193万+370万
ところどころ数字の条件が違うのは、海外の売上げはメーカーから公式発表された時くらいしか分からないので、その度の条件が違うからです。
『FF12』の海外売上げはヨーロッパの初回出荷までしか含んでいない数字みたいなんで、実際にはもっともっと高い数字だと思われます。
ポイントは、「海外でFFがヒットするようになったのはFF7から」「FF9は海外でガクンと数字を落とした」「FF13は海外だとそれほど数字を落としていない」ってところでしょうか。
『ファイナルファンタジー』シリーズは初期からSF要素の強い作品ではありましたが(月に行ったりするし)、それでも『FF1』から『FF5』までは城が建っていて王様がいて剣と魔法の世界の中世風ファンタジー作品ではありました。
『FF6』は更にSF色を強めて、機械文明がかなり進んだ世界観でしたが、それでも城が建っていて王様がいてという世界観ではギリギリありました。
『FF7』は城もなく国家の概念も薄く、戦う相手はカンパニーで、味方には銃を使う仲間もいるし、バイクにも乗るし……と、中世風ファンタジーからの完全な脱却を図ったSF作品で。結果、全世界で大ヒットをしてシリーズ最高売上げを達成しました。
『FF8』では国が復活したのだけど、やはりSF色は強く、機械文明は発達しているのでこちらにも銃を使う仲間もいます。
『FF9』は、そうしたSF色の強かった『6』『7』『8』を受けて“原点回帰”として中世風ファンタジー路線に戻った作品でした。『1』~『5』を知っている世代からすると「こんなにメルヘンじゃなかっただろ」と思わなくもないのですが、城が建っていて王様がいて、旅をするお姫様と盗賊と騎士と魔法使い―――という、中世風ファンタジー全開の作品だったのですが。
こう並べてみると……海外の売上げがガクンと落ちているんですね……
国内の売上げが『FF8』より落ちた理由は、「情報規制が裏目に出た」「8の評判が悪かったからだ」「SDキャラが不評だった」「ロード地獄がヒドイ」と色々言われていますが、海外の落ち方に比べれば些細なもので。『7』以降の『FF』シリーズで、唯一「国内売上げ>海外売上げ」になってしまった作品なんですね。
国内にはファンも多く、それこそ冒頭の「FF5の頃のような世界観に戻して欲しい」「懐古厨は黙ってろ!」というやりとりの中には、「FF9みたいな中世風ファンタジーの世界観なFFがまた遊びたいなぁ」という声も少なくなかったです。
しかし、海外市場の売上げを見れば、中世風ファンタジーだった『FF9』よりも、SF色の強い『FF13』の方が遥かに売れていて(ハードの普及台数は全然違うだろうに)……『FF15』が、中世風ファンタジーではなく、『FF13』の流れを受けた作品になったのも頷けてしまったのです。
自分はそれでもE3前は「いやいやいや!幾ら海外では中世風ファンタジーが受けないからといって、まずは国内市場でしっかり売れる作品じゃないとFFの今後はないんじゃないのか」と思っていたのですが……
でも、そうではありませんでした。
『FF』は「海外市場で売れる」道を選んだんです。
そうそう。また話が横道に逸れます。
「FFのような一本道のムービーゲームは日本人にしか受けない」とか「海外はゴリゴリマッチョのオッサン主人公が受けるから、FFみたいな線の細い主人公が怪物と戦うのはバカにされている」みたいな話はよく聞くんですけど、数字を見れば一目瞭然で、『FF』シリーズは『FF7』以降はずっと「海外の方が売れている」し「海外向けに売れるものを考えて作られている」んです。(※3)
(※3:唯一海外市場で失敗したのが、中世風ファンタジーに“原点回帰”した『FF9』だった……という話はさっき書いたからイイですよね)
「マリオらしさとは何か」「ゼルダらしさとは何か」「ドラクエらしさとは何か」という文脈で、「FFらしさとは何か」を考えた際――――FFがFFでいられる理由と、会社がわざわざ大金かけてFFを作らなければならない理由を考えたら、「すごいゲーム」でなければならないという基準があるのかなと思うのです。
最新の据置機で日本のゲームメーカーとしてはトップクラスの水準を目指してグラフィックを極めていくのが『FF』であって(※4)、『ドラクエ』のように携帯機に移行して「みんなが遊べるゲーム」になるのでは『FF』ではなくなってしまう―――と考えたら。
(※4:出来ているかは知りませんよ!私はグラフィックの良し悪しとかよく分かりませんし!)
据置ゲーム機用ソフトの市場が壊滅的な日本向けよりも、据置ゲーム機市場がまだまだ元気な海外向けにシフトするのは当然かなと思うのです。
日本では壊滅的だけど海外では元気な「据置ゲーム機用」で、日本ではあまり売れないけど海外では大人気な「3Dアクションバトル」で、日本では賛否両論だけど海外では受けてきた「SF路線の世界観」で―――恐らく『FF15』は、日本国内ではかつてのようなヒットにはならないでしょうが、海外ではきっちりとヒットするんじゃないかなと今の内に予測しておきます。
ということで、“『ファイナルファンタジー』はもう中世風ファンタジーには戻らないのか”という記事タイトルへの回答をするのなら……私は、オフラインのナンバリングタイトルでは中世風ファンタジーに戻ることはもうないんじゃないかと思っています。
いや、まぁ……「絶対にない」ことは絶対にないので、「80%くらいの確率で…」と弱腰になっておきますが(笑)、海外市場できっちりヒットを続ける限りは、当分はこの路線が続くんだろうなーと。
逆に言うと……
「中世風ファンタジー路線のFFシリーズ」はもう本家とは独立してしまって、かつては『FFCC』シリーズに、近年では『BDFF』シリーズに受け継がれているという見方も出来ますよね。
特に『BDFF』は、日本で強い「携帯ゲーム機用」で、日本で高い支持を受けている「コマンドバトル」で、『FF1』~『FF5』のような「中世風ファンタジーの世界観」で、『BDFF』こそが「日本市場に向けたFFシリーズ」という気もするんですよね。
そういう意味では、『FF』の懐古ファンはまだ幸せな方なのかも……
シリーズの本流が変わってしまっても、完全に流れを失ってしまったワケではないので。
ということで……『FF15』が3Dアクションになってしまったことを受けて、私もそろそろ“俺らの時代の『FF』”として『BDFF』を始めるかなぁ……『レゴシティ』が終わった辺りで……
――2025年追記――
2016年に発売された『FF15』の売上がどうだったかというと……
Wikipediaによると、国内版のパッケージソフトの売上は108万本らしい(ソースは電撃オンライン)。これはパッケージソフトのみのデータ(スクエニが公表していないので、国内のみの売上は小売店のデータから推測するしかない)。
『FF15』は世界同時発売だったため、全世界では1日で販売本数が500万本を突破(パッケージ版とダウンロード版の合算)。全プラットフォームでパッケージ版・ダウンロード版合算で、2022年に販売本数1000万本突破と発表されました。
仮に国内版のダウンロード版がパッケージ版と同じくらい売れていたとしても、国内と海外の比率が2:8くらいに差が開いたこととなります。
さて、当然2013年に書いた記事では触れられていませんが、『ファイナルファンタジー』シリーズは2023年に最新作『16』が発売されています。
グラフィックはリアルで、ダークファンタジーですが、「王国」や「ナイト」が登場する中世ヨーロッパの世界にクリスタルも登場するストーリーだったそうです。「『ファイナルファンタジー』はもう中世風ファンタジーには戻らないのか」じゃないよ、戻ってんじゃん!!!
ただ、売上に関して言うと……
「1年の期間限定PS5の独占販売」にしたことと、そのPS5が思ったようなペースで普及しなかったことで、『15』のような売上にはなりませんでした。
発売1週間で全世界で販売本数300万本を突破(パッケージ版とダウンロード版の合算)は、前作の1日で500万本から比べて大きく数字を落としていますし、『15』の時は「数年かけて○○本突破しました!」と忘れた頃に発表していたのに『16』はそれもありませんでした。
国内のパッケージ版の累計売上は50万本付近みたいで、ダウンロード版がどれほどかは分かりませんが、中世ヨーロッパ風の世界にしたからと言って流石に「国内売上<海外売上」のパワーバランスは変わらなかったと考えてイイでしょう。
正直、「1ハード1作品」ずつになっているシリーズだと、そのハードがどれくらい普及しているかでソフトの売上も大きく変わってしまうため……ソフトの売上だけ比較しても何も分からないと思うんですよね。
例えば、『ブレス オブ ザ ワイルド』より前の「ゼルダ」シリーズで最も売れたのは『トワイライトプリンセス』でしたが……それはWii本体が海外でめちゃくちゃ売れたからであって、『トワプリ』が「歴代ゼルダの中で最も評判が良かった」とは言えないと思います。
あと、『FF』の場合は「3Dアクション」になっちゃったんで……「コマンドバトルRPG」だった時代と、もうメインの客層は変わっていると思うんですよね。
私も「中世ヨーロッパが舞台なんだ」と興味はありつつ、「3Dアクション」がスーパー苦手(正確に言うと、何が面白いのかのツボがさっぱり分からない)なのでどうせ楽しめないだろうと遊んでいませんし、今後もプレイする気が起きませんし……
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