『パズドラ』にハマれなかった自分が思う、「探索」要素の危機

※ この記事は2013年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です



 今日の記事はしっちゃかめっちゃかになりそう。
 書きたいことがたくさんあり過ぎてまとまりがなくなりそうなのだけど、別の記事に分割しようとしても「その全部が繋がっているんだよ!」とも思うので、とりあえず全部書いていくことにします。書くのも読むのも大変な長文になると思いますが、ご勘弁を。



 この1ヶ月間、自分は「キンドルファイアで遊べる基本無料ゲームの感想」記事を書くために、Amazonのアプリストアにある基本無料ゲームを片っ端から遊んでいました。現在までに52本。なので、今更ながら『パズル&ドラゴンズ』をプレイしました。


 TVCMもガンガンやっている超有名ゲームなので説明不要かも知れませんが、御存知ない人もいるかもなので説明しますと―――オンラインゲーム大手のガンホーが2012年にスマートフォン&タブレット端末用に配信開始した基本無料ゲームです。
 一時期騒がれた「ソーシャルゲームは無尽蔵に金を奪われる」というイメージと違って、課金なしの無料でも十分に遊べることで高い支持を得て、その結果多くの人が集まって、課金して遊ぶ人もその中から何割か出てくることで莫大な利益を生んで。多くのメーカーが後追い作品として類似ソフトを出しているというくらいです。



 スタンスを明確にしておいた方がイイと思うので最初に書いておきますと。
 私は「面白い」とは思いませんでした。
 ただ、これを「面白い」と思う人がたくさんいるのは納得しましたし、逆に言うと「自分がゲームの何を面白いと思うか」と「世間がゲームの何を面白いと思うか」の違いはどこにあるのかとか、そしてそれは『パズドラ』1本に限った話ではなく「ここ数年のゲームの流行」に即したものなんだと考えさせてもらいました。そういう意味では、このタイミングでもプレイして本当に良かったと思っています。



 『パズドラ』ってRPGなんですよ。
 冒頭に載せたPVにもちゃんと「パズルRPG」と書かれているように、根っこの部分はRPGなんです。“『ドラクエ』式コマンドバトルRPGで言う「コマンド?」→「たたかう」→「スライム」というコマンド選択の部分”が“パズル”になっていることを除けば、「モンスターを育成して」「そのモンスターでパーティを組んで」「別のモンスターと戦う」れっきとしたRPGなんです。『ポケモン』とかに近いのかな。


 なので、「最近は新規のRPGなんてヒットしないよなー。ドラクエとかFFみたいに大ヒットするRPGが出てきて社会現象になったりはもうしないのかなー」なんて言っている人!なっていますよ!新規の!RPGで!社会現象クラスに大ヒットしているものが現在進行形でありますよ!



 でも、多分……『パズドラ』を遊んでいる人の中にも「え?これってRPGなの?」と思っている人がいると思います。「これは俺の知っているRPGとはちょっと違うぞ」と。
 そもそも「RPGとは何ぞや?」と考えていくと―――「アナタは御存じないみたいですがRPGの起源というのはテーブルトークRPGでして……」とか「日本のRPGは海外のRPGを源流にしているんですよ」とか教えてくれる人がいるんですが、知っているけど今日の話には関係がないんで書かないだけです。

 ホント……「○○について書くのなら××に言及しないのはけしからん!」って言う人って何なんでしょうね。主題に関係ないことに言及すると話が横道にそれて文章が読みづらくて長くなって誰も読んでくれなくなるというか今がまさにその状態なんで、「文章というのは知っていること全部を書けば出来上がるものじゃないんですよ」ってのが分からんのですかね……




 という愚痴は置いておきまして(笑)。
 『ドラクエ』以後に日本で発展した「日本式RPG」は、ざっくり分解していくと「探索」「育成」「戦闘」、そして「ストーリー」の4要素で出来ていると思います。「探索」という言葉でしっくり来ないなら「移動」とか「冒険」とかでもイイし、「育成」でしっくり来ないなら「チーム編成」とか「武器強化」とかでもイイですよ。


 『パズドラ』ってこの4要素の内、「探索」と「ストーリー」をバッサリ切り捨てて、「育成」と「戦闘」に特化したRPGなんだと思うのです。

 これは言ってしまえば“逆転の発想”で、

○ タッチパネルしか入力装置のないスマートフォンでは細かい移動なんかが難しいから、「探索」の要素は削って「ダンジョンは一本道で敵しか出てこない」

○ スタミナ制度などのシステムで毎日ちょっとずつ遊ぶソーシャルゲームだからストーリーを覚えられない人も多いだろうし「ストーリーなんて一切ない」

○ タッチパネルはボタンを押した感触がないのでコマンド式RPGで言う“Aボタン連打”がしづらい、よって「コマンド選択ではなくパズルを完成させると攻撃開始」


―――と、ハードのこととユーザーのことをよく考えたソフトになっているんですよ。


 で、『パズドラ』が大人気なのって……
 「探索」とか「ストーリー」とか面倒くさくなって、「あんなもの要らなくね?」と思っていた人がたくさんいたってことだと思うのです。
 ダンジョンで道に迷っている時間なんて「ムダだ」と思えてしまうとか、ゲームでストーリーを見せられても最後までクリア出来なきゃ尻切れトンボになっちゃうとか。忙しい合間にそれでもゲームを遊びたいって人にとっては、むしろジャマな要素だったのかもと。


 こういうことをTwitterで話していたら教えてもらったことなんですけど、スマホの流行前から流行っているソーシャルゲームも「育成と戦闘に特化したRPG」と見ることも出来たんですって。
 重課金の問題とか、ソーシャルの部分ばかりが取り上げられていたから食わず嫌いしていた人も多いでしょうが(私もそうですけど)―――“アクションゲームが苦手な人でも遊べるゲーム”だったRPGが、次第に忙しい人には楽しめないゲームになっちゃって、それが“忙しい合間でも楽しめるRPG”としてソーシャルゲームが人気になったのなら、そりゃ納得だなと思いましたよ。




 さて、ここで私の話。
 私が何故『パズドラ』を楽しめなかったかと言うと―――
 私がRPGに求めているものは、「探索」と「ストーリー」だからなんですよ。

 『MOTHER2』で、地球の危機を救うために世界中を冒険(探索)して「次の町にはどんなイヤなヤツがいるのかな!」とワクワクして、エンディング(ストーリー)に涙して……あぁ、私がRPGに求めていたものはまさにこれなんだ。これこそが私の大好きなRPGだったんだと思った直後に『パズドラ』をプレイしたものですから。

 「俺の大好きなものが全部削られて、俺が好きじゃないものばかりで構成されてるゲームだ!」と思ってしまったんです。まぁ、まさか『パズドラ』作った人も『MOTHER2』と比較されるとはと思うでしょうが(笑)。



 自分は正直「育成」とか「戦闘」はあんまり重視していないんですね。
 最近のRPGは「育成」の部分に力を入れていて、シミュレーションゲームばりに独自のシステムを理解して効率良く育てなきゃどうのこうのみたいのを求められるんじゃが、ワシにはもう付いていけんのじゃよ……「戦闘」に関しては、初代PSの頃から面倒くさくて「全てのRPGにエンカウントなしのアビリティを実装してください」と神様に祈っていたほど面倒くさいのじゃよ。

 前に「スマホのゲームに慣れた人が『ドラクエ7』を面倒くさいと言った」という話題で記事を書いたことがありましたが、あの際にもらった意見で「自分にとってはスマホのゲームの方が面倒くさいです」というものがあって。

 その時にはよく分かっていなかったんですが、今ならすごくよく分かります。
 あの話って「面倒くさいのがイイ」とか「面倒くさくない方がイイ」って話じゃなかったんですよ。あの記事は間違っていました。今更ながらに訂正だ!


 RPGに何を求めているかって話。
 「探索」や「ストーリー」なんていらんから「育成」と「戦闘」だけしていたいって人からすれば、そりゃ『ドラクエ7』で道に迷ったり町の人に話聞いたりするのは面倒くさいですよ。「面倒くさいのがイイ」って言われても、そうは思えませんよ。

 逆に「育成」とか「戦闘」にそれほど興味のない自分にとっては、『パズドラ』の「合成」だとか「進化」だとか「タイプ」とか「スキル」とかもうワケ分からなくて「イーーーーッ!面倒くせーーーーーっ!」って思えてしまうのです。
 「育成」が好きな人は「そこが面白いんじゃないですか!」と思うのでしょうけど、もうチーム編成とか考えるのが億劫で億劫で。よく分からないからまとめて合成しちまえ!ってやると、「その中にレアなモンスターが入っていますよ」と言われて、知るかーーー!ボケーーー!と合成して、「アレは失敗だったんじゃないか…」と後日落ち込んで、もう何が何やらワケ分からないのでソフトを削除したアカウントがこちらになります。



○ そもそも「探索」要素を求めている人がどれだけいたのか?
 初代『ドラゴンクエスト』は「探索」のゲームです。
 これはもう間違いないです。タイトルからして「竜王」の「探索」ですから(笑)。

 自分もWii版で久々にファミコン版『ドラクエ1』をやって驚きました。
 『ドラクエ1』は言ってしまえば「日本式RPGの元祖」なのだから、シンプルでオーソドックスなものだったという記憶があったんですね。確かに「育成」や「戦闘」や「ストーリー」は今の感覚で言うと恐ろしくシンプルなのですが、「探索」に関しては最初の洞窟からしていきなりムチャクチャ広くて複雑なんです。しかも、たいまつの効果が狭いし。手描きマッピングをしないと詰むレベルの洞窟から始まるんです。

 ま、そりゃ『ドラクエ』の元になっているのが『ウィザードリィ』なんだからそりゃそうかという話なんですが、今の感覚でプレイすると初代『ドラクエ』も初代『ゼルダ』も「探索」の難易度が凄く高いんです。世界に放り出されて「さぁ!クリアしてみろ!」というヒントしかくれないカンジ。


 当時のゲームはそれが面白かったんですよね。
 みんなで情報を共有して、一つのゲームを攻略していくのが面白かったんです。『スーパーマリオ』のワープ土管を何故みんなが知っているのかという話です。

(関連記事:昔の名作ゲームを今遊んでも100%の面白さを味わえるワケがない



 しかし、みんながみんなその時代を楽しめたワケでもないです。
 友達がいない人は「どこに行けば分からない」と時間を無為に過ごしてしまって、ポイっと投げ捨ててしまう―――『パズドラ』が流行る25年前には既にあった光景だと思います。そこの受容に応えたのが「攻略本」の普及で、その後に『ドラクエ』も『ゼルダ』も「ストーリーは一本道」という方向に進んでいきます。

 スーファミ~PSくらいの『FF』シリーズは分かりやすいですが、「ストーリーはレールに沿った一本道」で「探索要素は横道&やりこみ要素」として、「誰でもクリア出来る」けど「やりこみたい人はとことんやり込める」ようになっていきましたよね。


 RPGの「探索」の要素は弱まって。
 代わりに「ストーリー」がドラマチックに強化されて。
 「育成」をプレイヤーの自由に出来るようになって。
 そのソフト独自の「戦闘」システムがあって。


 「育成」に重きを置いた『ポケットモンスター』が社会現象になったり、『FF13』が「探索」を捨てて一本道を突き進むゲームだったり―――って流れを考えると、『パズドラ』ってRPGの変化の歴史に忠実に乗っ取ったヒット作じゃないかと思うのです。


 「探索」が好きな自分にとっては残念だけど……
 これが大ヒットするということは、『パズドラ』こそが「みんなの望んでいたRPG」なのかなぁ……と。

(関連記事:自由度を捨てて、『ドラクエ』や『ゼルダ』が得た“遊びやすさ”
(関連記事:RPGは変わった(33年前に)



 これはRPGに限った話じゃなくて……
 「探索」要素のあるゲームは岐路に立たされていると思うのです。

 NINTENDO64の頃は「箱庭を作ってしまう」ことで、そこを自由に「探索」できるゲームが物凄く衝撃的だったと言われています。『マリオ64』や『時のオカリナ』は“ゲームを変革した”と言われていますよね。でも、付いてこれない人もたくさん作ってしまった。

 3D『マリオ』は、『マリオサンシャイン』以降、『マリオギャラクシー』→『マリオ3Dランド』と「探索」要素を薄めた“道に迷わないで遊べる”路線に進んでいます。そして、3Dアクションが売れない日本国内市場で見事にV字回復をしました。まぁ、これはハードの普及台数の違いという気もしますが。


 「探索」がゲームの心臓部である『ゼルダ』はもっと問題が深刻で……『時のオカリナ』以降はずっと日本国内での売上げが右肩下がりです。『トワイライトプリンセス』はWiiのロンチで、『スカイウォードソード』もWiiリモコンプラス専用というハンデがあるのも確かなんですが。『時のオカリナ』の頃に持っていたブランド力がなくなりつつあるという危惧がありますし、だからこそ次回作では「ゼルダのアタリマエを見直す」と宣言されているのでしょう。

 「探索」好きの自分としては衝撃でしたけど、「もう謎解きとか面倒くさいからアクションに特化したゼルダにして欲しい」って意見も見かけて……でも、確かにそっちの方が売れるのかもなぁと思うんですよね。
 Wii U用に開発されている『ゼルダの伝説』新作が、「探索」要素を薄めたゲームになるのか、「探索」要素に特化してむしろみんなに「探索」の面白さを伝えるゲームになるのか―――すごく気になるんですけど、それが発表されるのは2016年のE3くらいですかね!?

(※2025年追記:この記事を書いた時点ではタイトルすら明かされていませんでしたが、この時点で開発されていたゼルダは探索に超特化した『ブレス オブ ザ ワイルド』でした)


 『どうぶつの森』が大人気なのって、知らない土地に行って道に迷って帰ってこれないみたいな「探索」の要素がないからだとも思いますし。『マリオカート』だって『スマブラ』だって基本的には「同じコース・ステージを何十回と遊ぶゲーム」なのだから、「知らない場所に行って道に迷う」みたいなことが起こらないゲームです。『モンハン』もそうなんですっけ?『ポケモン』は多分違う。

 今考えると、『ゴーバケーション』のTVCMが「よくあるミニゲーム集」みたいなので、自分の大好きだった「箱庭空間を自由に探索できる要素」に一切触れていなくて自分が怒ったというあの話って……「そこ(=探索)プッシュしても売れないんだよ」と分かっていたからなのかも知れませんね。



 それでも『ドラクエ7』は売れていましたし、『ルイージマンション2』だって売れているので、「探索のあるゲームは全部売れない!」ということではないんですけど。そういう強力なブランド力やキャラクター力のあるゲーム以外は、「探索」は「面倒くさい」って思われているんじゃないかと思うのです。

 『ルイージマンション2』は「マンション」という限定空間だと見せていることで、コンパクトに「探索」を楽しめるゲームと思わせられたってのも大きいかな。

 『ゼノブレイド』とか、その続編とか、熱心なファンの人達は「もっとガンガンTVCMをすれば売れるはず!」とか「もっと大作RPGであることを周知させれば売れるはず!」と言うんですけど……正直、逆効果じゃないかなぁと不安です。
 「ほら見てください、この広大なフィールド!あの丘の上まで実際に行けるゲームなんですよ!凄いでしょ!」って言われても、「うわぁ……面倒くさそう……」と思っちゃう人の方が多いんじゃないかなぁ。



○ そもそも「探索」要素なんて、苦労して作っても割に合わない
 ちょっと語弊はあるかも知れませんが……
 ファミコン時代に『ドラクエ』以後やたらめったら後追い作品として「日本式RPG」が湧いて出たのって―――「作るのがそんな大変じゃなかったから」だと思うんです。いや、そんな志で作られたものは大したものじゃなかったんですけど、参入するハードルが低かったからこそたくさんの後追い作品が出て、その中から光るものが出てきたんだと思います。

 あの当時は「壁」って1マスの絵を作ったら、それをダーーーッと並べて「廊下が出来ました!」って言い張っていたじゃないですか。1つの絵をひたすら使いまわして、ラダトーム城と竜王の城の壁が同じでも誰も文句を言わなかったじゃないですか。それが普通だったから。


 それがスーファミになって―――
 もちろん使いまわしているところも多いですが、容量が大きくなったことで、「この景色はこの城の上からでしか見えない」とか「この町独自の風景」とか、使いまわしじゃない部分も増えていきました。前に「古臭いゲーム」とか書いちゃったけど、『MOTHER2』のフォーサイドとかすげえと思いますもん。


 これがPS以降の「3Dポリゴン」の時代になると、更に使いまわしが効かなくなって。
 PS2になって、Wiiとかもあって、一つ一つの建物をちゃんと別物として作らなきゃならなかったり。酒場の中の壁と民家の中の壁は別に作らなきゃならなかったりして。これが更にHD機になっていくと―――そういう「ゲーム内容には関係ないし、ひょっとしたら一度も見られることなく終わる壁」まで精巧に作らなきゃならなくなって。



 ファミコン時代と比べて「RPGを作る」というハードルは跳ね上がってしまったと思います。
 いや、RPGに限った話でもないか。広大な世界を作ってそこで「探索」が楽しめるゲームを作れるメーカーなんて、とてつもない資金力とブランド力を持った極一部の会社だけになってしまったと思います。しかも、頑張って作って出しても日本市場じゃ「探索なんて面倒くさいことしたくない」と大して売れないという……

 ゲーム機の進化の歴史に苦しめられて、進化すればするほど開発費と開発期間が跳ね上がる上に売れなくなって、もはやもう日本では絶滅危惧一歩手前くらいの状態の「探索」要素のあるゲームに対して、
 「探索」要素をバッサリ切り捨てて、ただひたすら前に進んで、背景なんかあってないようなもので、出てくる止め絵のモンスターと戦うだけの『パズドラ』が大ヒットするのって……“次世代ゲーム機”戦争って何だったんだろうと思わなくもないです。
 オンラインの部分はともかく、カードとカードがぶつかって火花が出てゲージが減るだけのゲームならば、何世代も前の携帯ゲーム機でだって普通に出来たことでしょうよ。



 そりゃ、ゲーム機用のゲームソフトから撤退していくメーカーも多くなるわなぁ。
 「探索」要素が好きな自分にとってはとても哀しいことだけど、時代の流れとして、もう避けようがないのかなぁ。期待が持てるとすれば、まだビジュアル的にはそれほど苦労しなくてイイ携帯ゲーム機のソフトか、資金力のある海外の大手にすがるしか……とりあえずWii Uの『レゴ』、早く出てくれい。



○ 余談
 そう言えば……この記事を書いている時点ではまだ確定情報ではないんですが。
 『パズドラ』がゲーム機用ソフトとしても発売されるなんて“噂”もありますね。

 「スマホで十分なのに誰がゲーム機で遊ぶんだよ」とか「有料DLCまみれになるのか」とか言っている人も見かけましたが、いやいやいや、自分は「いよいよ地盤を固めに来たか!」と思いました。

 例えば小学生くらいのゲーム好きの子どもならば―――TVCMでガンガンやっている『パズドラ』というゲームに興味がある、でもスマホもタブレット端末も持っていない、って子どもはたくさんいるでしょう。
 そういう層に向けて、例えば「3DS用」「売り切りのパッケージソフト」「オンラインに繋がなくても遊べる」『パズドラ』を出して、「あのパズドラがとうとう3DS用ソフトとして登場!」ってCMを打てば食いつく子どもはムチャクチャ多いと思いますよ。


 この3DS版(仮)で『パズドラ』に慣れ親しむ子どもが増えれば、この子どもが大きくなった時にスマホやタブレットで『パズドラ』の後継作品を遊ぶかも知れないし、子ども向けのグッズ販売なんかもしやすくなります。『パズドラ』というゲームを一過性のブームに終わらせることなく、『ドラクエ』や『ポケモン』のように何十年と通用するブランドにするためには絶対に必要な次の一手ですよコレは。

 とか言って、出てきたのが3DS版『なめこ』みたいのだったらどうしよう(笑)。
 Wii Uでオンライン専用の基本無料ゲームとかだったらどうしよう(笑)。

 まぁ、そしたら「バーカバーカ!ドラクエやポケモンになれたかも知れないチャンスを自ら捨ててやんのー!バーカバーカ!」と言ってあげよう。




 でも、マジメな話。
 本家の『パズドラ』は「タッチパネルしか入力装置がないスマートホン向け」に「毎日ちょっとずつ遊ぶゲーム」としてデザインされたゲームだから、「探索」と「ストーリー」を最初から捨てて、「育成」と「戦闘」に特化したゲームになっていて―――それが「忙しい合間にRPGを遊びたかった大人」にヒットしたのだから。

 もし、私の予測どおりに「比較的時間のある子ども向け」に「ボタンやスライドパッドのある3DS用ソフト」として出すのならば、「探索」とか「ストーリー」の要素も強めてくる可能性も十分にありますよね。
 でも、それじゃ『ポケモン』になっちゃうじゃねえかという気もするし、よりによって3DSで『ポケモン』本編が出る前後にぶつけてくるのは死地に向かうもののような………




――2025年追記――
 この記事を書いてから12年……
 家庭用ゲーム機で出た『パズドラ』シリーズをまとめてみます。

・2013年12月『パズドラZ』(3DS、国内150万本の大ヒット)
・2015年4月『パズル&ドラゴンズ スーパーマリオブラザーズ エディション』(3DS、国内35万本の売上)
・2016年7月『パズドラクロス 神の章/龍の章』(3DS、国内25万本の売上)
・2020年1月『パズドラGOLD』(Switch、DL専売)
・2022年2月『PUZZLE & DRAGONS Nintendo Switch Edition』(Switch、定価500円)


 2013~2016年に出た3作は、「3DSは持っているけどスマホは持っていない」低年齢層向けに『パズドラ』を遊んでもらおうというパッケージソフトでヒットしました。スマホ版とちがってストーリーはかなり強化されて、『クロス』に至ってはテレビアニメとのメディアミックス作品でした。
 『Z』の150万本に比べると見劣りするかもしれませんが、国内25万本も十分すごい。

 『Z』の自由移動は拠点となる街だけだったそうですが、『クロス』になるとフィールドやダンジョンも自由に移動できるエンカウント式のRPGになっていたみたい。


 そこからNintendo Switchの時代になって出た『GOLD』や『Nintendo Switch Edition』は、対戦特化だったり、エディットモードが特徴だったり、『パズドラ』というコンテンツでちがう遊びを提案するダウンロード専用ソフトだったみたい。



 また、この記事を書いて以降、「ストーリー重視のスマホゲーム」も増えていったことで、スマホ用の『パズドラ』本編も2019年からストーリーダンジョンを導入しました。

 ゲーム業界全体で言うと、2017年の『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』に代表されるように日本国内でも(探索要素の強い)オープンワールドのゲームが大ヒットするようになります。
 『原神』のように「スマホ用でも出ています」というものもありますが、オープンワールドのゲームは流石に家庭用ゲーム機やPCの方が遊びやすい&安定して遊べるので……2013年前後にあった「スマホがあればゲーム機は遊べる、ゲーム機もPCもいらん」という空気はかなり薄まっていきます。

 「オープンワールドのようなコントローラの方が遊びやすいゲームはゲーム機orPCで」
 「タッチパネルの方が遊びやすいゲームはスマホで」

と、2025年現在は棲み分けられているんじゃないかと思います。



 干支が一巡するくらいの時間を経て、ゲーム業界の勢力図はガラッと変わりましたが……「すべてのゲームはスマホ用に集約されて、ゲーム機は絶滅する」こともなく、逆に「スマホゲーが衰退して誰もスマホでゲームを遊ばなくなる」こともなく、両方ともしっかり生き残っているのが一番の驚きだったかも知れません。


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