※ この記事は2010年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です
「サッカーのルールが分からない」という人の大半が仰る「特にオフサイドが分からない」という悩みを、この記事で見事なまでに解決してあげましょうじゃないですか!
W杯をきっかけにサッカーに興味を持ってくれた人にこそ読んでもらいたいですが、そういう人も一まとめに出来ないくらい千差万別だと思いますので……オフサイド講座「初級篇」「中級篇」「上級篇」と三段階に分けて解説しようと思います。「上級篇」と言っても、やまなしレベルなので大したものでもないですけど(笑)。
全く持って分からないという人は、今の段階で「上級篇」まで理解しようとせず、「初級篇」だけ読んで理解した気になるのがイイと思います。段階を踏んで、数ヵ月後に「中級篇」「上級篇」を読むとかでイイんですよ。いきなり全部を覚えるのは大変ですからね。
【オフサイド講座・初級篇】
1.オフサイドなんて分からなくても構わない
いきなり元も子もないことから始めました(笑)。
でも、ホントにそうなんですよ。頭でルールを分かることと、実際にプレイを見てオフサイドかどうかが判ることは別なんです。
テレビ中継を観ていても、リプレイのスローVTRを観るまでは判らないことなんてしょっちゅうです。
「何だよ!今のオフサイドだろ!」と思ってリプレイ観たら全然オフサイドじゃなかったり、「今のオフサイドじゃないだろ!」と思ってリプレイ観たら思いっきりオフサイドだったり、そんなことしょっちゅうです。10年以上サッカーを観ててもそうなんです。
今回のW杯でも、「アルゼンチンvsメキシコ」の試合で“リプレイで観れば明らかにオフサイドでノーゴールになるはずなのに”ゴールとして認められてしまった場面がありました。いわゆる誤審というヤツです。
この場面のテレビ中継、解説者の反応はこんなカンジでした。
解説「いやー、今のはアルゼンチンらしいスピードのある攻撃でしたね」
-国際映像でスローVTRが流れる-
解説「こ、これは……!(明らかにオフサイドですね…)」
この解説者が酷いワケではなくて、プロの解説者でもオフサイドかどうかの判断は難しいんです。
サッカーというのはものすごくスピーディなスポーツですし、どこのタイミングでパスを出すかなんか分からないものですし、スローVTRで確認しない限りは本当に判断が難しいんです。それをジャッジする審判(副審)は本当に偉いと思います。こんなに大変なら誤審が出ても仕方ない……とは思わないので、スローVTRの導入を頼みますよ。
――2025年追記――
この記事で書いていた「スローVTRの導入」は、2018年のW杯あたりから導入されて、現在では普通に使われるようになりました。VAR(ビデオアシスタントレフリー)というヤツですね。主審の判断で試合を止めて、ビデオを確認する制度が出来ました。
ということで、「サッカーって面白いな」と思い始めた人がオフサイドのルールが分からなくても別に問題ないと思います。
テレビで観ている場合は「オフサイドかどうか」は実況の人か解説の人が言ってくれますし、スタジアムで観ている場合は副審(旗持っている人)の旗が上がって&主審(笛吹く人)が手を挙げて再開させていればオフサイドだって思えばイイです。
僕らは別にサッカーの審判を目指すワケではないので、観戦をするだけならルールを覚えなくてもイイんですよ!
2.オフサイドは(そんなに)悪いことではない
オフサイドというのは「反則」「ファウル」の一つです。
しかし、サッカーの「反則」「ファウル」の中ではそんなに悪いことではないんですよ。
例えば、相手の足にスライディングタックルを食らわしたり、(キーパー以外が)手でボールをコントロールしたりは「すげー悪いこと」なんです。これが繰り返されるとサッカーの試合が壊れてしまうので、それ相応の“罰”を与えられるのです。
相手にフリーキック、もしくはペナルティエリア内の場合はペナルティキックが与えられます。
これらは即失点のピンチになるので―――「オマエらそんな悪いことやっていると、罰として失点のピンチにしてやっからな!」と厳しく取り締まられるのです。駐車違反すると罰金取られるみたいなもので、「罰ってイヤだよね?なら、やるんじゃねえぞ」という反則・ファウルなんです。
更に、これらの反則・ファウルが悪質な場合、イエローカード・レッドカードをもらうこともあり、出場停止や退場になってしまいます。「オマエらそんな悪いことやっていると、罰として試合に出れないようにしてやんよ!」ってことですね。
それに比べて、オフサイドというのは“罰”が超軽いんです。
「相手のボールから再開」、それだけなんです。
相手の間接フリーキックでの再開になりますが、オフサイドは大抵「相手のゴール近く」で取られるので、相手のゴール近くからのフリーキックでは失点のピンチになりにくいですし。むしろその間に守備陣形を整えるインターバルにもなります。
オフサイドを何十回繰り返そうが、イエローカードを受けることはありません。
むしろ、オフサイドになるというのは「チャンスを作っている」と考えることも出来ます。
元イタリア代表のフィリッポ・インザーギという選手は、常にオフサイドになるかどうかギリギリのプレイをするので「オフサイドの数が多いほど調子の良い選手」と言われていました。オフサイドにならなければ即1点取ってくるゴールハンター、こういう選手は相手のディフェンスからすると脅威なんですよ。
もちろんコレにはそれぞれの考えがあるので「オフサイドばっかり取られるな!」と怒る監督もいますけどね。まぁ、確かに「オフサイドにならずにゴールを取ってくる」のが最高なんですけど(笑)。そうそう上手くいくものでもないので、オフサイドになったぐらいで文句言うなよって僕は思っています。
※ オフサイド講座・初級篇はここまでです。
ここまで分かっていれば、もう観戦で困ることはないと思います!
「オフサイドのルールも知らずにサッカーを語るな」とか言われたら、「じゃー貴様は普段食べているパンがどうやって作られているのか知っているのか」と言ってあげましょう。別に全てを理解する必要はないんですよ。多分ケンカになりますけど(笑)。
【オフサイド講座・中級篇】
3.オフサイドの「サイド」は、サイド攻撃の「サイド」とは違う
さて、中級篇はルールの説明。
ですが、その前に“言葉をどう認識するのか”という話から始めます。
これ……ぶっちゃけ僕の認識です。
オフィシャルな「オフサイドという言葉が生まれた日」というのは調べても分からなかったので、こう考えると理解しやすいよくらいに捉えて下さるとありがたいです。
サッカーって「一つの言葉が二つ以上の意味を持つ」ことが多いんです。
例えば「ハーフ」。一週間前に書いた記事のように「オフェンシブハーフ」「ディフェンシブハーフ」と言えばポジションを表す言葉なのですが、「45分ハーフ」というように「90分を45分ずつ前後半に分けてやるよ」という意味で使われることもあるんです。
これが初心者には分かりにくいですし、
「オフサイド」の「サイド」という言葉はその最たるものだと思います。
サッカー用語で「サイド」という言葉が使われる時、「右サイド」「左サイド」「サイド攻撃」「サイドバック」という意味で使われることが多いです。図にするとこんなカンジの部分。

しかし、「オフサイド」の「サイド」はこの意味ではありません。
「敵サイド」「味方サイド」という認識で捉えるとイイと思います。この辺、多分ラグビーのルールに詳しいともっと深く説明できると思うんですが(サッカーとラグビーは兄弟のように分かれたスポーツなので)。僕はラグビー詳しくないのでゴメンなさい。
図にするとこんなイメージです。

「敵サイド」「味方サイド」の中で、オフになっている場所=使ってはいけない場所、という意味で捉えると「オフサイド」という言葉がしっくりくるんじゃないでしょうか。
両方のサイドに色を付けたのは「こちらが使ってはいけない場所」と「相手が使ってはいけない場所」の両方を示したかったので、実際にオフサイドを取られるのは「攻撃方向のサイド」だけです。このチームにとっては上方向のオレンジですね。
「使ってはいけない」というよりは、「この場所にいる味方にパスを出してはいけない」ということなんですが……その説明は↓の項目にて行います。
4.オフサイドのルール
ようやくルール解説だ!
オフサイドのルールは文章にすると「相手の2番目に後ろの選手よりゴールラインに近い位置にいる選手にパスを出してはいけない」という何だこのワケ分からない日本語という説明になってしまうんです。だから、初心者は理解不能になってパンクしてしまうという。
なので、この文章を分かりやすく分解していきましょう。
「相手のゴールラインから見て2番目にいる相手選手」
「よりも相手のゴールラインに近い味方選手にパスを出してはいけない」
ダメだ、まだ分かりにくい(笑)。
「相手のゴールラインから見て2番目にいる相手選手」とありますが、「相手のゴールラインから見て1番目にいる相手選手」は大抵の場合ゴールキーパーになります。大抵の場合、なので例外もあるんですが……それは一先ず忘れましょう。
「相手のゴールラインから見て1番後ろにいる相手選手(ただしゴールキーパーは除く)」
「よりも向こうにいる味方選手にパスを出してはいけない」
図にするとこんなカンジです。
オレンジの部分が「オフサイドポジション」で、ここにいる選手にパスを出すと「オフサイド」になってしまいます。(※ 守る側のオフサイドポジションはもちろん使って構いません)

もちろんサッカーの試合はごちゃごちゃ人が動くので、例えば一例でこんなカンジ。

このケースでの「オフサイドになるポジション」は以下の通り。
つまり、オレンジ色にかかっている灰色チームの選手にパスを出してしまうと「オフサイド」になるということです。

この状況で、灰色チームの選手が一番前にいる味方にパスを出すと「オフサイド」です。
ですが、その選手以外の選手にパスするのは構いませんし、パスを出さずにドリブルしたりシュートしたりは自由です。オフサイドというのはパスを出すこと&受けることを禁止するルールなんです。
ちなみに、厳密に言うと「今のプレイはオフサイドです!」と笛が吹かれるのは「パスを受ける」瞬間です。
パスが出ても、パスを受けなければ「オフサイド」になりません。なので、オフサイドポジションにいることを自覚した選手は、「俺オフサイドだからパス受けられねえや」と見送ることもあります。
――2025年追記――
オフサイドのルール自体は変わっていませんが、「審判が笛を吹くタイミング」は現在は変わりました。
――2025年追記――
オフサイドのルール自体は変わっていませんが、「審判が笛を吹くタイミング」は現在は変わりました。
オフサイドかどうか微妙なプレイがあっても、それが誤審の可能性があって、それをビデオ判定で覆す可能性もあるので……ゴールが決まるまで笛を吹かず=試合を止めずに、ゴールが決まってから笛を吹いてオフサイドだと宣言するようになりました。
「オフサイド・ディレイ」というシステムで、2020年~2021年辺りに採用され始めました。ビデオ判定導入ありきの制度ですよね。
※ オフサイド講座・中級篇はここまでです。
文章にするとやっぱり難しいですね。
何試合かサッカー中継を観るとオフサイドの場面はあると思うので、それを踏まえた上で読み直してもらえると理解出来るかも知れません。最近の中継では、スローVTRの際に「この線から先がオフサイドですよ」「このエリアがオフサイドですよ」みたいな表示が出ます。それが、この記事で書いたオレンジ色の部分ですね。
【オフサイド講座・上級篇】
5.伝家の宝刀スルーパス
10年以上前、中田英寿が国民的スターになった頃―――「キラーパス」という言葉で彼のプレイが評されました。何となく格好イイ言葉ですからね!ペルージャに移籍した頃の中田選手のインタビューを見ると、その言われように本人は閉口していたみたいなんですが……
正確な意味は、多分「スルーパスの中でも得点に繋がるようなスルーパス」ということなのかなと思います。これは、実はオフサイドのルールと密接に絡みますし、この記事の2番に登場したフィリッポ・インザーギの「オフサイドギリギリのプレイで1点を狙う」プレイにも繋がります。
中田選手は「オフサイドギリギリのパスを出す」代表格の選手(元選手)で、フィリッポ・インザーギは「オフサイドギリギリのパスを受ける」代表格の選手です。
また図で説明しましょう。

上の図、灰色チームの一番前にいる選手はオフサイドポジションにいますね。
この選手にパスを出してしまうと「オフサイド」になってしまいます。

この場合、誰もオフサイドポジションにいないので誰にパスを出しても「オフサイド」になりませんよね。

では、このように“誰もいない”オフサイドポジションにボールを蹴って―――

パスが出た後に、味方選手がボールを追いかけてパスを受けた場合は「オフサイド」になるでしょうか?
なりません。
立派な得点パターンですし、現代サッカーではこういうシーンは非常に多いです。
相手の守備がいるところよりも、いないところの方がシュートが撃ちやすいですからね。
こうやって“誰もいないところ”にパスを出すのがスルーパスです。
サッカーのパスって、大別すると2種類しかないんですよ。
・“味方の選手”に出す「普通のパス」
・“誰もいないところ”に出す「スルーパス」
もちろん闇雲にスルーパスを出しても上手くはいきません。
相手の守備も「パスをカットしてやろう」という気満々なので、走りあいになってしまいますから―――味方の選手が走り出して、相手の選手がまだ走り出していないタイミングでパスを出さなくてはなりません。相当難しいプレイなので、中田選手が「キラーパス」「キラーパス」騒がれたんですね。
もちろん中田選手以外もスルーパスは使いますよ。
むしろ、サッカーやっている人なら誰でも使うというか……スルーパスなしでサッカーをするのは、ジャンケンでパーを使わずに勝てと言われるような話なんです。
6.オフサイドにならないケース
6-1.“マイナス”のパス
サッカー中継でよく言われる「マイナスのクロス」というのは、「マイナスの角度のクロス」=「自分よりも斜め後ろにいる選手へのクロス」という意味で。こういう攻撃パターンも非常に多いです。あ……クロスというのはパスと同じ意味だと思って下さいね。
「自分よりも(斜め)後ろへのパス」はオフサイドになりません。
何故かというと、オフサイドというのは「待ち伏せ」禁止のルールなので……という説明が一般的なんですけど。この説明だと理解が難しいと思うんで。もう覚えるしかないです!理由はどうでもイイ!(笑)

また図を使います。
灰色チーム、またしても一番前の選手がオフサイドポジションですね。この選手にはパスが出せません。このままだと攻撃が手詰まりなので、頑張ってドリブルで一人抜きました。“ドリブルで一人抜く”のってすげー大変なんですけどね、頑張って抜きました。

あら不思議。オフサイドのエリアがググッと狭まりました。誰にでもパスを出せますね。
これは「自分よりも(斜め)後ろへのパスはオフサイドにならない」ルールがあるからで、サッカーにおいて「サイド攻撃」が非常に重要視されている理由の一つです。
サイドを制するものがサッカーを制すんです。日本が今回のW杯で良い成績を残せたのは、両サイドバックが相手にドリブルで抜かれなかったからとも言えるんです。
6-2.スローイン、ゴールキックでのパス
ぶっちゃけどうしてこんなルールがあるのか理由は分かりませんが、これらのプレイでオフサイドポジションにいる味方にパスを出してもオフサイドにはなりません。
今のサッカーだとゴールキックを受けた選手がそのままゴールするケースも多いので、ゴールキックもオフサイドの適用内にルール変更した方がイイんじゃないかと僕は思っています。
駆け足ですが、ひとまずここまで。
今回のW杯「オランダvsウルグアイ」のような“プレーに干渉したかどうか”の議論も扱うか悩んだのですが、自分の中でもグレーゾーンなプレイだと思っているので取り上げませんでした。
あ……“戻りオフサイド”について書くの忘れました。
でも、もう時間がないので………スルーパスとは逆に、「オフサイドポジション」にいる時に出たパスを、「オフサイドポジションじゃない場所」で受けてもオフサイドになるというルールなんですが。図を用意する時間がないので申し訳ないです。
○ 締めの言葉
自分は、サッカーの面倒くさいところの説明はなるべく省いて、サッカーの面白い部分だけを取り上げた方がイイと思っているんですけど。ポジションの用語と、オフサイドのルールについては、「どうしてサッカーは面白いのか」の核となっている部分なので2週に渡って面倒くさい説明をさせて頂きました。お付き合い下さってありがとうございました。
来週からは「面白い部分」の話を書きたいなぁ……
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