※ この記事は2023年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
・育成するのは「娘」でも「生徒」でもなく、「自分自身」な高校生活シミュレーター
・楽しい楽しい「デート」をしてしまえば、「勉強」する時間が失われてしまう
・どうして藤崎詩織は「ラスボス」と呼ばれているのか?
『ときめきメモリアル』
・開発・発売:コナミ
・PCエンジンSUPER CD-ROM2版:1994年5月27日発売
プレイステーション版:1995年10月13日発売
ゲームアーカイブス版:2009年11月11日配信開始
スーパーファミコン版:1996年2月9日発売
セガサターン版:1996年7月19日発売
Windows95版:1997年12月4日発売
ゲームボーイ版:1999年2月11日発売
PSP版:2006年3月9日発売
Nintendo Switch版:2025年5月8日発売
・恋愛シミュレーション
・セーブスロット:(セガサターン版は)本体7コ+パワーメモリー14コ
(平日の行動を決める前にセーブが可能)
私が1周クリアまでかかった時間は約08時間でした
※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください
【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
※ 苦手な人もいそうなNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
・恋愛シミュレーション
・セーブスロット:(セガサターン版は)本体7コ+パワーメモリー14コ
(平日の行動を決める前にセーブが可能)
私が1周クリアまでかかった時間は約08時間でした
※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください
【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
※ 苦手な人もいそうなNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。
・シリアス展開:×
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:△(好感度の低いヒロインが他の男とくっ付くことはある)
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×(色んなヒロインがいるのでバランスは取れてると思う)
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:×
・BL要素:△(隠し要素で男性から告白される展開もあったらしい)
・ラッキースケベ:○(女風呂を覗くことが可能)
・セックスシーン:×
↓1↓
◇ 育成するのは「娘」でも「生徒」でもなく、「自分自身」な高校生活シミュレーター
このゲームは1994年にPCエンジンの拡張機器SUPER CD-ROM2用のソフトとして発売されたゲームです。そこから口コミによって大きく広がり、翌年からプレイステーションやスーパーファミコン、セガサターンと移植されていき、大ヒットしていきます。
いわゆる「恋愛ゲーム」「ギャルゲー」の市場を作った金字塔的なソフトなのは間違いないし、後のゲームに大きく影響を与えていると思うのですが……「恋愛ゲーム」としても「育成シミュレーション」としても異質な存在だと思うんですよね。
まず、『ときめきメモリアル』以前から「恋愛を主題としたゲーム」はありました。
まぁ……どこからが「エロ」で、どこまでが「恋愛」なのかは難しい線引きではありますが。パソコン用の18禁ゲームでは「エロ/恋愛」を描いたものが1980年代からあって、1992年の『同級生』(エルフ)は14人のヒロインの「悩み」と向き合うストーリーが描かれていて、今日の「恋愛アドベンチャー」ゲームの雛型となっていたと言えます。
(関連記事:『同級生』レビュー/21日間を自由に歩き回れる夏休みシミュレーション)

<画像はFANZA版『同級生(オリジナル版)』より引用>
また、2023年現在「恋愛ゲーム」「ギャルゲー」という言葉で連想されるゲームは、一つのゲームに複数人のヒロインがいて、選択肢によって「各ヒロインのルート」に突入して、彼女達と結ばれるエンドに進む―――といったストーリー重視の「恋愛アドベンチャー」だろうと思います。
しかし、これは『ときめきメモリアル』が発売された1994年よりも後に主流となったジャンルで、『ときめきメモリアル』の公式ジャンルは「恋愛アドベンチャー」ではなく「恋愛シミュレーション」なんですね。
1992年の『弟切草』や1994年の『かまいたちの夜』以降、ゲーム機用アドベンチャーゲームで「ノベルゲーム」が主流になっていたところ……1996年の『雫』(Leaf)がそのシステムを18禁ゲームにも取り入れて、「ビジュアルノベル」という新たなジャンルを作り出します。
これ以降パソコン用の18禁ゲームに「ストーリー重視」「作家の才能が活かされる場所」という流れが生まれ、そうした作品がエロシーンを抜いて家庭用ゲーム機用にも移植されたため、「ギャルゲー=ストーリー重視のジャンル」と認識されていったと思います。「(抜きゲーではなく)泣きゲー」と評されたkeyの作品(1999年『Kanon』や、2000年『AIR』など)や、今や元18禁ゲームだったことすら忘却されつつある『Fate/stay night』(2004年、TYPE-MOON)等々々……
しかし、『ときめきメモリアル』はこの系譜とはちょっとちがっていて、ストーリーがあまり重視されていません。特定の季節で、特定のキャラと、特定の場所にデートに行くと起こるイベントなんかはたくさんありますが、それらのイベントを観ていなくてもそのコのエンディングにはいけます。重要なのはパラメータ管理の方です。
誰が遊んでも同じストーリーを読むことになる「アドベンチャーゲーム」というよりも、プレイヤーの数だけちがう体験をする「シミュレーションゲーム」のジャンルなんですね。

<画像はSteam版『プリンセスメーカー リファイン』より引用>
育成シミュレーションの歴史もなかなかに語りがいのあるテーマです。
まず前提として1980年代に様々なシミュレーションゲームが出ていたこと、『ドラゴンクエスト』ブームにより「成長要素のあるゲーム」が他ジャンルにも影響を与えていたことがあると思うんですね。1990年にはシミュレーションRPGというジャンルを確立させた『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』が発売されていましたし。
そんな中、1991年にパソコン用のゲームとして発売された『プリンセスメーカー』(ガイナックス)は、恐らくは『Wizardry』のようなRPGや、『信長の野望』のようなシミュレーションゲームに影響を受けて生まれたゲームだと思われます。それらのゲームの「育てる」要素だけを抽出し、育て方によって「娘」の将来が変わるマルチエンディングのシミュレーションゲームとして新しいジャンルを築き上げました。
その半年後に『ダービースタリオン』(1991年、アスキー)が出ていることを考えると、「育成シミュレーション」というジャンルにおいて1991年は始まりの年だと言ってイイのかも知れませんね。

<画像はセガサターン版『卒業S』より引用>
1992年には、高校教師となって5人の生徒を育成する『卒業 ~Graduation~』(ジャパンホームビデオ)が発売されます。
舞台が「現代日本の高校」になったこと、そして「ヒロインが複数になった」こと、1993年の時点でPCエンジンに移植されていたこと、電撃PCエンジンが主導してドラマCDや小説・漫画などのメディアミックスを行っていたことは、メーカーは違えど1994年の『ときめきメモリアル』にも影響を与えていたんじゃないかと思われます。

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
ということで、『ときめきメモリアル』も数字管理が重要な「育成シミュレーション」のジャンルのゲームです。なんせ、画面にずっと「現在のパラメータ」が表示されていますからね。
育てるのは「自分自身」。
大体は1週間に2回、「平日」と、日曜日などの「休日」に何をするかのコマンドを選ぶと、そのコマンドによってパラメータが増減します。例えば、「運動」コマンドを選べば、「運動」「根性」が大きく上がる一方、「文系」「理系」「容姿」などがちょっと下がるといったカンジです。どのコマンドを選んでも「体調」が悪くなるので、「休養」を使って「体調」を回復させるのも重要です。
と、こんなカンジでパラメータ管理をしていき、高校3年間を過ごし、卒業を迎えたときの数字で進路が決まるので、よりよい進路を目指そう―――というゲームではありません。
『プリンセスメーカー』や『卒業』はそういうゲームだったし、『ときめきメモリアル』に影響を受けたと言われている『実況パワフルプロ野球』シリーズの「サクセス」なんかもそういうゲームだと思うのですが。
『ときめきメモリアル』の最終的な目標は、「女のコから告白される」なんですよ。そこに主人公の進路は関係ありません(恐らく)。「恋愛」を疎かにしていると、一流大学に入っても「孤独に卒業する」バッドエンドになってしまいます。

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
※ 自分から告白できるのはセガサターン版独自の仕様ね
つまり、このゲーム……自分自身を育成する「育成シミュレーション」の型を踏襲してはいますが、実は「育成」だけでは碌な人生にならないという「育成シミュレーションのアンチテーゼ」的な側面も持っているんですよ。
なので、『ときめきメモリアル』というゲームは、「恋愛ゲーム」としても異質だし、「育成シミュレーション」としても異質な存在だと思うんですね。
↓2↓
◇ 楽しい楽しい「デート」をしてしまえば、「勉強」する時間が失われてしまう
純粋に「育成シミュレーション」として考えると、このゲーム―――相当ヌルイです。
例えば『プリンセスメーカー』の場合、何をするにもお金がかかるので、「体力を回復させるためにはお金が必要」→「お金を入手するためにはバイトをしなくちゃ」→「バイトをすると体力がごっそり減る」→「バイトで稼いだお金が、バイトで減った体力を回復させるために使われる」みたいなサイクルからなかなか抜け出せないのですが……
『ときめきメモリアル』にはお金の概念がないので、好きなだけ「休養」をとって体力を回復させられるし、「勉強」も「運動」も上がる数字に比べて下がる数字が少ないため、満遍なくコマンドを選んでいれば割と簡単に完璧超人みたいに育てられるんです。一流大学合格も、そんなに難しくはないです。
しかし、前項に書いたように、それだけでは「孤独エンド」になってしまいます。
意中のヒロインと結ばれるためには、とにかく「デート」を重ねなければなりません。

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
このゲーム、「恋愛シミュレーション」とか「高校生活シミュレーター」というよりも「デートシミュレーター」なのでは?というくらいに「女のコとのデート」が気合入れて作られているんですね。
まずデートスポットがムチャクチャ多いですし、夏の海やプール、冬のスキー場・スケート場といった季節限定のデートスポットもあります。遊園地でも「○月に行けばナイトパレードをやっている」といった要素もありますし、映画館やコンサートホールは時期によって演目が変わります。これらの情報は、休日に開ける「情報誌」に載っているので小まめにチェックしましょう。
例えば、藤崎詩織さんは恋愛映画が好きで、早乙女優美ちゃんはアニメが好きなので、それらが公開されている時期に合わせて映画館デートに誘うと良いんですね。

・シリアス展開:×
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:△(好感度の低いヒロインが他の男とくっ付くことはある)
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×(色んなヒロインがいるのでバランスは取れてると思う)
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:×
・BL要素:△(隠し要素で男性から告白される展開もあったらしい)
・ラッキースケベ:○(女風呂を覗くことが可能)
・セックスシーン:×
↓1↓
◇ 育成するのは「娘」でも「生徒」でもなく、「自分自身」な高校生活シミュレーター
このゲームは1994年にPCエンジンの拡張機器SUPER CD-ROM2用のソフトとして発売されたゲームです。そこから口コミによって大きく広がり、翌年からプレイステーションやスーパーファミコン、セガサターンと移植されていき、大ヒットしていきます。
いわゆる「恋愛ゲーム」「ギャルゲー」の市場を作った金字塔的なソフトなのは間違いないし、後のゲームに大きく影響を与えていると思うのですが……「恋愛ゲーム」としても「育成シミュレーション」としても異質な存在だと思うんですよね。
まず、『ときめきメモリアル』以前から「恋愛を主題としたゲーム」はありました。
まぁ……どこからが「エロ」で、どこまでが「恋愛」なのかは難しい線引きではありますが。パソコン用の18禁ゲームでは「エロ/恋愛」を描いたものが1980年代からあって、1992年の『同級生』(エルフ)は14人のヒロインの「悩み」と向き合うストーリーが描かれていて、今日の「恋愛アドベンチャー」ゲームの雛型となっていたと言えます。
(関連記事:『同級生』レビュー/21日間を自由に歩き回れる夏休みシミュレーション)

<画像はFANZA版『同級生(オリジナル版)』より引用>
また、2023年現在「恋愛ゲーム」「ギャルゲー」という言葉で連想されるゲームは、一つのゲームに複数人のヒロインがいて、選択肢によって「各ヒロインのルート」に突入して、彼女達と結ばれるエンドに進む―――といったストーリー重視の「恋愛アドベンチャー」だろうと思います。
しかし、これは『ときめきメモリアル』が発売された1994年よりも後に主流となったジャンルで、『ときめきメモリアル』の公式ジャンルは「恋愛アドベンチャー」ではなく「恋愛シミュレーション」なんですね。
1992年の『弟切草』や1994年の『かまいたちの夜』以降、ゲーム機用アドベンチャーゲームで「ノベルゲーム」が主流になっていたところ……1996年の『雫』(Leaf)がそのシステムを18禁ゲームにも取り入れて、「ビジュアルノベル」という新たなジャンルを作り出します。
これ以降パソコン用の18禁ゲームに「ストーリー重視」「作家の才能が活かされる場所」という流れが生まれ、そうした作品がエロシーンを抜いて家庭用ゲーム機用にも移植されたため、「ギャルゲー=ストーリー重視のジャンル」と認識されていったと思います。「(抜きゲーではなく)泣きゲー」と評されたkeyの作品(1999年『Kanon』や、2000年『AIR』など)や、今や元18禁ゲームだったことすら忘却されつつある『Fate/stay night』(2004年、TYPE-MOON)等々々……
しかし、『ときめきメモリアル』はこの系譜とはちょっとちがっていて、ストーリーがあまり重視されていません。特定の季節で、特定のキャラと、特定の場所にデートに行くと起こるイベントなんかはたくさんありますが、それらのイベントを観ていなくてもそのコのエンディングにはいけます。重要なのはパラメータ管理の方です。
誰が遊んでも同じストーリーを読むことになる「アドベンチャーゲーム」というよりも、プレイヤーの数だけちがう体験をする「シミュレーションゲーム」のジャンルなんですね。

<画像はSteam版『プリンセスメーカー リファイン』より引用>
育成シミュレーションの歴史もなかなかに語りがいのあるテーマです。
まず前提として1980年代に様々なシミュレーションゲームが出ていたこと、『ドラゴンクエスト』ブームにより「成長要素のあるゲーム」が他ジャンルにも影響を与えていたことがあると思うんですね。1990年にはシミュレーションRPGというジャンルを確立させた『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』が発売されていましたし。
そんな中、1991年にパソコン用のゲームとして発売された『プリンセスメーカー』(ガイナックス)は、恐らくは『Wizardry』のようなRPGや、『信長の野望』のようなシミュレーションゲームに影響を受けて生まれたゲームだと思われます。それらのゲームの「育てる」要素だけを抽出し、育て方によって「娘」の将来が変わるマルチエンディングのシミュレーションゲームとして新しいジャンルを築き上げました。
その半年後に『ダービースタリオン』(1991年、アスキー)が出ていることを考えると、「育成シミュレーション」というジャンルにおいて1991年は始まりの年だと言ってイイのかも知れませんね。

<画像はセガサターン版『卒業S』より引用>
1992年には、高校教師となって5人の生徒を育成する『卒業 ~Graduation~』(ジャパンホームビデオ)が発売されます。
舞台が「現代日本の高校」になったこと、そして「ヒロインが複数になった」こと、1993年の時点でPCエンジンに移植されていたこと、電撃PCエンジンが主導してドラマCDや小説・漫画などのメディアミックスを行っていたことは、メーカーは違えど1994年の『ときめきメモリアル』にも影響を与えていたんじゃないかと思われます。

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
ということで、『ときめきメモリアル』も数字管理が重要な「育成シミュレーション」のジャンルのゲームです。なんせ、画面にずっと「現在のパラメータ」が表示されていますからね。
育てるのは「自分自身」。
大体は1週間に2回、「平日」と、日曜日などの「休日」に何をするかのコマンドを選ぶと、そのコマンドによってパラメータが増減します。例えば、「運動」コマンドを選べば、「運動」「根性」が大きく上がる一方、「文系」「理系」「容姿」などがちょっと下がるといったカンジです。どのコマンドを選んでも「体調」が悪くなるので、「休養」を使って「体調」を回復させるのも重要です。
と、こんなカンジでパラメータ管理をしていき、高校3年間を過ごし、卒業を迎えたときの数字で進路が決まるので、よりよい進路を目指そう―――というゲームではありません。
『プリンセスメーカー』や『卒業』はそういうゲームだったし、『ときめきメモリアル』に影響を受けたと言われている『実況パワフルプロ野球』シリーズの「サクセス」なんかもそういうゲームだと思うのですが。
『ときめきメモリアル』の最終的な目標は、「女のコから告白される」なんですよ。そこに主人公の進路は関係ありません(恐らく)。「恋愛」を疎かにしていると、一流大学に入っても「孤独に卒業する」バッドエンドになってしまいます。

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
※ 自分から告白できるのはセガサターン版独自の仕様ね
つまり、このゲーム……自分自身を育成する「育成シミュレーション」の型を踏襲してはいますが、実は「育成」だけでは碌な人生にならないという「育成シミュレーションのアンチテーゼ」的な側面も持っているんですよ。
なので、『ときめきメモリアル』というゲームは、「恋愛ゲーム」としても異質だし、「育成シミュレーション」としても異質な存在だと思うんですね。
↓2↓
◇ 楽しい楽しい「デート」をしてしまえば、「勉強」する時間が失われてしまう
純粋に「育成シミュレーション」として考えると、このゲーム―――相当ヌルイです。
例えば『プリンセスメーカー』の場合、何をするにもお金がかかるので、「体力を回復させるためにはお金が必要」→「お金を入手するためにはバイトをしなくちゃ」→「バイトをすると体力がごっそり減る」→「バイトで稼いだお金が、バイトで減った体力を回復させるために使われる」みたいなサイクルからなかなか抜け出せないのですが……
『ときめきメモリアル』にはお金の概念がないので、好きなだけ「休養」をとって体力を回復させられるし、「勉強」も「運動」も上がる数字に比べて下がる数字が少ないため、満遍なくコマンドを選んでいれば割と簡単に完璧超人みたいに育てられるんです。一流大学合格も、そんなに難しくはないです。
しかし、前項に書いたように、それだけでは「孤独エンド」になってしまいます。
意中のヒロインと結ばれるためには、とにかく「デート」を重ねなければなりません。

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
このゲーム、「恋愛シミュレーション」とか「高校生活シミュレーター」というよりも「デートシミュレーター」なのでは?というくらいに「女のコとのデート」が気合入れて作られているんですね。
まずデートスポットがムチャクチャ多いですし、夏の海やプール、冬のスキー場・スケート場といった季節限定のデートスポットもあります。遊園地でも「○月に行けばナイトパレードをやっている」といった要素もありますし、映画館やコンサートホールは時期によって演目が変わります。これらの情報は、休日に開ける「情報誌」に載っているので小まめにチェックしましょう。
例えば、藤崎詩織さんは恋愛映画が好きで、早乙女優美ちゃんはアニメが好きなので、それらが公開されている時期に合わせて映画館デートに誘うと良いんですね。


<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
ヒロインが11人いて、デートスポットの数+季節イベントや演目の違いなどの数だけ会話がちゃんと変わるし、(主人公以外は)しっかりフルボイスです(※1)。
更に、制服に夏服・冬服のバリエーションがあるだけでなく、季節によって私服も変化します。夏祭りには浴衣を着てくれて、海やプールでは水着を着てくれて、スキー場ではスキーウェアを着てくれます。そんなに数は多くないですが、表情差分もしっかりあります。
(※1:スーパーファミコン版など、機種性能の問題でフルボイスではないバージョンもありますが……)

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
キャラとデートスポットの組み合わせで、1枚絵が見られるイベントが発生することもあります。いわゆるイベントスチル!
女のコといろんなところに出かけて「そこで生まれる会話」とか「彼女の着てくる服」がしっかり変わることや、彼女の好みに合わせてデートに誘う場所やタイミングを考えるなど……「女のコとのデート」のワクワク感がゲームとしてしっかり表現されているんですね。
例えば、『同級生』などの「恋愛アドベンチャーゲーム」にも「女のコとデートに行くイベント」なんかはもちろんあるのだけど、決められたストーリーに沿ったデートじゃなくて、自分でしっかりデートプランを考えている感覚が『ときめきメモリアル』にはあるんですよ。
また、ゲームとして思い切ったことに……このゲームには「お金」の概念がないため、お金がなくて「デート」に誘えないなんてことにはなりません。コンサートやスタジアムにも行き放題。
ただし、女のコの好みじゃないところに誘おうとしたり、こちらの「容姿」パラメータが低すぎたりするとデート出来ないこともあるらしいです。
ということで、ムチャクチャ気合を入れて作られていて、その分だけ楽しい楽しい「デート」で、意中のヒロインと結ばれるためにはそれなりの回数を誘った方がイイのは間違いないのですが……一つだけ、ゲーム的なデメリットがあります。
それは、
「女のコとデート」をしても、育成シミュレーションの「パラメータ」は増えないということです。
このゲーム、「育成シミュレーション」としてはヌルイと書きました。
「勉強」や「運動」などのコマンドを満遍なく選んでいけば、自然とパラメータは高くなるからです。
しかし、「女のコとのデート」は(主人公の)パラメータは増えません。「女のコとのデート」から得られるものは何もないのです。好雄と喋っているだけでも「雑学」パラメータが上がるのに、それもないのです!
つまり、「女のコとのデート」をたくさんすればするほど、その時間分だけ勉強や運動などのコマンドで「上がるはずだったパラメータ」を上げることが出来ないんですね。「恋愛要素」と「育成要素」がトレードオフ、ある意味ではリアル!

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
女のコとデートをするためには、まず「休日」に女のコに電話をかけてデートのスケジュールを決める必要があります。そして、実際にデートが出来るのも「休日」なので―――1回のデートに「休日」2日分を要するんですね。
そして、「育成シミュレーション」的には「休日」に行ったコマンドは「平日」の約4日分の増減をするらしいので、女のコと1回デートすると「8日分の勉強」が出来なくなるんですね(※2)。恋愛に現を抜かさなければ楽勝で一流大学に行けるのに、「デート」ばかりしていると成績が上がらない……!
(※2:女のコからデートに誘ってくれた場合は、誘いの電話が要らないので「休日」1回分でデートが出来ます。逆に、女のコと出会った直後は電話番号を知らないので、好雄に電話をして電話番号を聞いて、女のコに電話をかけて、実際にデートに行ってと、「休日」3回分が必要)

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
このゲーム……高校の「入学」から「卒業」までの3年間を追体験して、「体育祭」や「文化祭」、「修学旅行」なんかの行事も楽しめる「高校生活シミュレーター」であることは間違いないんですが。
その限られた3年間という「時間」の内、どれだけを「自分を育成する時間」に充てて、どれだけを「女のコと過ごす時間」に充てられるかのバランスに右往左往するスケジュール管理のゲームなんですね。
ここが他の「恋愛ゲーム」と一線を画すところだし、他の「育成シミュレーション」とも一線を画すところです。「恋愛ゲーム」でありながら「恋愛にばかり現を抜かしてはならない」し、「育成シミュレーション」でありながら「パラメータの数字だけ見ていてもバッドエンドになってしまう」んです。
だから、このジャンルの「金字塔」でありながら、「異質な存在」だと思うんですね。
↓3↓
◇ どうして藤崎詩織は「ラスボス」と呼ばれているのか?

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
このゲームを遊んだことがない人も、「藤崎詩織の名前」と「彼女の攻略難度が恐ろしく高い」ことはご存じじゃないでしょうか。事前に募集した「ミリしら」でも、3人とも「攻略難易度が高い」と書いていましたからね(笑)。
しかし、実際にどういう理由で難しいのかは知られておらず、イメージだけが先行して「気難しい女」みたいに思われているんじゃないでしょうか。何故彼女が「ラスボス」と言われるのかは、このゲームのゲームシステムが分かっていないと伝わらないんですね。
ということで、この項ではこのゲームの「エンディング条件のネタバレ」について軽く触れます。今から自分でプレイされるという人は、読まない方がイイと思いますよ!

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
まず、このゲームには11人のヒロイン+隠しキャラがいます。
11人のヒロインは、全員が「デート」に誘えるし、デート会話もあるし、エンディングもあります。1992年の『同級生』がそうだったように、「好きな女のコを選んでそのコと結ばれる」遊び方をした人も多かったと思いますし、「恋愛ゲーム」「ギャルゲー」にはそういうイメージがあるかと思うのですが。
初代『ときめきメモリアル』においては「藤崎詩織」さんだけは特別扱いで、ゲームデザイン的には「藤崎さんと結ばれることが目標」「でも、他のコと結ばれることも出来るよ」くらいのカンジなんです。不本意な例えですけど、『ドラクエV』で「ストーリー的にはビアンカを選ぶのが普通」「でも、フローラを選ぶことも出来るよ」みたいな話です。
まず、オープニングの時点で唯一登場しているヒロインな上に、オープニングで主人公は「伝説の木の下で告白されたい相手」として藤崎さんの顔を思い浮かべていますからね。



<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
また、ゲームの3分の2が終わって3年生に進級したタイミングで、「藤崎さんエンド」に足りないパラメータと、「このままだとくっ付いてしまう相手」が提示されます。
他のヒロインに失礼ではと思わなくもないのですが、実際このゲーム……他のヒロインは、藤崎詩織エンドを邪魔する妨害キャラ的な側面を持っているんですよね。

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
前の項まで私は「恋愛要素」と「育成要素」がトレードオフと書いてきたのですが、実は「育成要素」でパラメータを上げることが「恋愛要素」にもつながってくるのです。
それが、各ヒロインの登場条件とエンディング条件です。
必ず登場する「藤崎詩織」と「早乙女優美」以外のヒロインは、基本的に主人公の特定パラメータが一定以上になることによって登場します(※3)。1人例を挙げると、虹野さんは「根性」を一定以上にすると登場して、エンディングで結ばれるには「運動」と「根性」のパラメータが高い必要がある―――みたいなカンジですね。
(※3:その他には、同じ部活に入って部活コマンドをたくさん選ぶという条件もあります)
運動タイプのヒロインは「運動」系のパラメータが高いと、出会う確率も結ばれる確率も高くなるし。文系タイプのヒロインは「文系」系のパラメータが高いと、出会う確率も結ばれる確率も高くなるというイメージで良いと思います。
しかし、「藤崎詩織」だけは特別なんです。
このコは最初から登場している反面、結ばれるためには「全パラメータ」が高くないといけなくて、「全パラメータ」が高くないと「デート」を重ねてもなかなか好感度が上がっていかないらしいです。そのため、「育成シミュレーション」部分をバランスよく効率よくプレイする必要があるのですが……

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
そうして全パラメータを上げまくっていると、「他のヒロインの登場条件」を満たしてしまい、他のヒロインが次々と登場してくるんですね。

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
ヒロインが増えるだけならイイのでは?と思われるかもですが、このゲームには「爆弾システム」なるものが存在していて、簡単に説明すると「登場したまま放ったらかしにしている女のコがいると、爆弾を爆発させて他のキャラの好感度も下げる」のです。
つまり、「今回は藤崎さん狙いで行くぞ!」と決めてプレイしても、藤崎さん以外の女のコともデートをしていないと、その女のコが爆弾を爆発させて、藤崎さんの好感度まで下げてくるのです。
爆弾を発生させない条件はデートをすることで、爆弾を消す条件もデートをすることなのですが……前項に書いたように「デート」をするには休日2日分を消費するため、「育成」に費やす時間が奪われるし、もし爆弾が同時に複数発生した場合は爆弾処理デートが間に合わないで大惨事になりかねません。
この「意中の女のコと結ばれるために、他の女のコとデートをしなければならない」システムは何だよと、よくネタにされるのですが……このゲームがあくまで「藤崎詩織と結ばれることが目標のゲーム」なんだと考えると、納得のシステムなんですね。
・藤崎さんと結ばれるためには、全パラメータを上げる必要がある
→ すると、藤崎さん以外のヒロインが次々と登場してくる
→ 藤崎さん以外のヒロインともデートをしないと、爆弾が発生してしまう
→ 藤崎さん以外のヒロインとデートしていると、「育成」する時間が失われる
→ 卒業のタイミングまでに、藤崎さんエンドに必要なパラメータに届かない
「恋愛要素」と「育成要素」がトレードオフになっているシステムを活かしていて、その両方を上手いバランスでこなさないとたどり着けないのが「藤崎詩織エンド」なんです。
そのため、このゲームを効率よく攻略していこうとすると、「意中のヒロイン以外はなるべく登場させない」プレイになっていくという。何その「セレクトボタンを押してサブ画面に切り替えると敵が消滅するので、セレクトボタンを連打しながら進むのが最適解」な『たけしの挑戦状』みたいな攻略法は!
◆ で、結局どういう人にオススメ?

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
やっぱり、このゲームって「しっかりゲーム」なんですよね。
「リスクとリターン」がちゃんとあって、攻略法をしっかりと考える必要があるんです。
それでいて気ままな高校生活をしてもイイし、藤崎さん以外のヒロインと結ばれてもイイ……その自由度の高さこそがこのゲームの魅力だと思うので、ゲームに自由度を求める人にこそ是非オススメしたいです。
ヒロインが11人いて、デートスポットの数+季節イベントや演目の違いなどの数だけ会話がちゃんと変わるし、(主人公以外は)しっかりフルボイスです(※1)。
更に、制服に夏服・冬服のバリエーションがあるだけでなく、季節によって私服も変化します。夏祭りには浴衣を着てくれて、海やプールでは水着を着てくれて、スキー場ではスキーウェアを着てくれます。そんなに数は多くないですが、表情差分もしっかりあります。
(※1:スーパーファミコン版など、機種性能の問題でフルボイスではないバージョンもありますが……)

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
キャラとデートスポットの組み合わせで、1枚絵が見られるイベントが発生することもあります。いわゆるイベントスチル!
女のコといろんなところに出かけて「そこで生まれる会話」とか「彼女の着てくる服」がしっかり変わることや、彼女の好みに合わせてデートに誘う場所やタイミングを考えるなど……「女のコとのデート」のワクワク感がゲームとしてしっかり表現されているんですね。
例えば、『同級生』などの「恋愛アドベンチャーゲーム」にも「女のコとデートに行くイベント」なんかはもちろんあるのだけど、決められたストーリーに沿ったデートじゃなくて、自分でしっかりデートプランを考えている感覚が『ときめきメモリアル』にはあるんですよ。
また、ゲームとして思い切ったことに……このゲームには「お金」の概念がないため、お金がなくて「デート」に誘えないなんてことにはなりません。コンサートやスタジアムにも行き放題。
ただし、女のコの好みじゃないところに誘おうとしたり、こちらの「容姿」パラメータが低すぎたりするとデート出来ないこともあるらしいです。
ということで、ムチャクチャ気合を入れて作られていて、その分だけ楽しい楽しい「デート」で、意中のヒロインと結ばれるためにはそれなりの回数を誘った方がイイのは間違いないのですが……一つだけ、ゲーム的なデメリットがあります。
それは、
「女のコとデート」をしても、育成シミュレーションの「パラメータ」は増えないということです。
このゲーム、「育成シミュレーション」としてはヌルイと書きました。
「勉強」や「運動」などのコマンドを満遍なく選んでいけば、自然とパラメータは高くなるからです。
しかし、「女のコとのデート」は(主人公の)パラメータは増えません。「女のコとのデート」から得られるものは何もないのです。好雄と喋っているだけでも「雑学」パラメータが上がるのに、それもないのです!
つまり、「女のコとのデート」をたくさんすればするほど、その時間分だけ勉強や運動などのコマンドで「上がるはずだったパラメータ」を上げることが出来ないんですね。「恋愛要素」と「育成要素」がトレードオフ、ある意味ではリアル!

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
女のコとデートをするためには、まず「休日」に女のコに電話をかけてデートのスケジュールを決める必要があります。そして、実際にデートが出来るのも「休日」なので―――1回のデートに「休日」2日分を要するんですね。
そして、「育成シミュレーション」的には「休日」に行ったコマンドは「平日」の約4日分の増減をするらしいので、女のコと1回デートすると「8日分の勉強」が出来なくなるんですね(※2)。恋愛に現を抜かさなければ楽勝で一流大学に行けるのに、「デート」ばかりしていると成績が上がらない……!
(※2:女のコからデートに誘ってくれた場合は、誘いの電話が要らないので「休日」1回分でデートが出来ます。逆に、女のコと出会った直後は電話番号を知らないので、好雄に電話をして電話番号を聞いて、女のコに電話をかけて、実際にデートに行ってと、「休日」3回分が必要)

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
このゲーム……高校の「入学」から「卒業」までの3年間を追体験して、「体育祭」や「文化祭」、「修学旅行」なんかの行事も楽しめる「高校生活シミュレーター」であることは間違いないんですが。
その限られた3年間という「時間」の内、どれだけを「自分を育成する時間」に充てて、どれだけを「女のコと過ごす時間」に充てられるかのバランスに右往左往するスケジュール管理のゲームなんですね。
ここが他の「恋愛ゲーム」と一線を画すところだし、他の「育成シミュレーション」とも一線を画すところです。「恋愛ゲーム」でありながら「恋愛にばかり現を抜かしてはならない」し、「育成シミュレーション」でありながら「パラメータの数字だけ見ていてもバッドエンドになってしまう」んです。
だから、このジャンルの「金字塔」でありながら、「異質な存在」だと思うんですね。
↓3↓
◇ どうして藤崎詩織は「ラスボス」と呼ばれているのか?

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
このゲームを遊んだことがない人も、「藤崎詩織の名前」と「彼女の攻略難度が恐ろしく高い」ことはご存じじゃないでしょうか。事前に募集した「ミリしら」でも、3人とも「攻略難易度が高い」と書いていましたからね(笑)。
しかし、実際にどういう理由で難しいのかは知られておらず、イメージだけが先行して「気難しい女」みたいに思われているんじゃないでしょうか。何故彼女が「ラスボス」と言われるのかは、このゲームのゲームシステムが分かっていないと伝わらないんですね。
ということで、この項ではこのゲームの「エンディング条件のネタバレ」について軽く触れます。今から自分でプレイされるという人は、読まない方がイイと思いますよ!

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
まず、このゲームには11人のヒロイン+隠しキャラがいます。
11人のヒロインは、全員が「デート」に誘えるし、デート会話もあるし、エンディングもあります。1992年の『同級生』がそうだったように、「好きな女のコを選んでそのコと結ばれる」遊び方をした人も多かったと思いますし、「恋愛ゲーム」「ギャルゲー」にはそういうイメージがあるかと思うのですが。
初代『ときめきメモリアル』においては「藤崎詩織」さんだけは特別扱いで、ゲームデザイン的には「藤崎さんと結ばれることが目標」「でも、他のコと結ばれることも出来るよ」くらいのカンジなんです。不本意な例えですけど、『ドラクエV』で「ストーリー的にはビアンカを選ぶのが普通」「でも、フローラを選ぶことも出来るよ」みたいな話です。
まず、オープニングの時点で唯一登場しているヒロインな上に、オープニングで主人公は「伝説の木の下で告白されたい相手」として藤崎さんの顔を思い浮かべていますからね。



<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
また、ゲームの3分の2が終わって3年生に進級したタイミングで、「藤崎さんエンド」に足りないパラメータと、「このままだとくっ付いてしまう相手」が提示されます。
他のヒロインに失礼ではと思わなくもないのですが、実際このゲーム……他のヒロインは、藤崎詩織エンドを邪魔する妨害キャラ的な側面を持っているんですよね。

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
前の項まで私は「恋愛要素」と「育成要素」がトレードオフと書いてきたのですが、実は「育成要素」でパラメータを上げることが「恋愛要素」にもつながってくるのです。
それが、各ヒロインの登場条件とエンディング条件です。
必ず登場する「藤崎詩織」と「早乙女優美」以外のヒロインは、基本的に主人公の特定パラメータが一定以上になることによって登場します(※3)。1人例を挙げると、虹野さんは「根性」を一定以上にすると登場して、エンディングで結ばれるには「運動」と「根性」のパラメータが高い必要がある―――みたいなカンジですね。
(※3:その他には、同じ部活に入って部活コマンドをたくさん選ぶという条件もあります)
運動タイプのヒロインは「運動」系のパラメータが高いと、出会う確率も結ばれる確率も高くなるし。文系タイプのヒロインは「文系」系のパラメータが高いと、出会う確率も結ばれる確率も高くなるというイメージで良いと思います。
しかし、「藤崎詩織」だけは特別なんです。
このコは最初から登場している反面、結ばれるためには「全パラメータ」が高くないといけなくて、「全パラメータ」が高くないと「デート」を重ねてもなかなか好感度が上がっていかないらしいです。そのため、「育成シミュレーション」部分をバランスよく効率よくプレイする必要があるのですが……

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
そうして全パラメータを上げまくっていると、「他のヒロインの登場条件」を満たしてしまい、他のヒロインが次々と登場してくるんですね。

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
ヒロインが増えるだけならイイのでは?と思われるかもですが、このゲームには「爆弾システム」なるものが存在していて、簡単に説明すると「登場したまま放ったらかしにしている女のコがいると、爆弾を爆発させて他のキャラの好感度も下げる」のです。
つまり、「今回は藤崎さん狙いで行くぞ!」と決めてプレイしても、藤崎さん以外の女のコともデートをしていないと、その女のコが爆弾を爆発させて、藤崎さんの好感度まで下げてくるのです。
爆弾を発生させない条件はデートをすることで、爆弾を消す条件もデートをすることなのですが……前項に書いたように「デート」をするには休日2日分を消費するため、「育成」に費やす時間が奪われるし、もし爆弾が同時に複数発生した場合は爆弾処理デートが間に合わないで大惨事になりかねません。
この「意中の女のコと結ばれるために、他の女のコとデートをしなければならない」システムは何だよと、よくネタにされるのですが……このゲームがあくまで「藤崎詩織と結ばれることが目標のゲーム」なんだと考えると、納得のシステムなんですね。
・藤崎さんと結ばれるためには、全パラメータを上げる必要がある
→ すると、藤崎さん以外のヒロインが次々と登場してくる
→ 藤崎さん以外のヒロインともデートをしないと、爆弾が発生してしまう
→ 藤崎さん以外のヒロインとデートしていると、「育成」する時間が失われる
→ 卒業のタイミングまでに、藤崎さんエンドに必要なパラメータに届かない
「恋愛要素」と「育成要素」がトレードオフになっているシステムを活かしていて、その両方を上手いバランスでこなさないとたどり着けないのが「藤崎詩織エンド」なんです。
そのため、このゲームを効率よく攻略していこうとすると、「意中のヒロイン以外はなるべく登場させない」プレイになっていくという。何その「セレクトボタンを押してサブ画面に切り替えると敵が消滅するので、セレクトボタンを連打しながら進むのが最適解」な『たけしの挑戦状』みたいな攻略法は!
◆ で、結局どういう人にオススメ?

<画像はセガサターン版『ときめきメモリアル ~forever with you~』より引用>
やっぱり、このゲームって「しっかりゲーム」なんですよね。
「リスクとリターン」がちゃんとあって、攻略法をしっかりと考える必要があるんです。
それでいて気ままな高校生活をしてもイイし、藤崎さん以外のヒロインと結ばれてもイイ……その自由度の高さこそがこのゲームの魅力だと思うので、ゲームに自由度を求める人にこそ是非オススメしたいです。
個人的には、現代のオープンワールドゲームよりもこういう古いシミュレーションゲームの方が「自由度」を感じるのだけど、「何を自由度だと思うか」は人それぞれ違うみたいだからそういう話はイイか。
今現在では遊びやすい環境ではないと思うので、色んなシリーズの復刻をしてくれているコナミさん、『ときメモ』シリーズコレクション出してくれませんかね。そうすれば本作もみんなに薦めやすくなるし、プレステ系の機種が全部壊れてしまった私も『2』以降が遊べるようになるので……
今現在では遊びやすい環境ではないと思うので、色んなシリーズの復刻をしてくれているコナミさん、『ときメモ』シリーズコレクション出してくれませんかね。そうすれば本作もみんなに薦めやすくなるし、プレステ系の機種が全部壊れてしまった私も『2』以降が遊べるようになるので……
―2025年追記―
そんなことを書いていたら、2025年にNintendo Switchでリメイク版が発売されました。マジであらゆるゲームが集まってくるな、Nintendo Switch……
この調子で2作目もリメイクしてくれー!
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