『Yoku's Island Express』レビュー/移動もクエストもボス戦も、全部ピンボールで解決だ!

<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 ※ この記事は2019年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
「敵」にやられることのない2D探索アクションアドベンチャー
様々な場所、様々なギミック、様々なシチュエーションで楽しめるピンボールゲーム
主人公はフンコロガシ!絵も音楽も美しい童話のような世界を冒険する


『Yoku's Island Express』
・発売:Team17、開発:Villa Gorilla
 Nintendo Switchダウンロード専用ソフト:2018年5月29日発売、2150円
  ※本体機能でのスクリーンショット撮影可能、動画撮影も可能
 Xbox One用ダウンロード専用ソフト:2018年5月29日発売、2190円
 Steam版:2018年5月30日発売、2050円
 プレイステーション4ダウンロード専用ソフト:2018年10月11日発売、2150円
 Epic Games版:2021年9月3日発売、2050円
・2D探索アクションアドベンチャー+ピンボール
・セーブスロット数:3


※ 一見すると普通のPVなのに、最後まで見ると突然罵倒されるの笑う。翻訳ミスなんだろうけど。
 私の1周クリア時間は約08時間でした
 コンプ(100%達成)までは15時間くらいだったかな
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
※ 苦手な人がいそうなNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:×
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:○(主人公の虫はかわいいけど、蜘蛛やナメクジはキツイかも)
・百合要素:×(そもそもこの作品に男女の概念があるのか?)
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×

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◆ 「敵」にやられることのない2D探索アクションアドベンチャー
 このゲームはスウェーデンの「Villa Gorilla」というインディースタジオが開発した「メトロイドヴァニア」型のピンボールゲームです。
 私はちょっと前のセールでこのゲームを買って積んでいたのですが、「よゐこのインディーでお宝探し生活2」の次回予告でこのゲームが映ったので「ネタバレされる前に遊ばなきゃ!」と急いで起動したのでした。1週間かけてクリア、久々に100%コンプリートまで遊ぶくらいに夢中になって遊んだゲームでした!





 このゲームを分かりやすく説明すると「メトロイドヴァニアの皿にピンボールを盛ったゲーム」なんですが、「メトロイドヴァニアって何?」という人もこのブログを読んでいるでしょうから、その説明から始めようと思います。

 「メトロイドヴァニア」とは、『メトロイド(1986年~)』と『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲(1997年~)』を合わせた造語です。「悪魔城ドラキュラ」が海外では『キャッスルヴァニア』というタイトルだったので、合体して「メトロイドヴァニア」と呼ばれるようになった―――この話から分かるように、日本で生まれたゲームが元になっているのに「日本よりも海外で使われている言葉」なんですね。
 ゲームとしては「2D横スクロールアクションゲーム」でありながら、『スーパーマリオ』シリーズのように「右に行けばクリア」というゲームではなく、ステージクリア型でもなく、広大なマップを上下左右に「探索」することに特徴があります。マップを埋めていく楽しさだったり、それまでは行けなかった場所にアイテムを手に入れた後は行けるようになる成長の楽しさだったりがあることが多いですね。



<画像はファミリーコンピュータNintendo Switch Online版『メトロイド』より引用>

 しかし、この「メトロイドヴァニア」というジャンル―――「探索」に重きを置いたゲームなため、「探索」要素が大好きな私にとってさぞ好物だろうと思いきや、初代の『メトロイド』からして「敵との戦闘」がむっちゃ過酷で心をへし折られてしまうことが多かったです。
 まぁ、もし『メトロイド』に敵が出てこなかったら、あっという間にマップの端から端までを踏破されてしまうでしょうから、ゲームとして「行けそうで行けない」バランスを保つために「敵との戦闘」が必須なのは分かるのですが……「敵との戦闘」が苦手な私にとっては「新しいエリアに行けるぞー」という探索のワクワクよりも、「新しいエリアにはまた敵がいる……ライフがもうない、つらい」という戦闘の憂鬱さが上回ってしまうゲームでした。


 海外ではこの「メトロイドヴァニア」のジャンルが非常に人気で数多くのゲームが出ているため、上述した私のように「探索は好きだけど戦闘はちょっと」という人のための「メトロイドヴァニア」のゲームも出ていたりもするのです。



<画像はWii U版『クニットアンダーグランド』より引用>

 例えば、Wii Uでフライハイワークスがローカライズして発売してくれた『クニットアンダーグランド』もそうです。このゲームもスウェーデン人が開発者なんですよね。スウェーデン人はよっぽど「メトロイドヴァニア」が好きなのか嫌いなのかどっちなんだ。

 『クニットアンダーグランド』は「メトロイドヴァニア」に「アクションパズル」を足したようなゲームです。本家『メトロイド』では広大なマップの移動を妨害するために「敵との戦闘」がありましたが、こちらのゲームは各エリアがアクションパズルにようになっているので、隣のエリアに移動するために「敵との戦闘」ではなく「このギミックをどう使えばあの場所まで行けるのかを閃く」ことが必要なのです。
 「敵との戦闘」が嫌いだけど「アクションパズル」が大好きな私は、だからこのゲームをむっちゃ楽しめました。Wii Uのゲームの中でも上位に入るくらいお気に入りのゲームです。





 「メトロイドヴァニア」についての話をまとめると、広大なマップを上下左右に「探索」させるこのジャンルは、単に「探索」をさせるだけならあっという間に端から端まで踏破されてしまうため、『メトロイド』だったら「戦闘」、『クニットアンダーグランド』だったら「アクションパズル」の要素を入れて、そのゲーム部分を解かないと「行けそうで行けない」隣のエリアに進めないようにしているのです。

 つまり、「メトロイドヴァニア」というのは皿であって、そこに「戦闘」とか「アクションパズル」といった料理が盛られているんですね。
 他のジャンルで分かりやすく言うと、スマホ向けの「ガチャでキャラを集めて育成するゲーム」は皿の部分はどれも似たようなシステムですよね。ただし、それに盛られている料理部分に独自性があって、『パズドラ』だったら「パズル」だし、『消滅都市』だったら「ランアクション」だし、『デレステ』だったら「リズムゲーム」だし、なので「どれも似たようなゲーム」でありながら「全然別のゲーム」なのです。


 んで、ようやく『Yoku's Island Express』の話です。
 このゲームは皿の部分は「メトロイドヴァニア」というジャンルですが、『メトロイド』でいう「戦闘」部分、『クニットアンダーグラウンド』でいう「アクションパズル」部分―――つまり、皿に盛られた料理部分が「ピンボール」なのです。


<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>



 通常は↓の画面のように、2Dアクションゲームという雰囲気です。
 主人公のヨクの操作は左スティックで移動のみ。ジャンプは出来ません。フンコロガシですからね。自分より巨大なフンと一緒にジャンプすることなんて無理に決まっていますよね。


<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 ただし、この島には何故だか至るところに「フリッパー」が設置されています。
 青いフリッパーはZLボタン、黄色いフリッパーはZRボタン、両方の色のフリッパーはそのどちらのボタンでも押すと動きます。島中のフリッパーを一斉に動かせる私(=プレイヤー)は一体何者なんだ……


<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 その反動を活かして、ヨク(と巨大なフン)は跳ね上がる!
 このゲームの主人公は自分ではジャンプできないので、ピンボールのフリッパーを利用してジャンプしていくのです。




<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 マップはかなり広大。
 そのところどころにピンボールのような仕掛けがあるので、そこに主人公がたどり着くとシームレスにピンボールが始まります。この「フィールドの中にピンボールが埋め込まれているから自然とピンボールが始まる」のが良いんですわ。



<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>


 ということで、このゲーム―――
 「敵」が出てこないメトロイドヴァニアなのです。

 いや、正確にはボス敵はいるのですが……「敵にやられてゲームオーバー」ということがないので、敵との戦闘が苦手という私のようなヘッポコゲーマーでも安心して楽しめます。

 落下したらまた登り直しな局面はあるし、アクションゲームが苦手な人でも全く問題がないとは言いませんが(特にコンプを目指すとかなりシビアなアクションも求められますし)、トゲに落ちても集めたフルーツを少量失うだけで、大したペナルティがないのがありがたいところです。一応トゲに落ちた回数はカウントされていて、一定数を越えるとイベントが発生するみたいですが、多分「普通に遊んでいれば誰でも発生する数」なんで気にすることでもないと思います。多分……

 ということで、このゲーム……「メトロイドヴァニアってジャンルが気になるんだけど、なんだか難しそうだよなー」と思って手を出してこなかったような人に是非オススメです。


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◆ 様々な場所、様々なギミック、様々なシチュエーションで楽しめるピンボールゲーム
 さて、ここまで書いてきてちょっと気になることがありました。
 この記事を読んでいるみなさん、そもそも「ピンボール」って分かりますかね?

 「メトロイドヴァニアにピンボールを加えたようなゲーム」を説明するために、せっせと「メトロイドヴァニア」の説明から始めていましたが、ひょっとしたら「ピンボール」の方も知られていないかもと不安になってきました。


 ピンボールとは1930年代にアメリカで生まれたアナログゲーム機で、1947年に「フリッパー」が付いて玉を撃ち返せるようになった機種が登場、現在「ピンボール」と呼ばれるものはこの「フリッパー付きピンボール」のことを指すそうですね。
 1970年代には日本でも流行、ゲームセンターやボウリング場に数多く置かれていました。日本国産初の「フリッパー付きピンボール」はセガが作ったそうです。セガはいつだって時代の最先端を進むぜ!1985年にリリースされた尾崎豊さんの名曲『卒業』にも、「仲間達と夜な夜なピンボールで遊びました」的な歌詞がありますね(JASRACに配慮して言い回しを変えました)。

 つまり、『スペースインベーダー』とか『パックマン』とかが登場してゲームセンターがビデオゲームで溢れる以前の、ゲームセンターの主役みたいな存在だったそうなんです。近年ではほとんど見かけなくなっちゃいましたけどね。


 そのため、ビデオゲーム黎明期の頃から「ピンボール」はデジタルで再現しようと試みられることが多く、例えばファミコンの『ピンボール』(1984年)なんかは後に任天堂の社長になる岩田さんがプログラムを担当していたことでも有名ですよね。


<画像は『どうぶつの森+』収録の『ピンボール』より引用>

 私、「ピンボール」というゲームはずっと「真ん中に玉が来たら終わりの運ゲー」だと思っていたのですが……「限られた残機でハイスコアを目指すゲーム」と認識を変えてみたら、リスクとリターンの駆け引きが非常に熱く、常に予想外なことも起こるアドリブ性もあって、延々と遊べてしまう中毒性にハマってしまいました。

 これって多分、後の『テトリス』とかの落ちモノパズルゲームを延々と遊んでしまう感覚に近いのかなと思いました。アクション要素がないワケではないけれど、求められる操作が限定的なため覚えることが少なくてイイ、なのに毎回毎回ちがう展開をしていく点も近いですし。



 『Yoku's Island Express』の場合、前項で述べたように「広大なフィールドの中にピンボールのような場所が埋め込まれている」ため、様々なピンボール台(?)に挑むことになります。延々と果物を集めてもイイのだけど、基本的には「あの穴に入れると次のエリアに行ける」といった目的があるのでそれを達成していくカンジですね。先ほども書きましたが、青いフリッパーはZLボタン、黄色いフリッパーはZRボタン、両方の色のフリッパーはそのどちらのボタンでも押すと動きます。


<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 例えば、この場面――――
 進みたいのは右上なのですが、ピンク色のゲートが閉じていてこのままでは進めません。ここを開くためにはピンク色の宝石みたいなヤツを全部集める必要があります。もちろん「ピンボール」で。凍っているものは何度がぶつけて破壊する必要があるので、下部のフリッパーだけでなく横のフリッパーも使わなきゃですね。


<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』のものに手を加えました>


 全部集めたらこんなカンジでゲート開放!
 これで右上のルートに進めます(再度ここを通るときにはゲートは開いたままなので助かる)。


<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』のものに手を加えました>



 また、ギミックが変わるだけでなく、様々なシチュエーションを「ピンボール」で解決していくのもこのゲームの特徴です。↓は「逃げ出したススを全員集めて欲しい」というクエストで、当然のように「ピンボール」でススを見つけて捕まえていきます。
 やってることはさっきの「ゲートを開くためにピンクの宝石を集める」のと変わらないのですが、住民達から頼まれているシチュエーションが一枚はさまるだけで印象が変わるんですよねー。



<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>




 そして、ボス戦もあります!
 「ピンボールでボス戦~?」と半笑いで始めてみたら、なかなかに熱いシチュエーションのボス戦もあったりで侮れません。ちゃんと「ボス戦だけの特別感」があるのはポイント高いです。


<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 そして、その上で「このゲームにはゲームオーバーがない」ため、こんな凶悪な見た目のボスですがこちらがやられることはないんですね。いつまでも倒せないといつまでも終わらないんですが「敵に攻撃されるプレッシャー」みたいなものはないため、このゲームのボス戦は「強い敵と戦うから憂鬱」とかではなく「普段とちがうシチュエーションでピンボールが楽しめる」だけなんですね。

 「敵と戦う」のが苦手な私みたいな人間には、ピッタリのゲームでした。




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◆ 主人公はフンコロガシ!絵も音楽も美しい童話のような世界を冒険する

<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 このゲームの主人公は、新しく島にやってきた「フンコロガシの郵便配達員」です。
 どう考えても前任の配達員の方が配達に向いているだろう!空飛べるし!と、恐らく全プレイヤーがツッコミを入れたところから始まるのですが……遊んでいるうちにこのフンコロガシも可愛く見えてくるし、この小さなフンコロガシが島のみんなの問題を解決していく様は「小さな主人公が大きな敵をやっつける」少年漫画的な構図にも思えてきます。



<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 登場するキャラクターは牧歌的で、どのキャラも「かわいい」ようで「ちょっと不気味」なところもありますね。コイツは前の配達員の伝言を録音機代わりに再生してくれるオウム。



<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 郵便配達員だから、島の隅から隅までをまわって荷物や手紙を届けなくちゃいけないし、そこで出会った人達の頼み事も聞かなくちゃいけない―――「メトロイドヴァニア」というジャンルに、この「郵便配達員の主人公」という設定はドンピシャにハマっていたと思います。



<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 砂浜。



<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 雪山。



<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 古代遺跡。


 島中を「探索」しなくちゃいけないゲームだから、たどりつく場所が特徴的かつ美麗なのも嬉しいところ。手描きで描かれた風景は、『レイマン』シリーズや『オリとくらやみの森』、スタジオジブリの映画なんかに影響を受けているとか。
 BGMに関しては「癒される」と評されることも多く、「敵」が襲ってこないゲームなこともあって、童話の世界にリゾートに来たかのような雰囲気になれます。



<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 翻訳もまずまず。
  同じTeam17の『The Escapists2』は「最低限ゲームを遊ぶことは可能」なレベルの翻訳でしたが(まぁ、それも監獄にぶちこまれた不自由さの雰囲気にマッチしていたとも思いますが)、こちらは違和感のない日本語で楽しめました。

 主人公がフンコロガシという独特のセンスはありますが、丁寧に作られたゲームで、年齢・性別・ゲームの腕前を問わず誰にでも楽しめる1作になっていると思います。




◇ 結局、どういう人にオススメ?

<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 誰にでも「達成感」と「成長」を感じさせるゲームデザインに、直感的な操作感覚、かわいらしくも不気味さも持ったキャラクター、美麗なグラフィックと癒されるBGM、時には熱く・時には考えさせるストーリー――――非常に高い完成度で、幅広い人にオススメしたいゲームになっています。

 敢えて「オススメできない人」を考えるなら、ゲームにはヒリヒリするような厳しい難易度を求める―――なんて人にはオススメできないかな。コンプを目指すと難しいのは確かなんだけど、アレは難しいというよりシビアなだけというか……

 広大なマップを「探索」するメトロイドヴァニア系のゲームが好きな人はもちろん、メトロイドヴァニアに興味はあるけど難しそうって尻込みしている人には是非オススメしたいです。
 ピンボールに関しては、最初は興味がなくても遊んでいるうちに徐々に好きになっていって、クリアする頃には「他のピンボールゲームも遊びたい!」と思ってしまうんじゃないかな。

 PS4版にあるかは分かりませんでしたが、Nintendo Switch版Steam版には「体験版」があるので「えー?でも、ピンボールでしょー?」という人は、まずは「体験版」に触れてみて判断するのがイイのかも。

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