アニメ版『ゆるキャン△』(1期)各話感想メモまとめ(1話~最終話)

※ この記事は2018年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です


<アニメ『ゆるキャン△』シリーズのAmazonプライムビデオ>
 ・1期2期劇場版3期
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 3ヶ月に1回、「その季で一番気に入っていた作品」の一本だけに絞って書いているアニメ感想まとめです!

 2018年の冬アニメは大豊作のシーズンで、その中から一本を選ぶというのは心がつらかったですし、これを書き始めている日曜夜の段階ではまだ最終話を迎えていない作品も多いのですが……ブログの更新スケジュール的な問題もあって、全作品の最終話を待たずに書いてしまいます!


<ルール>
・1話から最終話までの感想ツイートを貼り付け
・“最終話まで観終わっている”現在の自分のコメントを補足
・なので、基本的に最終話までのネタバレを含みます
・「まとめ」という記事タイトルですけど、まとめるのは「私の感想」だけです。「みんなの感想」をまとめるのが目的の記事ではありません
・私はまだ原作を読んでいないので、コメント欄などに原作のネタバレを書き込むのはやめてください
・思うがままに書いた感想なので、ところどころに間違いがあったりするでしょうが優しく許して下さいな



【第1話】ふじさんとカレーめん
 他の記事にも書いたんですけど、『ゆるキャン△』の第1話って「第1話学」として考えるとすごいと思うんですよ。
 普通アニメの第1話って、メインキャラをかたっぱしから出して、そのキャラ達を説明して、設定を説明して、これからの展開を感じさせて……と、伝えなきゃいけないことがたくさんあるのですが。このアニメの第1話Aパートって、リンちゃんが一人でテント立てて、本読んで、寒いから薪を拾ってきて、火を起こして……と、情報量がめっちゃ少ないんですよ!

 これは後の監督のインタビューでも触れられていて、「すごく悩んだ」けど「特に喋らなくてもキャンプしているだけで楽しいということを観ている方にも感じて欲しくって。あえて、原作よりもキャンプ描写を少し膨らませて入れています。」とのこと。
 私みたいにアニメの第1話を14作品とか観る身からすると、「情報量の多い第1話」ばかりの中、この作品の第1話が逆に目立ったんですね。安心して観られる1作だなーと。だからこれは、大成功だったと思いますね。




【第2話】ようこそ野クルへ!
 第1話で「ソロキャンプをしているリン」に出会って、自分もキャンプしてみたいとなでしこが野クルを訪れる回です。主人公が部室を訪れてメインキャラが出揃う―――ということで、普通の部活アニメで言えば第1話にあたる回です。

 が、この回もBパートはリンちゃんがひたすらソロキャンプをするという(笑)。
 でも、「騒がしい野クルのAパート」と「リンちゃんが一人でまったりキャンプするBパート」を続けて描くことで、「みんなで集まってキャンプするのって楽しいね!」と価値観を一つに限定するのではなく、「みんなでやるキャンプも一人でやるキャンプも、それぞれ別の魅力がある」と、この作品の根底にあるものが視聴者にも伝わったんじゃないかと思います。リンちゃん、一人でも超充実した時間を過ごしていますもの!

 ……なんだけど、そのソロキャンプになでしこがやってきて第3話へ。



【第3話】ふじさんとまったりお鍋キャンプ
 この回も大好きな回です。
  まー、“「その季で一番気に入っていた作品」の一本だけに絞って書いているアニメ感想まとめ”なんで、ほとんどの回が「大好きな回です」という感想で埋まりかねないんですけど(笑)。この回は、先の監督インタビューでも触れられている「実際、キャンプ場へ行くと肌感覚というか、普段使わないところが元気になってくる感覚があって。それがすごく新鮮でした。ちょっと足を伸ばすだけで、普段経験することができない感覚をこんなにも感じられることに一番驚いたんです。」が見事に表現された回だったと思います。

 あと、繰り返しになっちゃいますけど、なでしこの他人との距離のとり方が絶妙だなーと思うんですね。同じ「アホな子」主人公でも、『けいおん!』の唯とか、『ごちうさ』のココアとか、『がっこうぐらし!』のゆきちゃんとかは、もうちょっと図々しく相手のパーソナルスペースに入ってきちゃうんですよ。なので、相手になるキャラが「ツンデレ(クーデレ)っぽい後輩」が定番になるんですけど。
 なでしこもリンも、そういうキャラの定型からはちょっとズレていて……「アホな子」であっても、なでしこは他人に気が遣えるし。「クーデレ」であっても、リンは頬を赤らめてデレデレしたりはしないし。漫画のキャラ・アニメのキャラであっても、生々しく「実際に生きていそうな人間」として描かれているんですよね。

 そこが、「またこのパターンか」と思わせないこの作品の魅力だったのかなぁと。




【第4話】野クルとソロキャンガール
 今季のアニメは、同じきらら系の『スロウスタート』の「自分の思った道に進めなくても楽しいことがあるんだ」とか、『宇宙よりも遠い場所』の「性格が悪くても、世間からはみだされても、そこに青春はあるんだ」とか―――「こうしなければいけない」という重圧からの解放を描いた作品が目立ったと思うんですね。多種多様な生き方があるというか。「きみは○○が得意なフレンズなんだね!」もそうですが、昨今のトレンドなのかなぁと。

 『ゆるキャン△』も「友達同士は常に一緒にいなければならない」みたいな価値観から脱却して、「別に一緒にいなくてもLINEでいつでも連絡とれるからイイよね」と描いているという。これ、『けいおん!』の終盤で「離れ離れになりたくないから一緒の大学に進んだ」のから考えると、随分と変わったと思うんですよ。
 リンちゃんは「大垣……苦手なんだよなー」とアキちゃんのことを最後まで苦手に思っていて、最終話のなでしこの妄想の中でも「アキちゃんの話を無視するリンちゃん」が描かれていて(笑)。でも、それでイイんだって描いているんです。



【第5話】二つのキャンプ、二人の景色
 第1話からこの作品のことを「面白い!」と推していたのだけど、それはやっぱり「キャラが好き」とか「この作品にしかない魅力がある」みたいなところが大きくて。真の意味で、「この作品……トンでもなくない?」と思ったのはこの第5話です。

 第5話って割と息切れが始まるタイミングだと思うんですよ。
 どの作品も第1話はもちろん気合入れて全力で作る。「3話切り」をされないためにも第3話も力を入れたエピソードを入れてくる作品も多い(『ゆるキャン△』も3話すごかったと思います)。最近では「4話一区切り」にしてくる作品も多くて、第4話に最初の山場が来ることもある。

 圧倒的なクオリティを全話通して維持するのなんてそうそう出来るワケじゃないので、5話目くらいに「作画のクオリティが若干落ちる回」とか「他の制作会社が作る回(グロス回)」が来てもしょうがないのだけど……第5話にこのクオリティのものを持ってくるとは!グロス回の8話は若干作画が怪しかったですけど、全体的にずっとクオリティ高かったですねー。

 京アニとかA-1とかじゃないんですよ。
 申し訳ないんですけど、C-Stationなんて制作会社は聞いたことがなくて、監督も初監督作品ですし、アニメが始まる前は「そこそこ楽しめたらイイなー」くらいの気持ちでしたよ。そこにきて、この第5話で「この会社も、この監督も、今後ずっと注目していこう!」と記憶に刻み込まれました。




【第6話】お肉と紅葉と謎の湖
 「離れててもつながっている」は、なでしことリンが一番分かりやすく描かれますけど……この回で、斎藤さんに背中を押されたり、あおいちゃんとスーパーで遭遇したり、お姉ちゃんに車で送ってもらったり。アキちゃんはリンおじいちゃんに肉をもらったり。作品全体を通して、いろんなキャラで描かれているんですよね。

 キャンプに行く前のなでしこがあおいちゃんに会って「写真いっぱい撮ってくるね!」と言うのって、この作品らしいなって思うんですよ。「イイなぁ、私も行きたかった」とかじゃないんですよね。「楽しんできてねー、写真見せてねー」なんですよ。楽しいことはシェア出来る、というかね。これがSNS時代の人間関係なのかーと。




【第7話】湖畔の夜とキャンプの人々
 この辺りから、すっかりなでリンが夫婦っぽくなって……
 食費がかさむことに目をつむれば、料理上手で、気配りができて、コミュ力も高くて、いつだって前向き思考と―――ホント、いいお嫁さんになると思いますよ、なでしこは!どうですか、リンちゃん!

 という百合ヲタの戯言は置いといて、この「互いに足りないものを補い合える関係」ってイイよなーと思うんですね。アニメの1クールを通して、なでしこはリンちゃんのおかげでいろんな楽しいものに出会えたし、リンちゃんもなでしこのおかげで救われた場面が何度もあった。こういうのを見越して、斎藤さんはなでしこをけしかけていたのかな。



【第8話】テスト、カリブー、まんじゅううまい
 この作品の中では「作画が厳しかった」と言われるグロス回。
 しかし、背景はすさまじいんですよね、この回……アウトドアショップに行くので。

 この辺の時期に話題になっていたことで、自分も近いことを感想でつぶやいていたので、ここでもちょっと触れておこうと思います。『けいおん!』の頃とか、ラノベとかギャルゲーとかだと、メインキャラの中にすごいお金持ちの家の子がいて、その子の別荘に行くみたいな話がよくあります。それが別に悪いワケじゃなくて、そうした作品の「キャンプ回」は特別なイベントだからそういう御都合設定を使うのもイイと思うんですけど。

 でも、『ゆるキャン△』は言っちゃえば「キャンプ回」が日常の作品だから、そこにはなるべく御都合設定を使わずに、バイトでお金を貯めたり、安いテントでしのいだり、節約して買った食器の手入れに苦戦したりという「現実に出来そうな方法」でキャンプをしているんですね。

 別にどっちが優れているとかじゃなくて、作品の方向性としての話。
 この回でなでしこが「欲しい」と思って買えなかったガスランプを、(アニメの中では描かれなかったバイトを一生懸命やって)最終話で買っていたことが「成長」を象徴しているんですね。そうしたものを大事に描く作品なんだよと。




【第9話】なでしこナビと湯けむりの夜
 クライマックスの「クリスマスキャンプ」の前に、リンちゃんのソロキャンプをなでしこ達がサポートする回です。この二局面を並行して描くのが楽しかったですねぇ。リンちゃんパートは旅のドキドキとワクワクがあって、なでしことアキちゃんパートはコメディとしてキャッキャと笑えて、その2つが緩くつながっているのが良かったです。


 原作付きのアニメはどうしても「この話数でここまで描かなきゃ」という尺との戦いになりがちで、原作の「なくても構わないシーン」「削ってもギリギリ話が分かるシーン」をカットするしかなくて……『うしおととら』のしっぺい太郎の話は、まさにアニメでカットされちゃった話なんですよね。
 今季のアニメで言えば、『りゅうおうのおしごと!』なんかも原作からカットされた場面が多くて原作ファンからの怒りの声をよく目にしたのですが……

 芳文社原作のアニメって、毎季のように何かしらが放送されていると思うんですけど、「このタイミングで原作のここまでアニメ化すればちょうど一区切りになるぞ」って過不足ないアニメ化になることが多くて、そういう不満を聞くことがあんまりないなーと思います。そういうのも全部計算してアニメ化するタイミングを決めているのでしょうか。



【第10話】旅下手さんとキャンプ会議
 「LINEのようなメッセージアプリを使うアニメ」はちょっと前からあった(2014年の『結城友奈は勇者である』とか)のですが、2017年は『月がきれい』とか『Just Because!』とか「LINEでの会話シーンがストーリーの中核をなしている」アニメが立て続けに出てきました。

 作品を作る側からすると「その時代にしかないもの」をストーリーに組み込むと、それが廃れた後の時代には意味が通じなくなるから二の足を踏むところがあるんです。例えば、今ガラケーを使っているアニメに「今更wwwガラケーかよwwww」みたいにバカにする人がいたり、ポケベルとか公衆電話が出てくる昔の歌詞をバカにする人がいたりしますし。


 なので、私は「今の中高生はLINEを使っているから」と言って無理に作品内でもLINEを使う必要はないと思っています。別に、作品の中の時代が、常に現在である必要はありませんしね。
 というのが私の基本スタンスなんですけど……『ゆるキャン△』は、電話ともメールともTwitterともちがう、LINEでしかありえない人と人の距離感をうまく描いていて。それがこの作品の「一人キャンプも、みんなでやるキャンプも、それぞれ別の楽しさがあるよね」というメッセージにすごくマッチしていたと思うんです。


 LINE時代だからありえる話というか。
 みんなで部室に集合していなくてもつながっていられる時代の作品というか。



【第11話】クリキャン!
 自分で自分の書いた文章を取り上げるのはナルチシズムが過ぎるとは思うのだけど、この作品を“この世界の幸せを全部ギュッと集めたような”と表現したのは自分でもお気に入りです。この表現以上に、この作品を的確に表現できるものがあるのだろうか!

 すっごい短い止め絵だったんですけど、子ども達とフリスビーで遊ぶシーンで、あおいちゃんが子どもを肩車しているのがすごい好きです。あの1枚だけで、どのくらい子ども達と仲良くなったかとか、どうやって遊んだのかとかが分かるし。あおいちゃんは妹いるお姉ちゃんだから、小さい子の扱いが上手いのかなーとか想像できるし。

 なでしこがちくわと走り回っている間に子どもが一緒に走ってたというのもイイなぁ。幸せの極み。



【第12話】ふじさんとゆるキャンガール
 「ポストけいおん」なんて言葉を使いましたけど、2018年の現在アニメを作っている人にそんな意識はないだろうと思います。『けいおん!』のアニメって2009~2011年ですからね。

 でも、私の中では「これでようやく止まっていた時計が動き出した」感覚があったんです。
 「人生ベスト1が書き換わった瞬間」というか……

 『ゆるキャン△』のアニメですごいなーと思ったのは、最終回に「未来の姿」を妄想したなでしこのシーン。「未来に進むこと」も「別々の道に向かうこと」も、彼女はまったく悲観していないんですよ。「私達はずっと一緒だよね!」と言いがちな日常系アニメにおいて、「別に離れててもイイよね。たまにこうして集まってキャンプできれば」と最終回に描けるのがこの作品のパワーですよ!


 だから、『けいおん!』(1期)の最終回は寂しくて仕方なかったんですけど……
 『ゆるキャン△』の最終回は寂しくはありませんでした。

 Cパートで描かれた「ちょっと未来の姿」。
 バイトをして、ガスランプを買って、ソロキャンプをしようとするなでしこが―――同じくソロキャンプをしようとしていたリンちゃんとたまたま会うという。離れていてもこうして会える、だから寂しくないんだという未来を見せてもらった気がします。

 きっと彼女達は、アニメが終わっても、これから先に原作が完結しても、どこかでキャンプをしていてその写真を送り合っているんだろうと思えるラストでした。


 「晴れて、良かったね――――」



――2025年追記――
 『ゆるキャン△』のアニメは、この後「ショートアニメ」「2期」「劇場版」、制作会社とメインスタッフが変わって「3期」と展開されて、この後「4期」が発表されています。

 アニメ1期の体制での最終作となったのが「劇場版」で、私はこの「劇場版」を上手く受け止められていなかったのですが、この記事を移行がてら読み返していたら「俺の言ってた通りの未来だったじゃん!」となりました。


 軽く、映画『ゆるキャン△』について書きます。
 このアニメ「連載中の原作漫画」と干渉しないようにと考えたからなのか、「原作の10年後」、大人になった彼女達を描いている作品だったんですね。

 それが、自分にとってはキツくて、当時はなかなか受け止められませんでした。
 高校生を主人公にした作品は、未来に無限の可能性があるもので、何にでもなれる彼女達に好き勝手夢を見られるものなのに……彼女達の将来が確定してしまったことがショックでだったのです。


 ですが、今この記事を読み返したら

・「私達はずっと一緒だよね!」と言いがちな日常系アニメにおいて、「別に離れててもイイよね。たまにこうして集まってキャンプできれば」と最終回に描ける
・きっと彼女達は、アニメが終わっても、これから先に原作が完結しても、どこかでキャンプをしていてその写真を送り合っているんだろうと思えるラストでした。

と書いていて、まさにそれを描いたのが劇場版だったじゃんと思ったんですね。未来はずっと前に提示されていて、その通りに描いただけ―――


 この記事を読み返したおかげで、劇場版を受け入れる気持ちがちょっとだけできた気がしました。

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