アニメ『クロムクロ』各話感想メモまとめ(1話~13話、14話~最終話)

※ この記事は2016年に旧ブログに書かれた2つの記事を、幾つか手直しした上で1つの記事に統合して2025年に移行した記事です


 春アニメの感想まとめは、この作品で最後です。
 春~夏のイチ推し作品がこの『クロムクロ』ですよ!全26話らしいので13話で区切りにしてまとめました―――が、話としてはすっげえ中途半端なところで1クールが終わってしまいましたね。

 何事もなければ、2クール目も引き続きまとめる予定ではあります。


<ルール>
・1話から13話までの感想ツイートを貼り付け
・“13話まで観終っている”現在の自分のコメントを補足
・なので、基本的に13話までのネタバレを含みます
・「まとめ」という記事タイトルですけど、まとめるのは「私の感想」だけです。「みんなの感想」をまとめるのが目的の記事ではありません
 ・思うがままに書いた感想なので、ところどころに間違いがあったりするでしょうが優しく許して下さいな



第一話「の降る空」

 「こっちも」というのは、『甲鉄城のカバネリ』が「侍がゾンビと戦うアニメ」だったという感想に引き続いての感想だったからです。

 この時点ではまだクロムクロは動いていないのですが、第1話の時点で「おぉ!面白いぞ!」というオーラが全開でした。ロボットアニメって、私達視聴者にとっては「ロボットがないのが日常」で、でもアニメは「ロボットがあってそこで戦う」ジャンルなので―――如何にして私達の意識を「ロボットがないのが日常」→「ロボットがあってそこで戦う」に持ってくるかがカギだと思うんですね。
 この『クロムクロ』の第1話は、学校から研究所に向かって、その研究所ではロボットが歩いてて……という自然な流れで、私たちを「ロボットのある日常」に誘導していたと思います。また、それがP.A.WORKSらしい「日常描写」の細やかさで描かれていたのが良かったなぁと。



第二話「黒きは目覚めた」

 この回の「小春の上をクロムクロが走っていくカット」はTVCMでも使われた印象的なカットでした。私はあそこがホント大好きで……由希奈たちは「ロボットのある日常」に向かっていったんだけど、小春たちの視点では「ロボットのある日常」がやってきた!ってカンジだと思うんですね。それがあの数十秒でものの見事に描かれていました。

 P.A.WORKSのアニメと言えば美しい背景が特徴だと思いますが、そこを舞台に大暴れするのも痛快でした。「田んぼの上は走っちゃダメだろ!」とは思いましたけど(笑)。



第三話「城跡には還らず」

 小春と剣之介のイチャイチャ回。
 この「無邪気な子ども」と「武骨なサムライ」の組み合わせが溜まりませんでした。

 あと和尚!最近はあまり出番がなくなってしまったけど、現代社会で目覚めて戸惑っているサムライも、和尚の話は聞く―――という謎の説得力がすごい好きです。Netflix資本で世界中に同時期配信されている作品ですけど、海外の人はサムライとか和尚とかをどう見ているのかすごく気になります。



第四話「異国のに己が境遇を知る」

 お風呂とかパンツとかフンドシとかの回。
 こういう話を描かせたら、そりゃP.A.は上手いですわ。“FOOD理論”で考えても、P.A.作品は「食卓を囲んで一緒にご飯を食べる」シーンが多くて、食事によってキャラとキャラの関係性が変わっていくことを描くんですね。カレーって偉大だなぁ。

 記事冒頭で書いた通りこの作品は2クールのアニメでしたが、2クールというたっぷりとした尺があるからこそこういう回を描けるのでしょうし、原作なしのオリジナルアニメなのにも関わらず2クールを確保できるってことが本当に一番すごいことなのかも。



第五話「び舎に来た男」

 「主役クラス3人という超豪華クラスメイト達」というのは声優さん達のことで……

・赤城くん:石川界人さん(『翠星のガルガンティア』レド役、『コンクリート・レボルティオ』爾朗役など)
・茅原くん:小林裕介さん(『アルスラーン戦記』アルスラーン役、『Re:ゼロから始める異世界生活』ナツキ・スバル役など)
・カルロス:武内駿輔さん(『シンデレラガールズ』プロデューサー役など)

 と……「たまにしか出ないキャラ」にはもったいない豪華なメンツだったんですね。この頃はまだこの3人にどのくらいの出番があるのか分からなかったのでこう書いたのですが、1クール終わったところだと「単なる日常要員だったけど、作品が日常描写も多い作品だったのでコイツらの出番も多かった」という予想外の結果でした(笑)。



第六話「神通の川原にう」

 クラスメイトの二人はなんかよく分からんが生きていました。

 『クロムクロ』の登場キャラ・メカには「色」を題材にしたものが多く……

・青:青馬剣之介時貞
・白:白羽由希奈
・赤:赤城涼斗

・黒:クロムクロ
・黄:イエロークラブ

 とこんな感じなんだけど……「季節」を題材にしたものも多くて、

【冬】
 ・白羽由希奈→ ゆきな→ 「雪」?
・ソフィー・ノエル→ ノエル→ 「クリスマス」?

【夏】
・荻布美夏→ 「夏」?
・赤城涼斗→ 「涼しい」?
・白羽洋海→ 「海」? ※「岳人」との対比?

【秋】
・白羽小春→ 「小春」? ※単純に「春」かもしれないけど

 剣之介のフルネームも「青馬剣之介時貞」と「時」が入っているなど、時間経過というか季節感みたいなものを感じる名前が多いかなあと思います。白羽家だけなら「そういう名付けなのかな」と思うのですが、美夏もそうですし、作品としてそういう法則を入れているのかなぁと。


第七話「東雲にゆ」

 赤城くんは役立ったような……大して役立たなかったような……

 『エヴァ』が「父親と息子」の会話のない突き放した関係だったの対して、『クロムクロ』は「母親と娘」なので喋るし文句も言うしひっぱたくしとコミュニケーションとっているからこそのすれちがいなのが面白いというか。『エヴァ』のミサトさんも、『クロムクロ』の剣之介も、性別が違うからこそ介入できない部分があって……
 『クロムクロ』が『エヴァ』をどのくらい意識しているのかは分からないのですが、「ロボットアニメ」と「主人公が普通に学校に通う日常描写」を足すと、仮に意識していなかったとしても描かれる話やキャラ配置も似てくるのかなぁと思いました。



第八話「黒の城」

 高校2年生って「進路」を考える時期だし、「何者にもなれないクラスメイト」と「望んでいなかったのに人類の命運を賭けて戦うことになってしまった由希奈」との対比はなかなか面白く。考えてみれば、この物語が「三者面談から始まっている」のもこれは彼ら・彼女らがどう生きるのかという話だと最初に見せていたのかも。

 茅原くんが「生配信をして視聴者数を稼ぐ」のも、美夏が「大人気コスプレイヤー」なのも、「何者にもなれていない」ようで「彼ら・彼女ら自身のアイデンティティを確立している」ようにも見えて。実は由希奈やソフィーよりも前進しているようにも思えなくもないです。
 2クール目は彼ら・彼女らをどう使ってくるのか、それとも全く使わずに「最後までただの日常要員」なのか……気になります。



第九話「岩屋にが嗤う」

 「だからこそ由希奈が戦わなくてはならなかった」のだけど、現状だとクロムクロ以外は相手の指揮官クラスには敵わず、赤城くん達だけじゃなくてソフィーやトムさんだって活躍のチャンスがそんなにないんですよね。
 「由希奈って必要ですか?」というキツイ言葉が、今後はソフィーにも跳ね返ってくるんだろうし……この辺は2クール目に繋がってきそうな話ですね。「剣之介と由希奈以外のキャラって必要ですか?」というか。



第十話「不遜な

 1クール目のラストで、エフィドルグのムエッタが雪姫そっくりだったという“引き”で終わったのだけど……ど、どゆこと!?と戸惑うままに1クール目が終わってしまいました。

 単純に考えられるのは、雪姫がエフィドルグ出身で、だからクロムクロを動かせて剣之介にその力を与えた――――とかですかねぇ。ひょっとしたら剣之介が再会する前と後で別人だった可能性も考えられますが。
 あとは、「姫は死んだ」と剣之介は思っていたけど、エフィドルグに回収されて、そこで子作りした子孫がムエッタ―――とか。そもそもエフィドルグのスーパー科学だと寿命が2000年くらいに伸びるから雪姫=ムエッタだったという可能性もありますね。

 しかし、いずれにせよそうなると「雪姫と由希奈はどう血が繋がっているのか?」という疑問が。つまり、第1話でどうして由希奈だけがキューブを目覚めさせられたのか?という謎がまだ明らかになっていないんですね。
 「雪姫の子孫が由希奈」という可能性を剣之介が考えていないことを考えると雪姫に子どもはまだいなかったのだろうし、子孫として血が繋がっているのなら剣之介の知らないところで子作りしていなければなりませんし。うーん……謎が深まるばかり。早く続きが観たいです。


第十一話「に臥したる真」

 あれ……そういえば、フスナーニは由希奈の顔を見ても何の反応もありませんでしたね。ムエッタの顔を知らないということもないと思うんですけど、エフィドルグ界隈にはよくある顔なんでしょうか。

 剣之介の記憶は「埋め込まれた嘘の記憶」で、本当はサムライでも何でもなかったんじゃないか―――という話。セオリーでいうと、今まで出てきた情報が「嘘の記憶」だとすると叙述トリックになってしまうため、「嘘の記憶」じゃないかという疑い自体が間違っているというのが普通だと思うんですね。
 ただ、そうすると「剣之介がフスナーニらしき人物を見かけたことがある」という伏線は一体。

 ひょっとしたら、この地域にはエフィドルグの血を引く者が昔からたくさん移住していて、「この地域の人」と「エフィドルグの人」はよく似ているとかかな……だから、雪姫や由希奈がムエッタは遠い遠い親戚で似ているとか、フスナーニと似ている町人もいたとか。
 そう考えると、「昔からこの地域に住んでいる家系のキャラ」はエフィドルグの血を薄く引いているからクロムクロなどの「グロングル」を動かせるけど、ソフィとかトムとかポーラとかジローとか、外国からやってきているキャラには動かせない―――ということになって、「世界中から優秀な人材が集まる研究施設」という設定にも意味が出てくるかなと思います。

 話を飛躍させると、これで赤城くんにも「グロングル」を動かせる伏線になる……?


 この辺の話は14話が放送されたら明らかになっちゃいそうだったので、今のうちに妄想を垂れ流しておきました。



第十二話「黒部のに地獄を見る」

 P.A.WORKSの伝統についてはこちらをどうぞ。
 しかし、ここのコメントで書かれていて初めて気づきましたが、『クロムクロ』では7話のプール回でクラスメイトの女のコが画面の端っこでやっていたんですね(録画を確認しました)。ただ、これまでの作品では必ず「メインキャラ」がやっていたので、『クロムクロ』の7話のように「モブキャラ」がこっそりやっているというのは違和感あるんですね。誰かが遊び心で差し込んだ結果、2回出てきちゃったってところですかねー。

 それはそうと、こういう日常回もやっぱり面白いですねー。普通のロボットアニメなら日常回はハズレの回になりがちなのに、このアニメはむしろ日常回の合間にたまに戦っているくらいですし。
 でも、由希奈がこんなに本格的に訓練を受けていたら、小春のご飯は「美味しくない和尚のご飯」にならないかと心配になってきます。



第十三話「囃子に呼ばれて」

 ということで、急展開で1クール目が終わってしまったんですが。
 この急展開で重要なのは、今までは「日常シーンとしての学園生活」と「バトルシーンに直結する研究所の描写」は分離していて、出てくるキャラも分かれていたのですが……「日常もバトルになってしまった」んですね。せっかくの文化祭も裏目に出ちゃいましたし、何より「日常の象徴」だったクラスメイト達もあの場に居合わせたワケで、彼ら・彼女らの物語にも影響を与えそうです。

 剣之介や由希奈の物語も気になりますが、その他のソフィーや赤城くん達もとてもいいキャラなので、2クール目にこういったキャラ達をどう使ってくるのかに注目しています。


 ↓ここからが後半の記事です


 秋アニメがもう始まっていますが、やり残していた夏アニメのまとめをします!
 『クロムクロ』は「謎を振りまく」アニメでかつ「たくさんいるキャラがどう動くのか分からない」作品だったため、途中途中で書いた「予想」が当たっているか外れるか、外れた時はどう外されたのかを答え合わせをするのも面白いと思います。


<ルール>
・14話から最終話までの感想ツイートを貼り付け
・“最終話まで観終っている”現在の自分のコメントを補足
・なので、基本的に最終話までのネタバレを含みます
・「まとめ」という記事タイトルですけど、まとめるのは「私の感想」だけです。「みんなの感想」をまとめるのが目的の記事ではありません 
・思うがままに書いた感想なので、ところどころに間違いがあったりするでしょうが優しく許して下さいな




第十四話「祭にる羅刹」

 「「肉体」と「記憶」が別」というのは鬼(ゼル)がムエッタに言った台詞からです。この後の展開で種明かしされた話によると、ムエッタ達は「嘘の記憶」を埋め込まれているため剣術も使えるのだけど、知識はあくまで知識であって実戦で鍛えたものには敵わない―――ということだったのかなと思います。

 茅原くんはここから反省するのかなーと思いきや、あまり変わりませんでした(笑)。
 「あの人も人間だったんだ……」と自分をかばって怪我をした軍人を見て言っていたので、この後の茅原くんは「事件」よりも「人」に注目して配信をするようになった―――と見ることも出来ますが。最終回の由希奈の後姿を映しているとことか。



第十五話「追分のて」

 なかなかいいところを突いている当時の感想。
 カルロスのストーリーが「スペインに引っ越す前に思い出作りでコスプレ動画撮ろう」だったのが、終盤の映画作りにつながるとは。そして、最終回にそれを観る由希奈の涙にこっちまで泣かされるとは……何気に上手い使い方でしたね、カルロス。

 「敵の大将だけ顔見せない」のは、敵の大将が実は鬼(ゼル)と同じ種族で―――エフィドルグの戦士は「侵略した地の人間のクローン」を使うという真実を隠すためだったと思われます。これで「何故ムエッタが雪姫とそっくりなのか」が明らかになりましたし、すっかり忘れていましたが剣之介がフスナーニ(に似た人)を見たことがあるという理由にもなります。
 そう言えば、エフィドルグが日本人に似ているのは何故かみたいな話もありましたね。25話のゼルの回想シーンにイムサに似た死体がありましたし、指揮官だけは前世代のクローンを使うという話ですが、他のエフィドルグはみんな剣之介と同じ時代に生きていた日本人で、あの時代にエフィドルグに捕まった人のクローンだったのかなと思います。

 あの髪の色で……??



第十六話「再会はに流れて」

 最終回のエピローグを見ると茉莉那ちゃんは学校もカウンセラーもやめなかったみたいで、最終回を観て当時の感想を振り返ってみても、この時に思っていた以上に「進路」は重要だったなーと思います。

 極端なことを言うと、この作品って「ロボットアニメ」じゃなくて「青春アニメ」だったと思うんですね。
 『TARI TARI』のテーマが合唱で『クロムクロ』のテーマはロボットだった……みたいなカンジで、この作品に一番近いのは『TARI TARI』だったのかなと思いました。描いていたのは「大人」になる前の「自分がどういう大人になるのか」を悩んでいる時期の少年少女達でしたからね。だから、最後のクライマックスが「強大な敵とのバトル」ではなくて「自分の進路を決める」ところにあったのだろうと。



第十七話「雲中にが舞う」

 どこでどう誤解が生まれたのか今となっては覚えていないのですが……「宇宙からやってくる侵略者(エフィドルグ)」と「鬼(ゼル)」がごっちゃになってしまったことで真実が叙述トリックのように分からなくなったのですが、両者が別勢力だと分かればなんてことはないシンプルな話だったと思いますね。記憶を操作されていたのは、むしろムエッタ達エフィドルグだったという。


 すっごく楽しませてもらった作品なので「2期やります!」と言ってくれたなら観たいですけど、最終回の後の「由希奈と剣之介の再会」なんかを例えば描かれたらそれはちょっと蛇足だと思っちゃいますね……「全26話のオリジナルアニメ」できっちり終わったからこそ、この寂しさも含めての名作というかね……



第十八話「湯煙にえる」

 まさかこの時は本当に映画を撮るとは……

 由希奈とムエッタの関係は、実は最終回を迎えてもよく分からないとこがあって……ムエッタは雪姫のクローンで、雪姫の子孫が由希奈で「たまたまDNAなどがものすごく近かった」みたいなところまではイイのですが。雪姫に子どもはいなかったはずなのに(いたら剣之介が言及しているはず)、子孫というのは……?
 直系のつながりじゃなくて、例えば雪姫のいとこが別の国に嫁いでいて、鷲羽家の滅亡の影響は受けなくて、そのいとこの子の子の子の子の子の子の子の子の子の子の子の子の子の子の子の子の子の子の子の子が由希奈みたいなことなら説明がつくような気もしますが。そうすると鷲羽家に関する情報が途絶えている理由がよく分からないんですよね……

 まぁ、由希奈達にもよく分かっていないことでしょうし、全ての謎が明らかにならないといけないワケでもないんで別にイイんですけど……



第十九話「鬼が誘いざなう

 ソフィーとゼルの邂逅の回。
 まさかソフィーがフラグ立てる相手が鬼だとは……

 この回の予想は近いところを突きつつ外しているカンジで、今読むと面白いですねぇ。
 「裏切者」というのは言ってしまえばエフィドルグ全員で、彼らはみな「仲間の星を制圧するために作られたクローン」ですからね。剣之介やゼルの方には仕掛けがなかったけど、エフィドルグの方に叙述トリック的な仕掛けがあったという。

 ソフィーのパイロット化の予想は外れましたが、最終的に基地奪還作戦では彼女がガウスに乗ったので、むしろこっちの方が燃える展開だったかも。ゼルの持っていた機体ではないけれど、新たなグロングルのまとい手になったのはトムさんで―――これもまぁ予想外でした。



第二十話「飛んで火に入るの口」

 「俺達の戦いはこれからだ!」エンドというのは当たらずも遠からずなのだけど、考えてみれば「高校生」にとっての本当の戦いは「卒業した後の人生」なのだから、学生主人公の物語は全て「俺達の戦いはこれからだ!」エンドと言えるのかも知れない……
 『クロムクロ』は言ってしまえば登場人物達が「進路」を決めるまでの話ですからね。剣之介はエフィドルグと戦う進路を選び、由希奈やソフィーはそれを追いかける進路を選び、美夏はレポーター、赤城くんは整備士、茅原くんは南極か北極でカメラを構え、カルロスは何してんだオマエ……と、それぞれ別の道で戦っているんですね。そういう意味では究極の「俺達の戦いはこれからだ!」エンドだったと言えるのかも。



第二十一話「牙城のちる日」

 「紳士的な侵略」とこの時は思っていたのだけど、操られた人間は精神が壊されてしまったみたいで全然紳士的じゃなかったです。ベスとリタのオペレーターコンビが、ここでリタをかばってべスが敵に洗脳されてしまうのだけど、その後ずーーーーっとリタがべスを介護していたと思われるシーンが最終回にあってグッと来てしまいました。

 赤城くんの見せ場はここじゃなくて最終回に煙まみれになっているところなので、この回での心配は不要でしたね。最終回のあれも赤城くんがどれくらい重要なポジションだったのかはよく分かりませんが。



第二十二話「鬼がいた雪中花」

 まさか父親が普通に死んでいるとは…… 
 この作品って大まかなストーリーだけで言えば「侵略してきた宇宙人をみんなで倒した」という分かりやすいものだったのだけど、細かいところで「予想を裏切る」ことの連続で。それでいて大きく破たんすることなく最終話まで走りきったのは本当にすごかったと思います。「期待も裏切る」ことがなかったとは言いませんがね。

 ただ、自分が納得がいかないことの第1位がこの回の「手錠をハメたまま全裸になるムエッタ」です。どうやって脱いだんですかね。フスナーニのように手錠を外して、その後に自分でつけ直した……?何のために……?



第二十三話「雪に唄う蛙」

 ここからの4話が、自分が『クロムクロ』という作品を「大好き」に思わせてくれる4話でした。クラスメイト達や武隈先生の使い方が良かったなぁ。
 あと、すごく印象深かったのがグラハム少佐とトムさんのシーン。「大人」の視点から「高校生」を眺める会話が印象的で、グラハム少佐はずっと「大人」として剣之介達「子ども」に接しなければならないと思っていたみたいなんですよね(でも、出来なかった)。

 これが「進路」を描くこの作品にとって深みを増していたなぁと思うのです。
 P.A.作品は割とどれもそうですが、「未来に無限の可能性を持った子ども」と「その手本にならなくてはならない大人」の両方が描かれていて……それがまたオジサン視聴者の心を打つのかなぁと思います。



第二十四話「戦の黒部ダム」

 セバスチャン復活!
 あの……正直なことを言うと、私……「死んだように描かれていたキャラが実は生きていましたー!」って展開は好きじゃないんですね。死んだ時に一涙、生きていたと判明して一涙―――それを繰り返していった結果「どうせ死んでいないんだろうなー」と冷めた目で見てしまうところがありましたんで。

 ただ、ソフィーのピンチに颯爽と現れて大活躍するセバスチャンに初めてここで「執事かっけえ!」と感動させられたし、由希奈がさらわれた時に剣之介が由希奈の大切さを思い知ったように、セバスチャンと離れている期間にソフィーも成長したし。「好きじゃない」という気持ち以上に「ま、面白かったから良いか」と納得させられてしまいました。


 作品の好き嫌いは理屈じゃないというか……
 逆に考えると、「料理店で「多い」と文句を言っているお客さんの本当の不満は「まずい」だったりする」という話のように、私が“長年「死んだように描かれていたキャラが実は生きていましたー!」って展開が好きじゃない”と思っていたことも、本当はシンプルに「面白くない作品はそういうところが目につく」ってだけの話だったのかもと思いました。



第二十五話「鬼の見た

 ということで、24話が終わった時には「残り2話は何やるんだ?」と言っていたのですが、ラスボスを倒した後の世界でそれぞれが進路を決める話が最後に来ました。
 なるほどなー。ロボットアニメは大抵「最終回で最終決戦が描かれる」ため、その後のキャラ達がどう生きたのかは数分間のエピローグで語られるだけとか、せわしない作品だと「最終決戦が終わった後どうなったのか全く分からない」こともあるし、中には主人公が生きているのか死んでいるのかも分からないまま終わったりもしますし。

 でも、この作品……最後の2話を使って「その後のキャラ達がどう生きたのか」をじっくり描いたんですね。「最終決戦が終わった後も人生は続く――――」と。そのためにこの作品、やたら進路相談のシーンがあったのだろうと。



第二十六話「は振り返らず」

 そう言えば……23話だったと思うのですが、進路の話をされた剣之介が「侍ではダメなのですか?」と訊き、武隈先生が「侍とは(職業ではなくて)思想だよ」と言っていたことがありました。

 最終話のタイトル「侍は振り返らず」はもちろん剣之介のことでもあるのだけど、天に消えた剣之介達を見上げて振り返らなかった由希奈の後姿のことや、それを支えたクラスメイト達のことでもあると思うのです。
 私がこの作品を最後の最後に「大好きだーーーー!」と感動したのはここの部分で、何の変哲もなかったクラスメイト達が、仲間のために無茶をやって剣之介達を救おうとしたからです。あの瞬間、彼らも侍になったのだと私は思います。というか、まさか茅原くんの生配信があんな形で役に立つとは……



 敵サイドに魅力あるキャラがいなかった分、途中ちょっとダレてしまったところもあるのですが……「ラスト4話」で一気にまくられ、「最終話」でグゥの音も出ないほど感動させてもらいました。エピローグでそれぞれのキャラの「進路」をしっかり見せてくれたのも良かったです。
 私は前々からP.A.WORKSの作品が大好きでしたが、新たな分野に挑戦して、より一層P.A.WORKSのことを好きになった作品になりました。 ありがとうございました!




―2025年追記―
 さて……
 この『クロムクロ』、全26話のアニメとしてこれ以上ないほどキレイに完結していると思うのですが……2018年から、最終回から数年後を描いたと思われる小説版が(電子書籍で)発売になりました。

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 時間が出来たらテレビアニメ版を全部視聴し直した上で小説版も読みたいのだけど、P.A.WORKSのこの「オリジナルアニメの続きを小説で描く」プロジェクトは一斉に始まったので『花咲くいろは』も『TARI TARI』も『クロムクロ』も全部視聴し直さなくちゃならなくなって時間がない……!

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