『アルドノア・ゼロ』はリアル系ロボアニメ?スーパー系ロボアニメ?


<画像はテレビアニメ『アルドノア・ゼロ』第7話より引用>


※ この記事は2014年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です

※ この記事はアニメ『アルドノア・ゼロ』第7話「邂逅の二人 —The Boys of Earth—」までのネタバレを含みます。閲覧にはご注意下さい。

 第8話の前に書いておきたかった話。
 ちょっと前ですけど、『アルドノア・ゼロ』という作品をものすごく分かりやすく説明しているツイートを読みました。


 なるほど。『アルドノア・ゼロ』の“敵”側にあたる火星カタフラクトは、デザインは「見るからに敵ロボットっぽいデザイン」ですが、

○ そのパイロットにしか動かせない専用機
○ その1機しか存在しないワンオフな機体
○ なので、基本的に1機ずつ戦う
○ 機体ごとに特別な能力がある
 …ニロケラスは「全てを消滅させるバリア」、アルギュレは「斬れないものなどないレーザーサーベル」、ヘラスは「自在に動かせる6本のロケットパンチ」


 火星カタフラクトってスーパーロボットアニメのノリなんですよね。



 それと比較して“味方”側にあたる地球のカタフラクトは、

○ 全ての高校生が必修科目で習うくらいに、みんなが乗れる
○ 一世代前の機体で学生用の練習機になっているKG-6 スレイプニール、現在の連合軍の主力機であるKG-7 アレイオン、ともに量産機
○ チームを組んで複数で戦う
○ 武器は全機体共通のナイフ、ハンドガン、ライフル等


 地球側のカタフラクトは、リアル系ロボットアニメのノリなんですよね。



 『アルドノア・ゼロ』という作品は、往年のスーパーロボットアニメのノリで向かってくる火星騎士達を、リアル系ロボットに乗り込んだ主人公が『空想科学読本』みたいな戦法で倒していくアニメ―――と説明すると、伊奈帆がすごくイヤミな若者に思えてしまいますね(笑)。


 でも、この「スーパーロボvsリアルロボ」という構図は、ただ単にそういう設定の違いを用意しているだけじゃなくて、ちゃんと“その設定の違い”を活かした戦いになっているのがすごく面白いと思うのです。

 例えば……地球の兵器には「脱出装置」が付いているんですね。第2話でニロケラスと交戦した戦闘機のパイロットはパラシュートで脱出しようとしましたし、第5話でアルギュレと戦った伊奈帆は海に落下する直前に操縦席ごとレールアウトしています。こういう脱出装置は『Zガンダム』なんかにもある装置なので、リアル系ロボットアニメではよく見かけるシーンだと思います。
 でも、恐らく火星のカタフラクトには「脱出装置」が付いていません。第3話のニロケラスも、第5話のアルギュレも、第7話のヘラスも、「脱出装置」のようなものを使った形跡はありませんでした。これは考えてみれば当然で、火星のカタフラクトは皇帝から騎士に貸し与えられている一体限りの機体ですから、パイロットだけ「脱出装置」で生還することなんて考えられていないんだと思います。


 『アルドノア・ゼロ』第5話のアルギュレ戦は、この「脱出装置のあるリアル系ロボ」と「脱出装置のないスーパーロボ」の違いを活かした戦いだったんですね。両機体ともに海に落っこちて水蒸気爆発で粉々になってしまうのですから、これ実は「相打ち」なんですけど……伊奈帆は脱出装置で逃げられて、ブラドは爆発から逃げられずに死んでしまう(多分)という。
 また、伊奈帆の乗っていたKG-6 スレイプニールは量産機ですから、伊奈帆の機体は粉々になってしまいましたが、翌週また別の機体(韻子が乗っていた02号機)に乗り換えて戦っているという。これは主人公機が量産機ならではの戦い方で、『ガンダム』の富野由悠季監督が『Vガンダム』でやろうとしたことに通じなくもないですね。



 ついでなので、ちょっと話ズレますけど。
 観返してみると……第5話で伊奈帆がぶっ壊したKG-6 スレイプニールって、元々はカームが乗っていた01号機なんですよね。胸にしっかりそうナンバリングされていました。伊奈帆が元々乗っていた03号機は、第4話のアルギュレ戦で右腕がもげちゃったからだと思うんですが。断りもなくカームの機体を粉々にするとか、やっぱり伊奈帆は酷い男なのかも(笑)。

 整理してみると……
 第3話は、01号機にカーム、02号機に韻子、03号機に伊奈帆。
 第4話は、01号機にカーム(多分)、03号機に伊奈帆が乗って右腕がもげて。
 第5話は、01号機に伊奈帆が乗って大破。
 第6~7話は、02号機に伊奈帆が乗っている(カームは整備担当になり、韻子はKG-7 アレイオンに乗り換えた)という。




 閑話休題。
 ということで……『アルドノア・ゼロ』の前半は「スーパーロボvsリアルロボ」という構図を取り入れて、無敵のスーパーロボをリアルロボで如何にして倒すかを描いてきたとも言えます。
 今にして思うと、なんですが……公式サイトの監督インタビュー(※2025年追記:現在はもう残っていないみたいです)で「スーパーロボット」と「リアルロボット」というジャンルの話が最初に来ていたことから、作り手も最初にこの構図を考えていたのかもですね。



 もちろん、こういう「リアルロボでスーパーロボに立ち向かう構図」は『アルドノア・ゼロ』が初めてやっているワケではないと思いますし、言ってしまえば『機動戦士ガンダム』の終盤はまさにこういう構図で話が進むんですよね。

 『機動戦士ガンダム』の序盤は、「1機しかないけど超強いガンダムvs戦闘機みたいのや戦車みたいのや量産機のザク」という構図で。主人公側がスーパーロボ、敵側がリアル系ロボになっているのですが。

 『機動戦士ガンダム』の終盤は、敵側が「とてつもない機動性を誇るビグロ」「磁気バリアでビームを弾く上に全方位にビームを撃てるビグ・ザム」「サイコミュによる長距離攻撃およびオールレンジ攻撃が可能なエルメス」「脚がないジオング」といったカンジに1機しかいないけど超強いモビルアーマーを投入して。それをビームライフルとビームサーベルとバルカンくらいしかないガンダムで倒していくという構図で。主人公側がリアル系ロボ、敵側がスーパーロボと逆転しているのが面白いところです。



 『アルドノア・ゼロ』は『機動戦士ガンダム』のパクリだ―――みたいな話ではなくてね。  以前に書いた“「強い敵に挑む主人公」の物語と、「強い主人公に挑む敵」の物語”という考え方でこれらの作品を見ると……

 機体性能だけなら、『機動戦士ガンダム』の序盤は「強い主人公に“弱者”である敵が挑む」物語で→終盤は「超強い敵に“弱者”である主人公が挑む」物語へと移っていって、この戦力差をアムロやホワイトベースクルーの成長によって補っていると考えられて。

 『アルドノア・ゼロ』は、機体性能だけなら『機動戦士ガンダム』終盤のような「超強い敵に“弱者”である主人公が挑む」物語からスタートしていて。この戦力差を、伊奈帆の分析力と、冒頭で書いたような「リアル系ロボットならではの戦い方」で補っていると考えられます。





 さて、第8話の放送の前に是非書いておきたかった理由はここからで。
 第7話のラストで、とうとう地球側もアルドノア・ドライブを手に入れてしまったんですね。

 これまでは「火星:スーパーロボvs地球:リアルロボ」という構図でしたが、地球側もスーパーロボットを手に入れてしまったのです。
 今までの勢力図が一気に変わってしまう展開で、私は正直「1クール目のラストくらいにそういう展開が来るんだろうな」と思って第6話まで観た時点での記事の最後に「このまま最後まで「この勢力図のまま」終わるとは思えません。」と書いたのですが、まさかその翌週にそんな展開になるとは(笑)。


 これは6話を観終わった時点でネタのつもりでTwitterに書いたのですが……これから先、本当にあの鹵獲してあった火星カタフラクトに伊奈帆が乗りこんで、火星軍をメッタメタにやっつける話になったらどうしましょう(笑)。



【三行まとめ】
・『アルドノア・ゼロ』は「リアル系ロボvsスーパーロボ」という構図のアニメだ
・「量産機にしか出来ない戦い方」で「専用機」を撃退しているとも言える
・しかし、主人公側もスーパーロボを手に入れちゃって、果たしてどうなる?


 あと、第7話でニーナが「韻子がいない!韻子がいない!」と騒いでいたので、二人が再会した時にどれだけ百合百合してくれるのかを楽しみにしております。(*´д`*)
 が、こんな風に共依存百合カップルみたいに描かれていると、どっちかが死んじゃって、残った方がさやかちゃん化してしまうんじゃないかと心配しています。二人にはずっと百合百合しておいて欲しいのに!

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