2025年には流石にもう残っていませんでしたが、元は"合体ロボットものとしての『機動戦士ガンダム』”という記事を読んで書いた記事でした。
『ガンダム』ってのは最近のじゃなくて、79年に放送された初代『機動戦士ガンダム』のことね!
テレビ版派の自分としても同感。玩具を売るために入れられた要素であっても、それを上手く物語の盛り上がりに組み込んでいたのがテレビ版『ガンダム』だと思います。というか、劇場版は数年前ケーブルテレビの連夜放送(アニマックスだったと思う…)をチラチラ観たことしかないので、ビグ・ザム戦がそんなことになっていたとは知りませんでした。
※ 2025年追記:恐らく、テレビ版にあった"玩具を売るために"ねじこまれたパワーアップメカ「Gメカ」が劇場版アニメでは削除されていたため、「Gメカ」を活かしたビグ・ザム戦が劇場版アニメでは微妙になっている……みたいな話だったはず。
テレビ版と劇場版って、想像以上に別物なんですよね。
テレビ版を編集(+新規描き下ろし)して3本にまとめたのが劇場版ではあるんですが、実際に観てみると描いているものは随分と違うと思うんですよ。それは上述した記事で書かれているメカ的なリアリティの部分もそうなんですが……
テレビ版だと確か後半まで「ニュータイプ」という言葉は出てこないのですが(マチルダさんがそれっぽい発言はしている)、劇場版だと結構早い段階から「ニュータイプ」という言葉が出てきた記憶があります。
それを当時(数年前)は「テレビ版終盤で人気になった“ニュータイプ”の概念だから、劇場版では序盤から登場させたんだろうな」と考えていたのですが……富野メモによると富野監督は早い段階から後半の展開を考えていたという説もありますし。何が真実なのかは、もはや何が何だか。
「真実」のことはさておき。
「結果」としては実は凄く理に適っていたのかなぁと、最近は思うようになりました。
テレビ版の『機動戦士ガンダム』は玩具を売るためのアニメでした。
それは「クリエイターの描きたいものが商業主義に潰される」といった批判を受けがちですが、冒頭に紹介した記事で書かれていた「(玩具として売りたいがために登場した)Gメカの構造が作中でドラマチックに活かされる」事例のように、スタッフは“玩具を売るため”という縛りを活かして作品を作っていたんですよね。
「ニュータイプ」についても同様で。当時のテレビアニメは「ビデオに録画して何度も繰り返して観られる」とか「DVDを売って何度も観られる」ものではなかったのですから、20~30話先に向けた伏線なんか張っても覚えてもらえないはずなんです。
それよりも、1話1話の盛り上がりの中で「このロボットの玩具を買いたい!」と思わせなければならなかった―――そうした縛りの中でマチルダさんがアムロの才能を見抜くというシーンを印象的に描いていたのだから、それもまたスタッフの執念だったのでしょう。
ちなみに『ガンダム』放映当時、玩具を売っていたのはバンダイではなくクローバー。
当然ながら『ガンダム』以前にガンプラはありませんでしたし、それまでのロボットアニメの流れを受け継いで『ガンダム』も超合金を謳った合体メカの玩具を売ろうとしました。なので、「Gメカ」みたいなパワーアップメカが出てきたのでしょう。
残念ながらクローバーの『ガンダム』玩具は売れず、3月の春休み商戦に向けて2月から新番組を始めるために『ガンダム』は1月に打ち切り。それ以降の経緯は諸説あるのですが、バンダイが商品化の権利を獲得して後にプラモデルを発売。日本中を巻き込んだ大ブームを後に起こします。
玩具は売れませんでしたが、大人を中心にした“熱心なファン”を抱えていたことで再放送化が決定し、これもまた大ブームを引き起こす最大の要因になります。
この辺の話はWikipediaとかこちらの記事を参考にさせてもらいました。又聞きの又聞きというレベルなので信憑性はさておき、非常に面白い話ですよね。
で―――ようやく登場ですね。
そのガンプラブームと同時期に、劇場版の『ガンダム』が出てくるワケですよ。
劇場版は「お金を払って観に来る人」が対象ですし、その気になれば何度も見返すことが出来ます。「一度しか観られない」ことを想定して作っていたテレビ版とは状況が違うワケで、序盤ではそれほどストーリーに絡まない「ニュータイプ」という用語を序盤から出しても構わない状況だったんですよね。そうした方がファンにも喜ばれるでしょうし。
「玩具」という意味でも、それまでのロボット玩具の延長線上にあったクローバーのものとは違い、バンダイのガンプラはリアリティ志向が強く……ガンプラブームに熱狂していた人々からすれば、クローバーが売りたかった「Gメカ」のようなロボロボしたものよりも、(Gメカに替わって劇場版に登場する)「コアブースター」のような戦闘機っぽいものの方が喜ばれたんでしょうね。
なので、テレビ版から劇場版になる際の変更点は「玩具っぽさがなくなった」「リアリティを追求した」ものが多く、それ故にファンの間では「テレビ版は玩具会社に言われて作らされたもので、劇場版こそがスタッフが本当に作りたかった完全版だ!」いう認識を持っている人も少なくないんでしょうけど―――
それは単に、テレビ版と劇場版では売りたかった商品が違った(前者はクローバー製の玩具で後者はバンダイ製のプラモデル)のと、ビジネスモデルが変化して“求められているもの”も変化しただけのことなんじゃないかと思ったのです。
対象が違うものを比べても仕方がないというか……ね。
男性向けのエロ本と女性向けのエロ本を比べて「どっちが優れてる!?」なんて議論をしても仕方がないだろう―――これって『ガンダム』に限らず、全ての分野において言えることですよ(もちろん男性向けと女性向けでエロ本の傾向がどう違うのかを考察したりするのは意味あることでしょうけどね)。
僕自身、Gメカとかガンダムハンマーとかザクレロとか、劇場版では排除されてしまった要素が凄く好きなんですよ。あのメカメカしていたものを見ると、当時のロボットアニメの流れを痛烈に感じるというか。便利な言葉に逃げちゃいますけど、「味がある」なーと思うのです。
もちろん、「洗練された」劇場版の良さも否定しませんし、特にテレビ版では安彦氏がぶっ倒れたことで終盤使い回しの絵が多くなってしまったのを、劇場版では新規描き下ろしで補っているワケで―――劇場版を『完全版ガンダム』と呼ぶことに異論はないのですけど。
劇場版も良いけど、個人的にはやっぱりテレビ版の方が愛しさを感じてしまうなぁと。
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