


<画像はNintendo Switch用ソフト『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』より引用>
なので、今日の話のように、その空白期間にあたる話は……聞きかじったこととか、後から調べて知ったことなんかを整理して再構築したものです―――ところどころに認識のミスがあるかも知れませんので、気が付いたら指摘して下さると助かります。
さて、今日の話題。
半月ほど前に「ブランクがあっても大丈夫なゲームor厳しいゲーム」という記事を書いた際に、興味深いコメントを幾つかもらいまして……その中でも取り合わせてみると面白い二つのコメントがありました。
曰く、一つには「格闘ゲーム系はブランクがあると必殺技が出せなくて遊べない」というもので。
もう一つは「格闘ゲームというジャンルを遊んでいれば、一つ一つの格ゲーにブランクがあっても大丈夫」というもの。
この二つの意見―――一見すると矛盾しているように思えるかも知れませんが、格闘ゲームというジャンルの隆盛と衰退という歴史を鑑みれば“同じことを指している”と見ることが出来ますし。これって格闘ゲーム以外のジャンルにも言えることだよなぁと思ったのです。
○ 言うなれば、“模倣”と“独自性”
今の若い人達には格ゲーブームを全く知らない人も多いでしょうから、説明をしますと……
それ以前にもソレを目指した作品は幾つも存在しましたが、対戦型格闘ゲームの基礎を築き上げたのは『ストリートファイターII』(以下『ストII』)だと言われています。アーケード版は91年の登場で、スーパーファミコンに移植されたのが92年。Wikipediaによるとスーファミ版の売上げは国内288万本、世界で630万本だとか。
我が家も『ストII』を遊ぶために、あらゆる手を尽くしてスーファミ本体を購入したのを覚えています。
『ストII』は文化、というべきか。得意・不得意はあるけれど、とりあえずみんな「波動拳コマンドくらいは言える」というか。「ヨガと言えばダルシム」とか、「バルセロナと言えば五輪とバルログ」とか、「タイガーと言えばタイガーアッパーカット」とか。たった数年の大ブームで、僕ら世代みんなの中の共通言語になったのですよ。そのくらい大人気でした。
そうなると、当然……『ストII』人気を受けて各会社はこぞって格闘ゲームを作るワケです。
任天堂ですら『ジョイメカファイト』を作ったくらいですからね。
出来はそれぞれ玉石混交というところだったのでしょうが……この格闘ゲームブームの面白かったところは、ゲームの基本部分は『ストII』が完成させてしまっていたので、チョイチョイっとキャラと必殺技を変更させて独自ルールを加えるだけでゲームとして成り立ってしまったことです。物凄く“模倣”しやすかったというか。
格闘ゲームの“全員がプレイキャラ”という特性もちょうどよく、漫画やアニメなんかのメディアミックスと上手くハマりました。人気絶頂期だった『ドラゴンボール』(93年~)や『幽遊白書』(94年~)(『幽遊白書』は格ゲーじゃないヤツの方が有名でしょうが)なんかは当然、『Gガンダム』(94年)『ガンダムW』(96年)のもありましたね。『らんま』(92年~)のは『ストII』がスーファミに移植される前に出ていたのか!
※ カッコ内年数は格闘ゲームの発売年
んで、必殺技コマンドの話に戻るんですけど……
『ストII』ブームに乗り合わせた作品達は、当然のように必殺技コマンドも踏襲していくワケです。『ストII』でいう「波動拳」コマンドを『幽遊白書』で入力すれば「霊丸」が出て、「昇竜拳」コマンドだと「ショットガン」が出るみたいな。
言ってしまえば、『ストII』で鍛えたテクニックを他のゲームでも活かせるようになっていたんですよね。それはメーカーにとってもプレイヤーにとっても、悪いことではなかったのです。
これが「格闘ゲームというジャンルを遊んでいれば、一つ一つの格ゲーにブランクがあっても大丈夫」という根拠。“模倣”の結果として、共通項が多かったと言うべきか。
しかし、全てが全て『ストII』の“模倣”だったワケではありません。
特に91年にアーケード版が出た『餓狼伝説』、92年末に出た『餓狼伝説2』―――を始めとするSNKの格闘ゲームは、『ストII』とはまた違う派閥のファン層を築いていきました。僕はあんまりアーケードゲームに詳しくないんですけど、当時の友人曰く「カプコン派とSNK派は根本から違う」とのことでした。よう分からんけど。
“超必殺技”を生み出した『龍虎の拳』、“2ラインシステム”を進化させた『餓狼2』、格闘ゲームに武器の概念を定着させた『サムライスピリッツ』、オールスター&チーム戦の『KOF』などなど―――SNKが生み出した格闘ゲームの新要素というものも沢山あるんですよね。
時間の前後関係はちょっと分からないのですが……『ストII』の“模倣”だけでなく、それぞれのゲームに“独自性”を加える余地が残っていたことが格ゲーブームの一因だったのかなぁと思うのです。
それは恐らく、93年の『バーチャファイター』にも言えることで―――
『バーチャファイター』をキッカケに3D格闘ゲームが爆発的に増えるのですが……それ以降の進化に行き詰った格闘ゲームは90年代後半辺りから衰退していくうんぬんかんぬん、は僕はあまり詳しくありませんし、色んな人が語っているでしょうから割愛します。
ただ、何となく各作品ごとの“独自性”が強くなりすぎていって、『ストII』さえやっておけば大抵の格ゲーは初見でも何とかできるみたいな部分が薄まっていったのかなぁと思いました。共通部分が減っていったというか。
そのために、自分にとって遊べる格ゲーが限定されてしまい、「格闘ゲーム系はブランクがあると必殺技が出せなくて遊べない」に繋がったんじゃないかと解釈をしましたが如何に。
格闘ゲームの定義を広げていけば、覚えゲーと化していた当時の格闘ゲームのアンチテーゼとして生み出された『スマッシュブラザーズ』とかは今でも売れているんだから―――「格ゲーは衰退した」とは言えないような気もするんですけどね。それはさておき。
この話を頭の中で組み立てていて、一つ思いついたことがありました。
この歴史の流れ……『ドラゴンクエスト』以後のRPGに似ているんじゃないか、と。
○ 猫も杓子もRPGだった時代
『ドラゴンクエスト』(以下『ドラクエ』)が発売されたのは86年―――RPGという概念はTRPGやPCゲームにて「知っている人は知っている」という認知だったそうですし、今考えれば『ドラクエ』より数ヶ月前に発売された『ゼルダの伝説』も同じところを狙ったのかも知れませんが。
RPGと言えば、『ドラクエ』。
それくらい当時のインパクトは凄まじかったそうです。剣を持ち、魔物と戦い、アイテムを集め、謎を解き、姫を助け、敵のボスを倒して世界を救う。RPG(ロールプレイングゲーム=役割を演じるゲーム)とはよく言ったもので、こんなゲームがあるのか!と人々を夢中にさせました。
まぁ……実を言うと、我が家にファミコン本体が来た頃には『ドラクエIII』が出ていたんで。こういう話は僕よりも上の世代の方が詳しいんでしょうけどね。後から本で読んだ話ですと、『ドラクエ』が面白すぎて“模倣”として発売されたRPGを片っ端から遊んでいったという人も多かったそうですよ。
『ドラゴンクエスト』が生み出したRPGブームは凄まじく……
ファミコン後期を超え。『ドラクエ』を始めとするファミコン時代の人気RPG作品の多くがスーパーファミコンで発売されたために、スーパーファミコンが日本市場で勝利を収めたというくらいです(アクションやシューティングに関しての性能は、スーファミよりもメガドライブやPCエンジンの方が上だったという話ですしね)。
もちろんプレステ以後もRPG人気は続くのですけど、ファミコン・スーファミ時代のRPGブームの空気は異様で。先ほどの格ゲーの例のように、漫画・アニメを原作としたRPGも山ほど発売されました。
『ウルトラマン』(88年)、『ドラえもん』(90年)なんかもRPGになっていますね。『ドラゴンボール』はカードバトル形式のものが出ていたので、『ドラクエ』チックなRPGは92年と遅め。漫画原作じゃないけれど、アクションゲームのキャラをRPGにしたものに『ゴエモン外伝』(90年)『マリオRPG』(96年)なんかもあります。
※ カッコ内年数はRPGの発売年
RPGも、言ってしまえば『ドラクエ』『ドラクエII』『ドラクエIII』辺りでシステムが完成しきってしまった感が当時はあったので―――キャラとストーリーと世界観を一新して、ゲームの根っこの部分は『ドラクエ』を踏襲すればそれだけでゲームになってしまう……非常に“模倣”しやすいジャンルだったんですよね。
今日の話はゲームクリエイターが読んだら「そんな簡単にはいかねえんだよ!」と怒りそうな話ですが(笑)。まぁ、観念的な話で言えば……ということです。
もちろん、『ドラクエ』の“模倣”だけでRPGブームが続いたワケではありません。
『ヘラクレスの栄光』『MOTHER』『桃太郎伝説』……などなど、『ドラクエ』ブームの頃から『ドラクエ』との差別化を図ることによって“独自性”を築き上げようとした作品も数多いです。
そんな中でも『ドラクエ』の対抗馬として最も成長していったのが、技術者集団スクウェアが作った『ファイナルファンタジー』(以下『FF』)シリーズでしょう。
サイドビューの戦闘画面(プレイヤー=主人公ではない)、人が死にまくるシリアスなストーリー、グラフィックにこだわった演出、鳥山明キャラデザの『ドラクエ』に対して天野喜孝キャラデザの『FF』、勇者のいないメンバー編成……などなど。『ドラクエ』に対するアンチテーゼのようなものを各所に感じます。
ちょっと面白いことに、ファミコン時代の『FF』(1作目~3作目)には「魔法は使用回数制」「レベルではなく戦闘内容によってレベルアップ」「乗り物の数がやたら多い」などの“後の作品には受け継がれなかった”チャレンジ色の強いシステムが多かったんですが……スーファミ以降は、そうした面は『ロマサガ』などに任せたからなのか、4作目以降の『FF』というのは奇をてらっていない分かりやすいシステムが多いんですよね(『VIII』は突然変異のように複雑なシステムでしたが)。
言うなれば……『ドラクエ』とは違う“独自性”によって、各作品はブランド力を築いていったのです。
まぁ、重要な要因として『ドラクエ』は発売が遅く、『FF』は発売が早かったということもあるでしょうけどね。変わらない『ドラクエ』と、変化し続ける『FF』というイメージがあるのも作品数の差が大きいんじゃないかと思うのです。
そう考えると……ここ数年、和製RPG(というか一人用ゲーム全般)の勢いが落ちている理由って。格闘ゲームのソレと同じように、一つ一つの作品の“独自性”が強くなり過ぎたことが言えるのかも知れませんね。
公式サイトを眺めても、横文字で名付けられたオリジナルのシステムの名前がズラッと並べられて覚えきれませんし。プレイヤーにとっては、過去のプレイ経験を活かせない独自のシステムは「覚えなきゃならない」億劫なものなんだよなぁ……と(もちろん、翻って「新鮮」になるんですが)。
逆に言うと、格闘ゲームの続編が徐々に数字を落としていったのに対して、RPGの続編はファミコン~プレステくらいまでは右肩上がりだった理由って同じシステムでも新鮮に遊べたことが利点だったからなのかなぁと思ったりしました。ボリュームとかグラフィックとかの伸びシロが大きかったので、システム部分の進化がなくても良かったというか。
まぁ……RPGに関しては、以前にも書いたようにサードメーカーがDSでオリジナルのRPGを展開し始めているので。これが新しい流れを生み出すことを期待して……
何と、ここからが今日の本題。
『脳トレ』って、こうした視点から考えると非常に「便乗しにくい」ジャンルのゲームだったんじゃないかと思ったのです。
○ 『脳トレ』の対抗馬ってどれ?
格闘ゲームとRPGの例えを出しましたけど……実を言うと、こういうタイプのジャンルってそうそうないんですよ。
喩えば、『スーパーマリオブラザーズ』のような2Dアクションの場合、『ストII』に対する『餓狼2』だとか、『ドラクエ』に対する『FF』のようなポジションのソフトって何がありますかね?『ドラキュラ』『魔界村』『カービィ』『(レア製)ドンキー』『高橋名人』『PC原人』……どれもしっくりこない気がするんです。あぁ、海外だと『ソニック』になるのか。
シューティングゲームも『インベーダー』が草分けなのは分かるのですが、それ以降の二大派閥というと…うーん。どれもしっくり来ないというか。アドベンチャーゲームにおける『ポートピア』以降もそうか……そもそもアドベンチャーゲームって量産しにくいですしね。
レースゲームとか音ゲーとかホラーゲームとかはどうだったんでしょう?この辺はちょうど自分にとっての空白期なので不明。サッカーゲームで言えば、『ウイイレ』と『FIFA』か(海外限定)。野球ゲームで言えば、『ファミスタ』と『パワプロ』はしっくり来るかな。
で、『脳トレ』ブームの話です。
『脳トレ』『もっと脳トレ』が大ブームになって、「手軽に金儲けが出来る!」と各会社が似たような路線のゲームを出しました。ここまでは『ドラクエ』『ドラクエII』のヒットで“模倣”したRPGが沢山出たのと一緒です。
しかし、どの会社も『FF』のような“新たな人気作”を作れませんでした。
結局、『えいご漬け』も『お料理ナビ』も『常識力トレーニング』も『Wii Fit』も任天堂が作ったワケですからね。言ってしまえば、『ドラクエ』しか存在しないRPGだとか、『ストII』しか存在しない格ゲーみたいなもので……競合相手のいないジャンルは徐々に衰退していく悲劇だったのかもなぁと。
考えてみれば当然のことで……
『ドラクエ』をクリアして、よし!もっとRPGを遊びたい!と思う人は沢山いたでしょうが。
『脳トレ』を延々とプレイして、よし!もっとトレーニングしたい!と思う人はそうはいないというか。『脳トレ』にはクリアの概念がありませんからね。
“模倣”しても売れにくい。
ゲームデザインからして「次の1本」に向いていなかったんですよね。
次の1本を狙うのなら『脳トレ』とは違う題材……それこそ任天堂が狙った英語や料理や体重を狙うべきだったんだけど、「脳を鍛えるゲームが売れたからウチも脳を鍛えるゲームを作ろう」と走ってしまったというか。
“独自性”を出すことが出来なかった。
それは単に「任天堂は資本力があるからCMで売れる」というだけのことではなくて、題材の問題。
任天堂ソフトの中にも『顔トレ』みたいに売れなかったソフトもありますしねー。
と結論付けるつもりで、今日の記事のタイトルは当初「『脳トレ』ブームの悲劇は『FF』や『餓狼2』を生み出せなかったことかも知れない」にするつもりだったのですが……
あれ?そう言えば、1コあったな……と。
敢えてピックアップするとなると、『脳トレ』とは全然違うのに、『脳トレ』ブームを上手く活かして独自ブランドを築き上げたシリーズが1つあったな……と、書いている最中に気付いてしまったのです。
それは、『レイトン教授』シリーズ。
「知育ブームの二大シリーズは、『脳トレ』(を始めとする“Touch!Generations”)と『レイトン教授』である!」
うーん……やっぱりムリがあるかなぁ。
『ドラクエ』との差別化をはかった『FF』どころの差じゃなく、『脳トレ』と『レイトン教授』には物凄い差がありますし。でも、これくらい両極端な方がジャンルの幅としては面白いのかな?
『レイトン教授』を『脳トレ』と同ジャンルのソフトと捉えると『レイトン教授』は70万本クラスが売れる立派なキラーソフトですし、『脳トレ』シリーズの“Touch!Generations”の『美文字』も20万本以上が売れているヒットソフトですし……
『脳トレ』ブームが去った跡でも、ちゃんと売れる市場が残っているという見方も出来るんですよね。
流石に『もっと脳トレ』の400万本に比べると寂しい気はしますが……『リクとヨハン』みたいに、『レイトン教授』路線を狙ったソフトも出てきていますし、今後も息長く続いていくジャンルになる予感はします。
まぁ、そもそも知育ゲームって定義の難しいジャンルなんですよね。
喩えば、今度出る『クイズマジックアカデミーDS』を知育ゲームに分類するのは抵抗あると思うんですよ。でも、『常識力トレーニング』と違うジャンルだとも思えません。その差は何?
“トレーニング”とタイトルに付いているからなのかというと、『リンクのボウガントレーニング』は知育?もう、何が何やら。
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