『ファッションドリーマー』レビュー/ゲーム性よりも大切なものがある!それは「かわいい」だ!


<画像はNintendo Switch用ソフト『ファッションドリーマー』より引用>


作家性:「着せ替え」ゲームを15年作っている会社の着せ替えゲーム
ゲーム性:「リスク」も「ストーリー」も削って、ノンストレスで無限に服を手に入れる
総括

『ファッションドリーマー』
公式サイト
・開発:シンソフィア/発売:マーベラス
 Nintendo Switch用ソフト:2023年11月2日発売
・ファッション&コミュニケーション
・オートセーブ
 /1アカウントごとに4キャラまで作成可能

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 私がエンディング到達にかかった時間は約15.3時間でした
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください
 ※エンディングを迎えたらもうやることがなくなる、というゲームではありませんが


↓fdreamer-1↓




◇ 作家性:「着せ替え」ゲームを15年作っている会社の着せ替えゲーム

 このゲームは2023年にNintendo Switch専用で発売されました。

 昨今だとサードメーカーのゲームは、「Nintendo Switch」「プレイステーション5」「Xbox Series X/S」「Steam」といった様々なゲーム機やPC向けに同時に発売されることが多いのですが……
 このゲームは、ターゲット層を踏まえてなのかNintendo Switch用でしか発売されていません。確かに、Steamとかで熱心にゲームを遊んでいる層に受けるタイプのゲームではなさそうですが。


 発売は、何かと私と因縁のあるマーベラス。『LOOP8』のこと忘れてねえからな!
 開発はシンソフィア―――1995年に、ヒューマン出身の吉田秀司氏によって設立された会社で、最初は「ザ・マンブリーズ」という名前で、じきに「アキ」に会社名が変わり、2007年から「シンソフィア」となった会社です。

 ヒューマンは『ファイヤープロレスリング』で有名な会社だったからか、こちらの会社でも初期は『バーチャル・プロレスリング』シリーズや、『キン肉マン』のゲームなどを多く開発していたのですが……転機となったのは2008年、任天堂から発売されたニンテンドーDS用ソフト『わがままファッション GIRLS MODE』の開発を手がけたことだと思います。


 シンソフィアの側から任天堂に持ちかけたこの企画は、「ファッション」をゲームに落とし込んだ作品で、服屋の店員になった主人公が客の要望に合わせてコーディネートを考えるゲームでした。


<画像はWii Uバーチャルコンソール版『わがままファッション GIRLS MODE』より引用>

 この時期には既に「着せ替えのできるゲーム」は珍しくなかったのですが、「着せ替え」自体をゲームの中心に落としこんだこと、その「着せ替えられる服」の種類がものすごく多かったこと、ファッションにおいて大事な「重ね着」ができること、そしてゲームとしてしっかり面白かったことでヒットします。

 任天堂からの評価が特に高かったのは、「任天堂の他のゲーム」ではカバーできない層に受けたからだと思うんですね。端的に言うと、「若い女性」層。DSの時代が終わり、ニンテンドー3DSの時代が来ても続編が作られ続けたほどでした。


・2008年 ニンテンドーDS『わがままファッション GIRLS MODE』
・2012年 ニンテンドー3DS『わがままファッション GIRLS MODE よくばり宣言!』
 ※ 2014年 無償アップデート版『よくばり宣言!トキメキUP!』
・2015年 ニンテンドー3DS『GIRLS MODE 3 キラキラ☆コーデ』
・2017年 ニンテンドー3DS『GIRLS MODE 4 スター☆スタイリスト』


 しかし、この手のゲームはシリーズを重ねることでアイテム数も増えて、UIも洗練されていく一方……「新しい要素」を入れるのが難しいんですよね。
 『マリオ』だったら「新しいステージを作りました!」、『ドラクエ』だったら「新しいストーリーです!」で新作が作れるんですけど、ゲーム部分が大きく変わらないシリーズなのでその辺が難しかったのか、売上は初代から右肩下がりだったみたいです。

 そのため、『4』では大きなテコ入れをして、それまでは弱かったストーリー部分を強化しようと「アニメ脚本家の吉田玲子さんのシナリオ」「漫画家の星野リリィさんのキャラデザ」で売り出したそうなのですが……発売時期がもうNintendo Switchが出ていた時期なため、大きな話題になることもありませんでした。


 更に言うと、ニンテンドー3DSで続編を作り続けてる頃は「前作のアイテム」が使いまわせたのでしょうが、時代がNintendo Switchになれば解像度も一新してしまうためすべてのアイテムは作り直しになってしまいます。
 気付けば『4』が出てから7年以上が経過して、実質シリーズが止まってしまった現状なのですが……恐らくは、そういう理由なのかなと思います。


 しかし、シンソフィアには『GIRLS MODE』シリーズとは別の、もう一つの着せ替えゲームのラインがありました。




<画像はNintendo Switch用ソフト『プリパラ オールアイドル パーフェクトステージ!』より引用>

 それが、2010年からアーケードゲームを中心に展開されている「プリティー」シリーズです。

・2010年 アーケードゲーム『プリティーリズム』
・2014年 アーケードゲーム『プリパラ』
・2018年 アーケードゲーム『キラッとプリ☆チャン』
・2021年 アーケードゲーム『ワッチャプリマジ!』
・2024年 アーケードゲーム『ひみつのアイプリ』/『アイプリバース』

 タカラトミー(アーツ)とのメディアミックスプロジェクトで、この「アーケードゲーム」、「テレビアニメ」、「漫画」、「家庭用ゲーム機向けゲーム」などなどメディアを横断した作品が展開されています。

 メインとなるターゲット層は『GIRLS MODE』シリーズよりかは若干下の「女児」層だと思いますし(「プリティー」シリーズの中でもメインターゲットと想定している年齢層は作品によってちがいますが)、ゲームの中心には「ショー」や「ライブ」があるのですが、トンでもない数のコーデを組み合わせて遊ぶところは『GIRLS MODE』シリーズと共通しています。



 ということで、「着せ替え」ゲームといったらシンソフィア―――と言っても過言ではないくらい、この人達はずーーーーーーっと「着せ替え」ゲームを作り続けているんですね。


 もちろん初代『GIRLS MODE』のヒット以降「着せ替え」を題材にしたゲームは各社から出るようになったし、アクションゲームやリズムゲームなど別ジャンルのゲームであっても「着せ替え」要素は充実するようになりました。

 『GIRLS MODE』を出していた任天堂の作品を見ても、今では『ポケモン』も『ゼルダ』も『マリオ』も着せ替え要素があるし、『Splatoon』は初代から「みんなが自由に着せ替えた姿でオンライン対戦する」ゲームでした。

 「着せ替えができるゲーム」は、もう珍しくもなんともない時代になってしまったのですが……




<画像はNintendo Switch用ソフト『ファッションドリーマー』より引用>


 そこに満を持して、シンソフィアが「HDグラフィック機のゲームで」「着せ替えそのものをゲームにした」新作で殴り込みをかけてきたのがこの『ファッションドリーマー』なのです。
 パブリッシャーは任天堂からマーベラスに変わったので『GIRLS MODE』の名前は使っていないし、実はゲーム性も大きく変わっているのですが、「ジェネリックGIRLS MODE」みたいに言われていたのはこういう理由なんですね。


 ただやはり、3DS→ Nintendo Switchにプラットフォームを変えて、シリーズ仕切り直し&アイテムも作り直しになったせいで、『GIRLS MODE』にあった要素が結構なくなってしまっているのも確かです。
 具体的に言うと、「バッグ」「ネックレスやマフラー」「手袋やネイル」などファッションにおいては重要なパーツそのものがなくなっているのはかなり痛い……



<画像はNintendo Switch用ソフト『ファッションドリーマー』より引用>


 今回の舞台は仮想空間だから「荷物を入れるためのバッグ」「防寒のためのマフラー」は敢えて入れてないんですよ、みたいなことなのかも知れませんが……それを言い出したら、「遠くのものを見るためのメガネ」や「日差しを避けるための帽子」はどうして残ってるんだよって話になっちゃいますし。

 「ゲーム機の解像度が上がった」ことで「開発費や開発期間が足りていなかったのかな……」と、どうしても思ってしまうところでした。




 ただ、それでも……「解像度の上がったゲーム画面で、自由な着せ替えができる」のと、「プリティー」シリーズや『GIRLS MODE』の後期に比べて「大人っぽいオシャレな雰囲気でゲーム全体がまとまっている」のも、唯一無二の魅力があるゲームなんですね。



<画像はNintendo Switch用ソフト『ファッションドリーマー』より引用>

 そういう意味では、1作で終わらせるんじゃなくて、シリーズ化して何作も出し続けることで要素をどんどん増やしていってほしいと思うのですが……ワールドワイドで50万本売り上げたものの(10~11ページ目を参照)、『LOOP8』や『FREDERICA』同様に「当初の販売計画を大きく下回る結果」とマーベラスに言われてしまったのでシリーズ化は厳しいのかなぁ。

 この書き方だと、6月の『LOOP8』と9月の『FREDERICA』があまりに売れなかったため、その穴埋めのために11月の『ファッションドリーマー』の目標値を高く設定したけど届かなかった……とも読めるんですけどね。
 ひょっとして、『LOOP8』の一件で俺がマーベラスを許していない以上に、マーベラスが『LOOP8』を許していないのか?




◇ ゲーム性:「リスク」も「ストーリー」も削って、ノンストレスで無限に服を手に入れる

<画像はWii Uバーチャルコンソール版『わがままファッション GIRLS MODE』より引用>


 しかし、開発会社が同じで、題材も同じですが……
 『GIRLS MODE』と『ファッションドリーマー』には大きなちがいがあります。

 『GIRLS MODE』シリーズは基本的に、主人公が「服」などのファッションアイテムを売るセレクトショップの店長になり、来客が望んだとおりの服を用意してあげると買ってもらえる―――という、服屋さん経営シミュレーションの要素があったんですね。




<画像はWii Uバーチャルコンソール版『わがままファッション GIRLS MODE』より引用>

 そのため、「お店の予算」や「在庫管理」の概念があって、それでいてお客さんの要望に応えられるラインナップを揃えつつ、ちゃんと利益も出さなきゃいけない―――その様子は「トレーディングカードゲーム」のようでもあり、「敵の属性をしっかり見極めて戦うコマンドRPG」のようでもありました。

 だから、女性のファッションに疎い男性ゲーマーにも「結構面白いじゃん」と売れたんですね。




<画像はNintendo Switch用ソフト『ファッションドリーマー』より引用>

 一方、『ファッションドリーマー』の舞台は「イヴ」というデジタルプラットフォーム―――言ってしまえば、「仮想空間」です。



<画像はNintendo Switch用ソフト『ファッションドリーマー』より引用>

 この「仮想空間」内で自由に歩き回ると、そこかしこに「NPC」などのキャラが立っているので……



<画像はNintendo Switch用ソフト『ファッションドリーマー』より引用>

 「その服、いいね!」とコーデチェックから「いいね」を押すと、それだけでそのキャラが着ている全身のアイテムを全部コピーして手持ちに加えることが出来ます。

 「服を仕入れる予算」や「その服を在庫として保管しておくスペース」などもほぼ気にすることなく、好きなだけアイテムを集めることが出来るのです。(※1)

(※1:一応アイテム所持数の上限はあるのだけど、その数はなんと「9000」! 1キャラからもらえるアイテムが最大8コだと考えると、1125人にいいねをしないと限界までいかない計算になる)



<画像はNintendo Switch用ソフト『ファッションドリーマー』より引用>

 また、ほとんどのキャラは「着せ替え」をプレイヤーに要求してきます。
 やっていることは『GIRLS MODE』の「服屋にやってきた客にコーディネートを見積もってあげる」とほぼ同じですね。




<画像はNintendo Switch用ソフト『ファッションドリーマー』より引用>

 手持ちのアイテム(+何も持っていない人を想定して最低限のアイテムは用意してもらえる)の中から、その人に合いそうな服などを見積もって「着せ替え」てあげると、報酬としてフォロワーが増えたりチケット等がもらえたりします。

 あくまで「仮想空間」が舞台なので、『GIRLS MODE』とちがって「着せ替え」てあげた服が手持ちからなくなったりはしません、



 ということで、同じ開発会社のゲームで、同じ「着せ替え」が主題のゲームで、「キャラを着せ替えてあげる」とやっていることもいっしょなのに……プレイ感覚は結構ちがうんですね。

 『GIRLS MODE』は「リスク」と「リターン」をしっかり考えるゲームだったのが。
 『ファッションドリーマー』は「リスク」なしで「リターン」を無限に得られるゲームになったんです。



 桜井政博さんの言う「リスクとリターン」=「ゲーム性」という考え方に基づくと、『GIRLS MODE』はしっかりゲーム性の高いゲームだったのが、『ファッションドリーマー』はゲーム性が下がってしまったとも言えます。






<画像はWii Uバーチャルコンソール版『わがままファッション GIRLS MODE』より引用>

 また、『GIRLS MODE』シリーズには短いなりにもストーリーがあって、そのストーリーの中でキャラクター達とのやり取りの中で自然と「ファッションのいろは」を教えてくれる側面がありました。

 『ファッションドリーマー』は対照的にストーリーがなく、いきなり「仮想空間」に放り込まれて、「さぁ!自由にみんなを着せ替えてこい!」と放り出されるだけです。「ファッションのいろは」を教えてくれなくなったんですね。



 実はこの『GIRLS MODE』の「ファッションのいろは」を教えてくれるパートは、開発当初はなかったと「社長が訊く」で話されていたところなんです。

<以下、引用>

岩田

つまり、田島さんのように
ファッションに詳しい人だったら楽しめるけど、
洋服について、一般的な知識しか持たない人にとっては、
おもしろさをなかなか見つけることができないということなんですね。

山上

実際、当時の僕は、おもしろさが理解できませんでしたから。
もともと僕は、ファッションのセンスがないものですから、
どの服をおすすめしたらいいのか、まったくわからなかったんです。
そこで、とりあえず服を選んで渡しても買ってくれないんです。
お客さんはさっさと帰ってしまうんです。
「ダサ~イ、どうしてこんなのがわかんないの?」って
田島さんから言われたんですけど、
どうやっても服を選ぶ楽しさが得られなかったんですね。

田島

だから、山上さんのようなファッションに詳しくない人でも
どうすればおもしろいと感じてもらえるようになるのか、
そこがいちばん時間がかかったと思います。






―中略―

岩田

で、3ヵ月で仕上げてねと言われたソフトを触ってみて、
どんなことを感じましたか?

伊藤

わたしが最初に感じた印象は、素材はそろっているんですけど、
ルールのないカードゲームという感じだったんです。

岩田

カードは1万種類もあるけどね(笑)。

伊藤

だから、お客さんが途方に暮れるかなあと思いました。
コーディネートすると言っても、組み合わせは膨大な数になりますし。

服部

シンソフィアさんが、ファッションアイテムの
組み合わせの数を計算してくれたことがあるんです。
結果は、「じょ(※のぎへんに“予”)」を超えるかもしれない、って。

岩田

「じょ」って、億、兆、京、垓の次に来る大数ですよね。

服部

25桁の数字になって、文字にすると・・・
「1,000,000,000,000,000,000,000,000」。
もうとんでもないですよね(笑)。

伊藤

そこで、服部さんがチュートリアル的なアイデアを持っていたので、
最初に使えるアイテム数を制限しましょうということになりました。

山上

服部さんからそのアイデアを聞いたとき、
それが実現できれば、オレにもできるかもと思えたんですね。

岩田

具体的にはどんなチュートリアルになってるんですか?

服部

プレイヤーはまず「ルミナ」というお店に
見習い店員として入ることになります。
自分の把握できるくらいのアイテム数が置かれていて、
不慣れな方でもこなしていけるような指示から始められるようになっています。
これによってプレイヤーのファッションセンスのレベルを
ある程度判定できるようになっていて、
知識のある方はとにかくほめられて、どんどん次のステップに行けますし、
あまりファッションに詳しくない人は、ミスをしても、
ていねいなアドバイスを受けられるようにしました。









山上

そういったことを、シンソフィアさんのところに行って、
服部さんがホワイトボードにフロー図を書きながら説明してくれたんです。

服部

開発会社の方も同意してくださって、
とても良いものができました。

山上

その試作品を実際に遊んでみると、
そのとき初めて、自分でも買いたい商品になったと感じたんです。
「田島さんがおもしろいと言い続けてきたことが、
これでようやくわかった気がする!」って。

岩田

山上さんはおもしろさがわかるまで、
1年半もかかってしまったと(笑)。

山上

僕にもわかるんだから、服が好きな女の子だったら、
間違いなくこのおもしろさはわかると思いました。
ただ、僕のような人間がやると「ルミナ」はとても時間がかかるんですけど、
それでも「ルミナ」が終わる頃には、ちゃんとファッションのイロハ、
色のコーディネートはこうすべきだとか、
柄ものはどういうふうに合わせるべきかとか、
基本中の基本の部分はちゃんとわかるようになって、
僕でもちゃんと服が選べるようになるんですね。

田島

そこで「新しいお店をあなたに任せるわ」って言われ、
晴れて店長になれるんです。






</ここまで>

 任天堂が「ファッションに詳しい人には面白いのかも知れないけど、これだとファッションに疎い人には何が面白いか分からないよなぁ」と、誰でもファッションを学べるようにとチュートリアルやストーリーを入れたのだけど……

 『ファッションドリーマー』はその辺の要素をバッサリ切り捨ててしまったんですね。

 そのため『GIRLS MODE』のファンが「ジェネリック『GIRLS MODE』」として期待して買ったところ、「ゲーム性」が失われて、「ストーリー」もほぼなくなってしまったことにガッカリして、「虚無ゲー」みたいに言う声も多くなってしまったのですが。




<画像はNintendo Switch用ソフト『ファッションドリーマー』より引用>

 私は、これはこれでアリだと思っています。


 まず、「ゲーム性」について。
 先の桜井政博さんの動画の最後にも、「ゲーム性を高くすると、一般性が低くなる」「初代カービィは一般性を高くするために、ゲーム性を低くしている」といった解説がされていました。

 ゲーム性は必ずしも高ければイイというものではなくて、そのターゲット層に合わせて意図的に下げるという選択もあると思うんですね。

 私は初代『GIRLS MODE』を遊んでいる際、お店の運転資金や在庫管理に四苦八苦したり、お客様が要望する服が店になくてガッカリされたり、自分がシミュレーションゲーム下手なことでストレスを感じる部分が少なくなかったんですね。

 初代『GIRLS MODE』が発売された2008年と比較して、『ファッションドリーマー』が発売された2023年は、スマホが普及して、コンテンツが溢れ、イヤになったゲームはさっさと見切られてしまう時代になりました。
 ありとあらゆるゲームのシリーズが「ストレスを減らす」方向に進んでいる現代、『ファッションドリーマー』が『GIRLS MODE』とはちがう方向性を選んだのも頷けるのです。


 「ストーリー性」に関しては。
 私は『GIRLS MODE』のサブキャラが結構好きだったので、残念な気持ちもあるのですが……ストーリーを大々的に推した『GIRLS MODE4』の評判があまり良くなかったみたいで、「こんなストーリーなら、ない方がマシ」とまで言われていたそうで、完全に排除されてしまったのも仕方ないのかなと。

 私は2作目~4作目はプレイしていないのでネットで感想を漁った印象でしかないのですが……
 『GIRLS MODE』って「お客様の服を選んであげる」ポジションでしかないから、主人公ちゃんが報われないのが不憫みたいに言われがちだったそうなんですね。例えば、お客様から「アナタが服を選んだおかげでカレシが出来た!ありがとう!」って言われるだけで、主人公ちゃんはカレシを作ることができないのが不満!みたいな。



<画像はNintendo Switch用ソフト『ファッションドリーマー』より引用>

 でも、私……最終的に「自分の推しキャラ」に似せたキャラを作って、そのコにいろんな服を着させて遊んでいたので……
 もし、『ファッションドリーマー』にストーリーがあって、主人公ちゃんにカレシが出来るみたいなストーリーだったら発狂していたと思います。


 なので、「ストーリーがないならないでOK」と思いました。





<画像はNintendo Switch用ソフト『ファッションドリーマー』より引用>

 「ゲーム性」が低くて、「ストーリー」もないなら、すぐにやることなくなっちゃうゲームなんじゃないの?と思われるかも知れませんし、私も最初はそう思っていたのですが……

 このゲームの真価が見えてくるのは、「オンラインモード」が解放されてからです。
 「オンラインモード」はオフラインのモードと同じマップなのですが、「NPC」だけでなく、「このゲームを遊んでいる別プレイヤーのキャラ」も立つようになります。

 MMOのように向こうも今このゲームを同時接続している……というワケではなく、過去にこのゲームを遊んだデータがサーバーに保存されて、それが私のSwitchにやってくる「非同期型」のオンラインゲームですね。



<画像はNintendo Switch用ソフト『ファッションドリーマー』より引用>

 その「他プレイヤーのキャラ」は、「NPC」と同様に「コーデをもらう」ことが可能ですし、こちらに「着せ替え」を頼んできます。要求に合わせて着せ替えてあげると、もちろん報酬がもらえるのですが……

 その「着せ替え」てあげたコーデはオンライン経由で向こうに届き、そのコーデに着替えられるだけでなく「アイテム」をプレゼントできるんですね。



 ということで、皆さん……
 気付きましたか?


 このゲーム――――












<画像はNintendo Switch用ソフト『ファッションドリーマー』より引用>


 世界一かわいいと思うキャラを作ると、世界中のプレイヤーが、このコに似合うコーデを無限に贈ってくれるゲームなんですよ!


 私の場合は大好きな作品の大好きなキャラ(『バンドリ』の牛込りみちゃん)に似せたキャラを作って、原作じゃ絶対に着そうにない服をたくさん着せてもらってニヤニヤしていましたが。
 自分に似せたキャラを作って自分に似合う服を見繕ってもらうのも良いし、自分の"癖"を詰め込んだキャラを作ってそのコにいろんな服を着せてもらうのも良いし。

 遊び方は人それぞれです!



 こういう「他プレイヤーのキャラのコーデを考えて贈り合う」機能は、『GIRLS MODE』シリーズにも2作目の『よくばり宣言!』以降はあったのですが、「すれちがい通信で」とか「フレンドのみで」みたいにオマケ的な位置づけでしかなかったようです。


 それを、この『ファッションドリーマー』ではゲームの中核に置いて。
 「出し惜しみせずにそのコに一番似合うと思うコーデを贈り合う」システムにするために、「服を手に入れるのにお金は要らない、無制限に手に入る」「在庫管理の必要はなく、服はほぼ無限に入手できるし、無限に贈れる」ようにしたのでしょう。

 『GIRLS MODE』の時は、全然売れないダサイ服を、在庫整理のために断りそうにない客にムリヤリ押しつけてたりしてましたもんね……


<画像はNintendo Switch用ソフト『ファッションドリーマー』より引用>

 「インターネットを通じてコーデを贈り合うゲーム」だったら、似たような服ばかり贈られてくるんじゃない?と思われるかも知れませんが……そのためにあるのが、服の「配色」を変えられる「アイテムクリエイト」という機能です。

 服の構造を変えたり、模様を付けたりは出来ませんが、無限択の中から配色を自由に変えられるので理論上「私の作った服と同じものは誰も作れない」んですね。

 型紙自体がガチャで手に入るもので有限だし、「人それぞれ持っている服(の色)がちがう」ようになるゲームデザインなんですよ。


 これを私が、非同期型オンラインで出会った「他プレイヤーのキャラ」に着せると、その他プレイヤーの手に渡り、その他プレイヤーが更に「他プレイヤーのキャラ」に着せると、更にその他プレイヤーの手に渡り……と広がっていくので。

 「仮想空間」内で、『ドラクエ9』の「すれちがい通信」みたいなことが起こるのです。





<画像はNintendo Switch用ソフト『ファッションドリーマー』より引用>

 その結果、アイテム一覧に「色違いの服」が、ずら~~~っと並んで視認しづらくなっちゃう弊害もあるんですけどね。見渡す限りの「くまちゃんリュック」!

 もし次回作が出るのなら、「色違いの服」は一まとめに表示を切り替えられるとかの機能が欲しいですね。



 ちなみに、これらのオンライン要素……
 どういう理屈なのかは分かりませんが、Nintendo Switch Onlineの有料会員に入っていなくてもフルで遊べます。基本無料のゲームとかではそういうゲームありますけど、買い切り(有料DLCもない)のゲームでこういうゲームは珍しいと思います。

 オンラインモード、始める時に少し長めのダウンロード時間が必要ではありますが、始まったら特に通信の時間も感じさせずに自然に遊べるのもいいところ。





<画像はNintendo Switch用ソフト『ファッションドリーマー』より引用>

 マップにはフォトスポットがいっぱいあるので、こうして着せ替えたコーデでマップを自由に歩き回って、
 好きなところで「ドローンカメラ」を起動して、角度を変えたり、アイテムを持たせたりしながら自撮りして、
 撮った写真はNintendo Switch本体のアルバムに保存されるので、それをリアルのSNSにアップして―――というのが、このゲームの流れです。


 このゲームを(『GIRLS MODE』とちがって)ボリュームのない虚無ゲーだって言う人は、この辺に興味がない人達で―――このゲームが想定しているメインターゲットは「服を着せ替えているだけで楽しい!」「それをみんなに見せびらかせるのが楽しい!」って人達なんですね。そういう人達からすれば、無限に遊べる終わりのないゲームなんです。






<画像はNintendo Switch用ソフト『ファッションドリーマー』より引用>

 このゲームは「タイプB」―――要は「男性キャラ」も主人公にできます。
 そのため「他プレイヤーのキャラ」はもちろん「NPC」にも「男性キャラ」がたくさんいて、着せ替えることが可能です。着せ替えられるアイテムは、帽子やメガネなどを除いて、「女性用」「男性用」に分かれています。

 『GIRLS MODE』も2作目以降は男性の「着せ替え」もできるようになったそうなんですが、どうやらオマケ的なものに留まっていたそうなので……本格的に「男性キャラ」も使えるようになったところは、『ファッションドリーマー』はもっと評価されてイイと思います(ストーリー性がなくなったのもそれが関係しているのかも)。


 1つのアカウントで4キャラまで作成可能で、それらのキャラは全キャラで「フォロワー」や「アイテム」が共通になります。「サブキャラ作りたいけど、また1から服を集めるのは面倒だなー」なんて心配は必要ありません。

 ただし、「複数のキャラを作って同時にドローンカメラで写真を撮る」みたいなことは出来ません。例えば、「推しの女のコキャラ」と「おっさんの自キャラ」を作って、いっしょに記念撮影―――みたいなことは出来ないんですね。



 「おっさんの自キャラ」は置いといて……
 「複数キャラを組み合わせて撮影できるモード」があったなら、いろんな遊び方が出来たのになぁとは思いますね。自分で作ったキャラだけでなく、フレンドといっしょに記念撮影とかもできませんからね。

 「リアルSNSにバーチャル自撮りをたくさんアップしてね!」ってゲームで、これが出来ないのは痛すぎる。
 



 街中に立っている「NPC」や「他プレイヤーのキャラ」とはいっしょに撮影することが可能で、自分が着せ替えた服といっしょに撮影もできます。


<画像はNintendo Switch用ソフト『ファッションドリーマー』より引用>

 しかし、こちらにも明確な不満点があって、自分のキャラはいろんなポーズがとれるのに、いっしょに撮影してくれるキャラは特にポーズをとったりしてくれないんですね。


 「NPC」はキャラ固有の動きをしてくれる人もいる(※2)ので、それに合わせてこっちがポーズを選べばいいのですが、「他プレイヤーのキャラ」はただ棒立ちですからね……


(※2:個性的な動きをする「NPC」は仲良くなると、そのポーズを教えてくれる要素もあります。自キャラにいろんなポーズを取らせるために、「NPC」の頼みを聞いていくのがこのゲームのやり込み要素の一つになっています)



<画像はNintendo Switch用ソフト『ファッションドリーマー』より引用>

 作った服などを見せびらかす(持っていってもらう)要素として、自分なりのショールームを作る機能もあります。作ったショールームは、『どうぶつの森』の「夢見の館」みたいに非同期で他プレイヤーが見に行けるようになっています。



<画像はNintendo Switch用ソフト『ファッションドリーマー』より引用>

 他プレイヤーのショールームを見に行くのも、個性がしっかり出ているし、服などのアイテムを持ち帰れるのでそれだけで楽しい!
↓fdreamer-3↓



◇ 総括

<画像はNintendo Switch用ソフト『ファッションドリーマー』より引用>

 「ファッションに興味がない人でも楽しめるように」と任天堂ナイズされた『GIRLS MODE』とちがって、「ファッションが好きな人」「着せ替えが楽しい人」「自撮りが楽しい人」に向けて特化されたゲームになってしまったところはありますが……

 その路線を突き詰めて、和製の着せ替えゲームとしては最高峰のものが出来上がったと思います。


 もちろんシリーズ1作目故に、足りないところ、ここさえ何とかなればなぁ~というところはたくさんあります。やっぱり、最低限「バッグ」と「ネックレス」は欲しいし、ドローンカメラ撮影時に他キャラもポーズを取ってくれる仕様は欲しい! 自分の作ったサブキャラやフレンドのキャラといっしょに撮影できるモードも欲しいし、座るモーションも欲しい! 髪型ももっと増やして!(特にショートカットのバリエーション)

 マーベラスには1作で諦めるんじゃなくて、シリーズ化させて大切に育てて欲しいです。「続編」には「続編」なりのセールスポイントが必要だと思うんですが、『GIRLS MODE』とちがって「歩き回れるマップ」を変えるだけで雰囲気がガラッと変わると思いますしね。期待しています!

コメント


  1.  > ということで、皆さん……
     > 気付きましたか?


     > このゲーム――――

    ここから始まるスクショの連投、センスいいですね......!

    「アイテムクリエイト」と「ルカット」の組み合わせは、ガルモにはなかったコンセプトで新鮮でしたね。続編では街に夏祭りやクリスマスなどのイベントが追加されて、写真を撮る楽しさが上がらないかなあと妄想しています。

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    1. ああー!イイですね。
      キャラとコーデには不満がないし、マップを無限に増やすのは難しいでしょうけど、マップの飾りつけを時期によって変えるシステムが入るだけで遊び方がグンと広がって化けそうですよね。
      本当に、この素材を1作だけで終わらせてしまうのはもったいないので……どうにかして次につなげてほしいなぁ。

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