<画像はテレビアニメ版『AIR』第1話より引用>
<2025年2月28日現在・『AIR』が見放題になっているサブスク>
『AIR』
・形式:テレビアニメ(全12話で完結+特別編2話)
2005年1月~3月に放送
・原作:PCゲーム(元は18禁で、後に全年齢版も出ました)
2000年9月8日発売(その後、様々な機種に移植されます)
・制作:京都アニメーション
・監督:石原立也
・シリーズ構成・脚本:志茂文彦
・キャラクター原案:樋上いたる
キャラクターデザイン・総作画監督 - 荒谷朋恵
【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
※ 苦手な人もいそうなNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。
・シリアス展開:◎(『Kanon』や『CLANNAD』と比較しても救われない)
・恥をかく&嘲笑シーン:○(人形劇が滑るシーンはキツイかも)
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・白人酋長もの:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:○(グロかは微妙だけどセミを喰わされそうになる)
※ 苦手な人もいそうなNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。
・シリアス展開:◎(『Kanon』や『CLANNAD』と比較しても救われない)
・恥をかく&嘲笑シーン:○(人形劇が滑るシーンはキツイかも)
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・白人酋長もの:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:○(グロかは微妙だけどセミを喰わされそうになる)
・百合要素:×
・BL要素:×
・男女の恋愛:○(“恋愛を超越した話”だとは思うけど)
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×
・BL要素:×
・男女の恋愛:○(“恋愛を超越した話”だとは思うけど)
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×
◇ 時代性:泣きゲーの第一人者と、後に社会現象を起こす京アニの邂逅
まずは原作ゲームの説明からします。
原作のゲーム『AIR』は2000年9月に、PC向けに18禁ゲームとして発売されました。翌2001年から全年齢版がPCやドリームキャストで出て、その後はPS2やPSP、スマホ、プレイステーションVita、Nintendo Switch、Steamと様々な機種に移植されています。
開発は「泣きゲー」として一時代を築いたKey。
Keyは元々『MOON.』『ONE 〜輝く季節へ〜』などを作ったTacticsのメンバーがビジュアルアーツに移籍して立ち上げたブランドで、1999年の『Kanon』を皮切りに大ヒット作を世に送り出しています。
・2000年『AIR』 ← この記事で取り上げているのはコレ
・2004年『CLANNAD』
・2004年『planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜』
・2007年『リトルバスターズ!』
・2011年『Rewrite』
……などなどなど
Key作品といえば現在でもスマホ&PCゲーム『ヘブンバーンズレッド』が人気で、むちゃくちゃ面白いですが……2000年代は「PCでのアドベンチャーゲーム」の立ち位置が今よりも"ヲタクの必修科目"だったこともあって、「Keyの新作」への注目度は今のPCゲーム市場からは考えられないくらい高かったように思えます。
いや、私はあんまり「PCのアドベンチャーゲーム」通過してこなかったんですけどね……ゲームはコンシューマー派だったもので。
さて、そんな大人気原作をアニメ化したのが京都アニメーションです。
「『涼宮ハルヒ』や『けいおん!』の京都アニメーションかー」と思われるかも知れませんが、それらはもうちょっと未来の話です。京都アニメーションは2003年に初の元請け作品『フルメタル・パニック? ふもっふ』を制作したその次の作品として、2005年にこの『AIR』を手がけているんですね。
つまり、この『AIR』が「京都アニメーションの名をアニメファンに轟かせた」作品なんです。
・2003年『フルメタル・パニック? ふもっふ』
・2005年『AIR』 ← この記事で取り上げているのはコレ
・2005年『フルメタル・パニック! The Second Raid』
・2006年『涼宮ハルヒの憂鬱』
・2006年『Kanon』
・2007年『らき☆すた』
・2007年『CLANNAD』
・2008年『CLANNAD 〜AFTER STORY〜』
・2009年『空を見上げる少女の瞳に映る世界』
・2009年『けいおん!』
・2009年『涼宮ハルヒの憂鬱(2009年版)』
・2010年『けいおん!!』
・2011年『日常』
・2012年『氷菓』
……などなどなど
私は今回が『AIR』初視聴でしたが、2006年の『涼宮ハルヒの憂鬱』が放送される時点で「あの『AIR』の京都アニメーションの新作」って言われていたのは覚えています。
すっごい細かい描写なんですが、病院のスリッパを放るように出して、靴を脱いで、その無造作に放り出されたスリッパに足を合わせて履いて歩くシーン―――こういう「アニメには不向きな日常描写」を手間かけてやるのが京アニらしさですよね。
この『AIR』のアニメで高い評価を受けた京アニは、そこから『Kanon』の2度目のテレビアニメ、『CLANNAD』のテレビアニメを制作することになって、いずれも高い評価を受けます(※1)。
(※1:この3作のKey作品はいずれも東映アニメーション版と京都アニメーション版がある。『AIR』と『CLANNAD』の東映アニメーション版は劇場用アニメ)
ということで、飛ぶ鳥を落とす勢いだったKey作品を、ここから飛ぶ鳥を落としていく京アニがアニメ化した作品―――それが『AIR』なんですね。
さて、この『AIR』原作ゲームの企画とメインシナリオは麻枝准さんが手がけています。『Angel Beats!』などのアニメも手がけ、今も『ヘブンバーンズレッド』でブイブイ言わせている麻枝准さんなので、Key=麻枝准さんみたいな印象はあったのですが……
Key1作目の『Kanon』の頃は、もう1人の天才:久弥直樹さんが企画原案を立ち上げて、麻枝さんと2人でシナリオを書いていて(ギャルゲーはルートによって担当のシナリオライターが異なることが多い)。それゆえに比較されることも多くて、麻枝さんにも久弥直樹さんに対するコンプレックスのようなものがあったそうなんですね。
が、その久弥直樹さんがKeyを去り、言ってしまえば「2枚看板のエース」の片方がいなくなってしまった状態で……この『AIR』や『CLANNAD』は企画から麻枝さんが立ち上げたものです。
どうりで、『Kanon』って(後のKey作品と比べると)結構スタンダードなギャルゲーの構造をしていると思ったんだ……
私が麻枝准さんの作品に初めて触れたのは『CLANNAD』のテレビアニメでしたが「ギャルゲーでこんなことしていいんだ……」と思いましたし、『ヘブンバーンズレッド』も「スマホゲーでこんなことしていいんだ……」と思いましたし、この『AIR』のアニメも「ギャルゲーでこんなことやってたの!?」と驚かされました。
ということで、「ストーリーの結末」的な話は書きませんが、ここからは「作品の構造」や「作品の構成」的なネタバレ話も書いてきます。「ネタバレいやだよー」という人は総括まで飛んでね。
主人公は、国崎往人(くにさき ゆきと)。
人形劇をして日銭を稼ぎながら旅をしている青年で、彼が、鉄道も通らない田舎の海辺の町にやってきたところから話が始まります。

<画像はテレビアニメ版『AIR』第1話より引用>
ヒロインの1人、泊まるところのない往人を居候させてくれたのが神尾観鈴(かみお みすず)。いつもにこにこしている、おっとりとした少女だけど……理由があって友達が1人もいないため、往人と友達になりたがります。
独特なしゃべりかたがかなり癖になりますね。
「ぶいっ」がすごくかわいい……
<画像はテレビアニメ版『AIR』第1話より引用>
2人目のヒロインは、往人がバイトすることになる開業医の妹である霧島佳乃(きりしま かの)。うぉぉおおおおお! 青髪ショートカットで、姉妹の妹キャラだーーーー!
この『AIR』は「母と娘」がテーマの作品ですが、このコの母親は幼い頃に亡くなっていて、姉が母代わりに育てています。その過保護っぷりと日常描写はかなり癒しポイントでした。
<画像はテレビアニメ版『AIR』第1話より引用>
3人目のヒロインは、観鈴のクラスメイト:遠野 美凪(とおの みなぎ)。
今では列車が来なくなった廃駅が現役だった頃の駅長の娘で、その廃駅で「みちる」という小さな女のコといっしょにいることが多いです。学年トップの成績で物静か、お米が好きで「お米券」をよく配っています。
ということで、メインヒロインはこの3人―――
『Kanon』の京アニ版は2クール、『CLANNAD』は4クールあったのに、『AIR』は1クールしかなくて大変だろうと思うのですが、(駆け足ながら)各ヒロインのルートをしっかり描いていました。
「ヒロインが3人しかいないんだ?」とは思いつつも、「ファンタジー要素がある」のと「ヒロインの境遇がみんな可哀想」「家族がテーマになっている」のはKey作品ではいつものことだし、序盤は『Kanon』の正統続編だなーくらいに思っていました。『Kanon』が冬の話だったから、『AIR』は夏なのかーくらいに。
6話まではな!
それまでのヒロインルートでも「ファンタジー要素」は強くて、ヒロインの話は決着しているけど謎が残るカンジだったのですが……

<画像はテレビアニメ版『AIR』第7話より引用>
7話のラストから過去編―――
しかも、1000年前に話が飛びます。
要は、それまでに描かれていた「ファンタジー要素」の種明かしをやってくれる過去編が始まるんですね。そこには主人公もヒロイン達も登場しないのですが、テレビアニメ版だと8話・9話、そして特別編の2話がこの過去編なので……全14話中4話も過去編をやっているという。
それもそのはず、原作のゲームからして「三部構成」になっていて。
第一部が、男主人公が町にやってきてヒロイン達と出会って、各ヒロインのルートに分岐するという「普通のギャルゲー」の構造で。
第二部が、この「1000年前の過去回想で種明かしをする」構成だったんですね。第一部でヒロイン達に起こっていた不可思議な現象は何だったのかがコレで分かるのです。
そして、テレビアニメの9話ラストからが原作ゲームの「第三部」です。
この「第三部」は、プレイヤー・視聴者が「真実」を知った上で、主人公:往人とヒロイン:観鈴が出会うところから描き直す―――言ってしまえば、「ループものの2周目」なのですが……
私がこのアニメを「トンデモないものを観てしまった」と思ったのはここで。
この「2周目」―――

<画像はテレビアニメ版『AIR』第9話より引用>
主人公:往人(=視点となるキャラ)が、カラスになるのです。
ギャルゲーは一般的に、プレイヤーが「男主人公」に自分を当てはめて、自分の分身がヒロイン達を救っていくのを見る構造だと思うのですが……この『AIR』では、主人公(だけ)ではヒロインは救えず、挙句の果てにはカラスになるのです。
しょせんはカラスなので、物語に干渉することは(ほとんど)出来ず、観鈴の友達になってあげることも出来ません。出来るのはただ「何が起こっているのかを観察する」だけで、原作ゲームでも選択肢による分岐(=プレイヤーによる物語介入)が一切なかったそうです。

<画像はテレビアニメ版『AIR』第10話より引用>
しかも、このループにも往人がいるので、カラスになった1周目の往人と、2周目の往人がいっしょに画面に映るという(2周目の往人は顔が映らないようになっているみたい)。
2025年現在だと「ループ系」の物語はたくさんあって見慣れたものだと思うのですが、主人公が過去に戻ってやり直して未来を変えるというのがほとんどだと思うんですね。しかし、この作品の2周目はカラスなので特に何もやり直せません。ただ、この後に起こる悲劇を分かってて傍観することしか出来ないのです。

<画像はテレビアニメ版『AIR』第10話より引用>
ただ、主人公がカラスになったからこそ、登場人物達が「あの時、何を考えてそういう行動をとっていたのか」を打ち明けてくれて、1周目では分からなかった内情が分かる要素もあります。
こうして「カラスの視点」で見させられる2周目の結末は、1周目の往人が見られなかったそれで……「ようやくここにたどり着いた」という達成感と、「主人公には物語に介入できない」無力感に満ちたもので、感情がズタボロにされました。
これが、『ヘブンバーンズレッド』の原点なのか……!
「ギャルゲーのプレイヤーは誰視点なのか」を批評的に捉えた作品で、私はまずその構造が面白いと思いました。2025年の今観ても新鮮だったし、それでいて最新の『ヘブンバーンズレッド』にもつながっているところがあると思います。
それでいてヒロイン達のシナリオは良質で、どのヒロインも「救ってあげたい」と思わせる魅力を持っていました。
そして、これをテレビアニメの1クールの中に収めたのもすごいです。その後に「特別編」が2話作られましたが、これは補足的なものであって、正直観なかったとしても「全12話でしっかりまとまっている」と思いますからね。
観てよかった。
Keyにとっても、麻枝准さんにとっても、京アニにとっても、ターニングポイントになった作品だったと思います。
それはそうと、
モブで『Kanon』のキャラが出てきて、「うぉおおおおお」と叫んだ後、真琴が真琴だと分からなくて「あんなキャラいたっけ……」となっていました。制服姿だと誰だか分かんねぇ……
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