『ドラゴンボール 神龍の謎』、およびファミコン時代のバンダイのゲームについて語る

※ この記事は2022年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2026年に移行した記事です


 ファミコン世代の方々には、「キャラゲーにはクソゲーが多い」とか「特にバンダイのキャラゲーはクソゲーばかりだ」みたいに思っている人も多いんじゃないかと思います。

 私も昔そう思っていた時期があるのですが、ゲームの歴史が進んで、当時のことを客観視できるようになった今―――改めて考えると、別に「志が低かった」ワケじゃなくて「先進的なことをやりすぎた」作品も多く、中にはそれが受け入れられて「後のスタンダードになった」ゲームもあるんだなと思うようになりました。



<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ドラゴンボール 神龍の謎』より引用>

 ということで、今日はこのゲームについて語ります。
 『ドラゴンボール 神龍の謎』は、1986年11月にバンダイから発売されたファミコン初の『ドラゴンボール』のゲームです。ファミコンが大人気の頃に発売され、これまた大人気だった『ドラゴンボール』のゲームということでミリオンセラーを達成しています。
 そして、それだけたくさん売れたことで幻滅してしまったこども達も多かったのでしょう。「キャラゲーはクソゲー」「バンダイのゲームはクソゲー」というイメージを作ったソフトの一つと言われています。

 私も正直「どうかしている」と思う部分はあるのですが、しかし、今にして思うと別に「志が低いゲーム」ではないと思うんですね。



<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ドラゴンボール 神龍の謎』より引用>

 ゲームは基本的に、『ゼルダの伝説』のように上から見下ろした視点のアクションゲームで進行していきます。
 『ゼルダの伝説』1作目は1986年2月発売で、この『ドラゴンボール 神龍の謎』は1986年11月発売です。直接的なのか間接的なのかは分かりませんが、何らかの影響はあるんじゃないかと思います。マップの至るところに見えない「隠し部屋」があって、そこに入るとアイテムが手に入ったり、逆に敵だらけだったり。単純に先に進めば道が開けるのではなく、カギを探したり、奪われたドラゴンボールを探したりしないと先に進めないなどの、「アクションアドベンチャー」の要素が結構強いんですね。



<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ドラゴンボール 神龍の謎』より引用>

 そして、ボス戦になると、『イー・アル・カンフー』(アーケード版は1985年1月稼働)のような横から視点の「格闘ゲーム」になります。クオリティは『イー・アル・カンフー』とは比べようもありませんが、ヤムチャ、クリリン、牛魔王、メタリック軍曹といった原作でおなじみのキャラ達が、それぞれのキャラらしい動きを一応はしてきます。



<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ドラゴンボール 神龍の謎』より引用>

 また、状況によっては、「横から視点の固定画面アクションゲーム」になる場面もあります。隠れている敵を探したり、カギを獲ったり、『ドンキーコング』(アーケード版は1981年7月稼働)のようにリフトをジャンプで乗り継いでいったりもします。



<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ドラゴンボール 神龍の謎』より引用>

 申し訳程度ですが、水中面もあります。
 わざわざ水中面専用のグラフィックや操作を用意しているところは、前年の『スーパーマリオブラザーズ』(1985年9月発売)の影響がありそう。



<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ドラゴンボール 神龍の謎』より引用>

 ストーリーが進むポイントになると、アドベンチャーゲームのような立ち絵付きの会話が表示されます。悟空にパンパンされたお婆ちゃん、悟空にパンパンされたお婆ちゃんじゃないか!

 このアドベンチャーパートのグラフィックのクオリティが「当時のグラフィックの水準を考えても相当酷い」とゲームカタログなんかには書かれているのですが、1986年のファミコンのアドベンチャーゲームって『ミシシッピー殺人事件』(1986年10月発売)や『たけしの挑戦状』(1986年12月発売)ですよ。



<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ミシシッピー殺人事件』より引用>


<画像はWiiバーチャルコンソール版『たけしの挑戦状』より引用>

 私には、そこまでの差があるとは思えません。



<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ドラゴンボール 神龍の謎』より引用>

 砂漠越えを強要されて覚悟を決める悟空のセリフ、味わい深くて好き。



 ゲーム進行に合わせて「トップビュー(上からの視点)」「サイドビュー(横からの視点)」が切り替わるところなんかも、当時のトレンドの一つで、ステージによって全く別のゲームが始まる作品が出だした頃なんですよね。

・1985年10月『チャレンジャー』
 …1面は横スクアクション。2面が見下ろし視点の探索アクションで、固定画面の横視点アクション面に出入りしていく
・1986年2月『ゼルダの伝説』
 …基本は見下ろし視点のアクションアドベンチャーで、ダンジョン内でのみ横視点になる場面がある
・1986年11月『ドラゴンボール 神龍の謎』
 …基本は見下ろし視点のアクションアドベンチャーで、ボス戦は「格闘ゲーム」、ところどころで固定画面の横視点アクション面になる
・1986年12月『たけしの挑戦状』
 …基本は横視点のアクションアドベンチャーだけど、ハングライダーの場面はシューティングになる
・1986年12月『光神話 パルテナの鏡』
 …上スクロールや横スクロールステージの後、探索要素のある砦面があって。最終面はシューティング
・1986年12月『ドラえもん』
 …1面は見下ろし視点の探索アクションで、固定画面の横視点アクション面に出入り。2面が強制スクロールのシューティング。3面が画面切り替え式の横視点のアクションシューティング
・1987年2月『魂斗羅』
 …横スクアクション面と、3Dシューティングのステージがある



 こう振り返ってみると『神龍の謎』って『チャレンジャー』や『ゼルダの伝説』に影響を受けつつ、『イー・アル・カンフー』なんかの要素も取り入れて、更に立ち絵とセリフでストーリーを進行していくアドベンチャーゲームの要素も贅沢に詰め込んだゲームなんだと思えてきます。


 この時期のキャラゲーって、その時世に流行っていたジャンルをいち早く取り入れて、自社の持つIPに当てはめる―――というものが多かったと思うんですね。
 実を言うと、『ドラゴンボール』のゲームはこの『神龍の謎』が初めてのものではなく、スーパーカセットビジョンで『ドラゴンボール ドラゴン大秘境』がエポック社から2ヶ月先に出ています(1986年9月発売)。こちらは『ゼビウス』のような縦スクロールシューティングに、時々『イー・アル・カンフー』のような格闘ステージがあるというカンジなんですね。

 マシンスペックがまだまだ低いことと、多彩なゲームジャンルがまだ生まれていなかったことで、「原作を再現するゲームジャンルを作る」ことができず、「既にあるゲームジャンルにIPを当てはめる」ことしか出来なかったのでしょうが……
 遊ぶ側のファミコンキッズ視点で考えても、「マリオみたいなゲーム」「ゼルダみたいなゲーム」といった、「慣れ親しんだゲームに似たもの」の方が遊びやすかった時代だとも思うんですね。多彩なゲームジャンルを受け入れる土壌も、まだ出来ていなかったというか。



 バンダイのキャラゲーはそこに独自要素を加えることが多く、それが「元のゲーム」と上手く合わさらないとヒドイものになるのですが、噛み合って上手くいったものは「後のゲームのスタンダードになる」ほどの革命的な作品になったりもします。

 例えば、『キン肉マン マッスルタッグマッチ』(1985年11月)―――
 データイースト(開発はテクノスジャパン)の『ザ・ビッグプロレスリング』(1983年12月)を皮切りに、プロレスゲームや「対戦相手と殴り合うゲーム」が世に出てきたのがこの時期です。『空手道』(1984年6月)、『アーバンチャンピオン』(1984年11月)などなど。
 特に、セガの『アッポー』(1984年6月)は「ジャイアント馬場」や「ハルク・ホーガン」などの実在のプロレスラーをモチーフにした8人のキャラの中から1人を選び、それぞれにちがう必殺技を持つという……「キャラ性能の差」を取り入れたゲームでした。ただし、対人戦はなく、CPU戦のみでした。

 1985年11月に発売された『キン肉マン マッスルタッグマッチ』は、原作のキャラクターを『アッポー』(1984年6月)のように「キャラ性能の差」を付けて再現し、『対戦空手道』(1984年9月)や『アーバンチャンピオン』(1984年11月)のような「2人対戦プレイ」が出来るようにしたゲームなんですね。
 対戦ゲームのキャラ性能は1Pと2Pで同じでなければならないという固定概念を壊したことは、後の『ファミスタ』や『ストII』ブームにつながっていくんじゃないかと思います。



 例えば、『SDガンダムワールド ガチャポン戦士』(1987年11月)―――
 PC向けに展開されていた『大戦略』シリーズ(1作目の『現代大戦略』は1985年11月発売)を、『ガンダム』シリーズのユニットのみで行うというゲームなのですが……恐らく、特に初期は「純粋なシミュレーションゲームだと対戦プレイが盛り上がらない」と考えて、「戦闘をアクションゲーム」にして、「1ターンに動かせるユニットが3つまで」としてあります。

 シリーズが続くと「純粋なシミュレーション」「1人用で長く遊べる」ゲームへと変遷していくのですが、ここで『ガンダム』と『大戦略』を融合させてファミコンキッズ達に受け入れられたことは、後の『Gジェネレーション』シリーズや『スーパーロボット大戦』シリーズにもつながっていると思うんですね。


<画像はWiiバーチャルコンソール版『SDガンダムワールド ガチャポン戦士』より引用>


 『ドラゴンボール』のゲームも、ファミコン2作目の『ドラゴンボール 大魔王復活』(1988年8月発売)になると「RPG」と「アドベンチャーゲーム(3Dダンジョン含む)」を半々に合わせてカードバトルという独自要素を加えたゲームになり、以後シリーズとして続くようになります。


<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ドラゴンボール 大魔王復活』より引用>


 更にスーファミ時代になると、『ストリートファイターII』(1991年3月)から始まる対戦格闘ゲームの大ブームに乗っかり、1993年3月に『ドラゴンボールZ 超武闘伝』を発売してシリーズ化していきます。対戦格闘ゲームでありながら、キャラクター同士が遠距離に離れたり空を飛んだりすることが可能で、原作通りの光線技の撃ち合いを再現したゲームになっています。


<画像はスーパーファミコン用ソフト『ドラゴンボールZ 超武闘伝2』より引用>


 ということで、バンダイのキャラゲーにも「良作」「名作」はたくさんあるし、どのゲームも「流行っているものにIPのガワを被せた」だけではない「独自要素」を加えようとしたものばかりだったと思うんですね。

 では、『ドラゴンボール 神龍の謎』の独自要素はどこなのか―――



<画像はファミリーコンピュータ用ソフト『ドラゴンボール 神龍の謎』より引用>

 スクショでは分からないと思うのですが、左上の「POW 87」と書かれた数字―――これが、悟空の「体力ゲージ」かつ「制限時間」になっています。敵から攻撃を受けるともちろん減りますが、何もしていなくても減っていきます。すぐに腹が減って力が出なくなる、原作初期の悟空の特性をゲームデザインに落とし込んでいるんですね。


 これ、狙いは分からなくはないんですよ。
 この時代のアクションゲームは「一撃死」するものも少なくなかったのを、「制限時間が減るだけ」に留めておけばアクションゲームが苦手なこどもでもそれなりに楽しめるだろうくらいの狙いだったと思うんですね。

 しかし、プレイヤーはそうは思えません。ぼさっとしているとどんどん悟空の「体力」が減っていく、いわば毒状態なのです。さっさとゲームをクリアしなければと思っちゃいますし、敵の攻撃が激しいのでガンガン「制限時間」が減っていき、アイテムをゆっくり探索するような時間もありません。
 私は4面でギブアップしてしまいましたが、クリアした人のプレイ動画を見ると、ダメージ覚悟で敵に突っ込んでいって攻撃ボタンを押しまくって倒し、ランダムで出るかどうかの回復アイテムが手に入ることを祈る―――みたいなゲームプレイになっていました。

 要は、この「体力ゲージ」と「制限時間」が共通という独自要素のせいで、このゲームの目玉となる「探索要素」はゆっくり探しているヒマがなくなり、「アクションゲームとしての駆け引き」も大味なものになってしまっているんですね。


 ゲーム本来の魅力を台なしにしていると言っても過言ではなく、当時のこども達がこのゲームにガッカリしてしまったのもしょうがないと思います。このゲームの独自要素を全否定してしまいますが、制限時間が減っていくシステム要るかなぁ?

 それでも私、このゲームが「志が低いゲーム」とは思わないんですね。
 ゲームの後半は原作のストーリーを追い抜いてしまってゲームオリジナルの展開をしていくのだけど、ドラゴンボールを探して宇宙まで悟空が進み、前半で月に送ったうさぎ団の兎人参化が宇宙で再戦を挑んてくる―――とか、原作でも拾われなかった激アツ展開が描かれますからね。まぁ、私は4面でギブアップしたので、その辺は他の人のクリア動画を見ただけですが!


 ということで、兎人参化のファンにはオススメです!



◇ 蛇足

 どうして今更こんな記事を書いたの? と思われてそうなので経緯を説明すると……

 元々『Slay the Spire』のレビュー記事を書くつもりで、それなら「カードを使ったRPG」の先輩として『ドラゴンボール 大魔王復活』についても語った方がイイとAmazonで中古を買ってクリアまで遊んだんですね。

 そしたら、その『ドラゴンボール 大魔王復活』が結構面白かったので紹介記事を書こうと思い、それなら前作の『神龍の謎』もしっかり遊んでおかないと思ってプレイを始めました。んで、「ファミコンのバンダイのゲームなんてクソゲーだという先入観を持っている人が多そうだな」と思って、紹介記事の1項目で触れようと思っていたんですよ。

 そしたら、『大魔王復活』をクリアまでプレイした動画を間違えて全部消しちゃっていたみたいで、スクショも新たに撮れないために『大魔王復活』の紹介記事を書くことが出来なくなり、『神龍の謎』を4面までプレイした動画だけが残ったという。なら、悪あがきとして、「ファミコンのバンダイのゲームなんてクソゲーだという先入観を持っている人が多そうだな」の部分だけ記事にすることにしました。


 恐らくこの記事を書いたら、「いや、『神龍の謎』なんてまだマシ。ファミコンのバンダイゲーで一番許せないのは○○だ!」みたいなことを言われると思うので……そんなのは私の知ったこっちゃないです! 私が一番言いたかったのは、『大魔王復活』面白かったよということです!


コメント