『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』レビュー/ズタボロになっても少年少女は前に進む!これが最先端の青春群像劇だ!

<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>


【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
『バンドリ』の型を踏襲して、セガの力で更に進化した青春群像劇の新たなスタンダード
『バンドリ』の先を目指した『D4DJ』と、『バンドリ』とは別方向に広げた『プロセカ』
よりブラッシュアップされた、「痛み」を伴う少年少女一人一人のストーリー


『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』
・配信:セガ、開発:Colorful Palette
公式サイト
 iOS版:2020年9月30日配信開始
 Android版:2020年9月30日配信開始
・リズムゲーム&アドベンチャーゲーム
・オートセーブ


 メインストーリーと2022年5月8日現在までに開催されたイベントストーリーを全て読んだ感想です。

【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
※ 代表的なNG項目があるかないかをリスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:○(10代の少年少女のリアルな「悩み」を描くため)
・恥をかく&嘲笑シーン:△(「声がデカくて恥ずかしい」みたいな場面はあるけど)
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:△(「仲良し」止まりで、後は二次創作でどうぞ)
・BL要素:△(「信頼」「尊敬」止まり、後は二次創作でどうぞ)
・ラッキースケベ:×(この世界に性欲は存在しない)
・セックスシーン:×(この世界に性欲は存在しない)


※ この記事は2022年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です
↓prsk1↓



◇ 『バンドリ』の型を踏襲して、セガの力で更に進化した青春群像劇の新たなスタンダード
 このゲームは2020年から配信されているスマホ用ゲームで、特に10代の若者達からの圧倒的な支持を受けて、2021年秋にLINEが行った「高校生がハマっているスマホゲーム」の調査で男女ともに2位に入っていたほどです。

 私は「若者の間で流行っているらしいぞ」とは知りつつも、ボカロには詳しくないためずっとスルーしていたのですが……ショートアニメ『ぷちセカ』が始まるから原作ゲームについても調べたところ、「いやいや、これは俺がプレイしなきゃ絶対にダメなヤツじゃん!」と思い、2022年の元日からプレイを開始しました。
 ちょうどメインストーリー(最初のストーリー)が、ランクに関係なく読めるキャンペーンをやっている時期だったため……とりあえずこれだけでも読んでみるかーと軽い気持ちで始めたら、あまりに面白くて過去のイベントストーリーも遡って全部読んだくらいにハマってしまったのです。なので、まだプレイしていない人にも興味を持ってもらえるように紹介できたらなと、この記事を書きます。


 長々と文章を読ませる前に……新しくスマホゲーを始める際に、恐らくみなさんが一番気にされるであろうことから書いておきます。このゲームは、ストーリーを追うだけなら無課金でも問題なく遊べます。
 ランキング上位を目指すとか、課金でしか手に入らない3D衣装を手に入れたいとかなら、課金必須とは思いますが……私が一番推したい「ストーリー」に関しては無課金でも(ガチャで手に入るキャラのサイドストーリーを除けば)フルで楽しめますし、イベントストーリーを解放するのは1日20~30分くらいのプレイを続けていれば出来ると思います。

 要は、お金も時間もかけなくても十二分に楽しめる「ハードルの低いゲーム」なんですね。私、いろんなスマホゲーをプレイしてきましたけど、結局最後は「時間」をかけないとストーリーを追うことすら出来ないゲームが大半で挫折してきました。今でも続けられているのが『バンドリ』と『プロセカ』くらいなのは、そのハードルが特に低いからです。


(※ 2025年の追記:「ゲームのストーリー」だけなら無課金でも問題なく追えるのだけど、課金しなければ観られない「コネクトライブ」という要素があって、2月に行われるあんさんぶるスターズ!!』のコラボでもコネクトライブが行われることが発表されたのが物議になりました。『あんスタ』目当てで新たに『プロセカ』DLした人にも課金を強いるシステムだったため)




<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 さて、ここからがゲームの紹介です。
 「そもそも初音ミクって誰? 初めて聞いたんだけど」という人のために、そこから説明しましょう。

 まず、2004年―――ヤマハが「VOCALOID(ボーカロイド)」と呼ばれる音声合成技術を作り、その技術を使ったパソコン用ソフトが色んな会社から発売されました。ヤマハ自身も後に自社ブランドから「VOCALOID(ボーカロイド)」のソフトを発売するようにはなりますが、当初は「ヤマハの技術を使ったソフトを複数企業が発売する」という形だったんですね。

 そして、その内の一社が「クリプトン・フューチャー・メディア」でした。ここの会社はパッケージにキャラクターイラストを用いて「あなたの作った曲を、このキャラクターに歌わせよう」という商品を発売していきました。2004年11月「MEIKO」、2006年2月「KAITO」、2007年8月「初音ミク」、2007年12月「鏡音リン・レン」、2009年1月「巡音ルカ」―――

 特に「初音ミク」発売後は、ちょうどニコニコ動画が生まれた直後のタイミングだったこともあり、「初音ミクに自作の曲を歌わせること」、「そこに自作のイラストを付けてMVを作ること」、はたまた「そうして人気になった曲を、別の人が歌ってみて動画にしてアップすること」など様々な創作活動が盛り上がることになります。こうして生まれたジャンルが「ボカロ曲」で、現在ではボカロPからメジャーシーンへと進んだミュージシャンも少なくありません。


 その人気っぷりから早い段階でリズムゲーム化もされていて、2009年からはPSP用に『初音ミク -Project DIVA-』シリーズが始まり、2012年からはニンテンドー3DS用で『初音ミク Project mirai』シリーズが始まりました。発売はどちらもセガからで、この時期は「今セガで一番有名なキャラは初音ミク」なんて言う人までいたほどです。




 しかし、ちょうどこの時期あたりから、スマホの普及によってリズムゲームの主戦場はスマホに移っていきます。
 2013年『ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル』、2015年『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』、2017年『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』と、メディアミックスを活かしたIPによるリズムゲームが次々に生まれて人気になりました。基本無料の運営型のスマホゲームは「継続的な曲の追加」が可能で、リズムゲームと相性がよかったんですね。

 セガとクリプトンもまた「初音ミク達でスマホゲームを作りたい」と考えつつもなかなか成功とはいかなかったところ、当時絶好調の『バンドリ!ガールズバンドパーティ!(以下バンドリ)』を開発していたCraft Eggに声をかけて企画が始まります。Craft Eggはこのゲームの開発のために新子会社Colorful Paletteを作り、その代表取締役社長は『バンドリ』ゲーム版のプロデューサーだった人なので……


 つまり、このゲーム―――
 かつて『バンドリ』のゲーム版を立ち上げた人達による“精神的続編”だったんですね。そういうこともあってか、ゲームとしての「型」もものすごく『バンドリ』のそれを踏襲しています。



<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 メインとなるのはもちろん初音ミク達ボーカロイドのキャラ……ではありません。

 このゲームオリジナルとなる、渋谷に住む20人の高校生が、4人ずつ5つのユニットに分かれて物語は展開していきます。
 最初のメインストーリーは5つのユニットそれぞれで展開していきますが、10日ペースで追加されていくイベントストーリーでは別のユニットとの交流が描かれますし、キャラクター設定もそうした関係性を見越した配置になっています。例えば、「MORE MORE JUMP!の花里みのり」と「Vivid BAD SQUADの小豆沢こはね」は同じクラスの仲良しだったり、「ワンダーランズ×ショウタイムの天馬司」と「Leo/needの天馬咲希」が兄妹だったり。

 そして、そのイベントストーリーではメインとなるキャラクターが毎回変わるため、誇張ではなく20人全員が交代で主人公をやっていく青春群像劇になっているんですね。詳しくは後述しますが、初音ミク達は彼女らの背中を押してサポートする「先輩ポジション」として登場します(初音ミク達がメインとなるイベストもごくまれにありますが)。


<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>


 ということで、ほぼ『バンドリ』なんですよ。
 『バンドリ』は新宿近辺に住む25人の女子高生が、5人ずつ5つのバンドに分かれて物語が展開していきました(現在は、そこに15人が追加されて40人になっています)。
 最初のバンドストーリーは5つのバンドそれぞれで展開していきますが、10日ペースで追加されていくイベントストーリーでは別のバンドとの交流が描かれますし、キャラクター設定もそうした関係性を見越した配置になっています。例えば、「Pastel✽Palettesの白鷺千聖」と「ハロー、ハッピーワールドの松原花音」は同じクラスの親友だったり、「Afterglowの宇田川巴」と「Roseliaの宇田川あこ」が姉妹だったり。

 そして、そのイベントストーリーではメインとなるキャラクターが毎回変わるため、誇張ではなく25人全員が交代で主人公をやっていく青春群像劇になっていたんですね。

 ただ、『バンドリ』はメディアミックスから始まっているゲーム版なため、それ以前から展開されていた小説・漫画・アニメで主人公だった「戸山香澄」がどうしてもゲーム版でも主人公のように扱われることが多かったですけど……  『プロセカ』の場合、一応タイトル画面では「星乃一歌」ちゃんが映ってはいるんだけど、特別に一歌ちゃんだけが主人公のように扱われることはほとんどないように思えます。それはきっと、このゲームの看板となるキャラとして「初音ミク」が存在してくれているからかなぁと思います。


 青春群像劇として『バンドリ』が大好きで現在も遊び続けている私は、この型を継承して、更にブラッシュアップされた作品はないのかなぁとずっと思っていました。その期待をしていた『D4DJ』でも、「形」は似ているけど、群像劇としての1人1人の物語と横のつながりがイマイチで結局やめてしまったのですが……

 それが『プロセカ』だったのです。
 IPは変わったけど、『バンドリ』を作っていた人達による、『バンドリ』の型を継承した作品―――私が夢に見た作品が若者達の間で大ヒットしていたのに、「ボカロあんま分からないからなー」とスルーしていたのです。良かった、このタイミングで気付いて!



 でも、『バンドリ』と全部一緒だったら「バンドリやってればイイじゃん」という話になってしまいます。『バンドリ』の3年後に始まったスマホゲーなので、もちろん進化した部分があって……


<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 それが、「キャラクターが3DCGで作られて動きまくるライブシーン」です(※1)
 『バンドリ』にも一部の曲で「MVライブ」があるのですが、あちらはアニメの映像をリズムゲームに合わせて流しているだけなのに対して、『プロセカ』の場合は「自分が編成したキャラ」が「自分が設定した衣装」を着て動きまくります。アイドルアイドルしたMORE MORE JUMP!の踊りを志歩ちゃんや彰人に踊らせたり、楽器なんか触ったことがなさそうなキャラもLeo/needの曲をプレイすれば楽器を演奏し始めます(それがイヤな人は、「キャラ編成」とは別の「曲ごとのオリジナルメンバー」が画面に映るようにもできます)。

(※1:すべての曲で3DCGが動くワケではなくて、曲によっては2DMVが流れるものや、ジャケット画だけが表示される簡易的なものがあります)

 ↓ こちらが『バンドリ』のリズムゲーム画面です。
 見比べると、やっぱり画面のインパクトがちがいますね……


<画像はiOS版『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』より引用>


 とは言え、『バンドリ』が3DCGに消極的なだけで(ダンスをするアイドル題材ゲームではなくバンド題材ゲームのため、3Dにする労力の割にメリットは小さいと思う)(その『バンドリ』も2023年のアップデートで3DCG化したのだけど、その後色々あって3DMVの曲がまったく追加されなくなってしまいました)今のスマホゲームで「女のコが3DCGで表現されていて着せ替えが出来る」ものなんて珍しくないでしょう。

 じゃあ、そうしたものが普通に出来るようになった今のスマホゲームで、3DCGを何に使うのかが他のゲームとの差別化にあたると思うんですね。公式が3DMVをYouTubeで観られるようにしてくれているので、いくつかお気に入りを載せておきます。実際のゲームだとこれを背景にリズムゲームが遊べます。




 まずは、5人のキャラ(曲によっては2人~6人)が別々の動きをして、立ち位置もカメラワークも激しく入れ替わります。特に「ワンダーランズ×ショウタイム」は遊園地のショーを行うユニットなだけあって、見てるだけでめっちゃ楽しい。対照的に「Leo/need」はバンドなので動き自体は激しくないのですが、楽器を弾いているモーションやカメラワークなんかに特徴があって、3DCGが動くからこそユニットごとの特色がしっかり出ているのが好きなところです。






 また、ボカロ曲のカバーの場合、「元のMVの世界観を再現」するMVになっているところも好きです。上が「Vivid BAD SQUAD」の杏こはが一緒に歌っている「劣等上等」MVで、下が2018年に投稿された元のMVです。原作のポーズを杏ちゃんがやるとこ、イイ……

 『プロセカ』で初めて知った曲も、元のMVを見ると「こうなってたのかー!」と感動することが多いですね。






 お気に入りのMVはたくさんあるのでどれを載せるか悩んだのだけど、「少女レイ」の「原作MVのイラストを書き割りにしている」カンジが最高すぎるのでこれも載せておきます。MVだと衣装もちゃんとセーラー服をベースなものにしてあるのが芸が細かい。




<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 3Dの衣装は課金要素にもなっています。ガチャで手に入る☆4キャラに付いてくる(『バンドリ』とちがって☆3以下のキャラには衣装が付いてこないのは残念…)他、毎月ごとに切り替わる「課金で手に入ったクリスタル(有償石)」でしか引き換えられないものと、毎月課金して入れるプレミアムミッションパスの報酬になっています。
 プレミアムミッションパスは、1ヶ月1960円と安くはないのですが……有償石1800個がその場でもらえて、更に最大5000個までゲームを遊べば遊ぶほどに無償石がもらえるので、衣装のことを差し引いてもむっちゃお得なんですよね。まぁ、報酬全部受け取ろうとすると1日20~30分のプレイじゃ足りなくなるから、私は毎月は入れませんけど(かわいい衣装の月だけ入るつもり)。


 率先して課金したいワケじゃないんですけど、『バンドリ』とか課金要素がガチャしかないので「これちゃんと黒字になってるのかなぁ……」と心配してたところもありますし、長くゲームの運営を続けてもらうためにも衣装への課金は賛成です! 『バンドリ』も3D衣装を実装したらプレミアムミッションパスやって!




<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 そして、このゲームの「3DCGを何に使うのか」の真骨頂が「バーチャルライブ」です。“他のリズムゲームにはない新しい体験”を目指して作られたモードで、特許を出願しているそうです。簡単に言うと、プレイヤーが観客視点で自由に視点と位置を動かしながらライブを見ることが出来るというものです。



<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 開催されるのはバレンタインなどのイベント日や、キャラクターの誕生日などの特別な日、そして10日周期に切り替わる「イベント」と「イベント」の間の1日で―――プレイヤーはこの時間に合わせてゲームを起動して会場に入場しないとなりません。

 『PSO』のように待ち合いスペースがあって、見知らぬ人とチャットしたりスタンプを送ったりできる他、ライブ中は「バーチャルコインを使ってスパチャ的なメッセージ等を送る」ことが出来て他のプレイヤーのそれも表示されます。「見知らぬ誰かと同じライブを観ている」感覚が表現されているんですね。


<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>


 「イベント」と「イベント」の間に行われるバーチャルライブは、その前の「イベント」のストーリーを受けた「後日譚」のようになっていて、MC部分も見過ごせませんし、イベントストーリーに出てきた新曲が披露されたりもします。

 これ、長年『バンドリ』を遊んでいて思っていたことなんですけど、例えば「○○のために新曲を作ろう」というストーリーでもアドベンチャーパートでそれが披露されることはなかったんですね。アドベンチャーパートってプレイヤーによってメッセージを読むスピードがちがうし、人によってはボイスが再生し終わる前にポンポンと次に進んじゃうでしょうし、「演出として新曲を見せる」ことに向いていないんですね。
 (今もそうかは知りませんが、私がプレイしていた頃の)『デレステ』はアドベンチャーパートの後にリズムゲームパートが入ったりもしましたが、アレはアレで時間がない時にストーリーだけ読もうってのは向いていないし。だから、『バンドリ』の場合、「今このコ達が作った曲はリズムゲームのラインナップに追加しといたから各自好きなように遊べばイイよ」としてきました。

 『プロセカ』の場合は、そうした新曲が「イベント後のバーチャルライブ」で披露されて、それを見知らぬプレイヤーといっしょに見ることが出来るんですね。ストーリーの演出としてこれはデカイ!! 『バンドリ』ではアニメ版でしか出来なかったことを、『プロセカ』では10日に1回ペースで出来るんですよ!

 ちなみに「バーチャルライブはイベントストーリーの後日譚」なので、終わってしまった過去のイベントのバーチャルライブも、そのイベントストーリーを読了すれば一人で観られます。イベントストーリー同様、アーカイブ視聴だとクリスタルがもらえませんが、私のように1年半遅れで始めた人にはありがたい……



 ということで、単に「キャラクターを3DCGで表現する」ようになっただけでなく、そうでなければ出来なかったことをたくさんやっているんですね。これは明らかに『バンドリ』よりも進化した部分だし、Craft Egg(Colorful Palette)単体では不可能で、セガとセガを中心に集まった協力会社の力が大きいと思います。3D衣装だけでも月8着とか新規に作っているらしいし。

 座組としては、セガ、Colorful Palette、3Dモデリングは株式会社ディッジ(制作実績)、3DMVはマーザ・アニメーションプラネット株式会社(制作実績)の4社が中心みたいですね。

 セガとマーザは『初音ミク-Project DIVA-』から初音ミクのゲームを作っていて、そのノウハウが活きているという話ですし―――よく「セガはいつだって10年早いんだ」と言われることが多いですし、私もよく書いてきたのですが、このゲームに関しては10年前に蒔いた種が今まさに満開の花を咲かせていると言ってイイと思うんですね。


 セガが初音ミクのゲームを10年作り続けたのと、Craft Egg(Colorful Palette)が『バンドリ』で培ったものが融合して出来た―――それが『プロセカ』なのです!


↓prsk2↓



◇ 『バンドリ』の先を目指した『D4DJ』と、『バンドリ』とは別方向に広げた『プロセカ』
 1つのゲームを紹介する際に、他のゲームと比較して「あちらに比べてこちらはここが優れてる」みたいに書くのはあまり行儀が良くないことかも知れません。そう思う人も多いんじゃないかと思います。
 ただ、私はゲームは「無」から生まれるワケではないのだから、「源流となる作品」や「ライバルとなった作品」についても言及するべきだと思っているんですね。だから、『トルネコの大冒険』の紹介をする際には『ローグ』や『死の迷宮』の話を書くし、『ファイアーエムブレム』の紹介をする際には『大戦略』や『First Queen』の話も書いてきました。

 だから、この記事も目を逸らさずに書こうと思います。


 2017年3月に配信開始された『バンドリ!ガールズバンドパーティ!(以下バンドリ)』は、運営元がブシロードで、開発元がCraft Eggでした。
 2020年9月に配信開始されたこの『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク(以下プロセカ)』は、運営元がセガになり、開発元はCraft Eggから子会社として設立されたColorful Paletteです。要は、『バンドリ』の開発元が作った新作スマホゲームが『プロセカ』なんですね。

 一方、『バンドリ』の運営元のブシロードも、ポスト『バンドリ』として新しいスマホゲームを2020年10月に配信開始していました。それがこのブログでも当時度々紹介していた『D4DJ Groovy Mix(以下D4DJ)』です。要は、『バンドリ』の運営元が作った新作スマホゲームが『D4DJ』で、『バンドリ』の開発元と運営元が同時期に「同じような『バンドリ』の精神的続編」を配信開始していたのです。


<画像はiOS版『D4DJ Groovy Mix』より引用>


 というワケで、この2作品―――どうしても比較して語られがちですし、語らないのも不自然だと思うんですね。だってどちらも、『バンドリ』の型を踏襲した作品なんですもの。

 『D4DJ』は中野近辺に住む24人の女子高生・女子大生が、4人ずつ6つのDJユニットに分かれて物語が始まりました。
 最初のユニットストーリーは6つのユニットそれぞれで展開していきますが、10日ペースで追加されていくイベントストーリーでは別のユニットとの交流が描かれますし、キャラクター設定もそうした関係性を見越した配置になって……たかなぁ? 例えば、「Happy Around!の渡月麗」と「Lyrical Lilyの春日春奈」は茶道仲間だったり、「Peaky P-keyの犬寄しのぶ」と「燐舞曲の月見山渚」がイトコだったり、微妙に距離が遠いな!

 そして、イベントストーリーではメインとなるキャラクターが毎回変わるため、誇張ではなく24人全員が交代で主人公をやっていく青春群像劇になっていた……かなぁ、あれ。


 ただ、『バンドリ』、『D4DJ』、『プロセカ』とプレイしてきた私からすると……『D4DJ』と『プロセカ』は、狙っているターゲット層も、展開のしかたも対照的すぎて、出来上がったゲームだけ見て「似てる」と語るのもちがう気がしたんですね。

 例えばキャスティング―――
 『D4DJ』の声優さんは、分かりやすく「ライブが出来る人」が集められています。



 『バンドリ』はスタート時の5バンドの内、2バンドは「リアルに楽器を弾いてライブをする」バンド、3バンドは「リアルライブはしないけど知名度のある声優さんが集まった」バンドに分かれていました。
 スマホゲームって声優さん目当てに始める&好きな声優さんのキャラをガチャで入手しようとする人が一定数いるので、この判断は間違っていなかったと思うのですが……蓋を開けてみたら「リアルに楽器を弾いてライブをする」Roseliaが一番人気になるし、リアルライブが出来ない3バンドのファンが不満を抱くカンジになっちゃったんですね。

 そういうこともあってか、『D4DJ』は6ユニット全部がリアルライブできるように、ライブ経験が豊富な「他のブシロードコンテンツでステージ経験のある人」や「元アイドル」の人達が多くキャスティングされていました。
 実際、正式にゲームが始まるよりも1年以上前からまずリアルライブから始まり(2019年7月)、CDが出て(2020年1月)、最後にゲームとアニメが始まった(2020年10月)んですね。メディアミックスありきの作品だったんです。




 『プロセカ』の場合は、メディアミックス展開は後回しだったというか……リアルイベントがなかったワケじゃないのですが、本格的なライブは「初音ミクがしてきたような3DCGのライブ」が2022年1月、アニメもショートアニメ『ぷちセカ』が2022年1月からと、ゲーム配信開始から1年以上後に展開されているものが多いんですね。CD化もゲームから半年以上が経過した2021年6月からの展開でした。

 キャスティングも「歌唱力」こそ重視されているものの、ライブは「3DCGのライブ」なのでバンドユニットのLeo/needだからといって声優さんがリアルに楽器を弾いたりはしません(※2)

(※2:ベース担当の日野森志歩の声優さんは、『バンドリ』でもリアルライブでベースを弾いている中島由貴さんなんだけど……他の3人は特にその楽器を弾くワケではないと思います。)



 『D4DJ』の場合、リアルライブの展開を中核に置いていたためターゲット層も『バンドリ』より少し上を考えていたんじゃないかと思われます。『バンドリ』は最初の25人が全員女子高生だったのに対して、『D4DJ』は6つのユニットの内2つは女子大生のユニットなんですね。
 飲酒のシーンやクラブハウスでの夜のシーンも描かれますし、最近行われているリアルイベント「D4DJ_DJTIME+LOUNGE」は23時まで行われているので、とてもじゃないですが未成年をターゲットにしたイベントじゃないですよね。

 これは、10代で『バンドリ』を楽しんでいた層も年月を経て大学生になって、20代になっていくという「バンドリの先」を見越していたんじゃないかと思います。


<画像はiOS版『D4DJ Groovy Mix』より引用>


 それに対して、『プロセカ』はどうかと言うと―――
 冒頭に書いたように、10代の若者からの圧倒的な支持を受けているそうです。そのターゲット層は一見すると『バンドリ』と被っているのでレッドオーシャンじゃないかと思われるかもですが、一説によると「今の『プロセカ』のアクティブユーザー数は全盛期の『バンドリ』の倍」とのことで、単純に『バンドリ』からプレイヤーを引っ張ってきちゃったワケでもないみたいなんですね。

 つまり、同じ10代の若者をターゲットにしていても、『バンドリ』をプレイしていなかった人達を『プロセカ』は取り込んだってことだと思うんですね。



<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 その要因の一つは、「男性キャラ」の起用です。

 『バンドリ』にも『D4DJ』にもメインキャラには男性キャラはいなくて、プレイアブルのキャラ(=ガチャで仲間になるキャラ)は全員女子です。
 アニメ・ゲームの分野では恐らくは2000年代中盤あたりから、「男性向けは女子キャラしか登場しない」「女性向けは男子キャラしか登場しない」と棲み分けが出来ていったと思います(※3)。『艦これ』には男子の艦娘は出ないし、『刀剣乱舞』には女子の刀剣男子は出ませんからね。
 人気ゲームの続編『THE IDOLM@STER 2』が2010年に「男性キャラを登場させる」と発表して炎上したことがあったみたいに(今となっては遠い思い出みたいな話だけど…)、「女のコがたくさん出るコンテンツに男性キャラを出すこと」は一歩間違えると大変なことになるんですね。なので、ブシロードの木谷会長は「出していい男性キャラは父親と、二次性徴前の男児まで」と言っていました。『バンドリ』も『D4DJ』も、年頃の男子は一切出てきません。

(※3:もちろん、女子キャラしか登場しないアニメ・ゲームを女性が嗜むみたいなことはありましたが、一般的なターゲットとしてね)


 ですが、『プロセカ』は最初からメインキャラに男子を入れることが決まっていたそうです。というのも、そもそもクリプトンの「VOCALOID(ボーカロイド)」キャラに、KAITOと鏡音レンという男性キャラが2人いるんですね。彼らが登場するのにメインキャラに男子を入れないのは、ストーリー的にも楽曲的にも無理がある―――

 そういうこともあってか、「男子キャラ」と「女子キャラ」、絶対に公式では“恋愛関係”には見せないようにするぞという細心の注意を払われています。普通だったらいいムードでフラグが立ちそうな場面でもそういうことにはならないし、男女で話すことによる「照れ」みたいな場面もありません。「男子」と「女子」が良い意味でフラットな関係の世界なんですね。


 んで、ですね。
 『プロセカ』がどうして“『バンドリ』をプレイしていなかった人達”を取り込めたかというと―――カッコいいイケメンキャラを入れたから女性ユーザーが獲得できた、みたいな雑なことが言いたいワケではありません。もちろんそういう女性プレイヤーもいるだろうと思うのですが、それ以上に。


 関係性の幅が「女×女」しかなかった『バンドリ』とちがい、そこに「男×女」と「男×男」が加わったことが大きいと思うんですね。


<画像はiOS版『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』より引用>

 「バンドリは関係性のコンテンツ」と言われています。
 25人(現在は40人)の魅力的なキャラクターを置いているだけじゃなくて、それぞれのキャラクター同士の関係性を魅力的に描いているんですね。幼馴染、姉妹、クラスメイト、バイト仲間、ライバル……それらの関係も、「軽口を叩きあったり」「大好きだったり」「いつも敵対心を剥き出しにしたり」多種多様に渡ります。

 5周年記念サイトで公開されたイラスト達が、5年間で描かれた「キャラ同士のシーン」だったのが象徴的だと思います。



 『プロセカ』は、その「型」を踏襲したまま男子キャラを加えたので、どうなったかと言うと……


<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 「兄妹」「姉弟」関係が描けるようになったんですよ!
 「妹がいる兄主人公の作品」も「兄がいる妹主人公の作品」も世の中にはたくさんあります。ですが、この『バンドリ』の群像劇の型を使えば、兄も妹も主人公になりますから、「兄から見た妹」の話も、「妹から見た兄」の話もどちらも描けるんですね。

 例えば、この天馬兄弟―――
 兄の司視点だと、「病弱で入院しがちだった妹を元気づけるため、自分が胸を張ってスターになろうとする姿を見せ続けた」というムチャクチャ良い話なんだけど。
 妹の咲希視点だと、友達からは「咲希のお兄さん、いい人なんだけど声がデカくて変なことばっか言うから恥ずかしい」みたいに言われているんですね。

 視点によって、「その人」の新たな側面が見える―――『バンドリ』の「型」ならそれが描けるし、『プロセカ』はそれをとことん活かしています。



<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 彰人はメインストーリーの最初は敵役的に描かれることもあってあまり好きになれなかったのだけど、ユニットの話とは別のところで姉に振り回される姿を見るようになってからは「かわいいとこあるじゃん」と好きになっていきました。高校1年生男子なりに精一杯カッコつけてるのに、夕飯だからと姉の部屋まで呼びに行ったり、朝起こすように頼まれたりするの可愛すぎる。



 ただ、繰り返しになりますが、『プロセカ』は男女のキャラが両方出るからといって「恋愛関係」には見えないようにムチャクチャ気を遣って描かれています。

 『プロセカ』とは全然関係ない作品の思い出話をして申し訳ないのですが……『響け!ユーフォニアム』のアニメ1期が放送された頃に似たようなことがありました。女子がたくさん出てくる吹奏楽部を舞台にしたアニメだったため、「女×女」の関係性を魅力的に描くライトな百合作品として受け止めて私は楽しんでいたのですが、その作品にはヒロインの幼馴染の男子がいたため「男×女」として楽しんでいる人もいたんですね。
 んで、「女×女」作品として楽しんでいる人と、「男×女」作品として楽しんでいる人が、軽い衝突をすることがあって……実際、原作のその後の展開は「男×女」作品の色が強くなっていくので、「女×女」作品として楽しんでいた私はどんどん疎外感でハマれなくなってしまいました。

 「女×女」も「男×女」もある作品だと、「男×女」こそが正解公式カップリングみたいに扱われてしまうことがあって―――なので、『バンドリ』や『D4DJ』だけでなく、『ラブライブ』なんかでも不自然なほどに男性キャラが出てこないのですが。


 という中、「女×女」も「男×男」も「男×女」もある『プロセカ』は、なのでどの組み合わせも「恋愛関係」ではなく、「友情」や「家族愛」として徹底して描くようにしています。この世界には「恋愛感情」も「性欲」も存在しないと描いていて、そこから先はみなさんの二次創作でご自由に―――としているのです。

 その結果、毎日のようにTwitterに『プロセカ』の百合(女×女)漫画やイラストが流れてくるという。実際「女×女」目当てで始めた私も、どのキャラも好きになった結果、「男×男」も「男×女」の関係性も好きになったので……その逆も、例えばイケメンキャラ目当てに始めた女のコが百合に目覚めるみたいなこともあるんじゃないかと思います。



<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 「コイツ、百合の話しかしねーな……」と思われてそうなので、もう一つシナリオ面での『プロセカ』と『D4DJ』の分かりやすいちがいを書いておきます。

 『プロセカ』は「親」がキーキャラクターとして登場するんですね。
 「尊敬する父、目標とする父」として描かれる杏ちゃんのお父さん、とある事情で「絶対に話したくないし顔も合わせたくない父」になった絵名のお父さん、「自分を縛りつける父」だった冬弥のお父さん、「自慢の娘であって欲しいと盲目になるあまり、その娘が壊れていることに気付いていない」まふゆのお母さん等々……関係性は様々ですが、親が出てくる話がかなり多いんですね。

 というのも、10代の若者の等身大の悩みを描こうとしたら「親との関係」って避けては通れないと思うんですよ。中高生の大半は親といっしょに暮らしているでしょうから。それが良好なのか険悪なのかは家庭によるでしょうが、様々な親子関係を描くことで10代の若者が共感できるようになっているんですね。

 『バンドリ』でも、友希那さんのお父さんや蘭ちゃんのお父さんが登場するし、それが高校生の彼女らの悩みに直結していたのだけど……『プロセカ』は更にそれを広げて、親が出てくるキャラが多くなりましたし、LIVE 2Dやボイスのある親キャラも多いです。気合の入り方が凄い。


 一方、『D4DJ』は「親」不在の話なんですよ。
 りんくちゃんの親は海外にいるし、真秀ちゃんは親代わりに弟・妹の面倒を見ているし、むにちゃんの親はあんま帰ってこないし……設定上「親がいない」ワケではないのですが、親が話に出てくるのは「Lyrical Lily」の話くらいだったような気がします。代わりに、レジェンドポジションは「しのぶ・渚の祖父」なんですね。

 というのも……『D4DJ』のメインターゲットは30代、ひょっとしたら40代と思われるので、どっちかというと「このキャラ達の親世代」なんですよ。キャラクター達を「娘」のように見ると想定すると、『プロセカ』みたいに「親と険悪になる話」とか「親が娘の心を壊してしまう話」とかは受け入れがたいと思うので、敢えて「親」が出てこないのかなぁと思います。
 『プロセカ』に比べてストーリーが重くないのも、「かわいい娘に悲惨な目にあって欲しくない!」ってことなんでしょう。

(2025年追記:『D4DJ』のゲーム版も2周年近辺から「親」が出てくるストーリーが増えました。むにちゃんのお母さんの話とかは、もっと初期にやっていたら印象変わったんじゃないかなぁ……)



<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 リズムゲーム部分も比較しましょう。
 『プロセカ』のノーツは「水色がタップ」「緑がホールド・スライド」「赤がフリック」と、色も種類も『バンドリ』といっしょです。ちがうのは「ノーツの横幅が譜面によって変わること」と「黄色ノーツがスキル発動ではなく、スコアアップになったこと」くらいです。『バンドリ』とほぼ同じ感覚でプレイできますし、リズムゲームとしてはかなりスタンダードだと思います。


<画像はiOS版『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』より引用>


 『D4DJ』が『バンドリ』との差別化を図って、ノーツの種類を増やして、更に「譜面が止まるノーツ」や「譜面が巻き戻るノーツ」なんかを入れていたのとは対照的だと思います。『バンドリ』と同じ感覚で遊べる『プロセカ』と、『バンドリ』をやりこんだ人もまた一から習得し直さなくちゃならなくなった『D4DJ』―――


<画像はiOS版『D4DJ Groovy Mix』より引用>

 ただ、『プロセカ』にも不満点があって、黄色ノーツは「タップ」も「スライド」も「フリック」も黄色で表示されるため、咄嗟に「フリック」と気付かないでMISSになることもあります。3DMVを背景にしていると視認性も悪くなるし……(かと言って、設定で簡易背景にするのも勿体ないし)。
 その辺の設定変更が出来ないかなと思ったのですが、リズムゲームには割とよく実装されている「ノーツデザインの変更」が『プロセカ』では出来ないんですね。たくさんある楽曲の中から「お気に入り」に絞ったり、50音順に表示したりという、リズムゲームには当たり前にありそうな機能も意外になかったりします。この辺は今後のアプデに期待しましょう。


(※2025年追記:お気に入り機能などはアプデで追加されました)



 楽曲について。
 『バンドリ』はオリジナル曲だけでなくアニメソングやボカロ曲のカバーを入れたことで成功しました。
 『D4DJ』はそこから更に発展させて「全ての音楽を再生する」のコンセプトで、1970年代から最新のアニソン、J-POPのカバー、ゲームBGM、テレビ番組のインスト、カバーにこだわらず原曲などなど多種多様な楽曲を採用したんですね。もちろんボカロ曲もカバー・原曲ともにありました。このコンセプトは本当すごかったと思います。

 『プロセカ』はカバー楽曲は基本的にボカロ曲のみです。
 Wikipedia情報によると、2022年5月5日時点で189曲が収録されていて、書き下ろしのオリジナル曲が63曲、カバー楽曲が81曲、ボカロキャラのみが歌唱する曲が42曲、インスト曲が3曲だそうです。オリジナル曲・カバー楽曲共に、高校生のキャラとボカロキャラがいっしょになって歌うものがほとんどで、ボーカルチェンジでボカロキャラのみにすることも可能です。

 ボカロP出身の人が作った「うっせぇわ」や「夜に駆ける」のカバーや、セガの音ゲーの曲なんかも入っていますが、それは特別なコラボみたいなもので、基本的にはカバー楽曲はボカロ曲のみですね。だから正直、「リズムゲームの楽曲のラインナップ」としては『バンドリ』や『D4DJ』に比べて弱いよなーと始める前は思っていたんですが。

 『プロセカ』のすごいところは、ボカロP出身の人達が手がけた書き下ろしのオリジナル曲だと思うんですね。敬称略で、DECO*27、kemu、Eve、じん、Orangestar、みきとP、バルーン等々……ボカロだけでなく、現在ではアーティストへの楽曲提供など様々な活躍をしている方々が入れ替わり立ち替わり、オリジナル曲を書き下ろしています。


 『バンドリ』のオリジナル曲は基本的にはElements Gardenが、『D4DJ』のオリジナル曲はユニットごとに特色を出すように別々のプロデューサーが担当しているのですが……プロジェクトが長期化するとどうしても「似たようなテイストの曲」が多くなって、よく言えばユニットごとの個性が残って、悪く言えばマンネリ化してしまっていると実感します。

 その辺を打破するために、『バンドリ』は最近「アーティストタイアップ」という形で、普段作っているのとはちがう人に頼んでオリジナル曲を作ってもらうってことをやっているのですが……『プロセカ』はそれを全部のオリジナル曲でやっているんですね。なので、同じユニットでも新しい曲が出るごとにテイストが全然ちがうという。


 更に、細かい話ではありますが『プロセカ』の場合、カバー曲は必ずしも「ユニット全員」で歌うワケではなく、4人中2人+ボーカロイドキャラで歌うということもあります。
 『バンドリ』にも、「ロメオ」でのこころちゃんと薫さんみたいにメインボーカル以外のキャラがしっかり歌う曲が稀にありますが、基本的にはメインボーカル以外のキャラが歌う部分は少ないんですね。でも、メインボーカル以外のキャラにもファンがいて、もっと推しに歌って欲しいとか、「このキャラとこのキャラの組み合わせで歌って欲しい」みたいな要望もあったと思うんです。

 なので、『プロセカ』は柔軟に、曲ごとにセンターポジション以外のキャラもメインとして歌う曲が結構あるんですね。特に男女混合ユニットは「男子のみ」「女子のみ」に分かれて歌う曲は多いです。






<画像はiOS版『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』より引用>

<画像はiOS版『D4DJ Groovy Mix』より引用>

<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 プレイしている期間が違うので、単純な数字だけ見て比較はできないのですが……

 難易度に関しては、『プロセカ』始めた当初は『バンドリ』に比べて「ちょっと判定が厳しくないか」と思うところがあったのですが……冷静に考えてみると、私『バンドリ』でも別に簡単にフルコン獲れるワケじゃなくて、難易度HARDでも1曲のフルコンに400回かけたりもしたので。HARDやEXPERTの難易度は『バンドリ』も『D4DJ』も『プロセカ』もあまり変わらないんじゃないかと思います。

 ただ、『プロセカ』はEXPERTの上に、最初から「MASTER」があるんですね。  『バンドリ』のSPECIALは必ずしも「EXPERTより上の難易度」ではなくて、過去に実装された曲を新たな譜面で遊ばせる「追加の難易度」なんですが……『プロセカ』は一律として全曲に「EXPERTより上の難易度」があるのです。

 「ゲームは簡単なほど良い」と思っている私には信じられない領域なんですが、『プロセカ』は最初から難易度5つ設定したことで、高難度のリズムゲームを遊びたいガチ勢がたくさん入ってきたそうなんですね。世の中にはすげえ人がたくさんいるもんだ……



 『バンドリ』や『D4DJ』との比較で外せない話がありました。これは『バンドリ』の方も今後採用していきたい流れがあるみたいなんですが、『プロセカ』はやっぱり「ボカロを中心としたインターネットの創作」全般を題材としたゲームなので……ユーザー参加型のコンテストもガンガンやっているんですね。


 ボカロの楽曲を作って応募してもらって、それがゲーム内に採用されたり。



 Twitterに三面図を描いて投稿してもらい、それが3D衣装として実装されたり。


 「ユーザーとの距離の近さ」「ユーザー自身がこのコンテンツに参加している気分になれる」のが、『プロセカ』の特徴だと思いますね。


(※2025年追記:ここまで長々と「ブシロード」と「Craft Egg」がそれぞれ『バンドリ』の後継として『D4DJ』と『プロセカ』を作った―――という話を書いてきましたが、この記事を書いてからの3年で環境は劇的に変わってしまいました。
 まず、「Craft Egg」が消滅しました。恐らくはサイバーエージェント内の人員整理によって、2024年1月に『バンドリ』の開発から撤退、2024年4月にはサイバーエージェントに吸収合併されて解散しました。『バンドリ』の開発はブシロードと、元Craft Eggの数人が作ったフロムトーキョーによって行われることとなりましたが……明らかに人員が足りていないのか、3DMVライブやキラフェスが追加されなくなりました。
 そして、2024年6月に『D4DJ』はゲームだけでなくプロジェクト全体の運営からブシロードが撤退しました。現在の運営は開発を行っていたDONUTSが引き継ぎました。

 『プロセカ』の開発元のColorful Paletteはサイバーエージェントの子会社となり、引き続き『プロセカ』の開発を続けているのですが……「課金の圧が強くなった」みたいに言われているのは、この辺の事情が大きいのかなと思わなくもないです)

◇ よりブラッシュアップされた、「痛み」を伴う少年少女一人一人のストーリー
 ここからはストーリーの話です。
 ネタバレをする気はないですが、「基本設定」とか「どこが面白いポイントか」とかは書いていきます。



<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 このゲームのストーリーは、5つのユニットに分かれたメインストーリーから始まります。「Leo/need」「MORE MORE JUMP!」「Vivid BAD SQUAD」「ワンダーランズ×ショウタイム」「25時、ナイトコードで。」の5つで、“バーチャル・シンガー”の欄は5つのユニットの話の途中経過を「初音ミク達の視点」から描く補助的な話ですね。

 『バンドリ』の「型」で、20人が5つのユニットに分かれて全員が主人公と書きましたが―――それでは「初音ミク達」はどうやって話に絡むかというと。この20人は、想いから生まれた「untitled」の曲を再生することで、その想いから生まれた「現実とはちがうセカイ」に行くことが出来るようになります。そして、そこには「初音ミク達ボーカロイドのキャラ」がいるという。


<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 ボーカロイドのキャラ達は「先輩ポジション」として、20人の主人公達の相談に乗ったり、逆に「現実の世界」に興味を持ったりもします。彼女らは生身で「現実の世界」に来ることは出来ませんが、主人公達のスマホ等を媒介にこちらを見ることが出来ます。



<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>


 んで、重要なのはここからです。
 想いから生まれる「現実とはちがうセカイ」は誰の想いから生まれたかによって形が異なるため、「Leo/need」「MORE MORE JUMP!」「Vivid BAD SQUAD」「ワンダーランズ×ショウタイム」「25時、ナイトコードで。」の5つのユニットによって全然ちがうセカイが生まれていて、それぞれのセカイにいる「初音ミク達」も別人なんですね。性格も見た目も全然違いますし、記憶等も共有していません。



<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 バンドユニット「Leo/need」のキャラ達が生み出したのは、学校を舞台にした「教室のセカイ」で、初音ミクは制服をアレンジしたような服を着ていて「学校の先輩」のように振る舞います。



<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 アイドルユニット「MORE MORE JUMP!」のキャラ達が生み出したのは、アイドルのステージのような「ステージのセカイ」で、初音ミクは元気いっぱいの明るい「アイドル」として登場します。



<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 ストリートユニット「Vivid BAD SQUAD」のキャラ達が生み出したのは、路地裏とMEIKOのカフェによる「ストリートのセカイ」で、初音ミクは大人びた雰囲気の「お姉さん」として登場します。



<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 ショーユニット「ワンダーランズ×ショウタイム」のキャラが生み出したのは、遊園地とその舞台のような「ワンダーランドのセカイ」で、初音ミクは超ハイテンションでぶっ飛んだ言動と行動が特徴の「ムードメーカー」です。



<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 音楽サークル「25時、ナイトコードで。」のキャラが生み出したのは、何もないだだっ広い空間だけの「誰もいないセカイ」で、初音ミクは感情表現が苦手な「物静かな少女」として登場します。


 これは、「初音ミク」という同じキャラでも、作曲者によって、作られた曲によって、まるで別人のような歌い方になる―――という部分を形にしているのだと思います。開発者のインタビューによると、最初期は1曲ごとに生まれるセカイがちがうという案もあったそうなんですが、流石にそれは無茶なので「既存のボカロ曲を5つのジャンルに分けてそれぞれにセカイを用意する」形にしたみたいです。


 登場するボーカロイドのキャラは、「初音ミク」、「鏡音リン」、「鏡音レン」、「巡音ルカ」、「MEIKO」、「KAITO」の6人です。要はクリプトンのキャラ6人で、他社のボーカロイドキャラは登場しませんし、作中に「VOCALOID(ボーカロイド)」という言葉も出てきません。「VOCALOID(ボーカロイド)」はヤマハの技術のため、その言葉を使おうとすると権利的な問題が発生するからじゃないかと思うのですが……
 実装されている曲には「GUMI」(株式会社インターネットのキャラ)が歌っているものもあるんですよね。ひょっとして、『プロセカ』が何年も続いたら他社のキャラも出て来たりする……??


 ということで、『プロセカ』のメインキャラは20人と言いましたが、5つのユニットにボーカロイドのキャラが6人ずついるので20+6×5=50人いることになるんですね。あまり出番はないけど、どこのセカイにも属さないニュートラルな初音ミク達もいるから全部で56人か(※4)

(※4:2022年5月8日現在、「25時、ナイトコードで。」のセカイには鏡音レンとKAITOは登場していないけど、これは「女性のみのユニット」に「男性ボーカロイドの声」をいっしょに歌わせる技術的な問題の解決に時間がかかったからだそうで、今後は登場するんじゃないかと思われます)
(※ 2025年追記:しました)


【Leo/need】

<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 ここからは個別のユニットごとのストーリーを紹介していきます。
 「幼馴染4人で結成されたバンドユニット」でかつ、「等身大の普通の女子高生たちを描く」ことがコンセプトなので―――『バンドリ』でいうAfterglow枠ですね。ただ、これは『プロセカ』全体に言えることなんですが、特にメインストーリーの序盤は『バンドリ』より重い、「痛み」を伴う話が多いです。

 『バンドリ』のPoppin'PartyやAfterglowの話を想像して読み始めるとまず驚くのが、「イジメ」だったり「クラスの中でハブられる」だったりが描かれているところです。でも、実際問題「10代の若者が現実で直面している悩み」はこういうことですよね。


 私は正直、最初はこのストーリーがどこに向かっているのか分からず、センターポジションの一歌ちゃんも「焼きそばパンが好き」以外の特徴がないコだよなーと思って読んでいたのですが……メインストーリー後のイベントストーリーを読んでいくと、彼女達自身が「どこに向かうのか」と向き合うようになって、物語の最初は「何も出来なかった」一歌ちゃんも成長していくので段々好きになっていきました。


【MORE MORE JUMP!】 
<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 アイドルを目指す少女:花里みのりと、既にアイドルを経験しながらも挫折した3人の少女が同じ学校で出会う―――と、アイドル業界の「光」と「闇」を描いているユニットなので、『バンドリ』でいうPastel*Palettes枠ですね。

 実際、『バンドリ』と『プロセカ』両方の立ち上げを行った近藤プロデューサーによると、「既存のアイドルものよりも踏み込んでリアルなものを描きたい」とPastel*Palettesの物語は出来たそうで、MORE MORE JUMP!は更にそこから踏み込んだものを目指したみたいです。
 両方を読んでいる自分からすると、「ファンからアレだけ無能無能と言われていたPastel*Palettesの事務所が、実はいろんなものから守ってくれていたんだなぁ!」と気付かせてくれる―――Pastel*Palettes以上の苦境に立ち向かっていく話だと思いました。彩ちゃんとちがって、みのりちゃんは事務所に所属すら出来ていないし。

 経験値も知名度も能力もない、でも、絶対に折れない鋼のメンタルを持った主人公が、高い能力を持った仲間達を引っ張っていく―――紛れもない、花里みのりは丸山彩の系譜の主人公で、Pastel*Palettesの話が好きな人には是非MORE MORE JUMP!の話も読んで欲しいし、MORE MORE JUMP!の話が好きな人にはPastel*Palettesの話も読んで欲しい!


【Vivid BAD SQUAD】

<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 伝説のストリートイベント「RAD WEEKEND」を超えるために結成された、女子2人、男子2人のストリートユニットです。シナリオチームのインタビューによると、一番「少年漫画っぽい」「ライバル達との対決を通じて成長していく物語」を目指しているみたいです。

 私は5つのメインストーリーは上から順番通りにプレイしたので、「今までの2ユニットは女子だけだったけど、男子混じっちゃうのかー」と読み始める前は警戒していたのですが……蓋を開けてみれば、「女の子は女の子同士」「男の子は男の子同士」でイチャイチャしようよってユニットになっていました。

 言われてみれば、毎日のように私のTLには「杏こは」がイチャイチャしている二次創作イラストが流れているじゃないか! 百合作品にも「女子だけしか登場しない百合作品」と「男子も登場する中での女子同士の関係を描く百合作品」の2種類が存在するので、男子が登場することが必ずしも百合にはマイナスに響かないんですよね。
 クラスの中でも大人しい女のコだったこはねちゃんが、杏ちゃんと出会うことでストリートミュージックを知り、どんどん成長していくのだから……「ガール・ミーツ・ガール」の物語として魅力的にならないワケがないんです。

 そして、戦った相手がどんどん仲間になっていくのも「少年漫画っぽい」んですね。彰人とか最初はイヤなヤツだったのに、あっという間に頼れる仲間になっていて、ベジータとか飛影とかの系譜を感じなくもない。


【ワンダーランズ×ショウタイム】

<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 遊園地「フェニックスワンダーランド」の寂れたショーステージに所属する劇団員が、ステージの復活とみんなの笑顔を目指すユニットです。『バンドリ』で言う「ハロー、ハッピーワールド!」枠で、ぶっ飛んだリアリティラインと勢いのあるストーリーとキャラと、そして「実は一番泣ける」のは健在です。
 ショートアニメ『ぷちセカ』ではタイムマシンまで作っちゃいましたが、流石に本編ではそこまでぶっ飛んではいません。でも、ロボは出てきます。何故なら類くんは天才なので、ロボくらい作れちゃうのです!

 それぞれ別々の夢と能力を持った4人が、それまではそれぞれ1人で夢を見ることしか出来なかったのが、このステージで出会うことができて、仲間になり、1人では起こせなかった「奇跡」を起こす様が最高なんですよ……
 最初のメインストーリーもイイのだけど、その後のイベントストーリー「ワンダーマジカルショウタイム」まで読んでくれ、お願いだから。そこまで読んだ上で、最初の曲「セカイはまだ始まってすらいない」を聴き直すとまた泣いちゃうから。



【25時、ナイトコードで。】

<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 最後がこのユニット、というか音楽サークルです。
 ここまでの4ユニットの話を読んだ時点で「超おもしれーーー!」「どのキャラも好きすぎて、誰を推しにするか悩むわ」と思っていたのですが、最後のこの「25時、ナイトコードで。」の話こそが「このゲームでしか出来ない、このゲームならではの話」になっていました。

 「ナイトコード」とは、私達の世界における「Discord」のようなチャットツールのことです。
 サークルメンバーの4人は、それぞれ顔も本名も住む場所も知らない、ただネット上で集まったメンバーです。作曲する人、作詞・編曲をする人、イラストを描く人、それをMVにする人。この4人が、25時になったらそれぞれの部屋からナイトコードにアクセスして、MVを作る作業をしていくのです。

 私達が一番イメージしやすい表現を使うと、「ボカロで曲を作ってMVにして投稿する」サークルなんですね(※5)
 設定からして絶対に面白いヤツだし、それを他でもない「初音ミクのゲーム」でやっちゃうのもズルイし、この4人がどうやって現実で出会うのか or はたまた出会わないままなのかのも是非みなさんの目で確かめて欲しいです。

 そして、ボカロ曲には色んな曲がありますが、悲痛な心の叫びのようなメッセージが込められた曲も少なくなくて、そこに共感した人々が多かったんですね。このゲームではそうした曲達を「アンダーグラウンド」というジャンルにして、「25時、ナイトコードで。」はこの「アンダーグラウンド」担当のため―――

 4人全員がそれぞれ「叫びたくなるような心の痛み」を抱えて生きています。
 レーティングを上げないために直接的な表現はされませんでしたが、「自殺」の暗喩がされた場面もありますし、キラキラした世界の『バンドリ』や『D4DJ』とは一線を画した世界です。

 でも、だからこそ「この物語にしか共感できない」人達がいて、『プロセカ』は10代の若者からの支持を受けたのだと思うのです。絵名、頑張ってくれ……俺も、どんなにバズらなくてもイラストを描き続けるから……

(※5:正確には、「25時、ナイトコードで。」の歌はボカロではなくメンバー4人それぞれが歌ったものらしい)

(※ 2025年追記:『バンドリ』の方も2023年に「キラキラしていないバンドリ」として『MyGO!!!!!』のアニメとゲームへの実装を行うので、狙っているコンセプトとターゲット層は近いものがあったと思われます)



<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 リズムゲームやバーチャルライブは3DCGになったという話を最初の項で書きましたが、ストーリーは基本的にはLive 2Dで進行します+各イベントごとに2枚くらい「ガチャ等で手に入るキャラのイラスト」がイベントスチル的に出てきます。

 Live 2Dの凝りようは『D4DJ』の方が凄いとは思いますし、『プロセカ』はLive 2Dの衣装のバリエーションがあまり多くありません。夏服・冬服の変化もないし、みのりちゃんはいつまでもダサイ練習着のままステージの上に立っているように見えるし(アドベンチャーパートの演出上)。


<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 でも、これはキャラ数が多いからこそだとも思うんですね。
 メインキャラが20人+初音ミク達ボーカロイドキャラ6人×5つのセカイ+ニュートラルなボーカロイドキャラ6人全員がLive 2Dで動きますし。父親などの家族にもLive 2Dとボイスが付いているキャラは多いですし、何なら「このキャラって一度しか登場しなさそうだけど?」ってキャラにもLive 2Dとボイスが付いていたりもします。

 この辺は『バンドリ』遊んでて物足りない部分だったので、そこをしっかりカバーしてくれてるのは印象が良いですね。


(※ 2025年追記:『プロセカ』はモブのセリフも全部フルボイスにしていくという発表がありました。『ヘブバン』とか、現在のスマホゲーのスタンダードはモブもフルボイスになっているので、そこに合わせてなのかなと思います)



 『バンドリ』や『D4DJ』と比較すると、それらの作品は「メディアミックスの一つとしてゲームがある」形だったため、Poppin'PartyやHappy Around!のストーリーは特に「結成などの一番面白いところはアニメでやって」「その後の話がゲーム」だったんですね。話が途中から始まっている印象はどうしてもありました(『バンドリ』は後に0章という形でアニメのストーリーがゲームにも実装されましたが)。

 『プロセカ』のストーリーはゲームでのみ展開されていて、「長期的な目標があってそこに向かっていく続きもの」という印象です。『バンドリ』でもRoseliaのストーリーは「フューチャーワールドフェスを目指す」という長期的な目標がありましたが、『プロセカ』は5つのユニットそれぞれにそういう目標があるカンジなんですね。
 開発者のインタビューによると「ずっとこの20人で固定されているワケではなく、新しく追加されることもあると思う」とのことなんですが、ひょっとしたら目標を達成したユニットは卒業という形もあるんじゃないのかと思っています。どのユニットとは言いませんけど、最近のとあるイベント終盤の展開に「そう来たかー!」「ということは、ラストはそうなっちゃうの……?」と叫んでしまいました。その辺の「先の読めなさ」も、メディアミックス作品ではなく「ゲーム単体で完結する作品だから」ですよね。



<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 『バンドリ』で大好きだった「ロード時間にはさまる1コマ漫画」と、「Twitterに投稿される4コマ漫画」もあります! これ、『D4DJ』にはなくて寂しかったんですよね……

 出来れば『バンドリ』のように、ゲーム内でアーカイブとして一覧で表示されるようにして読みやすくして欲しいかな。



<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 『バンドリ』より好きなのは、オンライン協力ライブなどで使える「スタンプ」の仕様です。
 『バンドリ』『D4DJ』では初期スタンプを除けば、「イベントのキャライラスト」をそのまま使ったものだったのですが……『プロセカ』は「イベントに即したシーンをディフォルメ絵で描き下ろしたもの」なんですね。手が込んでいるし、スタンプはディフォルメ絵の方が送りやすいのでこっちの方がありがたいです。

 『バンドリ』もそう思ったのか、最近ショートアニメ『ガルパピコ』のシーンを切り取ったディフォルメ絵バージョンを配っていたので……『バンドリ』→『プロセカ』への影響だけじゃなくて、『プロセカ』→『バンドリ』への影響もあるよなぁと思うところも多いです。



<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 キャラの育成についても簡単に。
 キャラは☆1~☆4で、☆3まではイベント報酬で手に入り、☆4はガチャを回さないと手に入りません。☆1はレベル20がMAX、☆2はレベル30がMAX、☆3はレベル40がMAXで覚醒(特訓)するとグラフィックが変わってレベル50が上限になる、☆4はレベル50がMAXで覚醒(特訓)するとグラフィックが変わってレベル60が上限になる―――この辺は『バンドリ』と一緒ですね。リズムゲームで経験値がもらえるところも一緒です。

 これはプレイしている期間の長さのちがいでそう思うだけかも知れませんが、『プロセカ』は育成系のアイテムがあまり入ってこなくて、スキルを上げるアイテムとか、サイドストーリーを解放するアイテムが全然足りません。特にサイドストーリーがアイテムが足りなくて読めないのはつらいので、もうちょっと潤沢に手に入るようにしてくれないかなぁ……



<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 ガチャは☆4全体の確率が3%で、☆4ピックアップが3人いてそれぞれ0.4%だそうです。
 『バンドリ』のガチャは☆4全体の確率が3%で、☆4ピックアップが2人いてそれぞれ0.504%なので……☆4ピックアップが1人増えた分、狙ったキャラが出る確率が微妙に下がっているんですね。

 天井は300で、過去に100連してシールに変えていれば天井200に下がるらしいのですが、これは私はまだやっていないのでよく分かりません。似たような機能は最近『バンドリ』にも実装されましたね。


 「確定枠」の仕様が『バンドリ』とはちがっていて、『バンドリ』は10連をすると必ず10回目が☆3以上になるのですが、『プロセカ』は1~9回目に☆3以上が出なかった場合のみ10回目が☆3以上確定みたいです。なので、同じ回数だけガチャを回しても、☆3以上が少ない感覚になりますね。

 ただ、『プロセカ』はガチャを回す石(クリスタル)が頻繁に手に入るので、ガチャ10連分の石が『バンドリ』の2500→『プロセカ』3000に上がっていても、それでもガチャを回しやすい印象はあります。



<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 とまぁ、「今後のアプデで遊びやすくして欲しいところ」がないワケじゃないのですが、それを補ってあまりあるキャラとストーリーの魅力があるので、一人でも多くの人に遊んでもらいたいゲームです。地球人全員このゲームを遊べ!と言いたいのだけど、唯一のネックが、「最初のメインストーリーの解放」がムチャクチャ大変なことなんです。

 私は正月の期間限定キャンペーンで5つのユニット全部読んだのですが、全ユニットのランクを20まで上げてメインストーリー解放する正規の方法では4ヶ月かかりました。確か『バンドリ』の時は2週間程度、『D4DJ』の時は1週間くらいで出来たと記憶しているのですが、『プロセカ』はここが一番キツイ……

 10日ペースで開催されているイベントストーリーはそんなに時間をかけずに解放できるし、終了したイベントストーリーもアーカイブでいつでも読めるようになっている(ただしイベント開催時に読めばもらえるクリスタルはもらえない)のですが。その前の話である、メインストーリーを読むハードルがこんなに高いのは何故なんだ??

 一応アプデでランクが上がりやすくなったという話も聞くし、頻繁に期間限定メインストーリー解放キャンペーンをやっているみたいなので、私同様にそこで一気に読んでもらうのも手だとは思いますが……地球人全員に読んで欲しいのに、ここだけが唯一最大の難点なんですよねぇ。


(※ 2025年追記:2.5周年のアプデだったかで、『プロセカ』のメインストーリーが常時解放となりました。おらぁ! 地球人全員プロセカのメインストーリーを読むんだよ!!)



◆ で、結局どういう人にオススメ?

<画像はiOS版『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』より引用>

 「面白いストーリーを読んだら死んでしまう呪いにかかっている」とかじゃなければ、是非万人にプレイして欲しいゲームです。『バンドリ』とちがって「ライトな百合」に興味がなくても、「女×女」「男×女」「男×男」といろんな関係性を描くようになりましたしね。

 ただ、その中でも敢えてこういう人に薦めたいと考えるなら……何かを「作る」創作活動に関わったことがある、関わっている人にオススメだと思います。5つのユニットはそれぞれ自分達で、「作詞・作曲をする」「配信などの企画を考える」「伝説のイベントを超えるイベント作る」「遊園地のショーを作る」「MVを作って投稿する」と何かを作っている(or 作る予定)んですね。だから、そういう活動をしている人にとっては、10代の若者じゃなくても特に響くものがあるんじゃないかと思います。

 だからこそ、最初のメインストーリー解放がどうしてあんな大変なんだよとは思っちゃいます。時間をかけたくないという人は、期間限定メインストーリー解放キャンペーンがあった時にでも是非よろしくお願いします!

(※ 2025年追記:アプデでメインストーリー常時解放されたし、何なら公式がYouTubeに全部アップしているので全人類読め!)

コメント

  1. 記事移行ありがとうございます。
    追記部分が現時点での答え合わせのようで面白いです

    バンドリの方は夢ノ結唱が出たり3dMVが出たりでプロセカからの影響を受けている部分が多いけどこれからどうなるのかなぁ

    返信削除
    返信
    1. こちらこそ、リクエストありがとうございます!
      自分としても「3年前の記事にオーディオコメンタリーのように解説を付け加える」のは新鮮な面白さがありました。

      >バンドリの方は夢ノ結唱が出たり3dMVが出たり
      あぁ……そうだ!
      夢ノ結唱はまさにプロセカの影響ですね。

      プレミアムミッションパスとか天井を200に下げられるとか、「現在のスマホゲーの標準」に合わせる仕様にした結果プロセカと同じになった部分もありますし。個人的には6周年(2023年3月)以降のストーリーが続きものになったのも、プロセカっぽいなぁと思いましたね。
      そのストーリーも現在は一息ついたところで、8周年でAve Mujicaが実装されるのかされないのかというところで……バンドリもこの数ヶ月が「分岐点」なんですよねぇ。果たしてどうなるか……

      削除

コメントを投稿