対戦ゲームにおける「諦めなければ逆転できる」要素について

※ この記事は2021年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です


 Discordでしゃべっていて面白い話だったので、私の考えも合わせてここにまとめておきます。



▼ 目次
「負けている方が有利になるゲーム」
『Splatoon』のゲームデザインはどこが優れていたのか
対戦ゲームの歴史は「諦めなければ逆転できる」の発明の歴史だ
「諦めた人が切断する」オンライン対戦の問題と、それを逆手に取ったバトロワゲー
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 「マリオカートって、勝っている人には良いアイテムが出なくて、負けている人ほど良いアイテムが出るの不思議だよね」が話のきっかけでした。
 この仕様は1992年の1作目『スーパーマリオカート』から恐らくそうで、後ろの方を走っている人ほど「雷」や「スター」などのアイテムが出やすい傾向にあったと思います。その仕様は、程度の差こそあれどシリーズでずっと続いていて、人によっては「レース後半までわざと下位を走るのが一番勝てる」と言っている人もいたくらいです。

 バラエティ番組などでたまにある(というほど、あると思えないんだけど)、「最後の問題に正解した人に1億点」みたいな―――それまでの過程が無意味になる仕様は、賛否両論あるみたいなんですね。


<画像はスーパーファミコンNintendo Switch Online版『スーパーマリオカート』より引用>


 『スマブラ』の桜井政博さんも、『新パルテナ』発売の際に「社長が訊く」でこんなことを仰っていました。

<以下、引用>
桜井
「わたしは最初、ニンテンドー3DSではタッチジェネレーションズのようなライトユーザー向けの軽めのソフトがたくさん出てくると思っていたんです。だからわたしはゲーマーもしっかり遊べるようなゲームをつくろうと思ったんです。」

岩田
「ゲーマーがしっかりと遊びこんで、喜んでくれるゲームを。」

桜井
「あと、対戦ゲームについては、『スマブラ』もそうなんですけど、わたしは駆け引きに対してあまりウソをつきたくないんです。」

岩田
「ゲーム全体ではドタバタ感を出しつつも、対戦の駆け引きはマジメにつくるということですか?」

桜井
「そうです。たとえば『マリオカート』だと、トップで走っている人が、後ろの人からいろいろなものを食らうことになりますよね。」

岩田
「そのことによって、「最後まで誰が勝つかわからない」という、遊びになっていますね。」

桜井
「それは方向性として、とても正しいと思いますし、自分がレースゲームをつくれと言われたら、そうするかもしれないです。
けれども、『スマブラ』や、今回の『パルテナ』の対戦では、コンピューターが勝っている者を不利にするとか、逆に負けている者を優遇するとか、そういう要素はほとんどないんです。」

岩田
「確かに『スマブラ』も相手にダメージがたまっていたりすれば、弱い人でも強い人をやっつけられることはありますけど、長いレンジで見たら強い人はちゃんと必ず結果を出しますからね。」

桜井
「もちろん偶発性において、弱かったキャラクターのたまたま近くに強力なアイテムがあった、ということは起こりえるのですが、弱いキャラクターのそばに、どんどん強いアイテムを意図的に送り込むようなことはしていません。」

岩田
「誰もが平等に戦えるように、公平な舞台を用意している、ということなんですね。」

桜井
「そうです。でもなぜか初心者も上級者もいっしょに遊べるし、腕の差にかかわらずいろんな対戦結果が出ます。」

岩田
「それはどっちが正しいか、ということではなくて、どっちを選ぶかという、選択肢の問題なんですよね。」

桜井
「はい。『マリオカート』があのような遊びなので、自分のところではこうする、というのに近いです。
上級者が初心者をめった打ちにすることは避けたいですが、コンピューターで上からハンデを与えるのではなく、大きな変化の幅で補いたいです。遊びの本質としては、ガチで遊んでほしいと思っています。」

</ここまで>
※ 改行・強調など一部引用者が手を加えました


 これを読んだとき、私ちょっと疑問に思ったことがあったんですね。
 『スマブラ』も、こういう要素ない?と―――

 『スマブラX』では、“得点差が大きくついた時、負けているプレイヤーに対するボーナスチャンス”として「最後の切りふだ」を放てる状態で復活することがあったんですね。もちろんこれで逆転できるとは言いませんけど、“弱いキャラクターのそばに、どんどん強いアイテムを意図的に送り込むようなこと”に近いのでは?と思ったんですね。


 もちろんそれが悪いことだとは私は思いません。
 私は「対戦ゲーム」って、みんなが楽しく遊べることが一番重要だと思っているので……負けている人が「こんなゲームつまんなーい! 外行ってサッカーしようぜ!」と言い出さないように、ある程度「負けている人を優遇する」措置も大事だと思うんですね。



 しかし、スポーツの世界で「負けている方が有利になる」なんて競技はありません。例えばサッカーで点差が開いたからって、このゴールデンボールを相手ゴールに入れたら20点になるよ! なんてことは起こりませんよね。
 私はあまり詳しくないですけど、eスポーツと言われるゲームも基本的には(スマブラを除けば)「負けている方が有利になる」ゲームってあまりないですよね。


<画像はNintendo Switch版『ロケットリーグ®』より引用>

 そう言えば、『Splatoon』の1作目が出たときに、「あまりハマれなかった」という人がこう言っていたのを強烈に覚えています。「任天堂の対戦ゲームなのに、ランダム要素もなければ、負けている方への手心とかもなくて、ガチな人しか勝てないゲームだから俺にはムリだ……」と。
 任天堂の対戦ゲーム=『マリオカート』や『スマブラ』のイメージがあるのでしょう。確かに、私も『Splatoon』の仕様は意外でした。家族でワイワイ遊ぶパーティゲームだと思ったら、「強い人が勝つ」ガチ仕様でしたからね。


 この辺は「対戦ゲーム」が、オフラインで誰かの家に集まってワイワイ遊ぶものから、オンラインで遠く離れた知らない誰かと遊ぶものへと変わったことによる変化なのかなーなんてボンヤリと考えていたのですが……


 1週間考えて、「あ、違うわ」と気付きました。

 この仕様―――『マリオカート』も『スマブラ』も『Splatoon』も、恐らく意図は一緒なんです。桜井さんが“弱いキャラクターのそばに、どんどん強いアイテムを意図的に送り込むようなことはしていない”と言いつつ、“得点差が大きくついた時、負けているプレイヤーに対するボーナスチャンスとして「最後の切りふだ」を放てる状態で復活する”仕様にした理由も恐らくコレなんです。


 諦めなければ逆転できる―――とプレイヤーに希望を持たせて、(精神的に)脱落させないための仕様なんです。

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◇ 『Splatoon』のゲームデザインはどこが優れていたのか
 『Splatoon』って何? そんなゲーム知らない! という人に説明しますと……
 三人称視点のアクションシューティングゲーム(TPS)でありながら、「インクを放つ銃(など)」で戦うゲームです。レギュラーマッチの「ナワバリバトル」は、タイムアップ時により多く地面を塗っていた方が勝ちですね。


 んで、このゲーム……
 先ほども書いたように「ランダム要素」も「負けている方に有利になるシステム」もなく、強い方が勝つガチなゲームなんですが……逆転の起こりやすいゲームのため、「残り30秒」からでも平気で大逆転が起こります。 流石に都合よく「残り30秒から逆転した試合」の動画は残っていなかったけど、「残り1分近くまでピンチが付いている状態から逆転した試合」の動画は残っていたので貼っておきます。

 何故かというと……「ナワバリバトル」は「床を塗った面積」を競うため、片方のチーム4人を一斉に倒せば、その4人が復活するまでの間にもう片方のチーム4人が一斉に床を塗ると一気に逆転が起こるんですね。上の動画で言うと、「相手を3人倒した」タイミングが潮目になっています。

 『Splatoon』を遊んでいる人ならば「残り30秒からでも逆転は起こりうる」と分かっているから最後の最後まで諦めないし、逆に言うと勝っている方も最後の最後まで「勝ったな! ガハハ!」と油断できないようになっているのです。

 ちなみに「ガチマッチ」の方のルールも、タイムアップの時点で負けている方がエリアなどをキープしていれば「延長戦」に入るので、ポイントは大差を付けられて負けていても逆転の目はゼロではありません。私は上の方の試合は経験したことがありませんが、B帯までなら「延長戦での逆転」は余裕でしょっちゅう見かけました。


 『Splatoon』は「ガチ勢に向けたゲーム」のために「ランダム要素」も「負けている方に有利になるシステム」もない―――というよりも、基本のゲームデザインだけで「大逆転が起こりやすい」ために、「ランダム要素」も「負けている方に有利になるシステム」も入れる必要がなかったのだと思うのです。



 もし『Splatoon』が「敵を倒した回数を競う」ゲームだったとしたら、「残り30秒からの大逆転」はなかなか起こらなかったと思いますし、「アイツ一人で5回も撃たれてんぞ。ふざけんな戦犯め!」とやられた回数での味方ディスがつらくて続かなかったと思います。


<画像はNintendo Switch版『Knockout City™』より引用>


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◇ 対戦ゲームの歴史は「諦めなければ逆転できる」の発明の歴史だ
 しかし、『マリオカート』はレースゲームです。
 『マリオカート』以外の(アイテムなしの)普通のレースゲームを考えると、残り30秒で逆転みたいなことはほぼ起こりません。レースゲームって「上位と下位が物理的に離れてしまう」ため、本来なら逆転が起こりづらいジャンルなんですよね。そのためレースの途中で「どうせ勝てないから」と、途中で走るのを辞めちゃったり、ふざけて逆走し始めたりする人もいます。こどもの頃は私もそうしていました。


 しかし、『マリオカート』はレースゲームでありながら「諦めなければ逆転できる」を実現しようとしました。その発明の一つが「アイテム」のシステムです。

 「諦めなければ逆転できる」という視点で考えると、「上位で出るアイテム」「中位で出るアイテム」「下位で出るアイテム」がそれぞれちがうことはそれほど理不尽ではありません。
 1位を走っている人には「コイン」や「バナナの皮」といった“逆転を許さない”ためのアイテムが配られ、それを追いかける中位の人には「赤コウラ」などの攻撃アイテムが配られ、「赤コウラ」も届かないような下位の人には「雷」や「トゲコウラ」などの遠隔攻撃アイテムや「スター」や「キラー」などのバフ系アイテムが配られる―――これらも全部、残り30秒まで全てのプレイヤーに諦めさせないゲームデザインなんですね。

 私は最近の『マリオカート』はほとんどやっていないですけど、上手い人の実況を見ると『8DX』は「上位で出る防御アイテム」を上手く使うと1位を死守するのも全然できるんだなーという印象です。
 恐らく任天堂も、この「逆転の起こりやすさ」の調整に毎回四苦八苦しているんじゃないかと思います。



<画像はNintendo Switch版『スーパーボンバーマン R オンライン』より引用>

 この「諦めなければ逆転できる」を発明しているのは、何も『マリオカート』や『Splatoon』だけじゃありません。多くの対戦ゲームはこの要素を如何に「理不尽ではない程度に」入れるのかを考えてきたのだと思うんですね。

 例えば、『ボンバーマン』シリーズの「みそボン」システムです。
 この「みそボン」は、1995年発売の『スーパーボンバーマン3』で初採用されて、既に負けてしまったプレイヤーが場外から爆弾を投げ入れて、まだ生きているプレイヤーに嫌がらせが出来るシステムです。そして、これが1997年発売の『スーパーボンバーマン5』になると「まだ生きているプレイヤーをみそボンが倒すと入れ替わることが出来る」システムが加わりました。

 つまり、1度やられても諦めなければ復帰できるかも知れないシステムが追加されたんですね。
 私が過去にプレイした『ボンバーマン』にはこのシステムがなかったので、『Rオンライン』を遊んで驚きました。でも、『ボンバーマン』って「早々に負けちゃった人は退屈」になりがちなので、負けた人のモチベーションを上げるためのこのシステムはよく考えたなーと感心しました。



<画像はSteam版『Among Us』より引用>

 似たようなシステムで、『Among Us』にはインポスターに殺されても、幽霊となってタスクをこなして「生き残った仲間達」に力添えをする要素がありました。「死んでも、まだ負けたワケじゃないシステム」、探せばまだあるかな?



 こんな風に、「対戦ゲーム」の歴史って「諦めなければ逆転できる」の発明の歴史なんじゃないかと思ったんですね。
 先ほど書いた『スマブラ』の「大差で負けている人には切りふだをストックした状態で復活」のシステムも、これで逆転できるというワケではなくて、負けている人のモチベーションを保つための仕様だと考えれば納得できます。

 そもそも『スマブラ』の「タイム制」のルールも「相手を吹っ飛ばした数-自分が吹っ飛んだ数」のポイントを競うため、4人乱闘ならば最後の最後で「3人吹っ飛ばして+3」「相手は吹っ飛ばされるので-1」と4点差までなら追いつける可能性があるんですね。最後の最後まで「諦めなければ逆転できる」ルールなんです。

 ガチ勢はその辺がイヤなんで、「ストック制」にしたり、「1vs1」で遊んだりするみたいですが……私はやっぱり『スマブラ』の「タイム制」の4人乱闘が「最後の最後まで何が起こるか分からない」から好きです。



 eスポーツでは「負けている方が有利になる」はあまりない―――みたいな話を冒頭に書きましたが、格闘ゲームも「諦めなければ逆転できる」の発明のジャンルだと思います。

 例えば、「超必殺技」の存在。
 1992年の『龍虎の拳』→『餓狼伝説2』では、「体力が一定より少なくなった時のみ使える」逆転要素として採用されていました。格闘ゲームブームの頃に既に「諦めなければ逆転できる」システムが考えられていたんですね。

 そもそも、多くの格闘ゲームが「2ラウンド先取」のルールを採用していたのは、最初のラウンドでボコボコにされても、次のラウンドから切り替えてプレイすればイイと思わせるためでしょうし。これはもう1984年の『空手道』や『アーバンチャンピオン』の頃からある要素ですが、「ガード」の存在によって敵の攻撃を完封して一気に逆転することも出来るんですよね。



<画像はSteam版『SEGA Mega Drive and Genesis Classics』内ソフト『Dr. Robotnik’s Mean Bean Machine』より引用>

 落ちものパズルゲームは、「ピンチ」と「チャンス」が表裏一体のジャンルです。  画面上部までにブロックが積み上がったら負けだけど、それだけブロックがたくさん積み上がることで「大量消し」や「大連鎖」が出来る可能性を生みます。敵から受けた攻撃によるお邪魔ブロックですら、「大量消し」や「大連鎖」に使えたら一気に有利になりますからね。「諦めなければ逆転できる」が詰まったジャンルだと言えます。

 この辺をよく分かっていないメーカーが、「流行っているから」ととりあえず粗製乱造した90年代の落ちものパズルだと、「諦めなくても逆転できない」ものも結構あるんですよね……何とは言いませんけど。


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◇ 「諦めた人が切断する」オンライン対戦の問題と、それを逆手に取ったバトロワゲー
 私は最初「オフラインでみんなでワイワイ遊ぶゲーム」ほど、その場の空気を悪くしないように「負けている方が有利になる要素」を入れてくるものかなと考えていました。
 「オンラインで遠く離れた知らない誰かと遊ぶゲーム」はレーティングさえしっかりしていれば大差が付かないから、そんな要素を入れる必要はないだろうと思っていたんですね。

 オフライン対戦がメインだった時代に生まれたゲーム(PS2、ゲームキューブあたりまで?)と、オンライン対戦がメインになった時代に生まれたゲーム(DS、PSP以降?)では、文法がちがってもしょうがないんじゃないかと思っていました。


 でも、冷静に考えたらそれは間違いでした。
 何故なら、オンライン対戦はオンライン対戦で「負けそうになったら切断するヤツがいる」問題が生まれるんです。オフラインだったら「つまんねーから、外でサッカーしようぜー」と言われても、「ちょっと待てよ」と言い返せますが。オンラインだと、こっちの了承取ることもなく強制的に切断されてしまうので……むしろ、オンライン対戦の方が厄介だ!

 ちょっと前の任天堂ゲーとか、最近のインディーゲーとかで、「オフライン対戦のみ」「オンライン対戦はできません」ってゲームが出ると、「今時オンライン対戦も出来ないなんて」と言う人が出てくるのですが……私は、「オフライン対戦」と「オンライン対戦」って別物だと思うんですね。
 オンライン対戦を実装すると、「キャラクターの対戦バランスが悪い」とかで評価されることになるし、今回の切断問題もあるので「切断されないように(されてもダメージが少ないように)1試合を短くする」とか「切断した人をCPUに切り替えても自然になるようにする」とか考えなくちゃいけなくなりますからね……


 だから私、Nintendo Switchで『桃鉄』の新作がオンライン対戦を付けて発売されると聞いた時、実は「諦めた人が切断する」ばかりで面白くならないんだろうと思ったんです。『桃鉄』新作出るのはめでたいけど、あんまり売れないんじゃないかなーって。
 そうしたら、Vを含むYouTuberなどの配信者達が「仲の良い人達で楽しくオンライン対戦をする」様を見せたことによって、特大ヒットをしました。


 そうか。
 「オンライン=野良」って考え方はもう古いのかって思ったんですね。

 今のオンラインプレイって「仲の良い人達同士」とか「実況主と視聴者」みたいな人達でやるものであって、「諦めた人が切断する」リスクの高い「野良でのオンラインプレイ」をわざわざする必要はないんだなって思いました。

 例えば、『桃鉄』の大ヒットを受けて、3年前に発売された『スーパーマリオパーティ』がまさかのアップデートをしました。それまでにもミニゲームだけが遊べる「オンラインアスロン」があったのですが、アプデでメインモードとも言えるスゴロクのモードでもオンライン対戦が出来るようになったんですね。

 んで、この新たに追加されたオンライン対戦は「フレンドとの対戦」もしくは「合言葉をあわせて集まっての対戦」のみの対戦で、野良でのオンライン対戦はありません。
 1プレイ1時間くらいかかるスゴロクモードでは「諦めた人が切断する」問題が起こると思ったからかオンライン対戦を導入していなかったけれど、発売から2年以上が経過してオンラインプレイのトレンドが「ゲーム実況しながら」になったため、切断のリスクが低い「フレンドとの対戦」「合言葉をあわせて集まっての対戦」だけ実装したのかなと思います。短時間で遊べる「オンラインアスロン」の方は、野良での対戦が出来ますからね。


 ちなみに、対戦ゲーじゃないですけど『スーパーマリオ3Dワールド』のオンライン協力プレイも、「フレンドとのみ」で、野良との協力プレイは出来ません。任天堂が如何に「諦めた人が切断する」問題を意識しているのか分かるような気がします。





<画像はNintendo Switch版『フォートナイト バトルロイヤル』より引用>

 さて、この「諦めた人が切断する」問題を逆手に取ったのがバトルロイヤルというジャンルです。『PUBG』『フォートナイト』『荒野行動』といった、100人前後で集まって最後の1人になるまで戦うゲームですね(『APEX』はチーム戦なのでちょっと除外しておきます)。

 例えば『Splatoon』のような「4人vs4人」のチーム戦のゲームだったら、「負けそうだからやーめたっ」と切断されてしまえば、残された7人が迷惑します。同チームの3人はもちろん、勝っている方の4人も「勝てたのは人数が多かったからだ」となってしまいますからね。
 でも、「100人の中で1位を競う」バトルロイヤル系のゲームの場合、「負けそうだからやーめたっ」と切断されても残されたメンバーは困りません。むしろ、ライバルが1人減ったぜと思うだけです。「諦めた人が切断」しても、誰も困らないゲームデザインなんですね。



<画像はNintendo Switch版『スーパーボンバーマン R オンライン』より引用>

 先ほど「諦めなければ逆転できる」例として出した『ボンバーマン』の「みそボン」ですが、バトルロイヤル化した『スーパーボンバーマン R オンライン』の64人対戦には「みそボン」のシステムはありません。

 これは『テトリス99』も『スーパーマリオ35』も『パックマン99』も『Fall Guys』もそうなんですが、バトルロイヤル系のゲームは「負けた人が試合を最後まで見届けなくて良い」ようになっているのです。最後まで見届けることも出来ますが、大抵の場合はその試合からすぐに抜けて「もう1戦だ!」と次の試合に移ることでしょう。


 オフラインでの対戦ゲーだったら「自分が負けた後でも、試合の決着が付くまで観ていなくちゃならない」ことが多くて、その時間がもったいないから「みそボン」みたいなシステムが発明されたと思うのですが……バトルロイヤル系のゲームは「負けそうだから切断する人」の問題も、「負けた後に観ているだけの時間が続く」問題も、両方解決しちゃっているんですね。

 だから、バトロワ系のゲームは「諦めなければ逆転できる」要素を特に入れる必要はなく、序盤~中盤までをしっかりプレイした人が終盤に有利になっているのです。

 先ほど『スーパーマリオパーティ』や『スーパーマリオ3Dワールド』の例で「野良でのオンラインプレイを締め出す」流れの話をしましたけど、バトロワ系のゲームはむしろ「野良でのオンラインプレイに特化した」からこその大ヒットジャンルになったのだと思うのです。


 ただ、そこから「2人チーム」や「4人チーム」で遊ぶ人が多くなって、「3人チーム」が基本の『APEX』が主流になると切断が問題になっているんじゃないかと検索したら……「味方が切断したくらいで文句言うな」「(キル稼ぎなど)目的を達成したら切断するのは普通」「本当に強い人は1人でも勝てる」って書き込みが山ほど出てきて「ひぇっ」ってなってる。

 結局、バトロワ系のゲームも野良で遊びにくくなってるのかな……と。




【この記事で書きたかったことを三行でまとめました】
・対戦ゲームはそれぞれの形で「諦めなければ逆転できる」を模索してきた
・オンラインでの「諦めた人が切断する」問題で、野良は締め出されつつある
・「諦めた人が切断」しても問題ないバトロワも、チーム戦が主流になると問題になるかも




―2025年追記―

 2025年4月2日、Nintendo Switch2のロンチタイトルとして『マリオカート ワールド』が発表されました。

 今まで通りの4コースを走る「グランプリ」
 広大なマップを自由に走り回れる「フリーラン」

 ……と、今回の「マリオカート」は3つのモードが柱になっているようですが。

 私が興味深かったのは、新モードの「サバイバル」です。
 「バトルロイヤル」系のゲーム……一番近くてイメージしやすいのは『Fall Guys』だと思うのですが、チェックポイントごとに決められた順位に入れないとそのまま脱落というゲームデザインになっているのです。

 これ、つまり「諦めなければ逆転できる」ゲームの代表だった『マリオカート』を、よりガチ目に「諦めるしかないような順位の人はさっさと脱落して次のレースへ向かう」システムに変えたモードってことだと思うのです。


 私自身はレースゲームクソ下手侍なのでこういうモードが嬉しいワケじゃないのですが、上手い人の実況などではかなり盛り上がりそうなモードですよね。ゲーム機がインターネットにつなげてもらえるのが当たり前になって、ようやくこういうモードが「マリオカート」にも入ったんだなーと。

 

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