※ この記事は2019年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です
Googleのゲームストリーミング「Stadia」、日本を除く14カ国で11月開始 月額9.99ドル 無料プランは2020年から
月額9.99ドルの有料会員(Stadia Pro)になると無料ゲームタイトルが追加されていくみたいですが、Netflixのような「有料会員は全作品を遊び放題」という制度ではなく、基本は買い切り(有料会員だと値引きあり)、有料会員のみ「無料で遊べるタイトル」が追加されていくそうでPS Plusのフリープレイみたいな仕組みになるのかなぁと思います。
個人的には、無料会員(Stadia Base)でもソフトを買えば遊べるのはありがたいなぁと思っています。「有料会員は全作品を遊び放題」にしたら月額料金がいくらになっちゃうんだとも思っていましたしね。
さて、STADIAに限らないクラウドゲーム―――
もちろん「ラグ」の話や、「サービスをいつまで続けてくれるんだ」という不安や、「クラウドゲーム同士のプラットフォーム争い」が始まるであろうことに暗くなったりもしますが……そういう「始まってみなければ分からない話」は置いときまして。
クラウドゲームに対する「認識のズレ」について今日は書いておこうと思います。
というのもですね。
今現在バリバリにゲームを遊んでいる人達がクラウドゲームに対して、「私!お客様代表ですよ!」みたいな顔して「興味が持てない」「今までのゲーム機で何が問題あるんだ」「むしろ今までのゲーム機が潰されそうで心配」と言っているのを見ると「ん?」と思うんですね。
クラウドゲームが狙う層は、「ゲーム機を持っていない人達」だと思うんですよ。
PS4とか、Xbox Oneとか、Nintendo Switchとか、最新のゲームも動くスペックのPCとか、そういうのを一つも持っていない人達を狙ったサービスがクラウドゲームだと思うんです。既にPS4を持っている人が「PS4があるからクラウドゲームなんていらない」と言っていても、「何を当たり前なことを言っているんだ」って話なんです。
ちょっとクラウドゲームから離れた話をします。
『UNDERTALE』が流行っていた頃、「Steamというところで売っているので、ゲーム機を持っていなくても遊べるんですよ!」と薦めている人がいて驚いたことがありました。私の認識では、「最新のゲームが動くスペックのパソコン」を持っている人は「最新のゲーム機」を持っている人より少ないと思っていたんですね。
しかし、『UNDERTALE』ならばそこそこのスペックのパソコンでも動くことでしょうし、総務省の調査によると「パソコンの普及率」と「インターネットに接続できるゲーム機の普及率」は2~3倍の比率でパソコンの方が普及しているのです。「ゲーム機を持っていなくても遊べるよ」という薦め方は間違っていなかったんですね。
クラウドゲームに話を戻します。
クラウドゲームの場合は、更に「パソコン」すら要りません。現実的にはプラットフォームごとに対応機種は変わっていくのでしょうが、理想的には「インターネットにつながって」「モニターが付いている」機械ならば何でも最新のゲームが遊べてしまうのです。パソコンのスペックが低かろうが問題ありません。『UNDERTALE』どころではなく、『Doom Eternal』や『Assassin's Creed Odyssey』みたいなゲームだってバリバリに遊べます。
ゲーム機を持っていない人に好きなゲームをオススメして「でもPS4持っていないしなぁ」「でもNintendo Switch持っていないしなぁ」「でもパソコンのスペックがしょぼしょぼだからなぁ」と言われたことが、ゲーム好きな人だったら一度や二度はあるでしょう。クラウドゲームなら「○○持っていないから遊べない」と言われないのです!
まぁ……私の友人達みたいに、自宅にインターネット回線がつながっていない人には「でもウチはインターネット引いていないしなぁ」と言われるでしょうが(笑)。
ということで、ですね。
クラウドゲームが狙うのは、今現在PS4やNintendo Switchを遊んでいる人達からそれらのゲーム機を取り上げて「こっちを遊んでよ」と言うのではなく、PS4やNintendo Switchを持っていない人達に「ゲーム機を買わなくてもあれらのゲームが遊べちゃうんだぜ」と言うことでなので。
PS4やNintendo Switchと食い合うものではなく、PS4やNintendo Switchを既に持っている人が魅力を感じなくても当然のことなのです。
ここまでが前提の話で、ここからが本題です。
「最新のゲーム機(およびゲームが動く端末)」を持っていない人でも「最新のゲーム」が遊べちゃうのがクラウドゲームなのだから、「最新のゲーム機(およびゲームが動く端末)」を持っている人が魅力を感じないのは当然―――と書いてきました。
しかし、クラウドゲームを仕掛ける側からすると“「最新のゲーム機(およびゲームが動く端末)」を持っていない人”だけを対象にしてはビジネスが厳しそうだなって思うと思うんです。だって、ゲームが好きな人ほどゲーム機だったりゲームが動くスペックのパソコンは持っているでしょうから。
だから、仕掛けるのは“「最新のゲーム機(およびゲームが動く端末)」を持っていない人”が多い時期なんです。
つまり――――クラウドゲームを普及させる絶好のタイミングは、ゲーム機の世代交代のタイミングなんです。
PS4は現在世界で9000万台以上普及しているそうです。
XboxOneは現在世界で4000万台以上普及しているそうです。
しかし、これらの後継機が2020年か2021年あたりに発売されるんじゃないかと言われています。当たり前ですが、PS5も次世代Xbox『Scarlett』も現時点では1台も普及していません。クラウドゲームの普及を図りたい人達からすれば「9000万台売れているPS4」や「4000万台売れているXboxOne」よりも、「まだ1台も売れていないPS5」や「まだ1台も売れていないScarlett」に勝負を仕掛けてくることでしょう。
だから、STADIAはこの時期なんです。
PS5やScarlettが出てくる前にインフラを整えておき、PS5やScarlettが発売されるタイミングで「STADIAならわざわざPS5やScarlettを買わなくても同じゲームが遊べますよ」と言える状況を作りたいのです。
PS5やScarlettが幾らになるのかは分かりませんが……
例えば「ゲーム機が4万円」+「ソフトが8千円」だとして、STADIAが「既に持っている端末と既に持っているコントローラを使えばソフト代8千円だけで遊べますよ」と言ってきたら、じゃあSTADIAでイイかなと考える人は結構いると思うんですね。だから私、STADIAのビジネスモデルが「有料会員は全作品を遊び放題」ではなく「基本的にはソフト買い切り」になったのだと思います。
ゲームの歴史において、プラットフォーム争いは「独占コンテンツをいかに確保できるか」が重要でしたが。次のプラットフォーム戦争においては、STADIAが「独占タイトル」を幾つ確保できるかではなく「マルチタイトル」を幾つ用意できるかが鍵になると思います。
逆に言うと、ゲーム機側は「独占タイトル」を幾つ確保できるかが重要になるので自社タイトルが今まで以上に重要になるし、汎用端末ではなく専用端末ゆえの「独自機能」が重要になると思っています。
例えば、こうなる未来を意識したのかは分かりませんがNintendo Switchなんかは「クラウドゲームでは実現しづらい」ゲーム機だと思うんです。据置機のようで、携帯機にもなってどこででも遊べるのは、インターネットに繋がっていないと遊ぶことすら出来ないクラウドゲームには真似しづらいですし。コントローラが左右に分割してHD振動するので段ボールと合体するとリモコンカーになるのなんて、クラウドゲームには真似しようがないですもんね。
そう考えると、PS5やScarlettも「独自機能」が重要かなと思うのです。
例えばKinectみたいなコントローラを標準装備にしてしまえばクラウドゲームには真似できないかとか、PS1~PS4までの互換性を完備するという噂も「STADIAにはないPSの資産を活かす」という着眼点では妥当だと思いますし―――
次のプラットフォーム争いは、3DOとかPS1とかセガサターンとかPCFXとかピピンアットマークとかバーチャルボーイとかNINTENDO64とかの“次世代ゲーム機戦争”以来の「どうなるかさっぱり分からない」「ここから先に何が残るのかも分からない」壮絶な争いになるんじゃないかと思っています。
(関連記事:クラウドゲームが普及したら、ぼくらのゲームライフはどう変わるのだろう?)
――2025年追記――
ハイ、6年経った「答え合わせ」のターンです。
GoogleのStadiaは日本では始まりませんでしたが、海外では2019年11月に開始しました。果たして、この世代のシェア争いの勝者はどこだったのか……
・2017年6月 マイクロソフトがGame Passのサービスを開始
・2019年11月 GoogleがStadiaサービス開始
・2020年11月 マイクロソフトがXbox Series X|Sを発売
・2020年11月 SIEがプレイステーション5を発売
・2022年1月 マイクロソフトのGame Pass加入者が2500万人を突破
・2023年1月 Stadiaサービス終了
・2023年12月 プレイステーション5の世界累計実売台数が5000万台を突破
発売当初の品薄具合からは意外かも知れませんが、PS5はどうやら現在7000万台以上を売り上げる成功を収め。Xbox陣営は「ハードに捉われないGame Pass」をビジネスの軸にすることで確固たる地位を築いたのに対して……
Stadiaは、日本に上陸する前に3年ちょっとのサービスで終了してしまいました。
ただ、それは結果論であって、2020年の人々は「ゲーム機を買わないクラウドゲーム」よりも「PS5を買う」や「Game Passに入って遊ぶ」を選んだだけだったと思うんですね。挑戦していない者が、挑戦した者を笑ってはならない。
Googleの場合は、最初からクラウドゲーム全振りだったために「ソフトが揃わない」し、「撤退したら何も残らない」焼野原になってしまいましたが……
実は各社クラウドゲームに手を出していないワケでもなく、マイクロソフトは2020年9月からXbox Cloud Gamingを始めているし、SIEに至っては2015年からPlayStation Nowを始めていて2022年には PlayStation Plusとサービスを統合しました。
要は、「本業はちゃんとやって足場を固めた」状態で、クラウドゲームも模索しているのが今世代だったんですね。
任天堂はクラウドゲームにまだ消極的で、サードメーカーが一部タイトルをクラウドバージョンとして発売しているくらいだと思うのですが……
Nintendo Switch2の「ゲームチャット機能」を使った「おすそわけ通信」って、やってることクラウドゲームじゃね??? インターネットの向こうにあるゲーム機が映像だけ送ってくれる仕組みなんですから。
正直、インターネット経由での「おすそわけ通信」がどの程度快適に遊べるのかはまだ分かりませんが……クラウドゲームなんて触れたことないライト層が初めて触れる(疑似)クラウドゲームになるでしょうし、これがスムーズに行ったら「次はクラウドゲーム」へと展開していく可能性も全然あるなぁと思います。
なので、また6年後―――Nintendo Switch 2の次のゲーム機が出る頃にまたこの記事を読み返すと面白いかなと思います。
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