新語・流行語大賞はどうすれば納得してもらえるものになるのか

※ この記事は2015年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です

 もう年の瀬なんですね。

 【2015新語・流行語】大賞2語決定「トリプルスリー」「爆買い」 芸能ネタは逃す

 12月になると「その年の新語・流行語大賞」が発表され、それに対して「流行語だって言われてるけど全く聞いたことがない」「誰が使っているの」「どこで流行っているの」「世の中を知らない老人達が勝手に決めただけだ」といった批判的な意見がぶつけられるのが毎年の恒例となっています。

 しかし、今年はその批判的意見が例年の比ではない思います。
 特に「トリプルスリー」に関しては思いっきり野球用語ということもあって、野球ファン以外の人からは「初めて聞いた」「今時野球の用語を“流行語”と言い張っちゃう老人のセンス」とボロクソに言われているのはもちろん、野球ファンからも「野球ファン以外に知らないでしょ」「流石にどうかと思う」と全く擁護されていない有様です。


 ここまで叩かれていると、どうしても「叩かれている方」に同情してしまうのが私なので……どうして「トリプルスリー」が選ばれたのか毎年毎年ボロクソに言われている「新語・流行語大賞」はどう変わればみんなに納得してもらえるのかを考えていこうかと思います。


◇ そもそも「何のための賞」なのか?
 大人になれば大概の人が分かることだと思いますが、世に溢れるコンテンツは「お金」があるから作れるものです。
 民放のテレビ番組は「スポンサー」がいてくれるから作れるのだし、NHKのテレビ番組は「受信料」を払ってもらえるから作れるのです。ゲームは「お金を払って新品で買う人」がいてくれるから開発する人の給料を支払えるのだし、アニメは「DVD・ブルーレイを買う人」がいてくれるからメーカーがスポンサーとなって制作費を出してそれがアニメーターなどのギャラになっていくのです。

 「新語・流行語大賞」も慈善事業で行われているワケではありません。
 この賞は『現代用語の基礎知識』という百科事典を出版している自由国民社という出版社による賞です(※1)。ノミネート作品も読者アンケートを参考にして選ばれます。この賞で選ばれた「新語」「流行語」は毎年発売されている『現代用語の基礎知識』に加えられるので……「世相を反映する百科事典」に新しく加えられる言葉を決めて、なおかつ「その百科事典」を宣伝するのための賞とも言えるのです。

(※1:2003年からはユーキャンがスポンサーに加わる)



 この賞が始まったのは1984年ですが、1990年までは「新語」部門と「流行語」部門に分かれていてそれぞれに金賞までの賞が与えられていました。
 「新語」は流行とは関係のない「今までは使われてこなかった新しい言葉」が多いですね。ペレストロイカ(1988年)とかね。ファジィ(1990年)とかセクシャル・ハラスメント(1989年)とか、今では普通に使う言葉も当時は「新語」として受賞していました。
 一方の「流行語」はその時代を反映した言葉が多いです。オバタリアン(1989年)、新人類(1986年)とか。イッキ!イッキ!(1985年)なんて、まさに時代を象徴する言葉ですね。


 しかし、どうも「新語」と「流行語」に分かれていると盛り上がりに欠けると思ったのか、1991年からは部門を越えた「年間大賞」が選ばれるようになり、1994年からは「新語」も「流行語」も一緒くたにトップテンという形で発表されるようになりました。
 そのせいか「新語・流行語大賞」という名称なのに、「流行語大賞」という賞だと誤解されて、近年の批判は「流行したかどうか」の側面でばかり批判されているように思えるのです。毎年毎年「これが流行語大賞だなんて言われても一度も聞いたことがない!」みたいな批判を見かけるのは、そのためでしょう。


 例えば、「トリプルスリー」は確かに「流行語」とは言えないと思います。
 しかし、新たに百科事典に加えるべき「新語」と考えるのなら、違和感のない言葉だと私は思います。
 「そんな言葉は聞いたことがない」という批判は、むしろその通りで。この記録は長いプロ野球の歴史の中で(今年の2人を除けば)8人しか達成したことのない記録ですが、騒がれるようになったのはここ最近のことだそうです。2002年の松井稼頭央選手を最後に12年間誰も達成できず、シーズン前に目標に掲げる選手は多いものの達成できない「幻の記録」のような存在でした。

 それが今年2人も達成したことで野球ファンですら「こんな記録があるんだ」と知った人も多かったでしょうし、最近の野球に興味がない人が「こんな言葉は聞いたことがない」と思うのは当然なんです。だから、「2015年の新語」として百科事典に記録しておくんですね。


◇ 「年間大賞」と「トップテン」の差
 この記事の後半に、1984年~1990年の「新語」「流行語」の金賞と、1991年以降の「年間大賞」のリストを載せました。このリストを作るにあたり、それぞれの年ごとの「年間大賞」と「トップテン」を見たのですが、「トップテン」はかなりバラエティに富んだ言葉が並んでいるんですね。例えば昨年は「ありのままで」や「妖怪ウォッチ」なんかも入っています。

 しかし、「年間大賞」に選ばれる言葉を並べてみると、「年間大賞」に選ばれる言葉はかなり制限がかかっているんだなということが見えてきます。

 例えば、「特定の商品」を推す言葉・表す言葉は選ばれにくいです。「年間大賞」が選ばれるようになった1991年以降だと、1997年の「失楽園」、2006年の「品格」、くらいですかね。「テレビドラマ」から選ばれるものは数多いのですが、「映画」から選ばれるものはほぼありません。「失楽園」がかろうじてそうか。
 理由は幾つか推測できますが……恐らくワイドショーなどでニュースになる際に、スポンサーなどの対抗企業の商品の宣伝になっちゃうから報じない、みたいなことを避けるためかなと思います。「年間大賞」には選ばれないけど「トップテン」には選ばれる法則から考えるに、「トップテン」は報じなくても何とかなるけど「年間大賞」は報じないワケにはいきませんからね。

 昨年の「ありのままで」や「妖怪ウォッチ」がトップテンどまりで対象にならなかったのはこのためだと思われますし。今年で言えば、「まいにち、修造」がそうかなと思います。ノミネートどまりだった「火花」「結果にコミットする」辺りもそうかもですね。
 個人的には、「結果にコミットする」よりも「ドゥープドゥッドゥドゥープドゥッドゥ」というフレーズが選ばれて欲しかったけど、もはや「新“語”」でも「流行“語”」でもない(笑)。


 あとは、分かりやすいのは「ネガティブな言葉」は選ばれませんね。
 今年で言えば「ISIL」とか「シリア情勢」という言葉をたくさん耳にしたと思うのですが、悲惨な事件や、大災害、不祥事の類はまず選ばれません。過去の年間大賞を見ても、「テロ」とか「震災」がらみの言葉は一つも選ばれていません。逆に「震災」から立ち直ろうというスローガンだった「がんばろうKOBE(1995年)」は選ばれています。

 今年のトップテンで選ばれたもので言えば、「エンブレム」「ドローン」なんかはネガティブなニュースが多かったので年間大賞にはなりませんでした。「新語」として考えると「ドローン」は是非『現代用語の基礎知識』に加えるべき言葉だと思いますが、この賞の「年間大賞」には選ばれないものなんですね。



 あと、これはバランスが難しいところですが……「政治的なワード」でも、特定の立場や思想を応援するような形の言葉は選ばれにくいと思います。
 昨年は「集団的自衛権」が選ばれていますし、今年もトップテンにはかなり入っているので「左に偏っている」みたいな批判も多かったですが……年間大賞に選ばれるものは、そういう批判を避けるために考慮されていることが多いかなと思います。
 例えば「SEALDs」はSEALDsに賛成の人も反対の人もこの一年間でよく聞いたワードだと思いますが、「2015年の年間大賞はSEALDsです!」となるとSEALDsを応援しているようになるため、SEALDsに反対の人はいい気分にはならないでしょうから年間大賞には選ばれにくいんですね。同じことは「一億総活躍社会」にも言えます。

 ここ10年で選ばれた政治的なワードと言えば、先に挙げた「集団的自衛権(2014年)」を除けば、「どげんかせんといかん(2007年)」「政権交代(2009年)」です。話題性から考えれば、この二つは何かに偏っているというワケでもなく妥当かなと思います。


 そう考えていくと……
 「新語・流行語大賞」の「年間大賞」って、

・特定の商品を表すものはダメ
・ネガティブなものはダメ
・特定の立場を応援するような言葉は避けたい


 と、かなりのがんじがらめな条件で選ばなければならず……そうすると、「スポーツ」と「テレビ(お笑い)」がどうしても多くなってしまうんですね。

 特にスポーツは「オリンピック」「サッカーW杯」といった国民的行事が狙い目で、「自分で自分をほめたい(1996年)」はアトランタ五輪、「W杯(2002年)」は日韓W杯、「チョー気持ちいい(2004年)」はアテネ五輪、「イナバウアー(2006年)」はトリノ五輪、「なでしこジャパン(2011年)」は女子W杯ドイツ大会、「お・も・て・な・し(2013年)」は東京五輪の招致活動――――と、数多く受賞しています。

 しかし、今年は五輪は夏季も冬季もなく、男子のサッカーW杯もなく、女子のサッカーW杯は優勝できませんでした。スポーツ界の国際大会での明るいニュースは「男子ラグビーW杯での快挙」くらいでした。
 しかし、個人的には「今年の新語・流行語大賞の年間大賞は五郎丸です!」ってのは、違和感あるんですね。「人名じゃん!」というか。いや、過去に「イチロー」も獲っているから前例がないワケじゃないんですけど、「男子ラグビーW杯での快挙」を「五郎丸」で表彰するのは他の選手に失礼じゃないのかなって思うのです。それこそ2011年が「なでしこジャパン」でなく「澤」だったら、「澤以外の選手の立場は!!」って思っちゃったでしょうから。



◇ 有名人が受賞者でなければならない
 今年の年間大賞は「爆買い」と「トリプルスリー」でした。
 受賞者として表彰式に出席したのは、「爆買い」がラオックスの社長で、「トリプルスリー」は柳田悠岐選手と山田哲人選手でした。

 年間大賞に複数の言葉が選ばれることは珍しくありませんが、2つの言葉の受賞者が「堅い立場の人」と「有名人」という組み合わせになるケースも実は多いです。いや、あの……ラオックスの社長さんも「有名人」なのかも知れませんが、お茶の間の人気者という意味でね……

 2014年の「集団的自衛権(受賞者辞退)」と「ダメよ~ダメダメ(日本エレキテル連合)」、2006年の「品格(藤原正彦)」と「イナバウアー(荒川静香)」、2005年の「小泉劇場(武部勤ほか)」と「想定内(外) (堀江貴文)」、2003年の「毒まんじゅう(野中広務)」と「なんでだろう~(テツ and トモ)」、2000年の「IT革命(木下斉)」と「おっはー(慎吾ママ)」などなどはそうかなと思います。


 これは、恐らくですけど少なくとも片方を「有名人」にすることで、表彰式の様子をニュースで扱ってもらう時間を増やそうという意図なのかなと推測できます。
 「今年の新語・流行語大賞の年間大賞は○○に決まりました」という一行をニュースキャスターが読んで終わりだと、大した宣伝効果はありません。有名人が出席して受賞後のコメントを述べると、各ニュースでVTRという形で表彰式の様子を流してもらえるので、インタビューボードに名前が入っているユーキャンの宣伝にもなりますし、『現代用語の基礎知識』の宣伝にもなります。

 そのためか、年間大賞の受賞者は「政治家」「スポーツ選手」「タレント」が多いんですね。「政治家」が呼ばれれば一般のニュースでも扱ってもらえますし、「スポーツ選手」が呼ばれればスポーツニュースで扱ってもらえますし、「タレント」が呼ばれればワイドショーなどで扱ってもらえます。
 田中真紀子さん(1998年)、小泉純一郎さん(2001年)なんかは、当時は「視聴率を持っている政治家」と言われていましたからね。


 今年の大賞に「五郎丸」が選ばれなかったのは五郎丸選手が式に出席できなかったから―――みたいな憶測もされていますね。真偽のほどは定かではありませんが、確かに「今年の年間大賞は「爆買い」と「五郎丸」です!」と言われて出てくるのがラオックスの社長さんだけなら、ラオックスの社長さんには申し訳ないですが、ニュースとして尺が稼げそうにないなぁ……と思ってしまいます。




 ちょっと横道に話が逸れますが……歴代の「新語・流行語大賞の年間大賞」で野球とサッカーを比較すると、野球の用語は90年代を中心に多くて今回が8つ目で、対照的にサッカーの用語は3つしか選ばれていません。「審査員がオッサンばかりで野球びいきだ!」という声もあるんですけど、サッカー選手ってこの時期は思いっきりシーズン中なので表彰式には出られないんですね。

 「新語・流行語大賞の表彰式」は毎年12月1日前後ですが、この時期はJリーグの最終節付近です。今年は「チャンピオンシップ第1戦」の前日でした。あと、1週間遅ければ余裕が出てきますが、そうすると「Jリーグアウォーズ」なんかと日程が被りそうですし。
 そもそも今のサッカー日本代表の選手の大半はヨーロッパのチームに所属していて、ヨーロッパは秋~春のシーズンなので12月の初週なんて絶対に帰国できない時期です。

 サッカーに関する用語が受賞した3回に出席したのは、1993年の「Jリーグ」は川淵チェアマン、2002年の「W杯」は中津江村の村長、2011年の「なでしこジャパン」は日本サッカー協会の会長の代理で女子委員会委員長―――って、申し訳ないですけど「地味……」と言わざるを得ません。カズとか、中田ヒデとか、澤とかじゃないんですよ!


 逆に、野球選手はこの時期はオフシーズンなため、比較的時間に余裕があります。
 1994年のイチロー選手、1995年の仰木監督、1996年の長島監督、1998年の佐々木投手、1999年の松坂投手と上原投手、今回の山田選手と柳田選手……と、1995年の野茂投手以外はみな表彰式に出席しているみたいです。「時の人」と呼ばれる人もみんな出席しているんですね。そりゃ野球に関するワードが多く受賞するワケだなぁって思います。


 あと、ノミネートが決まる11月初旬という日程は、スポーツ界では多くの競技がまだシーズン中なので「結果が出ていない」ことがほとんどなんですね。今年で言えば羽生選手の300点越えなんかは間に合わないワケです。この時点で全日程が終わっているのはプロ野球くらい。
 これはお笑いにも言えて、漫才日本一を決める「M-1グランプリ」や「THE MANZAI」は12月末ですから間に合わないんです。まぁ、コント日本一を決める「キングオブコント」は9月末~10月初旬なのに今まで1本も受賞していないのであまり関係ないかも知れませんが。



 閑話休題。
 そう考えていくと……今年の「トリプルスリー」の対抗馬って、「安心してください」くらいしかなかったと思うんですね。特定商品を表すものではなく、ネガティブなものでもなく、政治的に偏ってもなく、お茶の間の人気者が、表彰式にも出席してくれる―――「安心してください」は全ての条件を満たしています。
 もちろん「安心してください」が年間大賞だったとしても「そんなの使ったことねーや」と上から目線で言う人は間違いなくいたでしょうが、ここまでの批判にはならなかったと思います。

 となると……「安心してください」が選ばれなかった理由は、「下ネタだから」ってことですかねぇ。
 いや、もちろん「ダメよ~ダメダメ(2014年)」だって酷い下ネタだと思いますが、アチラは下ネタだとは知らずに使っている子どもとかも多そうなのに対して、「安心してください」は子どもでも下ネタだと分かる下ネタです。2007年の「そんなの関係ねぇ」もトップテンどまりだったことを考えると、「裸になる」ネタは堅いニュース番組では流されない可能性を考慮したとかなのかも。



◇ 傾向と改善策
 ここまでの話を踏まえた上で、「新語・流行語大賞」の1984年~1990年の各部門の金賞、1991年以降の年間大賞の一覧をご覧下さい。カッコの中の分類は私が何となくで考えたものです。

1984年
・新語:オシンドローム(芸能・テレビドラマ)
・流行語:まるきん まるび(社会現象)

1985年
・新語:分衆(社会現象)
・流行語:イッキ!イッキ!(社会現象)

1986年
・新語:究極(漫画)
・流行語:新人類(社会現象)

1987年
・新語:マルサ(映画)
・流行語:懲りない○○(小説、映画)

1988年
・新語:ペレストロイカ(政治)
・流行語:今宵はここまでに(いたしとうござりまする) (芸能・テレビドラマ)

1989年
・新語:セクシャル・ハラスメント (社会現象?)
・流行語:オバタリアン/オバタリアン(旋風) (漫画)(社会現象)

1990年
・新語:ファジィ
・流行語:ちびまる子ちゃん(現象) (漫画・テレビアニメ)

1991年
・…じゃあ~りませんか(芸能・お笑い)

1992年
・きんさん・ぎんさん(芸能・テレビCM)

1993年
・Jリーグ(スポーツ・サッカー)

1994年
・すったもんだがありました(芸能・テレビCM)
・同情するならカネをくれ(芸能・テレビドラマ)
・イチロー(効果) (スポーツ・野球)

1995年
・無党派(政治)
・NOMO(スポーツ・野球)
・がんばろうKOBE(スポーツ・野球)

1996年
・自分で自分をほめたい(スポーツ・マラソン・オリンピック)
・メークドラマ(スポーツ・野球)
・友愛/排除の論理(政治)

1997年
・失楽園(小説、映画、テレビドラマ)

1998年
・ハマの大魔神(スポーツ・野球)
・凡人・軍人・変人(政治)
・だっちゅーの(芸能・お笑い)

1999年
・雑草魂(スポーツ・野球)
・リベンジ(スポーツ・野球)
・ブッチホン(政治)

2000年
・おっはー(芸能・バラエティ)
・IT革命(社会現象)

2001年
・米百俵
・聖域なき改革
・恐れず怯まず捉われず
・骨太の方針
・ワイドショー内閣
・改革の「痛み」(政治)

2002年
・タマちゃん(ワイドショー)
・W杯(中津江村) (スポーツ・サッカーW杯)

2003年
・毒まんじゅう(政治)
・なんでだろう~(芸能・お笑い)

2004年
・チョー気持ちいい(スポーツ・水泳・オリンピック)

2005年
・小泉劇場(政治)
・想定内(外) (ワイドショー?)

2006年
・イナバウアー(スポーツ・フィギュアスケート・オリンピック)
・品格(新書)(社会現象)

2007年
・(宮崎を)どげんかせんといかん(政治)
・ハニカミ王子(スポーツ・ゴルフ)

2008年
・アラフォー(芸能・テレビドラマ)(社会現象)
・グ~!(芸能・お笑い)

2009年
・政権交代(政治)

2010年
・ゲゲゲの(芸能・テレビドラマ)

2011年
・なでしこジャパン(スポーツ・サッカー女子W杯)

2012年
・ワイルドだろぉ(芸能・お笑い)

2013年
・今でしょ!(芸能・テレビCM、バラエティ)
・お・も・て・な・し(スポーツ・オリンピック招致)
・じぇじぇじぇ(芸能・テレビドラマ)
・倍返し(芸能・テレビドラマ)

2014年
・ダメよ~ダメダメ(芸能・お笑い)
・集団的自衛権(政治)

2015年
・爆買い(社会現象)
・トリプルスリー(スポーツ・野球)


 1991年に「年間大賞」を決めるようになってからは、かなり「お茶の間」視点の言葉が増えているように思えます。言ってしまえば「テレビの中の言葉」です。スポーツ、お笑い、テレビドラマはもちろんそうですし、政治もニュースとして頻繁に扱われた言葉が多いです。
 しかし、この記事で推測してきたような数々の「しがらみ」の中では、それも仕方がないのかなと思います。テレビのニュースで扱ってもらえるような有名人を表彰式に呼ぶと考えるなら、「スポーツ」「お笑い」「テレビドラマ」は外せないでしょうしね。


 「新語・流行語大賞はどうすれば納得してもらえるものになるのか」を考えると、かなり“詰んでいる”状況かも知れません。浅はかなことを言う人なら「スポンサーを外せ」とか言うかも知れませんが、そうするとこの賞自体がなくなるでしょうし、「選考委員を変えろ」と言ってもこの“しがらみ”の中ではあまり変わらないと思います。


改善案1:「新語」部門と「流行語」部門に戻す
 ということで、この条件で考えた私の改善案です。
 かつてのこの賞がそうだったように、「新語」と「流行語」に分けてそれぞれに大賞を選ぶという形にすればイイんじゃないかと思います。

 そもそも多くの人が「新語・流行語大賞」を「流行語大賞」と勝手に言い換えて批判していますからね。この賞がどういう賞なのかが伝わっていないのです。それは1991年に「年間大賞」を決めるようになったことに原因があると思うので、いっそのことその前の状況に戻せばイイんじゃないかと思います。

 正直「年間大賞」と言いながら2個も3個も選ぶんなら、「新語」と「流行語」に分かれて一つずつを選んでいた時代と実質的には変わらないワケですよ。
 「新語」と「流行語」それぞれに一つずつを選ぶのではなく、この年は「新語が二つ」受賞するとか、ある年は「流行語が一つだけ」の受賞とかだってイイと思います。やることは今と大して変わりませんが、受賞理由が「新語だから」なのか「流行語だから」なのかが誰にでもハッキリと分かるというメリットがあります。

 今現在の批判のマトになっている「選考委員が偏っているのでは」という点も、二部門に分けて、例えば「新語」の選考委員は年配者が多くて「流行語」の選考委員は若者が多いとかにすれば納得する人は多くなるような気がしますしね。


改善案2:日程を変える
 今年のスケジュールで言うと、「新語・流行語大賞」のノミネートが発表されたのが11月10日、2016年版の『現代用語の基礎知識』が発売されたのが11月11日、「年間大賞」と「トップテン」が発表されたのが12月1日だったみたいです。

 『現代用語の基礎知識』の発売日に合わせているのでしょうが、「今年の新語・流行語」のエントリーを11月初旬の時点で締め切っちゃうのはどうなのよって思います。スポーツで言えばほとんどの競技がまだシーズン中ですし、お笑いのショーレースもM-1がまだですし、テレビドラマも10月から始まったドラマは大して認知度を上げることが出来ません。


 『現代用語の基礎知識』の発売時期をズラすことが出来ないのなら、逆に『現代用語の基礎知識』の発売に合わせて「読者アンケート」を始めるというのはどうでしょうか。
 「今年も『現代用語の基礎知識』が発売され、新語・流行語大賞のノミネートが開始されました」というニュースを11月の初旬に流してもらい、そこから1ヶ月以上アンケートを集めて、年末年始辺りに表彰式を行い「大賞」を発表する―――これならばギリギリまで「今年の新語・流行語」を受け付けることが出来ます。

 まぁ……年始に表彰式をやったら、逆に芸能人の出席率は下がりそうですが(笑)。

 いや……正直、私は別に「新語・流行語大賞」がどうなろうが知ったこっちゃないんですけどね。毎年特に気にすることなく生きてきましたし、「トリプルスリー?そんなのありえねえだろ!」と文句を言うほどの熱量を持っていません。「新語」は割と好きだけど、「流行語」に関してはそもそも「世の中の流行」自体に無頓着ですからねぇ……


 でも、わざわざ記事を書いてみて思ったのは、「長く続いている」ことによってそれはそれで歴史になっていくんだなということです。「年間大賞」には私自身が使ったことのある言葉なんてほとんどありませんし、「こんなの聞いたことねえよ」ってものも多いんですが……それを一覧にして並べてみると、それはそれで面白いもんだなと思いました。

 一部分だとしても、それは確かに「時代」なんだろうと。
 「すったもんだがありました」と「同情するならカネをくれ」が同じ年なんだー、みたいな。





―2025年追記―
 せっかくなので、この記事を書いてからの10年間の「年間大賞」もまとめます。
 ちなみに、2025年からスポンサーが「T&D保険グループ」になって、正式名称も「『現代用語の基礎知識』選 T&D保険グループ新語・流行語大賞」に変わりました。長ぇよ。


2016年
・神ってる(スポーツ・野球)

2017年
・インスタ映え(社会現象)
・忖度(政治)

2018年
・そだねー(スポーツ・カーリング・オリンピック)

2019年
・ONE TEAM(スポーツ・ラグビー・W杯)

2020年
・3密(社会現象)

2021年
・リアル二刀流/ショータイム(スポーツ・野球)

2022年
・村神様(スポーツ・野球)

2023年
・アレ(A.R.E.)(スポーツ・野球)

2024年
・ふてほど(芸能・テレビドラマ)

2025年
・働いて働いて働いて働いて働いてまいります/女性首相(政治)


 10年間のページを見ると、年間大賞に選ばれながら式に出席していないのは2021年の大谷翔平選手だけで(2020年の小池都知事はリモート出席)、後は全員本人か関係者が出席しているんですね。「そだねー」を言っていたのその人じゃなくない?とかはありますが。

 こう見ると、マジで毎年「何とかニュースバリューのある人に出席してもらおう」と大賞を選んでいるのが分かりますね……2024年とか、ノミネートを見ると同情しちゃいますもの。

コメント