『D.M.L.C. デスマッチラブコメ』レビュー/ストーリーが面白いんだから、それでイイじゃないか!


<写真はWii U版『D.M.L.C. デスマッチラブコメ』より引用>


※ この記事は2015年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です


【三つのオススメポイント】

低予算とは言え、ノベルゲームとして必要最低限の機能はある
ベタだけど、だからこそ飛びっきりに魅力的なキャラクター達
ストーリーを語るには、どうしたってネタバレ抜きでは難しい!



『D.M.L.C. デスマッチラブコメ』
・ケムコ
 Android版:2013年4月24日発売
 iOS版:2013年10月1日発売
 Wii Uダウンロード用ソフト:2014年4月9日発売
・ノベルアドベンチャー
・セーブスロット数:30(※ユーザーごとに作成可能)

デスマッチラブコメ!※フルリメイク版
 プレイステーション4版:2020年6月25日発売
 Nintendo Switch版:2020年6月25日発売
 Steam版:2020年6月25日発売
 DMM GAMES版:2020年8月7日発売
・ノベルアドベンチャー

※ PVはフルリメイク版のものです


 私がプレイしたのはWii U版で。
 エンディング到達までにかかった時間は16時間でした
 全エンディングをコンプリート、追加シナリオも全て読むのにかかった時間は約22時間でした。 
※ ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
※ 苦手な人もいそうなNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。
・シリアス展開:◎(中盤からはかなりのシリアスなストーリーが続きます)
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:△?(文字だけならそう誤解させるシーンはある)
・人が食われるグロ描写:△(文字だけだけどバッドエンドの中にはある)
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:○(美弥様はもちろん、るみ子さんもそこそこ)
・BL要素:△(BL要素はないけど、BL好きなキャラが出てくる・笑)
・ラッキースケベ:△(公式にはないということだけど、中盤のアレは男子の夢だと思う)
・セックスシーン:×
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◇ 低予算とは言え、ノベルゲームとして必要最低限の機能はある
 このゲームは元々、2013年4月にAndroid用として、2013年10月にiOS用として配信開始されたスマートフォン向けアドベンチャーゲームです。そちらの価格は500円~540円で、更に追加シナリオが1つ120円(多分)で5本販売されているみたいです(そちらの公式サイト)。

 私がプレイしたのは、2014年4月に配信開始されたWii Uのダウンロードソフト版です。追加シナリオ5本を全て含んだ状態で1080円なので、若干お得なのかな……?Wii U版は「テレビ画面でのプレイ」はもちろん、「ゲームパッドの画面だけでのプレイ」も可能です。私は最近小さい文字を読むと目が疲れるようになってきたので、「テレビ画面でのプレイ」が中心でした。

 内容自体に差はないみたいなので、みなさんお好きな機種でどうぞ。


※ 2025年追記:更に、2020年にPS4・Nintendo Switch・Steam・DMM GAMESにて、立ち絵を一新して、1枚絵なども追加されたフルリメイク版が発売されました。価格は大体3000円前後でPS4にはパッケージ版もあります(Amazonアフィリエイトリンク)。Nintendo Switchには単体パッケージはありませんが、『レイジングループ』とセットになった「ケムコアドベンチャーパック」というパッケージ版が出ています(Amazonアフィリエイトリンク




 さて、ケムコのアドベンチャーゲームです。
 「ケムコ」という会社についてどういうイメージを抱いているかは世代によって違うと思うのですが、ファミコン・スーファミ世代の中には「ケムコってまだあったのか!」と驚く人もいるかも知れません。失礼な話ですが、私もWiiウェアにケムコのソフトが出た時「ケムコってまだあったのか!」と驚きましたから。

 ケムコは元々コトブキシステムという会社のゲームブランドで、海外ゲームのローカライズなどを中心に、ファミコンの時代からPS2やXboxの時代までパッケージソフトを出していたそうですね。ファミコン・スーファミ世代のゲーム好きには「ケムコ」の名前は知れ渡っていると思うのですが、「ケムコの代表作は?」と訊かれると答えられない人が多いんじゃないかと思います。
 任天堂なら『マリオ』とか、ナムコなら『ファミスタ』とか、コナミなら『グラディウス』とか、カプコンなら『ロックマン』とか、ポンポン代表作が出てくるのに比べると「ケムコって何を出してたっけ……」とイマイチ地味な印象があります。

 強いて挙げるなら『シャドウゲイト』ですかね。
 しかし、アレも「ローカライズの文章が変」みたいな理由で有名なので、「ケムコ=変なゲーム」というイメージもあるんじゃないかと思います。


 さて、ファミコン時代から生き続けてきたゲーム会社達は、その後みんな激動な人生を進んでいます。スクウェアとエニックスが合併したり、タイトーがそこに吸収されたり、バンダイとナムコが合併したり、ハドソンがコナミに吸収されて名前が消えたり、テクノスジャパンもデータイーストもなくなったり、テクモはコーエーと一緒になってついでにガストも一緒になったり、アトラスはなんかもうすごいことになっていたり。

 ケムコも、寿グループの再編により2004年からコトブキシステム→コトブキソリューションへとブランドが受け継がれ、以後は携帯電話やスマートフォン向けのソフトを手がけていくことになります。そして、この『デスマッチラブコメ』もそうですけど、たまーにそうしたソフトをゲーム機用のダウンロード専売ゲームとして移植してくれるのです。

 ゲーム機がハイスペックになってソフトの開発費が高騰しまくっている中で、(それぞれ事情は違いますけど)大手の会社が他の会社と合併したり、他の会社を吸収したりしつつも、なかなか新作を作れないという現状を尻目に……大作路線に早い段階から見切りを付けたケムコは、比較的小規模な開発で完成させられる携帯電話やスマホアプリやダウンロード専売ゲームに昔ながらのRPGやらアドベンチャーゲームやらを多数展開しているというのは面白い話だなぁと思うのです。


 さて、そんな事情なので……
 この作品も「低予算だなぁ」と思うところは正直あります。


<写真はWii U版『D.M.L.C. デスマッチラブコメ』より引用>

 ゲームは、こんなカンジに「登場人物の立ち絵」+「台詞もしくはモノローグ」+「背景絵」で構成されていて。「立ち絵」のポーズは各キャラ一つずつで、「表情差分」でキャラクターの感情を表現しています。ストーリーが進むと「一枚絵」が出てくることもあるのですが、それも数えるほど。「背景絵」も限られていて、「背景絵を描く余裕がないから不思議空間で誤魔化しています」というのが分かってしまうシーンも目立ちました。

 まぁ……元々は500円前後のスマホ用アプリですからね。
 フルプライスのパッケージソフトでのノベルゲームなんかに比べると、低予算で、作りがチープなところはどうしても目に付いてしまいます。



<写真はWii U版『D.M.L.C. デスマッチラブコメ』より引用>

 システム面も、「フローチャート」のようなものがないのは別にイイとして(さほど複雑な分岐をするゲームではないので)も。「前の選択肢に戻る」のような操作が出来ない上に、「読んだところを少しだけ読み直すことが出来る機能=バックログ」の範囲が短いのがちょっとつらいです。
 「ん?さっき何て言ってたっけ……?」と思って読み返したくても、「バックログ」の範囲を超えちゃっていて、仕方がないから前のセーブデータから読み直したこともあります。「縦読み」のくだりとかな!



 なので、不満点のないゲームではないです。
 元が500円前後のスマホアプリとは言え、1000円前後のダウンロード専売ゲームとして考えるのならもうちょっと何とかしてくれないかなと思うところもあります。


<写真はWii U版『D.M.L.C. デスマッチラブコメ』より引用>

 追加シナリオも、スマホ版なら1本120円とかしたものなのだから頑張って「1枚絵」くらい入れてくれたって良いじゃないかと思わなくもない。お風呂のシーンとかお風呂のシーンとかお風呂のシーンとか。



 でも、「ノベルゲーム」で一番大事なところは「そこか?」って話ですよね。
 「ノベルゲーム」なんだから、「ストーリーが面白い」のならばそれでイイじゃないかとも思うんですね。


 「ストーリーが面白いかどうか」は人それぞれ好みが分かれてしまうので「オススメできるかどうか」を語るのは難しいのですが、私にはこのゲームのストーリーは面白かったし、大好きなストーリーでした。追加シナリオも含めるとプレイ時間が20時間を超えていて、退屈な作業的な時間は皆無でしたし、1000円のダウンロードソフトと考えるとボリュームも申し分ないでしょう。




<写真はWii U版『D.M.L.C. デスマッチラブコメ』より引用>

 「低予算」感が溢れているとは言え、必要最低限の機能はちゃんとあります。
 「オート」機能や、高速で進む「スキップ」機能。


<写真はWii U版『D.M.L.C. デスマッチラブコメ』より引用>

 オプションで「文字スピード」や「オートでのスピード」も変更可能。


<写真はWii U版『D.M.L.C. デスマッチラブコメ』より引用>

 「セーブ」&「ロード」もいつでも可能。
 Wii U版は全ての操作が「ボタンだけ」でも、「タッチ操作だけ」でも可能というのも悪くないです。



<写真はWii U版『D.M.L.C. デスマッチラブコメ』より引用>

 ゲームとしては、時折出てくる「二択」を選ぶだけ。
 しかし、このゲーム「主人公が愛を告白されると爆発して死ぬ」という特徴があります。


<写真はWii U版『D.M.L.C. デスマッチラブコメ』より引用>

 これをゲームの構造として分析すると、「正しい方を選べばストーリーが進む」「間違った方を選べば即死亡でバッドエンド」という分かりやすいゲームブックになっていると言えます。ただし、プレイヤーがそれに慣れてきた後半になるとフラグ管理が必要になってきて、最終的にエンディングも複数あります。なので、選択肢の場面ごとにセーブデータを保存しておくことをオススメします。セーブデータも「オートセーブが1つ」+「任意セーブが29箇所」も保存しておけますしね。

 よくよく考えてみると、このゲームの選択肢が基本的に「二択」なのって「るみ子さんを選ぶか乙羽を選ぶか」の二択にかけているのかな。


<写真はWii U版『D.M.L.C. デスマッチラブコメ』より引用>

 「フラグ管理が必要ならゲームとして難しいんじゃ……」と思われるかも知れませんが、バッドエンドになると「どうしてこんな結末になったのか」を解説してくれるキャラが現れます。
 上昇した難易度の救済措置にもなっていますし、今の爆発で巻き込まれた被害規模を教えてくれるなど読み物としても面白いし、バッドエンドを集めるというやりこみ要素にもなっています。ゲーム好きだったら「バッドエンドをコンプリートしたい!」と思う人も多いでしょうし、バッドエンドにこういう遊び心があるところもイイですね。


 なので、「低予算」なことは目に見えてしまうゲームではあるのですが、その制約の中で必要なものをちゃんと揃えてプレイヤーが遊びやすいように考えて作ってあるゲームなので……印象としては、「とても頑張っているゲーム」という印象を持ちます。ダウンロードソフトなんだから、これでイイじゃないか!
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◇ ベタだけど、だからこそ飛びっきりに魅力的なキャラクター達
 このゲームの魅力が何なのかを考えると……奇抜な設定や、ノリの良いテキスト、ストーリーの意外性など多々あるんですけど。やっぱり私はこのゲーム最大の魅力は「キャラクター」だと思うんですね。ということで、シンプルにメインキャラ達を紹介していこうと思います。



<写真はWii U版『D.M.L.C. デスマッチラブコメ』より引用>

 まずは、主人公:矢木景。
 高校入学早々、「愛を告白されると爆発して死ぬ」体になってしまいます。頭は悪いけれど、主人公の視点で語られる台詞やモノローグは切れ味があって面白いし読みやすいです。



<写真はWii U版『D.M.L.C. デスマッチラブコメ』より引用>

 次に、Wヒロインの一人:津野るみ子。
 黒髪ロングのお嬢様で、この地域一体では超有名な神社の娘です。近寄りがたくて神々しい典型的なお嬢様キャラですけど、このゲームの場合「彼女が景に告白しようとする」ところから始まるので、お嬢様キャラなんだけど放っておけない気持ちになってくるのが上手いです。



<写真はWii U版『D.M.L.C. デスマッチラブコメ』より引用>

 Wヒロインのもう一人:白詰乙羽。
 主人公:景の幼馴染で、小学生の頃に景がスカートめくりをして以降は景をぶん殴るようになった暴力キャラです。背も胸も小さくて、ジト目が多めの暴力系ツンデレキャラ―――なんだけど、このゲームの場合「彼女が景に告白しようとする」ところから始まるので、るみ子さん同様にその行動が憎めないんですよねぇ。



<写真はWii U版『D.M.L.C. デスマッチラブコメ』より引用>

 主人公の悪友:平木場亜須賀。
 長身金髪ロン毛で、実は成績も優秀なのだけど、景と一緒におっぱい論争に熱くなったりするノリの良いキャラです。るみ子と乙羽という美少女二人に告白されそうになる景に悪態をつきながら、何だかんだ景を助けてくれる熱いキャラです。



<写真はWii U版『D.M.L.C. デスマッチラブコメ』より引用>

 クラスの中心的女子:九段志乃歌。
 亜須賀とは小学生の頃から、るみ子とは中学生の頃からの付き合いで、面倒見がよくて困っている人がいるとついつい助けたくなる姉御肌なキャラです。デスマッチラブコメに巻き込まれた景のことも助けてくれようとします。



<写真はWii U版『D.M.L.C. デスマッチラブコメ』より引用>

 大人しいクラスメイト:東護美弥。
 おっとりとした性格のせいか厄介な友人ができることが多く、友人の少ない乙羽が親しくしている数少ないクラスメイトです。既にこのゲームをプレイした人ならば何となく分かるでしょうが、私がこのゲームのキャラで一番好きなキャラは彼女です。このゲームの魅力の半分くらいは美弥様の魅力だったと言っても過言ではないほどに。結婚して欲しい(誰ととは言わない)。



<写真はWii U版『D.M.L.C. デスマッチラブコメ』より引用>

 厳格なクラスメイト:有栖隆斗。
 「馬鹿馬鹿しい」が口癖の学級委員で、クールなキャラのように思えて、デスマッチラブコメに巻き込まれた景を助けてくれるキャラです。すっごい面倒くさい性格をしているのだけど、それ故にみんなが見ないように誤魔化している問題点に切り込むようなところもあります。



 この7人がメインキャラです。
 学園ラブコメというか、ライトノベルというかハーレムアニメというか、この手の作品に詳しい人ならばものすごくベタなキャラが揃っているという印象を覚えたかも知れません。「黒髪ロングのお嬢様」「背の小さい暴力ツンデレ娘」「主人公と馬鹿話で盛り上がれる悪友」「面倒見の良いクラスメイト」「おっとりおっぱい」「クールメガネ」……どこにでもいそうなキャラが揃っている、どこにでもありそうな作品と思われたかも知れません。

 でも、この作品はそれでイイんです。
 この作品はラブコメでありながら「主人公が愛を告白されると爆発して死ぬ」という奇抜な設定の作品です。言ってしまえば、「よくあるラブコメ」のパロディのような側面を持った作品なんです。
 「よくあるラブコメ」と同じようなキャラが揃っていて、同じように女のコが主人公を大好きで、同じように羨ましいことこの上ないのに、告白されたら爆発して死ぬんです。だから、キャラクターは「よくあるラブコメ」で良いんです。「よくあるラブコメのキャラクター」達が、「主人公が愛を告白されると爆発して死ぬ」という奇抜な設定の中でどう動くのかというところに独自性があるのですからね。
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◇ ストーリーを語るには、どうしたってネタバレ抜きでは難しい!
 さて……
 ここまで「ネタバレにならないように」気を遣って書いてきたこの記事ですが、ストーリーが魅力の作品をオススメするのに全くネタバレしないように紹介記事を書くのは難しいです。なので、ここからは多少のネタバレを含んだ話を書こうと思います。

 「最後はどうなる」みたいなネタバレを書くつもりはありません。
 ただ、この作品がどういう構造の話なのかは語るつもりです。

 なので、私は「なるべくならゲームをやる前には、ここからの話を読まないで欲しい」と思っています。まっさらな状態でゲームをプレイして、TRUE ENDまで進めた上で、ここからの話を読んで欲しいと思っています。
 しかし、こうした紹介記事は「既にゲームを遊び終えた人」も読むでしょうし、ここまでの紹介を読んでも「さほど興味が湧かないなー」と思いながら読んでいる人もいると思うんです。私もそう思いますもの。ここまでの紹介文でこのゲームの魅力を何割伝えられたかといったら1割くらいだと思っています。ネタバレなしで伝えられるのはそんなもんだろうと。



 だから、ここから先は多少のネタバレがあります。
 ここまでの話を読んでも興味が湧かなかった人に興味を持ってもらうために、この作品がどういう作品なのかを語ってしまおうと思います。




 OKですか?

 そろそろ核心部分に触れた話を書きますよ。


 うんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこ!



 ………そろそろマジメに書きますね。



 このゲームって、本質的には「デス・ゲーム」ものなんですよ。

 タイトルに「ラブコメ」と付いているし、ストーリーが美少女二人から告白されるスタートだし、「愛を告白されたら爆発して死ぬ」なんてコメディにしか思えないし……まだプレイしていない人にとっては、ものすごく馬鹿馬鹿しい明るくライトな話のように思えるかも知れませんが。私は、この作品の本質は「ラブコメ」ではなく「デス・ゲーム」だと思っています。

 「デス・ゲーム」ものとは……
 なんらかの理由で集められた登場人物達が、そこから逃げ出すことは出来ない「死のゲーム」に参加させられて、その恐怖の中で真実にたどり着こうとするジャンルの作品です。有名どころで言えば、『バトル・ロワイアル』とか『SAW』とか、ゲームで言えば『ダンガンロンパ』とか『極限脱出 9時間9人9の扉』とかがありますね。

 同じケムコのアドベンチャーゲーム『トガビトノセンリツ』もそうです。
 というか……恐らくですけど、『トガビトノセンリツ』などの「デス・ゲーム」を題材にしたアドベンチャーゲームを作ってきたスタッフが、もっとライトに誰にでも楽しめる作品を作ろうと考えて、「デス・ゲーム」を題材にしたアドベンチャーゲームのシステムに「学園ラブコメ」の設定やキャラクターをはめこんで出来上がったのがこの『デスマッチラブコメ』じゃないかなぁと思います。


 『デスマッチラブコメ』のストーリーは、「何故、景は愛を告白されたら爆発して死ぬ体になってしまったのか」というところがポイントになってきます。ストーリーが進むと少しずつ真相が見えてくるのですが、どうやら景には学園に伝わる「呪い」がかけられているのではないかという話になって―――誰か「呪い」をかけた“黒幕”がいることが分かるんですね。

 そう。つまり……
 二つ目のオススメポイントで書いた「魅力的なキャラクター」が、全員「容疑者」になるんです。



<写真はWii U版『D.M.L.C. デスマッチラブコメ』より引用>


 なので、この作品のストーリーを引っ張る推進力は「この状況を生み出した“黒幕”は誰か」「“黒幕”の狙いは何だ」「主人公はこの状況から抜け出せるのか」という要素になっていて、それでいて「死が隣にある恐怖」が緊張感を生み、その過程で「容疑者となっているキャラクターや主人公の内面が掘り下げられる」ことで物語に多面性が生まれる――――といったカンジで、やっていることは完全に「デス・ゲーム」ものなんですね。

 だから、この作品のキャラクター達は、みんな内面にものすごく暗いものを抱えているのです。じゃないと、「このキャラが黒幕か…?」と疑えませんからね。


 『デスマッチラブコメ』という作品をネタバレなしに説明するのは難しいので、「よくあるラブコメのようでちょっと違う」とか「よくあるラブコメのアンチテーゼ」とか「よくあるラブコメのパロディ」という表現を使う人が多いです。というか、私もついさっき使いました。ただ、私はこの作品は「よくあるラブコメを否定するもの」ではないと思うんですね。

 どっちかと言うと、「デス・ゲーム」というシリアスで重たいジャンルに、「よくあるラブコメ」という明るくて前向きで憎めないテイストを持ち込んだ作品だと思うのです。その結果、「デス・ゲーム」もののシリアスさと緊張感と謎解き要素と、「よくあるラブコメ」の明るさと魅力的なキャラクターと恋愛模様とが融合された作品になったのだろうと思います。


 最初はよく分からない「謎」だらけの話で、「理不尽」にしか思えないのに、そこから徐々に話が見えてきて最終的には「一本の線」に繋がる―――この気持ち良さは「デス・ゲーム」ものの特権だと思いますし、自分がこの作品を大好きな理由でした。「ただのラブコメ」でも、「ただのデス・ゲーム」でも自分はここまで好きにはならなかったと思います。



<写真はWii U版『D.M.L.C. デスマッチラブコメ』より引用>

 ヤバイぜ、『デスマッチラブコメ』!



◇ 総括
 ということで、是非オススメです!
 「シリアスな話は苦手」「突然うんこうんこ言い出す主人公は苦手」という人には流石にオススメしづらいですが、「主人公が愛を告白されると爆発して死ぬ」というただキャッチーな一発ネタで惹きつけるだけではなく、この手のジャンルのアドベンチャーゲームを作り続けてきたスタッフだからこそ「この作品にしかない魅力を持った1本」を作り上げることが出来たのだと思います。


 「続編」を求めるファンも多いらしいし、メーカー側も「売れたらその可能性も……」と示唆しているみたいなんですが、個人的にはこの「1作目の衝撃」はどう足掻いても超えられないと思うので……純粋な続編よりも、この魅力的なキャラクター達を使ったスピンオフ作品が見たいかなぁって思います。極論を言うと、このキャラ達を使ったパズルゲームとかでも構わないと思っているくらいです(笑)。


<写真はWii U版『D.M.L.C. デスマッチラブコメ』より引用>

 美弥様、可愛いよ美弥様。
 美弥様が主人公のスピンオフ作品でもイイですよ。


 ケムコ、凄いね。
 「ケムコの代表作は?」と訊かれたら、これからは即答で「デスマッチラブコメ!」と答えると思いますよ!面白かったー!


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