「ダンジョンの奥に中ボスがいない」ことによる面白さ


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※ この記事は2014年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です


 現在の私はスーファミ版の『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』(以下『ドラクエ2』)をプレイ中です。

 元々はファミコンで出た『ドラクエ2』を、スーファミで『ドラクエ1』と一緒にリメイクしたソフトを、『ドラクエ3』と一緒にWii用にまとめて移植したものを、Wii UのWiiモードでゲームパッドに画面を映しながらプレイ中です。ややこしいわ!



 実は『ドラクエ2』初プレイなのですが、ファミコン版で噂聞いた鬼畜難易度からすると、恐らくスーファミ版のリメイクで物凄く遊びやすくなっているんじゃないかと思います。
 凄く楽しいです。2014年の自分のゲームランキング1位は『ドラクエ2』になるかも知れないというくらい楽しいです。まぁ、2013年の1位が『MOTHER2』だったので今更気にするようなことではない。


 それと前後して、タイムリーに「ファミコン時代のRPG」について語られたPOSTがTwitterでリツイートされて流れてきました。ふぁぼるのを忘れちゃって、検索しても見つからなかったんでうろ覚えで申し訳ございません。(元のPOSTが分かる人はURL教えてくださるとありがたいです)

 要約するとこんなカンジ。

「ダンジョンの奥に中ボスがいないドラクエ1~3は雑魚戦でもギリギリの緊張感があって、ダンジョンの奥に中ボスがいるドラクエ4以降のRPGとはまた違う面白さがある」


 言われてみればそうでした。
 「いつから」そうなのかは分かりませんが、少なくともスーファミ時代のRPGには「ダンジョンの奥に中ボスがいる」のが普通でした。去年プレイした『MOTHER2』(1994年)はそうでしたし、『FF4』(1991年)『FF5』(1992年)『FF6』(1994年)もそうでした。というか、『FF3』(1988年)の頃には「それが普通」と認識していたような記憶もあるんだけど……どうだったかなぁ。
 『ドラクエ3』(1988年)『ドラクエ5』(1992年)は子どもの頃にプレイしたきりなので覚えていないし、『ドラクエ4』(1990年)はプレイしていないんで、「どこが転機だったか」は分からないのですが。


 少なくとも、今プレイ中の『ドラクエ2』(1987年)と、数年前にプレイした『ドラクエ1』(1986年)には「ダンジョンの奥に中ボスはいない」んです。
 もちろん「最後のボス」はいるんですけど、そこにたどり着くまでのダンジョンに「中ボス」はいないんです。いたとしてもその辺でエンカウントする雑魚敵と同じ敵くらい。『ドラクエ1』のドラゴンとゴーレムとあくまのきしは「中ボス」と言えば「中ボス」なのですけど、ダンジョンの奥にいるワケではありません。



 「だからなんだ」と思われるかも知れませんが、現在『ドラクエ2』プレイ中の私にとっては凄く重要なことなんです。
 『ドラクエ1』や『ドラクエ2』って「やりくりをする面白さ」なんですよ。
 持てるアイテムの数が決まっているから「薬草」の数に限りがある、MP回復アイテムは超貴重なので「残りMP」に常にを気をつけなくてはならない、なのに雑魚敵も攻撃力が高いのでMPを温存するのではなく“複数攻撃できる魔法”や“補助魔法”をバシバシ使っていかなければ逆にHPが減らされて回復にMPを使うことになってしまう、ダンジョンの中にはセーブポイントも回復ポイントもないので“町まで無事に帰る”ことが大事――――

 「残されたアイテム」や「残されたMP」と相談しつつ、このダンジョンを「まだ進む」のか「一旦引き返す」のかを決断しなければならないんです。
 このダンジョンがまだ続くのか、もうそろそろ目的の場所なのかも分からないので―――もうムリだ!一旦引き返す!と戻って、再度ダンジョンに挑戦したら「あと一つ階段を登るだけで目的の場所」だったことなんてしょっちゅうです。このギリギリの緊張感が楽しいんです。

 と言いつつ、Wii版は「どこでもセーブ&ロード」が出来るんですけどね(笑)。
 はぐれメタルが出たらセーブ→逃げられたらロード→逃げられなかったらセーブ、を繰り返していけば100%はぐれメタルが倒せるという!ハッハッハ!これが21世紀の力だ!!!




 閑話休題。
 「ダンジョンの奥に中ボスがいる」のが普通になったスーファミ時代のRPGには、このダンジョンを進むか戻るかの緊張感はなかったなーと思います。中ボスまでの道中は前哨戦でそこまでシビアなバランスではなく、中ボスに勝てるかどうかのところに緊張感がある―――なので、例えば「アイテムは持ち放題」になったり、MP回復アイテムが入手しやすくなったり、中ボス前にはセーブポイントがあったり、そのセーブポイントにテントを張ってHPもMPも回復できたり。

 それを私は「RPGは便利になった」のだと思っていました。
 しかし、違いました。「RPGの“楽しさ”が変わった」んだと思うのです。


 『ドラクエ1』や『ドラクエ2』の楽しさは「探索」の楽しさです。
 限られた戦力でダンジョンを探索して「進む」か「戻る」かを迷う楽しさ。

 以後の「ダンジョンの奥に中ボスがいる」RPGの楽しさは「戦闘」の楽しさで。
 持てる力の全力を注いでこの中ボスに勝てるかどうかの楽しさなんです。



 とすると……今、私が『ドラクエ2』を超楽しんでいるのって「私が探索好きだから」なのかも知れませんし、これは後の日本製RPGが失っていった部分だからなのかも知れませんね。





 さてと。
 ここまで敢えて書かなかったんですけど、だからと言って「やりくりをする面白さ」のRPGが絶滅したワケではないですよね。『ドラクエ』や『FF』がそうした面白さを失っていったとしても、他のシリーズがその面白さを引き継いでいると思うのです。
 自分はシリーズ未経験なので恐らくですけど、『不思議のダンジョン』シリーズは「やりくりをする面白さ」ですよね。限られたアイテムで「進む」か「戻る」かの決断を迫られる面白さですよね。『世界樹』シリーズもそうですかね。タイプは違いますけど“ダンジョン探索”に特化したRPGは今でも生き続けているのだから、自分はむしろそっちをプレイしていくべきなのかもなって今回の記事を通して思いました。


 とりあえず、3DSでもWii Uでもイイし、新作が無理ならバーチャルコンソールでも構わないんで、Miiverse対応の“ダンジョン探索”RPGを遊びたいです!




○ 余談
 「ダンジョンの奥に中ボスがいる」のはいつからだ?という話をすると、『ドラクエ1』よりも前に発売された『ゼルダの伝説』(1986年)はそれぞれのダンジョンの最後に中ボスとの戦いが用意されています。

 そりゃそうだろという話ではあるんですが、アクションゲームやシューティングゲームでは「ステージの最後にステージボスがいる」のがそれ以前からありましたからね。『ゼビウス』(1983年)のアンドアジェネシスもそうですし、『グラディウス』(1985年)のビッグコア、『スーパーマリオブラザーズ』(1985年)のクッパなんかもそうですよね。
 『ゼルダの伝説』の「ダンジョンの最後にダンジョンのボスがいる」のも、各ダンジョンをステージに見立てて「ワールドの最後にはクッパがいる」『スーパーマリオブラザーズ』を発展させたとも言えますしね。


 『ドラクエ』のようなRPGも「ダンジョンの奥に中ボスがいる」のが主流になっていったのには……ボリュームが大きくなっていった結果「竜王を倒せ!」「ハーゴンを倒せ!」という一つの目標を目指させるだけでは飽きられてしまうので、それぞれのダンジョンをステージに見立てて中ボスを置いて「ステージクリア」の達成感をそれぞれのダンジョンで与えるようにするためだったということですかねぇ。
 それこそ『ドラクエ4』は「全5章」に分けてそれぞれに違う目標を与えることで、長い物語を飽きさせずに楽しませようという意図だったのでしょうし。




○ 2025年の追記

 この記事を書いてから11年が経ちまして……
 その間に、私も『ドラクエ3』のスーファミリメイク版を遊んだり、『ドラクエ5』を遊び直したり、『トルネコの大冒険』をクリアしたり、『バイオハザード』をクリアしたり―――世間的にも『ドラクエ3』のHD-2Dリメイク版が発売されて大ヒットしたりしました。

 なので、この記事を書いた時には分かっていなかったことを追記しておきます。

 『ドラクエ3』(スーファミリメイク版)も基本的には「ダンジョンの奥」にボスはいません。ラスボス級のヤツは除いて、中ボス級のアイツとかアイツは街の中で戦ったりしました。唯一の例外はカンダタ一味くらいかなぁ……
 『ドラクエ5』は、後半特に「ダンジョンの奥」にボスがいることが多くなるのだけど……道中の雑魚戦からすると、ボス戦の強さには手心を感じるというか。ボスにたどり着くまでに疲弊していることが前提の強さになっていたと感じました。

 んで、昨年秋に発売された『ドラクエ3』のHD-2Dリメイク版……こちらは私は忙しくてプレイしていないんですが、母がプレイした話を聞くところ「原作にはいなかったダンジョン奥のボス」が追加されていたらしいんですね。
 その分、「ふくろ」システムでアイテムが持ち放題になっていたり(これは『ドラクエ3』スーファミリメイク版からある)、ダンジョン奥までのショートカットが開通できたりするので……"限られた戦力でダンジョンを探索して「進む」か「戻る」かを迷う楽しさ"がなくなっちゃった反面、"持てる力の全力を注いでこの中ボスに勝てるかどうかの楽しさ"を追加したってことなんだと思うのです。



 そう考えると、この「探索重視」か「戦闘重視」かの分岐点は「ダンジョンの奥にボスがいるかどうか」ではなく、「ダンジョン内でセーブや全回復ができるかどうか(orショートカット開通して拠点に戻れるかどうか)」のと「回復アイテムを無制限に持てるかどうか」な気がするんですね。「ダンジョンの奥にボスはいるが特に強くはない」ってのもあるので。

 とすると、RPGの主流が変わった転機はセーブポイントがダンジョン内に設置された『ファイナルファンタジー4』(1990年)なのかなぁ……デブチョコボ廃止は『ファイナルファンタジー5』(1992年)からですが、それ以前から『FF』はポーション99個とか持ててたワケですし、『FF』はそもそも「戻れる拠点がない」ストーリー展開とかも多かったですからね。


・ダンジョンの奥にボスはいない、「探索」重視のRPG=『ドラクエ2』、原作『ドラクエ3』
・ダンジョンの奥にボスはいてもそんなに強くない、まだ「探索」重視寄りのRPG=『ドラクエ5』
・ダンジョンの奥に強いボスがいて、その手前にはセーブ&全回復ポイントもある「戦闘」重視のRPG=『FF4』
・更にアイテムも持ち込み放題になった「戦闘」特化のRPG=『FF5』や『ドラクエ3』HD-2Dリメイク版

 グラデーションにするとこんなカンジか。


 そして、もちろん「やりくり」が大事な「探索」重視のゲームは、『トルネコの大冒険』のようなローグライクだったり、アイテムが有限で全回復ポイントもない『バイオハザード』のようなホラーゲームだったりに受け継がれていくので……RPGの主流が変わっても、「面白さの肝」自体は別ジャンルが補ってくれて失われてはいないんですね。

 まぁ……『ドラクエ2』が好きだった人に『バイオハザード』オススメだよ!って言っても、「イヤだよ!怖ぇし!」ってなるかも知れませんが……(笑)




※ それはそうと、我が家に『ドラクエ3』が集まってくるな……という写真と、それらのアフィリエイトリンク
ドラゴンクエストIII そして伝説へ…(ファミリーコンピュータ版)

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