「“ドラえもんに出てくるセワシ君”って誰ですか?」の意味


<画像は漫画版『ドラえもん』1巻より引用>

※ この記事は2008年に旧ブログに書かれたものを幾つか手直しして2025年に移行した記事です


 既にその記事は消えてしまったのですが、「実は結末を知らない完結した名作コミックランキング」という記事がありました。

 「最終回の内容を覚えていない」ならば、上位の作品は最終回の前の回辺りがピークになっているので覚えていないのも仕方がないかなーと思うのですが……これは恐らく「最後の方は観ていなかったために知らない」というランキングなんでしょうね。
 『タッチ』なんかラスト付近のあのシーンは凄く有名だけど、あのシーンに至るまでの過程は知らない人が多いというか(原作とアニメでは状況が違いますしね)。コミックじゃないけど『フランダースの犬』の最終回とか、やたら「感動的なアニメのシーン・トップ100」とかで上位に入ってますけど……前後のシーンを知らないけど、「みんなが感動すると言っているから感動的なんだろうな」という人がほとんどでしょうしね。



 しかし……そう言えばで思い出したことがありました。
 先週のセキレイラジオにて早見沙織さんと立花慎之介さんが「ドラえもんのアシカビはのび太ではなく実はセワシ」というネタメールを読んだ際に、「セワシ……って誰ですか?」と仰ったんですよ。


 ドラえもんを知っているのに、セワシ君を知らないとな?
 いや、だってさ……セワシ君がいなかったら『ドラえもん』が始まらないじゃないですか。のび太の子孫であるセワシ君が未来からやって来て、「アンタが不甲斐ないから子孫の僕が困るんだ」とのび太の根性叩き直すためにドラえもんを置いていくから物語が始まるワケじゃないですか。
 セワシ君を知らない人が『ドラえもん』を観ていたら、「どうしてドラえもんってのび太の家で寝ているのかなー」と疑問を持ったりしないんでしょうか?


 とは思ったものの……よくよく考えてみれば、セワシ君の登場回数はそんなに多くないワケで。
 第1話(アニメでも漫画でも)を観ていなければ存在を知らないのも当然ですし、長く続いている作品の場合は「物心ついた頃から始まっていた」ケースもありますし、「ドラえもんはのび太の家にいる」ことが当たり前だと思っていてもしょうがないんですよね。早見さんはまだリアル17歳ですし。

 これは冒頭の“最終回の内容を知らない”ケースとは正反対の例ではありますが、本質的には同じことで。長く続いているメジャー作品って、知名度の割には“最初”と“終わり”が知られていないことが多いんだろうなぁと思ったのです。



 「長く続いている作品は、印象に残っているシーンがバラバラになりがち」とは、僕が以前から主張している話です。『ドラゴンボール』で僕が最も号泣するシーンは、セル戦の後にチチが泣き崩れるところなんですけど……それを話すと、100人中100人が「は?」という顔をしてくるという(笑)。

 しかし、そういった印象とか記憶の問題という次元ではなく―――
 「長く続いている作品ほど、全部を観ていないケースが多くなる」というのも言えるんだなぁと今回は思ったのです。


 同じように「『ドラゴンボール』?観てたよ」と言った人でも、1話から最終話までの全てを観ているとは限らないんですよね。ジャンプでの連載が11年間、アニメの放送も10年間(『GT』も入れると約12年)も続いていたワケですから―――その途中途中だけを観ていたという人も多いはず。
 初期を知らない人はウーロンとかプーアルを知らないでしょうし、後期を知らない人はベジータですら知らないということもあるのかも知れませんね。ひょっとしたら「セワシって誰ですか?」と同じように、『ドラゴンボール』という作品は観ていたけど“7つのドラゴンボールを集めると願いが叶う”という設定すら知らない人もいるのかも……




 『ドラゴンボール』の場合は『GT』というアニメオリジナルなシリーズがありましたが……
 逆に、『スラムダンク』のアニメは原作に追いついてしまったこともあって、原作漫画31巻の内の23巻目辺りでオリジナルの最終回を迎えてしまうんですよね。

 なので、これだけ有名で大人気だった作品を「最初から最後までキッチリ観ていた人」であっても、原作漫画を読んでいた人とアニメを観ていた人とでは物語の結末が違うという。アニメ派の人に、原作終盤の話を振っても「そんなシーンあったっけ?」と思われてしまうことでしょう。



 喩えば、お見合いの席で……

女性「あの……ご趣味は何ですか?」
やま「あまり胸を張れる趣味ではないのかも知れませんが、漫画を読むのが好きなんです」
女性「まぁ!私も学生時代なんかは好きでしたよ」
やま「そうですか?ちなみに、どの辺りの作品を観ていたんですか?」
女性「スラムダンクとか、大好きでしたね」
やま「スラムダンクは僕も小中学生の頃に大好きで毎週読んでいましたよピョン」
女性「……?」
やま(あれ?スラムダンクが大好きなんだよな……?)
女性(何この人……突然脈略もなく語尾に「ピョン」とか付けたりして。キモイわー)


 誰がキモイんだ、ほっとけ!
 とまぁ……こんな風にまとまる縁談もまとまらなくなってしまうものです。


 長く続いている作品や、色んなメディアで展開してそれぞれ人気を博した作品なんかは……人によってどの程度接していたかが異なるのが当然なので。メジャーな作品だからと言って油断してマイナーキャラの名前を言ってドン退きさせないように心がけたいものですね。それが、ヲタクのたしなみというものです。
 「ピョン」の話とは逆で、アニメにしか出てこないキャラ・展開なんかもありますし、『キャプテン翼』なんかはゲームオリジナルの必殺技(サイクロンとか)が原作以上に有名だったりしますもんね。




 そういや、僕がガンヲタだった頃……
 とあるガンダム系サイトで「俺の友人はシャアを知らないくせにジョニー・ライデンを知っていた。何故!?」というネタがあって、非常に笑ったものなんですが。
 このジョニー・ライデンというキャラは『ガンダム』本編には登場しないキャラなのに、ガンプラ大ブームだった頃にこの(言ってしまえば、設定だけの)キャラが搭乗したモビルスーツがTVCMにて流れたことで有名になったという話です。

 ガンプラブームからガンダムの世界にハマった人は沢山いたのでしょうが、その中でもたまたま「シャア」の名前を完全スルーしたというのは凄い話ですよね。


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