
<画像はテレビアニメ版『誰ソ彼ホテル』第3話より引用>
<2025年4月9日現在『誰ソ彼ホテル』が見放題になっているサブスク>
『誰ソ彼ホテル』
<公式サイト>
・形式:テレビアニメ(全12話で完結)
2025年1月~年3月に放送
・原作:スマホ向けゲーム(公式サイト)
リメイク版(公式サイト)
・監督:紅水康介(Twitter)
・キャラクターデザイン/衣装デザイン:針場裕子
※ 苦手な人もいそうなNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。
・シリアス展開:◎(登場人物みんな死んでるか死にかけてる人ですからね)
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・白人酋長もの:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:△(主人公の音子ちゃんが可愛い女のコが好き)
・BL要素:△(大外さん→ 阿鳥先輩はなかなか)
・男女の恋愛:△(主人公周りにはあんまりないけど)
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×
・BL要素:△(大外さん→ 阿鳥先輩はなかなか)
・男女の恋愛:△(主人公周りにはあんまりないけど)
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×
◇ 作家性:スマホ向け脱出ノベルゲームをたくさん作っていた会社の代表作
このアニメは2025年1月から放送されていた1クールアニメで、曲者揃いの「2025年冬アニメ」の中で地に足がついた作品として好感が持てたのでレビューしておきます!
原作は2017年に配信開始されたスマートデバイス向けゲームです。
基本無料で、1日ごとに配られるチケットによってストーリーを読むことが出来る「チケット制」のゲームで、一気に読みたい人は課金が必要―――といったシステムみたいです。
2022年にはリメイク版となる『誰ソ彼ホテル Re:newal』がスマートデバイス向けに配信されて、2024年1月にはその移植となるSteam版が発売されました。
このSteam版は買い切り型で最初にフルプライスを支払えばすべての要素が遊べるので、面倒なスタミナ回復とか追加課金とか気にせずに一気に遊びたい人向けだと思います。
株式会社SEECは決してゲームばかり作っている会社ではなく、ウェブソリューション事業や観光事業などと並ぶ事業の一つとしてスマートデバイス向けにゲームを出していました。
それでは、その株式会社SEECの出しているゲームを見てみましょう。メーカー公式サイトに名前が載っているものが中心です。
…脱出ゲームに似た新たなジャンル『探索×推理アドベンチャー』
2016年6月『四ツ目神』
2016年6月『四ツ目神』
…脱出ゲームに長編ストーリーを追加した新ジャンル『謎解きノベル×脱出ゲーム』
2017年4月『監獄少年』
2017年4月『監獄少年』
…脱出ゲームに長編ストーリーを追加した新ジャンル『謎解きノベル×脱出ゲーム』
2017年7月『ネバーランドシンドローム』
…童話をモチーフにした乙女ゲーム、配信終了しているみたい
2017年8月『私だけいれば問題ないよね』
…恋愛アドベンチャーゲーム、Switch版が出ている
2017年12月『誰ソ彼ホテル』
…謎解き(脱出ゲーム)に長編ストーリーを追加した新ジャンル『脱出アドベンチャーノベル』
2018年1月『籠庭のクックロビン』
…アドベンチャーノベルゲーム、Switch版が出ている
2018年3月『アリスと闇の女王』
…謎解き×脱出アドベンチャーゲーム、配信終了しているみたい
2018年12月『紡ロジック』
…物語に重点を置いた長編脱出ゲーム(探索アドベンチャーゲーム)
2018年12月『俺の記憶にカノジョはいない』
…分岐型のノベルアドベンチャー
2019年4月『Choice×Darling-チョイダリ』
…メッセージアプリ×恋愛ゲーム
2019年12月『VILLAIN HEARTS-ヴィランハーツ-』
…ダークファンタジー×ノベルゲーム
2020年3月『ウーユリーフの処方箋』
2020年3月『ウーユリーフの処方箋』
…ストーリーを楽しみながら推理する謎解き×脱出アドベンチャー
2020年9月『婚約者(仮)拾いました』
…イケメンヒモ男育成×タップ恋愛ゲーム
2021年2月『四ツ目神 -再会-』
…女性向けメッセージアプリ風恋愛ゲーム
2021年9月『ミリオンダラーボーイズ』
…イケメン店員育成×恋愛ゲーム
2022年12月『誰ソ彼ホテル Re:newal』
…『誰ソ彼ホテル』のリメイク、Steam版も出ている
2025年3月『誰ソ彼ホテル -蕾-』
…『誰ソ彼ホテル』の続編で、アイテム探しゲームになった
どのゲームも基本的にはスマートデバイス用に展開され、その中でも一部の作品はNintendo SwitchやSteamにも移植されているってカンジですね。スマートデバイス向けのゲームの宿命ですが、時間が経つと諸々の事情で配信終了してしまうので現在では遊べなくなってしまったものも多いです。
作られているのはどれも「ストーリー重視のアドベンチャーゲーム」でかつ、『アリスの精神裁判』『四ツ目神』『監獄少年』『誰ソ彼ホテル』『紡ロジック』『ウーユリーフの処方箋』は表現こそ微妙に変化していますが「ストーリー性の強い脱出ゲーム」のシリーズだと公式で謳っています。
ケムコがやたら「デスゲームもののノベルゲーム」を作っていたみたいに、ここの会社は「脱出ゲーム」を武器にしていたんですね。
その中でも『四ツ目神』はリメイクされて、コンシューマーでも発売され。
『誰ソ彼ホテル』もリメイクされて、WEBTOON(縦読みフルカラー漫画)にもなり、今回テレビアニメ化もされて、舞台化も予定されていて、(ジャンルは変わってしまったみたいですが)続編の『蕾』がテレビアニメに合わせて配信開始になりました。
この2本は特にそのシリーズの中でも別格の扱いみたいで、今回の『誰ソ彼ホテル』のアニメ化も「代表作が満を持してアニメ化された」って位置づけなんだと思うのです。
◇ 作品性:「死んだか」「死んでいないか」が曖昧な世界で、宿泊客たちの謎を解き明かしていく

<画像はテレビアニメ版『誰ソ彼ホテル』第1話より引用>
この作品の舞台は、あの世とこの世の狭間にある「黄昏ホテル」。
「この世」で死んでしまったか、死にかけているか、それすらも分からない記憶喪失の魂が滞在するホテルです。

<画像はテレビアニメ版『誰ソ彼ホテル』第1話より引用>
このホテルを訪れた客は大抵「名前」も「顔」も思い出せないのだけど、その客専用の「部屋」に通されます。この部屋にはその客の「記憶にまつわる品」があるので、それを探して記憶を取り戻していくのが目的です。
この「部屋に隠されたアイテム」を探すの、むちゃくちゃ「原作が脱出ゲーム」っぽい!

<画像はテレビアニメ版『誰ソ彼ホテル』第1話より引用>
ちなみに、「部屋」はその客それぞれ専用のものなので、宿泊客によって内装が大きく異なります。
部屋の雰囲気や、置かれているものから、この宿泊客が「この世」で何をしていた人なのかを考えていく様……そして、最後にはしっかりと「正解」が明らかになるので、推理モノのようなカタルシスが毎回味わえるのがイイんです。
主人公の塚原音子(ねこ)ちゃんは、最初は宿泊客としてこのホテルを訪れ、自分の記憶を紐解き。そこからホテルの従業員となって、毎週訪れる様々な宿泊客の世話をしながら、記憶を取り戻す手伝いをしていくことになります。
そうして記憶を取り戻した宿泊客は、「死んでいた」ことが明らかになった者はあの世へ、「死にかけたけど生きている」ことが分かった者はこの世へ戻る―――という流れです。
ということで、
この記事を読んでくださっている何人かは連想してしまったかも知れませんが……
『Angel Beats!』じゃん!
『Angel Beats!』とは、2010年の春アニメとして放送されたP.A.WORKSのアニメで、Keyの麻枝准さんが原作・脚本を書いていることで話題になりました。
「この世に未練を残して死んだ者達」が集まった「死後の世界の学校」が舞台で、残した未練を達成しないと成仏できないため、残した未練が何なのか登場人物達の記憶を紐解いていく―――という作品でした。
むっちゃ設定が似てる!
ただ、別に「パクリだ」と言いたいワケではなくて、「死後の世界」は創作物の舞台になりがちで、私だってオリジナル漫画で描いたことがあります。んで、「死後の世界」が舞台なら、「生前の記憶」を紐解くことがテーマになるのも自然な流れだと思います。
影響を受けたか受けていないかは分かりませんし、どっちの作品も好きな私にとってはどっちでもイイのですが、『誰ソ彼ホテル』の方が後発なのでよりこの設定をブラッシュアップされていると思いました。
一つには、全ての登場人物が「既に死んでいる」『Angel Beats!』と異なり、『誰ソ彼ホテル』の登場人物は「既に死んでいるか、実は生きているかも分からない」ところがあります。生きていることを思い出した人は、この世に戻ることも出来ます。
それじゃあ『Angel Beats!』とちがって「記憶を取り戻してこの世に帰れる」んだからヌルくない?と最初は思っていたんですが……ちがうんですよ。
『Angel Beats!』はもうどうせみんな死んじゃっているから、死後の世界で死んでもまたリスポーンできるという精神で、何度も何度も繰り返し死に続けるみたいなシュールなコメディ展開があったのですが……
『誰ソ彼ホテル』は「ひょっとしたら生きているかも知れない」から命を粗末にできないし、仮に「実は生きている」人であってもこの世界で死んでしまうとこの世には戻れないし、もしこの世界で人を殺してしまったら地獄に堕とされてしまいます。
私はこの『誰ソ彼ホテル』のアニメ、序盤は正直「脱出ゲームのアニメ化ならこんなものかな」「毎週宿泊客の素性が明らかになるのは推理モノっぽい気持ち良さがあるから見続けるかな」くらいのテンションだったのですが……
序盤が終わるころに、とあるキャラが登場して一気に「最注目アニメ」にランクアップしていきました。

<画像はテレビアニメ版『誰ソ彼ホテル』第4話より引用>
それは……殺人鬼です。
「死んでいるか/実は生きているのか」分からない宿泊客が集まるこのホテルに、快楽のために人を殺す“宿敵”が混じっているのです。
ホームズに対するモリアーティ教授や、明智小五郎に対する怪人二十面相のように、ミステリーにおける“宿敵”は作品の華です。“宿敵”がいるから主人公が輝けると言っても過言ではありません。
本当なら「記憶を取り戻したらこの世に戻れる人」も、ここで殺されてしまったらそれも叶いません。一気に作品に緊張感が出ましたし、それを防ごうとする主人公:音子ちゃんの立ち回りに“ヒーロー”性が生まれました。
この展開は、全ての登場人物が「既に死んでいる」「あとは成仏するだけ」の『Angel Beats!』では出来ない展開です。
◇ 総括

<画像はテレビアニメ版『誰ソ彼ホテル』第5話より引用>
それはそうと、キッチン担当のルリちゃん可愛い。
カッコイイ男性キャラも出てくる作品で、続編の『蕾』が分かりやすく女性向けに舵を切っているように、この作品もどちらかというと女性ファンが多かったと思うのですが。でも、この作品は「女のコ同士の関係性」もイイんだよね……
1クールのアニメとしてキレイにまとまった良作で、しっかりと満足感を与えてもらいつつ、「原作も遊んでみようかな」と思ったくらいです。
アニメだと音子ちゃんがサクサククリアしていた脱出ゲームパート、原作のゲームだとどうなっているのか確認したいですし。当然、アニメでは拾われなかったシーンとかもありそうですし。
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